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南鹿児島さくら病院の皆様へ

category - ふと思った事
2019/ 07/ 31
                 
本日で2年余りお世話になった南鹿児島さくら病院での勤務は終了となります。

今回は極めて個人的な内容になり恐縮ではございますが、

直接関係のない読者の方々にも役に立つことがあるかもしれませんので、

この場を借りて、この病院で働いて感じた率直な気持ちと職員の皆様への感謝の気持ちを書き記しておこうと思います。
            

まずは、私のような変わった医者を長い間受け入れてもらった病院の皆様に深く感謝申し上げたいと思います。

おかげさまで今までの医師人生ではできなかった様々な試みに挑戦させて頂くことができたと思っています。

中でも最たるものは「糖質制限教育入院」だったと思います。

まずは糖質制限の理解に始まり、そのようなシステムが全くなかったところから一から立ち上げるのは相当大変な作業でした。

しかし皆様のご協力、特に栄養士さんとソーシャルワーカーさんの御尽力のおかげで何とか形にすることができました。

おかげさまで少人数ではありますが、一部の患者さんに糖質制限を導入することができ、喜んで頂けたように思います。

ただ一方で私が感じたことは、「糖質制限教育入院システムの限界」でした。

もっと言えば「デメリット」と言っても過言ではなかったかもしれません。

入院期間中に糖質制限を実践することが出来たとしても、

どこか病院にお任せという感覚の方は、退院後に再び糖尿病が悪化するというケースはありましたし、

あるいは別のトラブルで他院を受診された際に「そのトラブルは糖質制限のせいだ」とお叱りを受けて糖質摂取に戻されてしまうというケースもありました。

私が思ったのは糖質制限教育入院には「病院に任せておけば安心」という依存心をかえって助長し、

人によってはむしろ自分で健康を管理する発想から遠ざけてしまうデメリットがあるのではないかということです。

勿論、糖質制限教育入院を契機に糖質制限を自分のものにして以後のセルフケアに活かすことができているという人も確実にいらっしゃいます。

問題は、糖質制限教育入院のシステムの有無ではなく、本人に「自分で病気をなんとかしようという主体性」があるかどうか、という所にあると私は気付いたのです。

だからこれを契機に私の発想は正しい糖質制限指導や教育を行うことではなく、いかに患者の主体性を高めていくべきか、という方向へ向かうようになりました。

これは教育入院を経験しなければわからないことでした。考える場を与えて頂いたことに改めて感謝したいと思います。


振り返れば糖質制限教育入院以外にも、様々なことをやらせて頂きました。

何度か行わせて頂いた「院内勉強会」もその一つでした。

病院からは基本的に「全体に迷惑をかけないことであれば、やりたいことは好きにやっていい」というスタンスで見守って頂いていたように思います。

当初は2週間に1回のペースで院内勉強会を開き、毎回30人以上の職員の方々に集まって頂けたように思います。

糖質制限や湿潤療法、コウノメソッド、マインドフルネス、腹臥位療法、ポリファーマシー、漢方、ホメオパシー、がんリハビリ、クレーム対処法などなど、様々なお話をさせて頂きました。

また当日夜勤明けなどの理由で参加できなかった方のためにも動画アーカイブも残させて頂いたと思います。

ただお気づきだった方もいらっしゃるかもしれませんが、ある時点を境に実は私はこの活動に対して急速に興味を失っておりました。

なぜならば、プレゼンを経て何かが変わったという感覚が私に全く感じられなかったからです。

プレゼンとは人を動かすために行うもの」だといいます。そういう意味では私のプレゼンが力量不足だったという点は否めません。

ともあれプレゼンに対する負担感のみが増えてきた私は、私の代わりにプレゼンをしてくれる人を求めて、

誰か自分の知っている知識、あるいは自分が新たに学んだ知識をプレゼンしてみないかと院内へ呼びかけたこともありましたが、

結局誰一人動くことはなかったし、そもそも私のプレゼンに対して質問をされる人もほとんどいなかったように思います。

そんなプレゼンの場が繰り返されれば、プレゼンテーターの興味は失われて然るべきだったのではないでしょうか。

やりたいことをやらせてもらえる」という環境はありがたいことだと思いますが、一方でその行動を放置や無関心で返されると、活動者のエネルギーはいつまでも続くものではありません。

もし皆さんに何かを変えようと奮闘する人間を応援する気持ちがあるのなら、「傍観ではよくない」ということはお伝えしておきたいと思います。

傍観は「プラスマイナスゼロ」ではなく、そのエネルギーを失わせる「マイナス」の方向に働かせうる、ということです。

このことは政治家への選挙、あるいは目立ったことをしていじめられるようになった子にも通ずるかもしれませんね。

本当にその人のエネルギーを奪いたい、もしくは現状が変わってほしくないことを願うのであれば、傍観でもよいかもしれませんが、

そうではなく頑張る人を応援する気持ちが少しでもあるのであれば、少しでもいいから何かしら関わってあげてほしいと思います。

せっかく頑張ろうと思った人のやる気を潰さないように皆様にほんの少しずつだけ心に留めておいてもらえればと願います。


南鹿児島さくら病院は小さな病院ではありますが、

その中には組織の構造がしっかりと根付いている病院でした。

組織には組織のルールがあり、大勢に飲まれやすい構造がありますので、

何も動かなければ、これまでと同様に組織はそれなりの方向へと進んでいきます。

そのそれなりの方向に皆が納得の上で進んでいるのであれば何も問題はないのですが、

もしもそうでなければ誰かが何かの変化を起こす必要があります。

その時に変化を起こしたいと願う人の想いが大事にされる病院であってほしいと私は願います。

変化のヒントは「for the team〜チームのために〜」です。

それぞれの専門職がそれぞれの仕事を淡々とこなすことはチーム医療ではないと私は考えています。

全ての業務がチームのために貢献できていると実感されることが大事だし、

それぞれのスタッフが組織全体の流れを知り、その中で自分はどのような役割を果たしているのかを把握すること、

そして時々部署間で交流できる風通しの良いコミュニケーションが図れることで、本当にチーム医療を行なっているという実感は持てるのではないでしょうか。

こうしたことは組織が大きければ大きいほど困難を極めますが、

南鹿児島さくら病院にはそうしたことが目指せる環境にあるのではないかと私は思います。

是非ともそうしたことが実現される良い病院であり続けてほしいと願います。

ともあれ2年余りの間、大変お世話になりました。

皆様どうかお元気で。縁があればまたどこかでお会いしましょう。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

お疲れ様でした
たがしゅうさん

鹿児島でのお仕事お疲れ様でした。
必ずしも思い通りにいかなかったご経験も含めて、これからのオンライン診療に生かして行かれることを願っております。

フロンティアとして、様々な難関が待ち受けているかも知れませんが、より良い医療を実現するために奮闘して下さい。微力ですが応援し続けますので。
Re: お疲れ様でした
あきにゃん さん

コメント頂き有難うございます。
また応援して頂き心より有り難く存じます。

そうした関わりが何かを変えようと頑張る人間の力となります。これからもそのように見守って頂ければ幸いです。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
お疲れさまでした
まずは、お疲れさまでした。そして今後のご活躍を期待しております。

唐突ですが、私は、分からないことを分からないと言ってくれる医師を信用します。それにより手遅れにならないうちに自分で何とかできることもありますし、別の方法を模索できます。分からないのにいろいろ試されて結局悪化していくのは最悪です。
分からないと言ってもらえれば、その後の選択肢を考えられます。これにも自主性が必要なのかもしれません。
Re: お疲れさまでした
西村典彦 さん

コメント頂き有難うございます。

「わからないことをわからないと言う」
本来あたりまえのことですね。それなのに何がどう間違ったのか、そのように出来ない医師は多いと思います。
糖質制限のことをさして知らないのに「糖質制限は危険」「学会が認めてないからダメ」という医師はその典型です。

私もこれから新しい開業であらゆる患者さんのニーズに応えられるよう努力しますが、わからないことはわからないと伝える誠意は常に持ち続けていたいと思います。
ご苦労様、また、新たな道を!
ご苦労様でした。究極は、自分の身体を自分で管理する主体性ですね。自分で考えることが出来る人は、救われます。オンラインも大きな武器になると思います。
Re: ご苦労様、また、新たな道を!
宗田哲男 先生

コメント頂き有難うございます。
オンライン診療へのご理解も頂き勇気付けられます。

9月29日の糖質制限医療推進協会の東京講演会でもお世話になります。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
新しい道を
たがしゅう先生、
鹿児島での2年間はとても充実されていたと想像します。
記事にあったように、「だれも反応してくれない」というような時の無力感、
私もしょっちゅうあります。
一歩先行く者のサガというか、定めというか・・
でも、今はネットの活躍する時代。
自分を見ていてくれる人は、知らないところにも結構いるかもしれません。
先生も私も、患者さんからの「治ってよかった」という言葉にやる気を継続させる力をもらって、また、何か新しいことをやらかす(!)のでしょう。
次の場面での活躍も期待しています。
旭川にも遊びに来てください!

Re: 新しい道を
たかはし 先生

 コメント頂き有難うございます。

> 「だれも反応してくれない」というような時の無力感、
> 一歩先行く者のサガというか、定めというか・・
> でも、今はネットの活躍する時代。
> 自分を見ていてくれる人は、知らないところにも結構いるかもしれません。


 嬉しいお言葉を頂き大変勇気づけられます。
 現にこの記事やSNSシェアに対してすでに様々な方々から応援のお言葉を頂き、見てくれている人達の存在を確かに実感することができています。

 自分を求めている人がいる限り、私は私のできることをやり続けて生きていきたいと思います。

 北海道、実はまだ一度も行ったことがないのです。
 是非また機会を見つけ、先生の所へも見学に行かせて頂きたく存じます。
 その際には何卒宜しくお願い申し上げます。
たがしゅう先生
私がこのブログにふらりと立ち寄り、思いがけなくむさぼるように過去記事を読み漁ったのが2年ちょっと前。その時を境に医師に対する印象が変わり、同時にたがしゅうブログの読者になりました。
難病治療に東奔西走していた当時の私。
訪ね歩いた医師たちは、血の通っていない言動を平気で患者に浴びせ、医師権威を笠に着た方々が多く、医師という存在に辟易していた時期です。
解決の糸口が見いだせず「何で病気になったんだ」とふさぎ込んでいたそんな中、たがしゅう先生の「自主性で病気を治す」という言葉が、ハッと私のモヤモヤを溶解させたのは間違いありません。
自分の身体に目を向けて体調が良くなったのは驚きでした。
世の中「スキルアップ」が誤解され、独りよがりのスキルを持ち合わせた人はたくさんいますが、「情」の希薄を感じるのは私だけでしょうか?
先生の情ある言葉は人を救います。
これからも陰ながら応援します。
Re: たがしゅう先生
だいきち さん

コメント頂き有難うございます。
またそのように大切に私の文章をお読み頂いて著者冥利に尽きます。有難うございます。

病気になると多くの人は優れた解決策を外に求めます。
しかし病気の原因と解決策はすべて自分の中にあるのだと気づいた時に、見える世界ががらっと変わる経験を私自身得ることができました。その主体性は真の意味で病から人を救うと信じてやみません。そのことをこれからも伝えていけるよう活動していきたいと思います。これからも応援してもらえると嬉しいです。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
応援してます
主人のお陰で糖質制限を取り入れている医師がさくら病院にいらっしゃる事を知りそれ以来先生にお世話になっていたのですが、残念でなりません。
先生のお考えは、すべて参考になり、病気に対する考え方や身体に対する事、食事の事、薬の事等・・・考えさせられる事が多くて本当に生き方全て良い方向に変える事ができ今現在食事と運動で頑張っています。
数値も優の方で一安心です。この調子で
生活してゆきたいと思います。
先生のお陰と感謝致しております。
これからも是非信念を貫き通して頑張って頂きたいです。
Re: 応援してます
米盛敏子 さん

コメント頂き有難うございます。
また私的な事情で病院を離れることとなり、御迷惑をおかけし申し訳ございません。

一方で主体的医療推奨の私の意向を汲んで頂いているようにお見受けされ、嬉しく思います。
私の力を必要とする時はオンライン診療という手もございますので、いつでも御検討頂ければ幸いです。
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
応援しております。
「この足は切断しか処置がないですね」と言われて途方に暮れたあの夏の終わり、神の巡り合わせとばかりに田頭先生と出会って貴重な命を繋ぐ事ができました。「人命は地球より重し」が真であるならば、先生は既に地球を救うより大きな偉業を成し遂げているのです。そう考えると、今後起こる数多の困難はポストイットを剥がすが如くクリアしていかれることでしょう。この2年間、糖質制限界隈の情報も常に収集して来ましたが、関連本に関してはもう読み切れない程の出版物の量になっていますし、糖質制限導入医院の数も格段に増えました、「正しい事は残る」のですから、この推移も当然の事です。今後の先生の活動を全面的に応援しておりますので力の限り楽しんで下さい。南鹿児島さくら病院の全ての関係者の方におかれましては患者として私と母も非常にお世話になりましたので、この場をお借りして恐縮ですが、厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。田頭先生とはオンラインで今後とも末永く宜しくお願い致しますね。
Re: 応援しております。
栗本通隆 さん

コメント頂き有難うございます。
身に余るお言葉を頂き光栄に存じます。
おそらく栗本さんが救われたと感じると同じくらい実は私自身も救われています。

理論的に正しいことでも実際の患者さんの役に立たなければ意味はありません。
その中で明らかに転帰を変えることができた患者さんとの出会いは私の自信になると同時に、時々不安になる気持ちに対して「この道でいいんだ」と背中を押してもらう私の中での大きな支えです。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
感謝しています。
二年間、本当にお世話になりました。

先生のご尽力で新しい病院も決まり、この二年間のような温室育ちではないにしろ、また頑張ろうと思えます。

先生が丁寧に紹介状を書いて下さったので問診の看護師さんも驚かれていました。
私も読みたいくらいでした(笑)

三年前の一型発覚時、ケトアシドーシスで総合病院で朦朧となりながらも自分の病気を熟知したくて、
病床でスマホ検索をして江部先生のサイトに飛んで。寝る間を惜しんで読みふけり(眠れっ)
そこから田頭先生のブログに飛んで、一型糖尿病の多様性という記事を読んで、かなり衝撃を受けました。
それから貪るように記事を沢山読みました。

そして、現実で一型だから君は何も悪くないとか、
さまざまな周囲の甘い言葉やこれからの食事療法とか、
厳しい症例とかを全て咀嚼、反芻するうちに私のことは私が決めると強く思いました。

解らないことは調べたり、尋ねたりして、勿論、医師に提示して頂いても、私のことは私が決めるんだと。

そんな私に救いのような先生でした。

主体性のある患者の苦悩の時代であろうが、時に大胆に、たまに慎ましやかを演出しつつ、
明るく楽しく、めんどくさい患者になろうかと思います。

本当にありがとうございました。
Re: 感謝しています。
kazukou1508 さん

コメント頂き有難うございます。
また2年間、診察を通じて交流させて頂き有難うございました。

返す返すも御縁があったと感じます。
私の主張を理解してくれた上で、kazukou1508 さんは自分はどうしたいかという考えを、私の意見に引っ張られ過ぎることもなく、御自身でしっかりと考えられていたようにお見受けしました。まさに主体的医療実践の先駆けだと思います。

私は全くそうは思いませんが、従来医療の多くはkazukou1508さんのように考える患者さんを面倒くさいと思ってしまうかもしれません。その点でご迷惑をおかけし大変申し訳なかったと思いますが、負けずに信念を貫いて頂きたいと願います。

もし私のサポートが必要な場合はいつでもオンライン診療を御利用頂ければと思います。健康をお祈り申し上げます。