論文のトリックに騙されるな
2019/09/19 23:00:01 |
YouTuber |
コメント:15件
糖質制限にまつわる情報を流しておられるYouTuberに「トリビアオタク」さんという方がおられます。
かいつまんで動画を拝見してみる限りでは、この方は以前、糖質制限の実践者であったようなのですが、
途中で自身の実験で久しぶりに糖質を摂ったら血糖値が急上昇したという結果を受け、
「糖質制限で耐糖能が悪化した」という解釈に至り、現在は糖質制限は危険だという情報をYouTubeで発信されています。
公序良俗に反しない限り、誰が何をどう解釈し、どう情報発信をしようが自由なのですが、
糖質制限推進派医師の立場といたしましては、その発言の妥当性について検討する必要性があると思っています。
そんな中、今回見ていて気になる情報がありましたので、少しだけ触れておこうと思います。 それは「肝臓の脂肪含有量に対するフルクトース及びグルコース投与の異なる急性効果」と題するアメリカ臨床栄養学会誌の論文を紹介する動画でした。
動画ではチェコ共和国の健康なボランティア10名に、以下の6つの食事パターンを与え、どれが一番肝臓の脂肪含有量が増えたか、ということを検証する論文だと紹介されていました。
①断食
②高脂肪負荷
③グルコース負荷
④グルコース+高脂肪負荷
⑤フルクトース負荷
⑥フルクトース+高脂肪負荷
グルコース負荷では実験開始時、2時間後、4時間後のタイミングでそれぞれ50ℊずつ与えます。
またフルクトース負荷も同様に、実験開始時、2時間後、4時間後のタイミングで同じく50ℊずつ与えます。
そして高脂肪負荷とは脂質150ℊを含有する生クリームを実験開始時のみに与える、というメニューのようです。
肝臓の脂肪含有量は核磁気共鳴分光法という方法で評価されたと示されていました。
その結果、肝臓の脂肪含有量が一番増えたのは②高脂肪負荷、
二番目に増えたのが⑥フルクトースを含む高脂肪負荷、
そして一番肝臓の脂肪含有量が少なかったのが、③グルコースを与えた時だった、という結果を紹介する動画内容でした。
これをもって、トリビアオタクさんは「糖質制限をしていると脂肪肝になりますよ」ということを主張されるわけですが、
本当にそうなのかどうかを検証すべく、トリビアオタクさんが参照したと思われる論文の原文を確認してみることにしました。
Different acute effects of fructose and glucose administration on hepatic fat content.
Dusilová T, et al. Am J Clin Nutr. 2019 Jun 1;109(6):1519-1526. doi: 10.1093/ajcn/nqy386.
読んでみると、いくつか気になる点が浮かび上がってきました。
まず1つ目、概要(Abstract)では②高脂肪負荷で用いた生クリームは「150ℊの脂質を含有している」とだけ書かれていますが、
原文を当たってみると、使用している生クリームは150gの脂質以外にも、「19.5ℊの炭水化物、13.5ℊのタンパク質が含まれている」と書かれていました。
つまり純粋なる高脂肪負荷ということにはまずなっていませんし、
19.5ℊの炭水化物と13.5ℊのタンパク質があれば、それなりにインスリン分泌が刺激されるはずです。
実際原文で高脂肪負荷でインスリンの分泌が少々刺激されている結果が示されています。
インスリンが分泌されていれば、分泌されていない状況に比べてそこにある高脂肪を肝臓に取り込む作用が働いてしかるべきです。
それはグルコースから脂質へ変換させる工程に比べてはるかに早く起こすことができる反応であることでしょう。
一方でグルコース負荷、及びグルコース+高脂肪負荷のメニューでは、
グラフ上にしっかりとグルコース+インスリンのスパイクを形成している様子も見てとれます。
2つ目に、肝臓の脂肪量測定法の正確性に疑問が残るということが挙げられます。
動画で紹介されていた核磁気共鳴分光法というのは、MRS(magnetic resonance spectroscopy)といって、
画像検査でおなじみのMRI(核磁気共鳴画像法)の技術を用いて、脂肪と水の振動の違いによる差を捉えて、そこから脂肪の量を推定する方法のようです。
難しい理屈はあるのですが、このMRSという方法、シングルボクセル(single-voxel)と呼ばれる画像の一部のみを箱状に切り取った解析領域をどこにどのような大きさで設定するかによって、誤差を生じたり、ノイズが混ざって正確な値が反映されなくなることがあるということ、
また肝臓全体を評価することができないという欠点もあって、一般的な検査としては用いられることは少ないそうです。
ちなみに同じMRIを用いた肝臓脂肪の検査法でもDIXON法という方法であれば、肝臓全体を評価できるため臨床の検査に組み込まれることが多いのだそうです。
要するにMRSという検査法には主観の入る余地があるということです。
そして主観が入る余地があるということは、あまり考えたくないことですがデータを操作しうる余地もあるということです。
実際、この論文のデータで怪しいと思うのは、もっとも脂肪が肝臓に蓄積しないのは断食であるはずなのに、グルコースを与えた方が断食よりも肝臓脂肪が減少するという謎の結果を示しています。
その点に関して原文ではDisucussionで「インスリンが脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出を抑え、遊離脂肪酸が肝臓脂肪の決定的な供給源なので、遊離脂肪酸が減少すれば新規の脂肪合成やVLDLに対する既知のインスリン効果を無効にする」という謎の理屈を展開しています。
遊離脂肪酸の放出が抑えられるのはよいとしても、だからといって肝臓の脂肪が減少することにはならないような気がするのは私だけでしょうか。
そして3つ目として断食も含めてすべてのメニューの実験時間はわずか6時間のみだということです。
この実験時間の短さがこの論文の最大の問題点です。そもそも、そんなに早く食事中の栄養素が肝臓に蓄積されるはずはないのではないでしょうか。
実際、以前私が75g果糖(フルクトース)負荷試験を行った際に、6時間の実験時間中に中性脂肪の増加は認められませんでしたが、
2日後に中性脂肪の著増が確認されるという出来事がございました。
果糖は中性脂肪を合成するというのは肝臓の脂肪合成能に働きかけての話ですが、そのシステムを動かすのにはそれくらいの時間がかかるということです。
それなのに6時間で脂肪肝が起こったかどうかを評価するというのはいささか気が早いのではないでしょうか。
ちなみに10名という被験者の少なさも気になるところではないかと思います。
しかも食事パターンが6つあるって、一瞬「1つのパターンに1-2名しか行っていないのか?」と思ってしまいましたが、
どうやらこの10名それぞれが6つの食事パターンすべてを実験していて、
それぞれ前の食事パターンの影響が出ないように、間を最低でも14日以上あけて、全て行って得られた結果だということのようです。
それでもこの人数の少なさはどうかと思います。しかし少なくてもとにかく有意差が出ればきちんとした医学雑誌に乗るというのですから、
個人的には「有意差さえ出れば何だっていいのか」というやるせない気持ちになってきます。
百歩譲って、高脂肪負荷として十分な炭水化物の少なさで、検査の精度も問題なく、6時間でも十分な検査時間だったと仮定しても、
それによって証明されたのは、高脂肪負荷では肝臓のあたりに脂肪が多かったという事実だけです。
肝臓に脂肪が存在することが即、脂肪肝炎につながるというわけではありません。
もっと言えば、6時間までの短い時間でしか評価していないので、肝臓に取り込まれる前の血管内に存在する脂肪を見ているだけの可能性さえあります。
それだったら高脂肪負荷で肝臓脂肪量が高いと評価されるのはある意味で当たり前です。まだ消化管から吸収されて血中に入って肝臓の近くまで来た時点までしか評価できていないわけですから。
かたやグルコース負荷が加わり、それがその後脂肪に変換されて肝臓に蓄積されるかどうかはこれからどうなるかといった所でしょう。
脂肪があっても実際に肝臓に炎症を起こしたかどうかを示すには、AST、ALTといった肝の逸脱酵素の値を調べるのが必要不可欠であるはずです。
ところがなぜかこの論文ではASTやALTといった酵素の測定はなされていません。
・・・いろいろ作為的な部分があるように感じられるのではないでしょうか。
医学論文の概要だけを読んで鵜呑みにしてしまうと、これだけの事実を見逃してしまうということです。
医学論文を論拠に頼って主張することの危うさが分かって頂けるのではないでしょうか。
読者の皆様におかれましては、医学論文の情報、及びそれを元に情報発信をする人の意見を取り入れる際には、
その解釈に十分に注意をして頂きたいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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GLP-1 は糖尿病を治癒させる?
こんにちは。僕もトリビアオタクさんの動画をかかさず見ています。先生もご覧になったと思いますが、糖尿病はグルカゴンの反乱だったをきっかけに、糖質制限反対派が勢いづいているようです。
なぜ糖質制限反対派医師は糖質制限に反対しているのか
https://youtu.be/0P3b6e6yuFA
栄養チャンネル Nobunaga
https://youtu.be/oGG4kD044Qw
トリビアオタクさんは過去にこんな動画も上げています。
https://youtu.be/pIsLWH3pN_k
メンタリストDaigoさんの糖質制限批判は間違えているね
糖質制限をするとGLP-1の分泌が減るので、耐糖能が悪化するという理論はどこまで信憑性があるのか、糖質制限推進派の医師の方々のご意見を是非聞きたいですね。
Re: GLP-1 は糖尿病を治癒させる?
コメント頂き有難うございます。
グルカゴンにしても、GLP-1にしても、「糖質制限がよくない」という説を論理立てるために利用されているとしか私には思えません。
例えば、糖質制限をするとGLP-1が低下するという現象はまだ確認されていない情報です。
一方で、健常者と2型糖尿病患者でGLP-1の血中濃度は変わらないとする論文はあります(Knop FK et al., Diabetologia. 2007; 50: 797-805.)。
にもかかわらず、なぜ「糖質制限をするとGLP-1が低下する」と言い切れるのでしょうか。
あるいは、糖質制限をするとグルカゴンが上昇するという事は、少なくとも私自身の実験データではできています。
2017年11月7日(火)の当ブログ記事
「たがしゅうの負荷試験コントロール」
https://tagashuu.jp/blog-entry-1149.html
も御参照下さい。
グルカゴンの検査精度の問題でグルカゴン様の物質まで検出してしまう可能性についてはさておいて、グルカゴンの高さが本当だったとして、だからといって私の血糖値は上がっているわけではなく、むしろ糖質を摂取して血糖値が上がる時に私のグルカゴンは低下しています。
にもかかわらず、なぜ「糖質制限をするとグルカゴン分泌が亢進し糖尿病になる」なのでしょうか。
それはそれらを主張している人達の頭の中で「糖質制限はよくない」ということが決定事項となっているからだと私は思います。
「糖質制限はよくない」が真であるならば、「糖質制限でGLP-1が低下している」としか考えられない、「糖質制限でグルカゴンが上昇し糖尿病になる」としか考えられない、となってしまうのではないでしょうか。
事実を重視して物事を考えていくのであれば、せめて「糖質制限でGLP-1が低下するかどうかは保留」「糖質制限でグルカゴン分泌が亢進し、その後糖尿病になっていくかどうかは不明」とすべきです。そこを断定的に語ってしまうのは科学的な態度とは到底言えないと私は思います。
管理人のみ閲覧できます
Re: タイプミスです
タイプミス御指摘有難うございます。
修正させて頂きました。
No title
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
なるほど、確かにその辺も問題ありますね。
グルコース・フルクトース50g×3、脂肪150gでそろえたつもりだったのでしょうか。
だとしたら、19.5gの炭水化物と13.5gのタンパク質が混ざり、なおかつそれがアブストラクトで省略されているのは余計におかしいですね。
No title
>以下の6つの食事パターンを与え、どれが一番肝臓の脂肪含有量が増えたか、ということを検証する論文
ではなく、論文タイトルにあるように、肝脂肪に対するフルクトースの影響を調べたものです。
フルクトースによる急性の肝脂肪蓄積を検出できるように、わざと大量の脂肪を摂取させています。そして、高脂肪のみ、高脂肪+グルコース、高脂肪+フルクトースで比較した結果、2時間おきに50g程度のグルコース摂取では肝脂肪合成を引き起こさないが、フルクトースは肝脂肪合成を引き起こすために肝脂肪量が増加しました。
このことから、フルクトースの摂取は脂肪肝の原因となり得ると結論づけています。
大量の脂肪摂取が一時的に肝脂肪量を増加させるのは当然でしょうが、カロリーの過剰摂取でないかぎりは肝脂肪はエネルギー源として消費され、蓄積はしないと考えられます。
ということで、この論文の論点は脂肪摂取ではなくフルクトース摂取についてです。
脂質のカロリーのみ高いのも、脂質を問題にしていないからです。脂質はあくまでもグルコースとフルクトースの違いを検出するための手段として用いられているだけです。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> この論文の論点は脂肪摂取ではなくフルクトース摂取についてです。
> 脂質のカロリーのみ高いのも、脂質を問題にしていないからです。脂質はあくまでもグルコースとフルクトースの違いを検出するための手段として用いられているだけです。
なるほど、そういう意図かもしれませんね。
確かに論文の結論は「我々の結果は人間の生体においてフルクトースとグルコースでは肝臓内脂肪に与える影響が異なるということを示す」、脂質の害を示すにしてはぼんやりとしているなという風に思っていましたので、そう考えると納得のいく締めくくり表現です。
ただそうすると1位が高脂肪のみ、2位が高脂肪+フルクトース、ということなので、肝臓内脂肪蓄積におけるフルクトースの寄与度は高くないとも読めてしまいます。もっとも、私は2日後に脂肪合成が高まるタイムラグがあるということを知っているので、6時間しか評価していないこの結果だけでは情報量不足で何も言えないと思っています。いずれにしても欠陥の多い論文であるように私には思えます。
No title
トリビアオタクさんの情報で、
人々が振り回されるかと思うと
とても残念に思います。
メンタリストDaigoさんの動画も
ガックリきたものです。
日比野佐和子先生においては、
何年か前、NHKを相手に
誤った情報を惜しげもなく発信されました。
つい先月も民法で進化のない発信をされていました。
本当に、ガックリきました。
情報発信者に肩書があろうがなかろうが、
間違った情報に流されず、
自分で考えて判断したいです。
自己防衛は「主体性」ですね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 情報発信者に肩書があろうがなかろうが、
> 間違った情報に流されず、
> 自分で考えて判断したいです。
> 自己防衛は「主体性」ですね。
おっしゃる通りだと私も思います。
ただ残念ながら彼らの意見に流される人達にも責任はあるのです。
それは「自分の頭で考えることを怠った責任」です。
今回のネガティブ情報によって揺さぶられた不安が、もしも私の考察で和らいだとしても、自分の頭で考えることを怠っている人はまた今後形を変えて現れるであろう新たなネガティブ情報によって再び不安をあおられることでしょう。
その不安の負のスパイラルから逃れるには、「自分の頭で考える」しかないと私は思います。
従って不安をあおられたくなければ、私の情報を待つのではなく、私のように自分の頭で考えられるよう成長すべきなのです。
No title
では、①の高脂肪食が1位で⑥の高脂肪食+フルクトースが2位ではなく、①と⑥が同程度の肝脂肪量だったことは確認されていると思います。
これは論文に書かれていることですが、①脂質150gの高脂肪食を摂取すると、小腸から体内を循環した脂質はまずは末梢で取り込まれ、余ったレムナント、漏れ出したリピッドスピルオーバー、そして脂肪細胞からの遊離脂肪酸の3つのルートで肝臓に入ってきます。
一方、フルクトースを一緒に摂取するとFGF21が分泌誘導され、その結果、脂肪細胞からの遊離脂肪酸が抑制されます。したがって、⑥高脂肪食+フルクトースの場合は、レムナントとリピッドスピルオーバーの分が肝臓に入ってきます。つまり、脂質の肝臓への流入量は⑥の高脂肪食+フルクトースの方が少ないのです。
それにもかかわらず肝脂肪量は①の高脂肪食単独と同程度というのは、フルクトースが肝臓で脂肪に変換されるからです。
この、「フルクトースは肝臓で脂肪になる」というのを実際に検出したのがこの論文のキモです。
高脂肪食は、これを検出するための単なる手段です。
先生がブログ本文で指摘されているように、この高脂肪食は450gの生クリームです。そして、脂質150g、炭水化物19.5g、タンパク質13.5gを含んでいます。つまり、単純計算で1432kcalもあります。
通常は、こんなにも高カロリーかつ低タンパク質な高脂肪食を摂取することはないでしょう。
ですので、高脂肪食=脂肪肝とこの論文で結論づけるのは間違いですし、過カロリーでなければ肝脂肪が蓄積されることはないと思います。
この論文は急性の影響を調べることが目的のようですので、2日後にさらに脂肪合成が高まるのであれば、より一層フルクトースの摂取は脂肪肝の原因となりうると言えるのかもしれません。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> ①脂質150gの高脂肪食を摂取すると、小腸から体内を循環した脂質はまずは抹消で取り込まれ、余ったレムナント、漏れ出したリピッドスピルオーバー、そして脂肪細胞からの遊離脂肪酸の3つのルートで肝臓に入ってきます。
> 一方、フルクトースを一緒に摂取するとFGF21が分泌誘導され、その結果、脂肪細胞からの遊離脂肪酸が抑制されます。したがって、⑥高脂肪食+フルクトースの場合は、レムナントとリピッドスピルオーバーの分が肝臓に入ってきます。つまり、脂質の肝臓への流入量は⑥の高脂肪食+フルクトースの方が少ないのです。
> それにもかかわらず肝脂肪量は①の高脂肪食単独と同程度というのは、フルクトースが肝臓で脂肪に変換されるからです。
> この、「フルクトースは肝臓で脂肪になる」というのを実際に検出したのがこの論文のキモです。
なるほど、私も読み込みが足りませんでした。そういう意味だったのですね。
遊離脂肪酸からの脂肪分が抑えられたにも関わらず、高脂肪負荷と同等の肝臓脂肪量だったということであればフルクトースの肝臓内脂肪量蓄積効果が高いという説明にも納得です。
そうするとグルコースの肝臓内脂肪量が減ったのはどう理解すればよいのでしょう。グルコースでも脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出を抑える反応は起こるようですが、それが肝臓内脂肪量が減ることとどうつながるのか私はいまいちつかめませんでした。ブログ本文でも紹介したDisscussionの説明では飛躍があるように思えたのですが。
それ故私は、この検査に恣意が入る余地があることについて言及致しました。ですがこの点に関しても合理的な説明がができるのであれば、もし宜しければで構いませんが、向学にために御教示頂ければ大変有難く存じます。
No title
④高脂肪食+グルコースの場合、インスリンによって脂肪細胞からの遊離脂肪酸が抑制されるため、レムナントとリピッドスピルオーバーの分が肝臓に入ってきます。しかしながら、VLDLとして流出する量とバランスが取れていたために、肝脂肪量としては変化しません。
③グルコースのみの場合、脂肪を摂取していませんので、レムナントもリピッドスピルオーバーもありません。あるのはVLDLとして流出する分のみです。なのでトータルがマイナスとなり、肝脂肪量が減少しているように見えます。
そして、③と⑥の結果を比較して、流入量は同程度と考えられるのにもかかわらず、⑥で肝脂肪量が増えているのはフルクトースが脂肪に変換されたからだ、と結論づけています。
グルコースのみでも一度に大量に摂取すれば脂肪になるのでしょうが、2時間おきに50gずつ程度の摂取なら脂肪にならないということなのでしょう。
少なくとも論文の記述を素直に解釈すればこのようになると思います。間違っていたらすみません。
管理人のみ閲覧できます
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> ③グルコースのみの場合、脂肪を摂取していませんので、レムナントもリピッドスピルオーバーもありません。あるのはVLDLとして流出する分のみです。なのでトータルがマイナスとなり、肝脂肪量が減少しているように見えます。
> そして、③と⑥の結果を比較して、流入量は同程度と考えられるのにもかかわらず、⑥で肝脂肪量が増えているのはフルクトースが脂肪に変換されたからだ、と結論づけています。
> グルコースのみでも一度に大量に摂取すれば脂肪になるのでしょうが、2時間おきに50gずつ程度の摂取なら脂肪にならないということなのでしょう。
食事由来の脂質である(カイロミクロン)レムナントと漏出脂質(リピッドスピルオーバー)は肝臓内に入ってくる「流入分」、VLDLは末梢組織へコレステロールを含む脂質を届けるために肝臓から放出される「流出分」、そして遊離脂肪酸は肝臓の中に入ってくる「流入分」の中の重要な部分だということですね。
この「流入分」と「流出分」のバランスで肝臓内脂肪の量が決定されるのだと。
そしてグルコースのみの場合はインスリンの影響で肝臓にとっての重要な供給源である遊離脂肪酸が抑えられるし、レムナントも漏出脂質も入ってこないから「流入分」は非常に少なくなりますね。また調べると糖質やアルコールでVLDLの産生が高まるということもあるようなので、「流出分」も増えてしまうことになります。これは糖質摂取で血中のコレステロールや中性脂肪が増加する要因の一つでしょうね。
だから「インスリンによる脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出抑制」という「流入分」の少なさと「糖質摂取によるVLDLの産生亢進」という「流出分」の多さがある分、「断食」に比べて「グルコース単独投与」の方が肝臓内脂肪が少なくなる、少なくとも6時間という短い時間の間の中では、ということでしょうか。
しかし6時間以上経過した後にはインスリンの作用で脂肪合成が亢進するでしょうし、もっと言えば本当に6時間以内でも何も食べない状態より食べた状態の方が肝臓内脂肪量が減少するということが起こりえるのかという点についてはやはり疑問の余地が残りますね。もうちょっと長く時間を追いかけてもらいたかったものです。
ともあれ貴重な御意見を頂き誠に有難うございます。
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