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やさしい医者がよいとは限らない

category - 主体的医療
2019/ 07/ 03
                 
たまたま受診した病院で、担当のお医者さんがやさしい人だと患者としては安心するかもしれません。

勿論、やさしくないよりもやさしい方がよいというのは、確かにそうかもしれませんが、

そのやさしさには大きな落とし穴があるということを今日は語ってみたいと思います。

なぜやさしい医師がよいとは限らないか、ということをお話する前に、

皆さんは病院を受診した際に、何をどうしてほしいという希望は持っておられるでしょうか。
            

勿論、「病気を治してほしい」という気持ちはお持ちだと思います。しかし私が尋ねたいのはそのもう少し奥です。

「病気を治すために自分がどうしてほしいか」という希望、は持っておられますでしょうか?

それを決めるのは先生の仕事でしょ?と思っておられる方は、おそらく受動的医療の概念にどっぷりと漬かっていると思いますし、

そういう人こそがやさしいお医者さんと出会ってハマる落とし穴のリスクが非常に高い人達だと言えるのです。

なぜならばやさしいお医者さんにやさしく諭されて、やさしく治療方針を提案されたら、

それを疑ったり、それに反対の意見を述べたりするのは至難の業だからです。騙されやすい人にも通じる話だと思います。

話は少しずれますが、昨今の詐欺集団はいかにも怪しそうな格好で詐欺を働くというようなことはまずなく、

普通の顔をして、普通に近づいて、普通に納得しそうな話を持ちかけて、普通に騙されるといいます。

その時に被害者の方がそろって口にする言葉は「まさかそんな人だとは思わなかった」。

医者は詐欺を働いているわけではありませんが、そこに悪意があるかは実はたいした問題ではありません。自分にこうしたいという希望や意志がなければ、やさしさの裏を疑うことができないという事が私は言いたいわけです。

例えば、精神医療の問題を考えてみます。精神的な問題を抱えた時に、一般の人がまず最初に相談するであろう心療内科や精神科のお医者さんの中には様々な人達がいますが、

その中にはやさしくて人当たりがよくて、相手の話を非常に親身になって聞いてくれる方も確実にいらっしゃいます。

それもそのはず、精神科医が得意とする精神療法の中にはそのように傾聴を中心においたり、相手の価値観を否定しないようにしたりする心理テクニックが多数あり、他の医師よりもそうした知識に精通している人が多いからです。

ところがそうした心療内科医や精神科医の人達が確実にいるにも関わらず、現状我が国で精神医療にまつわって非常に多くはびこっているのは向精神薬の多剤内服問題です。

なぜそういうことになるのかと言いますと、科学的根拠のある医療(Evidence Based Medicine)の名の下に、向精神薬による治療が最もエビデンスがあると考えられているからです。

エビデンスというものは怪しいという話は過去にもしていますが、その真偽はともかく、現実に起こっている現象は向精神薬の多剤内服状態とそこから抜けられない患者さん達が非常に多いということです。

その現状があるにも関わらず、一般的な心療内科医や精神科医は向精神薬による治療が精神医療で最も優先すべき治療法で、認知行動療法などの精神療法はそれに続くオプション的な役割だと捉えていると思います。なぜならばそこにエビデンスがあるから、です。

やさしい医者はそのことをやさしく諭してきます。そこに悪気は一切ありません。本気でそれが正しいと信じて患者さんにやさしく語り掛けています。

私に言わせれば、そのエビデンスは怪しいし、現実に起こっている事実を真摯に見つめれば、エビデンスがあろうとなかろうと向精神薬の慢性的過剰投薬は断じて避けるべきという結論に落ち着きます。その理由も語り出すと長くなるのでここでは一旦置いておきましょう。

もし私の主張が正しいのだとすれば、一般的な心療内科医や精神科医は、きつい表現かもしれませんが「意図せずに詐欺を働いている」のと同じ状況ではないかと思います。

もしも皆さんが「病気を治すために自分がどうしてほしいか」という考えを持っていなければ、そのやさしさの言われるがままになることは間違いないでしょう。「この先生の言っていることは信用できる」と。

しかしもし皆さんが何らかの学びを経て、「向精神薬をできるだけ使わずに治したい」という希望や意志を持っているのだとすれば、

そのやさしさに立ち向かうことができるのではないでしょうか。

「糖質制限をしたい」という希望があれば、「カロリー制限をした方がいいですよ」と言ってくる医師のやさしさを疑うことができるのではないでしょうか。

仮に違法に高額な宝石を売りつけられる時にも、宝石の相場を知っていて「○○万円くらいの値段で買いたい」という希望が自分の中にあれば、やさしく購入するように言われたとしても、値引き交渉したり買う事自体を取りやめたりといった行動を起こすことができるのではないでしょうか。


やさしい医師がよいとは限りません。

むしろやさしく地獄への道へ案内されることだってあるかもしれないのです。

その時にやさしさに騙されずに自分の道を進むためには、自分がどうしたいかという希望、すなわち「主体性」を持っていることが不可欠です。

そして相手の医師に求められるものはやさしさだけではなく、その自分の希望について真剣に対話してくれるかどうかという器量が重要だと私は思います。

その器量さえあれば、たとえやさしくなかったとしても、時には強い言い方であったとしても、自分の意見の誤りを指摘してくれる厳しさがあるのでれば、

私はその医師こそ大事にすべき相手だと思います。

これこそが主体的医療の実践のためにあるべき患者医師との関係性だと私は思います。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

薬を足し算する医者
こんにちは、(たぶん)初めての投稿です。
私は薬を足し算する医者を信用しません。
あの症状にはこの薬、この症状にはあの薬、副作用を抑えるためにもう一つ二つ、念のため頓服も処方しておきましょう。どんどん足し算されて一体何が効いてるのかさっぱり分かりません。およそ薬は体に悪いものなので少なければそれにこした事はないのです。ピンポイントで自信を持ってそれを処方してくれる医者は良い医者だと思っています。特に副作用が出た時は引き算で考えるべきだと思っています。
言い過ぎかもしれませんが、向精神薬のエビデンスほど当てにならないものを見たことがないです。ほとんどプラセボと同程度の効果です。あんないい加減なので認可されるのが不思議なくらいです。ちょっと大袈裟かもしれませんが、およそそんな所だと思っています。

自分で医者も薬も選んで治療方針も決めて、その上でプロである医者にアドバイスをもらうために病院に行くのだと思っています。今はネット社会でちょっと調べれば大概のことは分かりますし、最新の情報も得られます。不勉強な医者の言う事に反論するくらいの知識は直ぐに得られます。私は糖尿病患者ですが、治療方針、薬、検査値の判断に至るまで自分なりの解釈でコントロール良好、先月からは薬は要らなくなり、血液検査も全て正常値になりました。医者に言われるままの治療をしていたらと思うとゾッとします。ちょっと言い過ぎましたか、失礼します。
Re: 薬を足し算する医者
西村 典彦 さん

コメント頂き有難うございます。

足し算ばかりする医者も医者ですが、とにかく症状を訴え続ける患者も患者だと思っています。そんな風に症状を訴え続けられたら多くの医者は薬を出す術しかありませんし、良心的に食事療法のことを伝えようものなら「自分は野菜中心のヘルシーな食事を十分にやっている。そんなことより薬を出してくれ」と言わんばかりの反応を受け、努力も無駄に終わります。

だから手取り早く薬を出すやり方に終始してしまうのでしょう。向精神薬の多剤内服問題の陰にはそうした事情もあると思っています。

> 治療方針、薬、検査値の判断に至るまで自分なりの解釈でコントロール良好、先月からは薬は要らなくなり、血液検査も全て正常値になりました。

まさに私の考える主体的医療を実践なさっているものと思います。
要するに医者側も患者側も同時に改革する必要がある、ということだと私は思っています、
No title
たがしゅう先生のご意見はよく理解できます。
ある大学病院の先生が、パーキンソン病に7種類もの薬を併用している症例に、
新薬を追加トッピングしたら良くなった?という症例を大勢の神経内科医の前で堂々と発表されておられました。
エビデンスという観点から言っても、パーキンソン治療薬はおそらく2~3種類までの有効性・安全性しか証明されていないはずで、多剤併用、ポリファーマシーというのは実はアンチ・エビデンス治療なわけです。7種類薬をすでに服用している人に8種類目を追加してよくなったという事実を科学的に信用できるでしょうか?効いた?と言ってもプラシーボ効果を否定できるでしょうか?
これが神経内科の医療の惨憺たる現実。
精神科は抗精神病薬の併用は3種類まで
という保険医療のルールがあると思いますが、神経内科にはそういうのが全くないのです。神経系に作用する薬が10~15種類以上という非常識なパニック処方が日常茶飯事に大病院外来において普通に行われており、神経内科の専門医に
任せているんだから絶対大丈夫だと盲信しきっているのが、我が国の患者さんです。或る意味、自分の身体のことに無責任きわまりないといえるでしょう。
神経系多剤併用パニック処方は薬物中毒・薬物依存・深刻な有害事象を生むだけで安全性はまったく保証できない。
そんなことは常識であり、ここにわざわざ書かなくても、一般社会を生きている人であれば誰でもわかるはず。いやわからなければおかしいですね。
多剤併用から抜け出せないのは、その患者自身がすでに薬物依存症にされてしまって抜け出せない状態になっているのでしょう。こうなってしまうと、もはや治療などとはとても言えません。
医者も患者も感覚がマヒしてしまっているのでしょう。すごく危険ですね。












Re: No title
ある臨床医 先生

 コメント頂き有難うございます。

> 精神科は抗精神病薬の併用は3種類まで
> という保険医療のルールがあると思いますが、神経内科にはそういうのが全くない
> 神経系に作用する薬が10~15種類以上という非常識なパニック処方が日常茶飯事に大病院外来において普通に行われており、神経内科の専門医に
> 任せているんだから絶対大丈夫だと盲信しきっている


 私も神経内科医のはしくれ、それが偽らざる事実であることをよく知っています。
 権威的な医者へ依存する事で完璧を求めようとする患者、エビデンスに捉われてエビデンスのある薬を重ねる愚かさに盲目的な医者、両者の問題が密接に関わり合って起こっている惨状だと思っています。

 患者も医者も気付いた人から変わっていくのがまず大事、次に大事なのは気付いた医者と患者がうまくつながることだと思います。そのためにオンライン診療は一つの選択肢になるのではないかと私は考えています。