糖質制限でお酒が強くなったり弱くなったりする理由
2019/09/06 17:10:01 |
素朴な疑問 |
コメント:9件
いつも見ている師匠夏井睦先生の「新しい創傷治療」のサイトで、
糖質制限をすることで以前よりもお酒に弱くなったという人の投稿が掲載されていました。
私自身はもともとお酒をそんなに飲む方ではないので、糖質制限前後でお酒に強くなったかどうかはあまり実感がわかなかったのと、
糖質制限実践者の皆さんと情報交換をする限りでは、糖質制限をすることでお酒に強くなったという人が大多数だったということがあったので、
糖質制限でお酒が弱くなるという現象についてはあまり深く考えた事がありませんでした。
しかしこれは考えてみればすごく不思議な話です。 ある人が糖質制限をすればお酒に強くなるけれど、また別の人が糖質制限をするとお酒に弱くなるというように、
同じ糖質制限という行為を実践しているにも関わらず、人によって真逆の結果がもたらされるというのですから。
はたしてなぜそんなことが起こるのか、自分の頭で考えてみることにしました。
なお、今回も非常にややこしい話となってしまいました。あらかじめご了承頂きたく存じます。
まずお酒に酔うという現象を生化学的に表現すれば、「アルコールを分解する時の中間代謝産物のアセトアルデヒドが必要以上にたまり過ぎてしまう状態」と表現できると思います。
一般的なお酒に含まれるアルコールはエチルアルコール(慣用名エタノール)です。このエタノールは肝臓において有害なアセトアルデヒドを経て無害な酢酸へと変換する2段階の化学反応を通じて無毒化されます。
その具体的な化学反応式は次のようになります。
まずはエタノールからアセトアルデヒドの変換、この反応を触媒するのが「①アルコール脱水素酵素(ADH:(Alcohol DeHydrogenase)」です。
CH3-CH2-OH(エタノール) + NAD+ → CH3-CH=O(アセトアルデヒド) + NADH + H+
この反応で終わったら毒性のあるアセトアルデヒドがたまり続けてしまうので、さらにアセトアルデヒドから酢酸へと変換するための酵素が「②アルデヒド脱水素酵素(ALDH:ALdehyde DeHydrogenase)」です。
CH3-CH=O(アセトアルデヒド) + NAD+ → CH3-COOH(酢酸) + NADH + H+
さて、ここに出てきた「NAD+」という物質、補酵素NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)のことです。「NAD+」と表記するのは「酸化型」といってマイナスの電子を失いプラスの電荷を帯びている状態を意味します。
「NAD+」は電子を受け取ることで「NADH」という還元型に変化します。
どうやって電子を受け取るかといいますと、近くにある化合物の水素H(プラスのプロトンH+とマイナスの電子e-で構成される)と結合することによって受け取ります。
ですので①の反応の場合、エタノールからHをとってNAD+はNADHへと変化します。
さらに一つだけHを取るのではなく、分子全体の電荷的安定性の問題でHを二つ取って、「NADH+H+」という形で一つのHはプロトン(H+)として遊離します。それによってエタノール(C2H5OH)はHを2つ失った形のアセトアルデヒド(C2H4O)へ変化します。
「物質が水素を失う反応を酸化、水素と化合する反応を還元」といいますので、NAD+は自分が還元されることによって相手方の分子を酸化させる「酸化剤」という言い方もします。
細かい生化学の話はこれくらいにして、この流れで私が強調したいのは、「アルコールを分解する反応には補酵素NADが必要不可欠」だということです。
もう一つ重要なことは、俗にアルコールに弱いと言われる方の中では何が起こっているか、ということです。
実はこのアルコールの代謝に関わる二つ目の酵素「②アルデヒド脱水素酵素(ALDH)」は先天的に活性が弱い人がいます。
そうするとエタノールからアセトアルデヒドまでは順調に進めるけれど、肝心の無毒化に関わるアセトアルデヒドから酢酸へ変換されるステップが進まず、毒性のあるアセトアルデヒドがたまって酔っぱらうという現象が引き起こされるというわけです。
ここで考え得るのは、もともとALDH活性が弱くても酔っぱらうけれど、補酵素NADが不足していても同じ現象は起こり得るという事が言える可能性があります。なぜならばALDHの活性があってもNADが足りなければアセトアルデヒドから酢酸への変換反応が進められないからです。
さて無事に酢酸へと変換された場合は、この酢酸はその後どういう運命をたどるのかと言いますと、
アセチルCoAという人体のエネルギー産生にとって重要な中間代謝産物に変化され、TCA回路というミトコンドリア内のエネルギー産生システムに組み込まれてATPというエネルギー物質を作り出します。
つまり酔っぱらって酢酸を作り出すことができなければ、その後のエネルギー産生システムに支障をきたしてしまうという事です。
また補酵素NADがアルコール代謝によって消費され過ぎても問題です。NADはTCA回路だけではなく、同じくエネルギーを生み出すために重要なプロセスである脂肪酸のβ酸化にも必要とされる物質であるからです。
それでも実は人体はNADが消費された結果たまったNADHを、再びNADへリサイクルするシステムを持っています。
それは解糖系の最終代謝産物であるピルビン酸を乳酸へ変換させる「③乳酸脱水素酵素(LDH:Lactate DeHydrogenase)」の反応が起こる際と同時にNADHがNADへと変換されます。
ここで作られた乳酸はコリ回路と呼ばれる代謝経路を通じて肝臓に運ばれてブドウ糖へと変換されます。これが糖新生と呼ばれるシステムの一部です。
なのでピルビン酸を乳酸に変換するLDHによる化学反応が起これば起こるほどNADを再確保できるということになりますが、
実はこのLDHによる反応は双方向性です。
ピルビン酸+NADH+H+ ⇄ 乳酸+NAD+
乳酸が多すぎればピルビン酸の方へ、ピルビン酸が多すぎれば乳酸の方へ向かう反応系なので、延々と乳酸が作られなくて済むようになっています。
ただし例外はアルコールによってNADが消費され過ぎた時です。この場合はNAD消費の結果増え過ぎたNADHを減らすために、ピルビン酸から乳酸への反応が過剰に進むことになり乳酸がたまっていきます。
その結果、乳酸の持つ酸性の性質があだとなり、乳酸アシドーシスと呼ばれる状態へとつながります。
さらには乳酸がたくさんあれば糖新生が活発に進むのではないかと思ったらそうではありません。
実は糖新生が回るためにはTCA回路が回っている事が大前提なのですが、TCA回路はNAD不足によって回りにくくなっています。
もっと言えば、アルコール代謝でNADが消費され過ぎることにとって、細胞質にNADHが増加し、
そのNADHをリンゴ酸-アスパラギン酸シャトルというシステムがNADへリサイクルするのですが、
その過程で糖新生の際の主要な材料であるオキサロ酢酸が減少してしまいます。
従ってアルコールの代謝でNADが消費され過ぎることは、材料面でもシステム面でも糖新生を回りにくくさせてしまうのです。これがアルコールを飲むと糖新生がブロックされると言われる所以です。
加えて言いますと、糖新生がブロックされると相対的低血糖状態に陥るため、先ほどまで抑制されていた脂肪酸のβ酸化も低血糖に伴うインスリン分泌低下及び先日熟考したグルカゴンなどの抗ストレスホルモン分泌が刺激され、今度は脂肪酸のβ酸化が亢進される事となりケトン体が産生され続ける事になります。
最終的にはインスリンの相対的欠乏によってケトン体をエネルギー源として利用しきれずにケトアシドーシスの病態も重なってきてしまいます。これがアルコール性ケトアシドーシスです。
ごちゃごちゃと難しいことを述べ続けてしまいましたがまとめます。
つまりアルコール代謝がうまく進まないことや飲酒量が多すぎて補酵素NADが消費され過ぎることは、
エネルギーを生み出すTCA回路や脂肪酸のβ酸化、そして生命維持のための糖を生み出す糖新生のシステムを、「材料面(酢酸不足)」と「触媒面(補酵素NAD不足)」の両面から鈍らせてしまうということになります。
さて、ここからが本題です。これらの現象と糖質制限との関係性について踏み込んでみます。
糖質摂取した場合と糖質制限した場合とで生み出されるNADの量が、
「糖質摂取>糖質制限」であれば糖質制限によりアルコールに弱くなる
「糖質摂取<糖質制限」であれば糖質制限によりアルコールに強くなる
ということが考え得るのではないかと思うのです。
実は補酵素NADを生み出す流れはいくつかあります。
NADは糖質制限界隈で知る人ぞ知るナイアシンというビタミンの一種から作られますが、
そのナイアシンは肝臓でトリプトファンを材料にして合成することができます。あるいは腸内細菌もトリプトファンを材料にしてナイアシンを作ることができます。
まず糖質制限をすれば高タンパク質になりますので、NADの材料は増え、NADを作りやすいという状況になると思います。
それから糖質制限をすれば糖質摂取時よりも糖新生を駆動させる時間が長くなります。実は糖新生が回ることによってもNADは産生されます。
あとはNADになる一歩手前の「ニコチンアミドヌクレオチド」という物質にエネルギー源のATPが組み合わさることによっても、NADは作られます。
ニコチンアミドヌクレオチド + ATP → NAD+ + ピロリン酸 (PPi)
糖を解糖系からTCA回路に入って得られるATPよりも、脂肪酸をβ酸化してTCA回路に入れて得られるATPとでは後者の方が圧倒的に多いですので、そういう意味でも糖質制限をしている方がNADを手に入れやすいはずです。
そうすると普通に考えれば、「糖質制限をした方がお酒に強くなるはず」と言えそうなものですが、現実にはその逆のパターンの人もいるわけです。一体どういうわけなのでしょうか。
すると以前考察したやせ型体質の人は糖新生を行いにくいという説が思い出されます。
よく過度な運動で乳酸が溜まるといいますが、乳酸は筋肉という場で解糖系という糖利用システムを通じて産生されているのです。
筋肉量が少ないやせ型体質の人はその乳酸をつくる場が少ないということで、糖新生の材料となる乳酸が少なくなるが故に糖新生を行いにくいのではないかと考察しました。
糖新生が行いにくければ、NADを得ることもなかなかできません。
しかもやせ型なので脂肪の蓄積も少ない方々です。低血糖状態に陥れば有効活用されるはずの脂質代謝システムもあまりゆとりがない状況です。
それでもストレスがなければ脂質代謝を使えるはずだと思いますが、何らかの理由でストレスがかかり続けていると、
抗ストレスホルモンの持続分泌が引き起こされ、糖代謝が持続的に駆動され続けるために少なくともそこに存在する脂肪でさえうまく使えない状況となってしまう可能性があります。
そんな状況の方は糖質制限をするよりも、糖質を摂取して使い慣れた解糖系を利用する方がエネルギーを効率的に生み出すことができるのかもしれません。
他に糖質摂取してNADが得られるであろう経路は、LDHでピルビン酸を乳酸へ変換する時か、
もしくは先ほどチラッと紹介した「リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル」や、それと似たような「グリセロールリン酸シャトル」というシステムを使ってNADを産生するか、くらいしか思いつきませんでした。この辺りの詳しい解説はややこしいので今回は割愛します。
でも結果的に糖質摂取の方がお酒に強い状態が作れているのだから、これらのNAD産生が、だぶついた脂質代謝や糖新生システムによるNAD産生より上回ったという可能性はあるのではないかと思っています。
もう一つ、LDHが低い人も糖新生がしにくい可能性がありますので、
筋肉があっても糖質制限でお酒に酔いやすくなるという人はLDHが低いという可能性も考えられるかもしれません。
我こそは「糖質制限でお酒が弱くなる」という方がいらっしゃったら、是非ともLDHの値を御教示頂けないかと思います。
ちなみにLDHは一般の健診では測られないかもしれませんが、熱が出て病院を受診して採血をするなどの場面では患者側から要望しなくても結構ルーチンで測られることの多い項目です。
以上が今回の私の仮説ですが、一つ問題があると思うことは、
そう考えると「糖質制限でお酒に弱くなる人=糖質制限で体調が悪くなる人」ということになってしまいます。
しかし「糖質制限でお酒に弱くなる人」の話を調べておりますと、必ずしも糖質制限での体調不良はなく、むしろ体調はよくなるんだけれど、お酒だけは弱くなるという方も少なからずいらっしゃるようです。
これについてはエタノールの代謝でNADが大量に奪われる時だけの特殊状況で、普段の糖質制限実践時には糖新生が苦手だと言っても特には問題のないNADが産生されているということなのかもしれませんし、
糖新生が苦手な体質+慢性持続性ストレスの存在が糖質制限不適応状態を作っているのかもしれません。
いずれにしても、もう少し考えを深めて理論的に補強していく余地のある話題だとは思います。
読者の皆様からの御意見・御感想・御指摘等、心よりお待ちしております。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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糖質制限開始以前は飲酒しない生活を数年送っていた為、糖質制限以降アルコールに弱くなったかどうかはっきりしません。
ただ、「人と楽しく飲酒」時は、多量でも二日酔いせず、それ以外はたとえ少量でも二日酔いの経験がたびたびあります。
アルコールとの関係から少し外れるかもしれませんが、
>抗ストレスホルモンの持続分泌が引き起こされ、糖代謝が持続的に駆動され続けるために少なくともそこに存在する脂肪でさえうまく使えない状況となってしまう可能性があります。
この御指摘は、最近大いに心当たりがあります。夏井先生のサイトで、たがしゅう先生が提示されていた、根本的には運動による筋肉量増量策が印象的でした。アルコール対策に止まらず、やせ型の人には、「ストレス溜めず楽しく運動と糖質制限」だと改めて感じた次第です。
私の場合、弱くなる
夏井先生のHPでも様々に考察されていますね。
私の場合は、たぶん「アルコールに弱くなっている」です。
体調はばっちりです。
妊娠と授乳中は、アルコールを我慢していたのですが、いざ、解禁!となって大好きだった日本酒を飲み始めたら、まるで別人のように二日酔いに見舞われました。
(それは糖質制限とは全く無縁の時期です。)
妊娠前ほどには、強くないけど、ジョッキ2杯までは大丈夫まで回復(?)したころ、糖質制限と出会い、7年目の現在。
350mlのビール1缶でも、頭痛を感じることがあります(疲れているときに特に)。
年のせい疲労のせい、と自分では思っていました。
どうしてもたくさん飲みたい!というとき(飲み会など)事前にウコンのドリンク、五苓散を内服など。
飲酒後は、水かお茶を1L以上、摂取。
これは、夜何度もトイレに起きるので寝不足になるという欠点もありますが、こちらの方が、二日酔いは予防できています。
これで、だめなら、ロキソニン内服で頭痛は治るので、ま、いいかと思って生活していました。
皆さんと違って、全くロジカルではありませんね・・・お恥ずかしい・・・
今度LDH測ってみますわ。
(ちなみに、過去は体育会系、筋肉ムキムキ女子でした。今は運動なしです)
何を肴にお酒を飲むか
「栄養学の基本がわかる事典」という本にアルコールとナイアシンの記述がありました。
「ナイアシンには飲酒によって発生するアセトアルデヒドを分解する働きがありますが、アルコールの大量摂取によって肝機能が低下してくると、トリプトファンからナイアシンへの転換率が著しく低下し不足することが知られています。この場合は食品からニコチン酸やニコチンアミドなどのナイアシンをしっかりと摂取することが大切です。」
ナイアシン不足がアルコールに弱くなる原因とするなら、何を肴にお酒を飲むかが重要になって来ると思います。
肉、魚にはナイアシンが多く含まれています。ピーナッツにもナイアシンは多く含まれています。
ところが、糖質制限をしている人が、よく食べる鶏卵やチーズにはナイアシンが微量しか含まれていません。また、野菜からのナイアシン摂取も、ほとんど期待できません。
焼肉や焼き鳥を食べながら、お酒を飲む場合は、ナイアシン不足にはなりにくいと思います。
バーでピーナッツをアテにお酒を飲んでいる場合も、それなりにナイアシンを摂取できそうです。
でも、ワインとカマンベールチーズの組み合わせだとナイアシンが不足しますし、出汁巻と一緒にお酒を飲む場合も不足します。
居酒屋で、シーザーサラダやゴーヤチャンプルーと一緒にハイボールを飲む場合もナイアシンが不足するでしょう。
糖質制限で、アルコールに強くなったと感じている方は肉や魚と一緒にお酒を飲んでいるのかもしれません。
一方、糖質制限で、アルコールに弱くなったと感じている方は、チーズ、卵料理、野菜と一緒にお酒を飲んでいるのかもしれません。
糖質制限中のお酒の肴が何かも気になるところです。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
> 「人と楽しく飲酒」時は、多量でも二日酔いせず、それ以外はたとえ少量でも二日酔いの経験がたびたびあります。
それもまた興味深い御経験ですね。
心の在り方がポジティブになると、アルコールの代謝、もしくはエネルギー産生システムに好影響をもたらすということなのでしょうか。私達が考えているよりずっと人体は奥深いのかもしれません。
> アルコール対策に止まらず、やせ型の人には、「ストレス溜めず楽しく運動と糖質制限」だと改めて感じた次第です。
そうですね。
私も運動の部分は重要だと感じながらも、なかなか普段の生活スタイルに説得力を持たせることができておりません。
10月よりライフスタイルが変わるので、運動の在り方について私自身も見直していこうと考えております。
Re: 私の場合、弱くなる
コメント頂き有難うございます。
糖質制限後、お酒に弱くなったという方の多さに正直驚いております。
先生もそうであられたのですね。
しかしそうなると糖新生が苦手だと仮定しても糖質制限単独だと何もトラブルは生まないけれど、そこにアルコールも加わってくると代謝の異常が出やすくなってくるということになるでしょうか。でも糖質制限しても、アルコール飲んでも大丈夫なやせ型体質の方もいらっしゃいます。…だんだんわからなくなってきました。
NADはあくまでも一つの要素であって、実際には他の要因も複雑に関わり合ってくると、現時点では考えるに留めておくのがよいかもしれませんね。
Re: 何を肴にお酒を飲むか
コメント頂き有難うございます。
> ナイアシン不足がアルコールに弱くなる原因とするなら、何を肴にお酒を飲むかが重要になって来ると思います。
> 糖質制限で、アルコールに強くなったと感じている方は肉や魚と一緒にお酒を飲んでいるのかもしれません。
> 一方、糖質制限で、アルコールに弱くなったと感じている方は、チーズ、卵料理、野菜と一緒にお酒を飲んでいるのかもしれません。
なるほど、そういうこともあるかもしれませんね。御指摘頂き有難うございます。
この辺りも事実重視型思考の私としましては、皆さんからの実体験を集めて集合知を作っていきたい所です。
我こそはという皆様の意見をどしどし募集したいと思います。
糖質軽減でアルコールに弱くなった
まず、私のアルコールの関しての問診(自問自答)ですが、
・私は、2型糖尿病です。
・ビール(今は糖質ゼロ)1~2缶程度をほぼ毎日飲みます。時々、もう少し飲みます。休肝日はありませんがγ-GTP:16、AST22、ALT19です。
・糖質制限以前より二日酔い(主に頭痛)にはなりやすい体質です。
・周りやバーテンダー等お酒のプロの方からも、酒には強い方だと言われています(たぶん酔っぱらったのを見たことがないので)。
・アルコールを摂取しても酔っぱらって気持ちよくなることはありませんし、その感覚は分かりません。
・酔っぱらうために飲むのではなく、単においしいから飲んでます。
・酔っぱらうほど飲めば、先に気持ち悪くなり、二日酔いになります。
・アルコールの代謝はかなり遅いと思います。自分の限度を超えて飲んだ時でも、どこかで飲んでいても、その場では何ともなく、家に帰ってから気持ち悪くなったりすることはあります。
・糖質制限(40g/日)以降、今までと同じ量で二日酔いになることが多くなりました。
・糖質制限以来、ほとんどならなくなりましたが、もともと、片頭痛があります。アルコールで頭痛になりやすいのはこのためではないかと思っています。
・糖質制限以前は、冬でも夜中に着替えるほどの寝汗をかいたりすることが時々あり、もしかしたら低血糖症状だった可能性もあります。
・血中ケトン体(βヒドロキシ酪酸)濃度(穿刺にて簡易測定)は0.3~1.5mmol/L程度です。0.3以下になったことはなく、最高では5.0オーバーです。脂質代謝になっていると思われます。
・身長162cm 体重63→56kgです。現在は56kgを維持しており、大きな変化はありません。ほぼ、標準体重であり、やせ型ではないと思います。
もし、低血糖の理由が糖新生がうまくできない(糖質制限が合わない)のであれば、アルコール摂取以前に糖質制限そのもので問題が発生していると思いますが、非常に体調は良くなっています。
摂取糖質量と血糖値は毎食、記録していますが、朝が最も上昇しやすく、夜はほとんど上昇しません。朝食と夕食はどちらも糖質10g程度で同じです。
夕食後はベースから一度も上がらずに下がるだけのことも時々あります。これはアルコールのためではないかと想像しています。毎日飲むので、飲まないとどうなるかは記録がありません。
以上のように糖質制限には特に問題はなく、糖質制限でアルコールに弱くなる(二日酔いになりやすくなる)事と糖新生とは関係ないように感じています。
因みに、7月以降の血糖値上昇と糖質摂取量の平均は
朝食時 2.16mg/dL/g 10.5g
昼食時 1.43mg/dL/g 23.5g
夕食時 0.99mg/dL/g 10.3g
蛋白質と脂質は
110g/日、149g/日
です。
Tさんへ
「人と楽しく飲酒」時は、多量でも二日酔いせず、
その通りだと思います。
私は、会話が弾むとき(多いとき)は多く飲んでも悪酔いしません。これは私も何度も経験しています。
改めて考えてみましたが、会話がは生むという事は、その分、飲むスピードが遅くなっているのではと思います。時間をかけてゆっくり飲めば、気持ちよく飲める量も多くなるのではないかと思われますが、Tさんの経験上、いかがでしょうか。
Re: 糖質軽減でアルコールに弱くなった
コメント頂き有難うございます。
皆様の御意見を総合しておりますと、
「糖質制限だけだと好調だけれど、お酒を飲むと弱くなる」というタイプの人が私が思っていた以上にたくさんいるという事がわかってきました。
そしてそういう方はやせ型というよりは標準体型の場合が多いということです。
勿論体型だけが全てではないでしょうけれど、標準体型の人は糖質制限状態で得られるNADがアルコール代謝をスムーズに処理できる程のゆとりが少ないという事も考えられるので、それほど太っていない標準体型(価値観は人それぞれですが)で糖質制限に取り組む人に対する一定の注意喚起にはなるのではないかと思います。
もし機会があれば血液検査でLDHの値も確認してみて頂ければと思います。一般的な基準値は120~240IU/Lあたりですが、180より低ければ低めで糖新生能が低めである可能性があると考えています。
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