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糖質制限により価値観を変えられるか

category - 糖質制限
2019/ 09/ 27
                 
『診断と治療』という雑誌の2019年9月号で、

「生活習慣病」診療の新潮流:この10年で何が変わったか、と題する特集が組まれていました。

医学は日進月歩で10年間という月日で生活習慣病診療はここまで進歩した、時代に乗り遅れないようにその変化をとくとご覧あれ、というのがこの特集の趣旨だと思います。

しかし私に言わせると、この10年間、従来医学の中ではたいした変化が起こっているようには到底思えません。

そんな中唯一私が劇的な変化と思える「糖質制限食」について、この特集ではどのように書かれているかを紹介します。

            

特集「生活習慣病」診療の新潮流:この10年で何が変わったか
ゼロ次予防・一次予防としての環境整備と生活指導
「生活習慣病」の食事療法
窪田直人 東京大学医学部附属病院病態栄養治療部


(p1092より引用)

(前略)

2013年3月に日本糖尿病学会は「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」において、

炭水化物を50〜60%エネルギー、蛋白質20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質とするとしている。

ここでは、種々の条件がそろえば、50%以下の糖質調整を検討してもよいと記されており、議論の余地を残している。

RCTのメタアナリシスでは、低炭水化物食(45%未満)、特に超低炭水化物食(26%未満)では、

軽度低炭水化物食(45%以上)に比べ、約4ヶ月では血糖コントロールの改善がみられたが、1年後には認められなくなっていた。
(Sainsbury E, et al.: Effect of dietary carbohydrate restriction on glycemic control in adults with diabetes: a systematic review and meta-analysis. Diabetes Res Clin Pract 139: 239-252, 2018)

(引用、ここまで)



2013年の日本糖尿病学会の提言は「極端な糖質制限は勧められない」という言葉に象徴されるように、

基本的に長期の安全性が認められないを主な主張としてとてもではないけれど認めようとしてない姿勢の発言だと記憶していたので、

「50%以下の糖質調整を検討してもよい」なんていう歩み寄る姿勢なんてあったっけな?と思ってしまいましたが、

それはさておき、今回私が引っかかったのは「低炭水化物食の血糖改善効果が1年後には認められなかった」という表現です。

これだけ見ると、「糖質制限(低炭水化物食)は最初は血糖改善効果があるけれど、1年もすれば糖質制限していても血糖値は下がらなくなる」という風に誤解してしまいそうです。

しかし実際は違います。きちんと糖質制限が出来ている人は1年経とうが血糖コントロールは良好を維持しています。

ただし体重に関して言えば、そういう側面はあるように思います。私自身も糖質制限開始後10ヶ月で134kgから102kgへの減量に成功しましたが、

その後は同じように糖質制限を続けていてもそれ以上は体重が減らないという現実に直面しました。

ただ今回の論文では明確に血糖コントロールの話をしているので、論文の話は少なくとも私が糖質制限推進派医師の立場で様々な患者さんを見てきて知っている事実とは食い違っています。

考えられる理由はただ一つ、1年経ったら糖質制限の精度が緩んでいたということです。糖質制限反対派の医師達はこうした現象に注目し、

「糖質制限は現実的に長期継続できる食事療法ではない」ということを糖質制限の反対の根拠として持って来られることが時にあります。

…ここで、私はふと気付きました。研究に参加した人達の糖質制限が1年後にどうして緩むのかということに。

それは「もともとある常識的価値観のままで糖質制限を実践させられてしまっているから」です。

糖質制限を長く続けられる人達というのは皆価値観レベルでのパラダイムシフトに成功しているものです。

パラダイムシフト前のいわゆる常識的価値観というのはどういうものかと言えば、

「糖質は主要なエネルギー源」とか、「疲れたら甘いもの」とか「日本人の主食は米」とか、「米を食べないと力が出ない」という感じのものです。

そうした価値観を持ったまま、よくわからないままに糖質制限をさせられて、

血糖値のコントロールの改善が得られたとしても、

そうした価値観が頭にある以上、その人達の中では常に「今、実験で特殊な食事療法を行なっている」とか「今は実験に協力しているから不自然な食事をしているけど、実験が終わったら元に戻そう」といった考えがまとわりついているはずです。

ましてや糖質はおいしいし、中毒性もあります。価値観が変わらなければ、すぐさま元の依存状態に戻るのは時間の問題でしょう。

ところが糖質制限が長期に継続できる人というのは、糖質制限によって起こった身体の変化に驚き、

なぜそうなるのかということを自分の頭で突き詰めて考える欲求に自然と駆られていくがために、

糖質制限状態の方が自然な状態だったんだということに気付き、

「糖質は摂らなくても合成できる」とか「糖質は嗜好品」とか「もともとの人の食性は肉食に適応」とか「人は食事がなかなか食べられない時代の方が長くそうした環境に適応するシステムが豊富」などの理解に至り、

最終的に「糖質制限状態こそが本来あるべき姿」という風にパラダイムシフトを完了できるのではないかと思うのです。

だから糖質制限は1年間続けるのが難しい食事療法というわけではなく、

「従来の価値観のまま糖質制限を長く続けるのが難しい」ということだと私は思います。

いかに自分の頭で考えることが大事かということを改めて感じさせられた次第です。


たがしゅう
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コメント

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糖質と言う洗脳
糖質制限を継続する事は「洗脳」からの脱却だと思います。

子供のころから、ご飯をいっぱい食べるように教育され、それが健康の証だと刷り込まれており、今さら、それは間違いだと「一部の人」から言われても中々、理解できないでしょう。実践したとしても〇×ダイエットと同程度に思っていると思います。〇×ダイエットを一生続ける人もいないのと同じように糖質制限も一生続けるものだと言う認識も薄いと思いますし、日本糖尿病学会をはじめとして医学的にも公式に糖質制限が常識となっていない現在においては、一般に「常識」として広まるのは難しい気がします。
タバコの害が公に示されても中々、禁煙は進まず、最近やっと世の中がそういう雰囲気になって、喫煙者が大きな顔をしてタバコを吸えなくなっていますが、糖質についても似たようなものでしょう。時間が必要だと思います。
病院でも禁煙外来ならぬ、断糖外来なんてものができるのは、まだまだ先の事のように感じます。
体重が減らない原因
たがしゅう先生の場合、当然のことながら摂取カロリーの方が消費カロリーよりも多すぎると言うことが、体重が減らないことにつながっていると思います。直球の発言で申し訳ございません。糖質制限+摂取制限も大切かもわかりませんね。
Re: 糖質と言う洗脳
西村典彦 さん

コメント頂き有難うございます。

2:6:2の法則というのがあって、いつの時代も非常識を真っ先に取り入れられるのは2割の集団だけだといいます。
今はその2割のみが糖質制限という非常識を理解して実践していて世の中は変わらないという状況だと思いますが、6割の常識にも非常識にも行きうる人達の存在が世の中が変わるかどうかの命運を握っていると思います。

非常識が常識よりも利があれば、時間はかかれどこの6割が非常識へとひっくり返る時期がきっと来るはずです。少なくとも私はそう信じています。
Re: 体重が減らない原因
ジェームズ中野 さん

コメント頂き有難うございます。

私の摂取カロリーが多いという点については確かに否定はできません。

しかし摂取カロリーが多いことが体重停滞の原因だというのなら、それまでの糖質制限で30kgやせた最初期の時期にも私は摂取カロリーが多いままやせていることの説明がつきません。

摂取カロリーの多寡だけでは見えてこない要素があると私は考えています。