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「発がん性物質」熟考

category - 素朴な疑問
2019/ 07/ 13
                 
がん発生の要因に糖質過剰が深く関わっていることに疑いはないのですが、

一方でそれだけでは全てを説明しきれないと私が考える一つの根拠となっていたのは「発がん性物質」と呼ばれるものの存在でした。

例えば実験動物などに強力な発がん性物質を与えれば、糖質とか関係なしにがん細胞を人為的に作り出すことができるという事実があります。

ということは、いくら糖質制限を行った所で、それとは関係ないところでがん化を促進させる全く別のメカニズムが存在するということになります。

そもそも「発がん性物質」とは何なのでしょうか。

そんなことを考えていた時、Medical Tribuneという医療情報サイトで次のような記事を見かけました。
            

"ほぼクロ"の発がん性物質のはずが・・・
アクリルアミドに食道、胃、大腸がんとの関連認められず
2019年07月09日 05:05

(以下、記事を一部引用)

 日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸を目的に、国立がん研究センターなどの研究グループが実施している多目的コホート研究JPHC Studyから、新たな研究結果が報告された。

40~69歳の男女約8万8千人を長期に追跡。その結果、ヒトへの発がん性が強く疑われるアクリルアミドの摂取量とその後の食道がん、胃がん、大腸がん罹患に関連は認められなかったと、Cancer Epidemiol Biomarkers Prev(2019年6月11日オンライン版)に発表した。

(中略)

研究グループは「日本人のアクリルアミド摂取量は、欧米人に比べて少ないことが報告されている。今回の結果から、相対的にアクリルアミド摂取量が少ない日本人では、食道がん、胃がん、大腸がん罹患との関連がないことが示された」とコメント。

 その一方で、研究グループは、今回の結果を解釈する上で考慮が必要な点として、①アクリルアミド摂取量は簡易アンケートから推定されたもので、妥当性は確認されているものの実際の摂取量を反映しておらず、がんとの関連がマスクされた可能性がある②食道がんの罹患数が少なかったため、統計学的検出力が十分でなかった可能性がある―の2点を挙げ、さらなる研究が必要との考えを示している。

(記事引用、ここまで)



一言で言えば、「発がん性物質の摂取と発がん率に有意な相関はなかった」という話なわけですが、

記事中にも書かれているように、アンケートからの発がん性物質の摂取量は実際の摂取量と食い違う恐れがあるということ、

また症例数が足らずに統計学的検出力が不十分であった可能性もあるので、この結果をそのまま鵜呑みにすることはできません。

それならばそもそも発表しない方がよいデータなのではないかという気もしてしまう所ですが、一つ今回の件で言えそうなのは、

発がん性物質のがん化への影響度はそこまでインパクトの強いものではないのではないかということです。

そもそも強固な関連性が存在するのであれば、基本的に肯定論文と否定論文が混在する状況は不自然です。

どの研究でも軒並み関連性が指摘されないと、その関連性自体を疑う必要性も出てきます。

これに関してはコレステロール低下薬のスタチンに関する論文が動脈硬化を悪化させるという論文と関係ないとする論文が両方ともそれなりの数存在している状況にも同じことが言えます。

とはいえ、実験動物に投与したらほぼ確実にがん化を再現することのできる「発がん性物質」、論文の結論が一定していないからというだけの理由で無視することもできません。

最初の「そもそも発がん性物質とは何なのか」という疑問に立ち返ってみたいと思います。

一般的に発がん性物質は遺伝子変異を起こすことによって細胞をがん化させるということが言われています。

一方で肝炎ウイルスやヒトパピローマウイルスのように遺伝子変異が関係なく、慢性炎症が引き起こされることによってがん化へとつながるものもあります。

両者は一見全くの別物のように見えますが。「身体にとって排除すべき異物」と見れば共通するところがあるようにも思えます。

もしかしたら発がん性物質の本質は、「細胞にストレスを与える異物」なのではないでしょうか。

身体に組み込まれる余地のない異物に対し、人体はある時は遺伝子を変化させ、ある時は炎症反応を惹起させて対応していると、

その結果、直接細胞ががん化させられたり、慢性炎症により慢性持続性ストレスが加えられ、持続性高血糖状態へとつながり間接的にがん化させられたりしているのではないかという気がするのです。

ではなぜかたや直接遺伝子を損傷し、かたや間接的に慢性炎症を起こすという形でがん化を促進する、という風に違いが現れるのでしょうか。

それはその異物が人体の構造を模しているか否かという所の差ではないかと思います。

完全なる異物はエピジェネティックな変化で異物刺激に適応しようとしますが、

ウイルスは実は人体の細胞構造と類似する部分があり、実はウイルスは細菌のような生物ではなく、実は細胞複製時の失敗作、つまりもともとは人体細胞でコピー細胞の出来損ないだという説があります。

だから完全なる異物として認識しきれず、一部細胞のシステムを利用して増殖しますし、

それでもやはり完全に一致しているわけではないから異物排除反応としての炎症も中途半端に惹起し続けてしまうのではないかという理屈です。

そもそも人体をがんにするためだけに存在する「発がん性物質」など本当にあるのでしょうか。

単に完全異物ということによってかかる人体細胞への刺激ががん化という形で反映されているだけで、本質的には適応反応だとは考えられないでしょうか。

心身へのいわゆるストレスをマクロなストレスとするならば、異物による細胞へのストレスはミクロなストレス、といったところでしょうか。

そう考えれば糖質制限で対処できないがん化への対処行動としてはストレスマネジメントが重要だということになります。

ストレスマネジメントがうまくできて自律神経系・免疫系・内分泌系がうまくクロストークして機能することができていれば、

同じ「発がん性物質」を取り込んでも、がん化する人としない人の差が生まれてもおかしくないような気がします。

冒頭の論文の結果はそういった背景もあって、もたらされた結果であるのではないかという気がします。

あくまでも私の中での仮説に過ぎませんが、読者の皆様はどのように感じられますでしょうか。


たがしゅう
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コメント

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「発がん性物質」熟考
私も先生のおっしゃる糖質制限とストレスマネジメントが再重要と考えます。個人的には発がん物質を気にしませんし、ピロリ菌除去やhpvワクチンもがん予防の意味ではメリットとリスクのトレードオフ、確率論的にも疑問です。現代はデータ上でも1億種類以上の化学物質が存在し、さらに毎年1000万種類の化学物質が登場する状況で、例えばアスベストのような発ガン物質が現実的にどれ位あるかは把握不可能ですし、どちらにせよ人は毎日5000個?の細胞がガン化しているとも言われてます。だとすれば、いくつかの発がん物質を気にするより、発ガンを前提にしてガンに毎日5000戦全勝できる免疫力を維持する方が効率的と考えます。アメリカでは2011年にトップレベルの癌センターの所長である Craig B. Thompson博士が「脂肪食がガンのリスクを高めることは無く、ガンのリスクを劇的に高めるのは炭水化物食である」と講義した画像がyoutubeにまだ残ってますが、日本の糖尿病学界や癌センター長が炭水化物による成人病リスクに言及すればコストもかからないし、発がん物質規制、検診、ワクチン接種にコストをかける何倍も効果があるのではないでしょうか。
Re: 「発がん性物質」熟考
駐在君 さん

コメント頂き有難うございます。

おっしゃる通り、発がん性物質というのなら世の中にある物質には多かれ少なかれ発がん性の側面があるように思います。
その全てを除去するなんて不可能ですし、除去できたとしても既知の発がん性物質のみの話で、未知の発がん性物質まで除去しきれません。

こういう行き詰まりを感じた時に「そもそも発がん性物質って何なんだ」という哲学的アプローチは役に立ちます。悪いものと思い込んでいた自分の先入観に気づき、今まで見えなかった相手の良い部分が実はあることが理解できた時、一気に新しい世界が拓けることってあるように思います。