たがしゅうの腸内フローラ検査結果

2019/06/26 15:20:01 | 人体実験 | コメント:2件

糖質制限はいわゆるエビデンスはともかく、生理学的、生化学的、文化人類学的に考えれば理に適った食事療法で、

ほとんどの人の体調を整えるのに極めて有効な手段だと私は考えて糖質制限推進派医師の立場を取っているのですが、

そんな糖質制限推進派の立場の私でも、稀にいる糖質制限が体質的に合わないという人の原因で可能性として否定できないと考えていることの一つが腸内細菌の存在です。

腸内細菌の多様性は人それぞれに固有のものがあるらしく、そう簡単に変えられないというのが定説です。

それ故、どのような腸内細菌が備わっているかを知ることは体質を知ることにも近いわけですが、今までは腸内細菌を調べようかと思えば専門の研究期間でしか行えない状況がありました。

ところが最近その腸内細菌を、自宅で簡単に調べることができる採便キットがあるということを初めて知りました。 株式会社サイキンソーが提供している「Mykinso Pro」というキットになります。

これは提携している医療機関においてのみ受けることができる自由診療の検査です。

提携医療機関へ検査を申し込むと、まずは検査キットが手渡されます。

そのキットの手順に従って、便の一部を採取し、採取した便の入った容器を、同封の同意書や食生活や運動の様子などを聞き取るアンケートとともに専用封筒で送り返せば、

約1~2か月後に結果が出て、提携医療機関の医師から結果を説明されるという流れです。

腸内細菌(腸内フローラ)にまつわっては医療においての新分野ということもあり、様々なベンチャー企業がこの分野に乗り出していますが、

正直言ってどこまで医学的に妥当な情報を提供してくれているのか判断できないという点で、私自身は興味はありながらもこの分野にあまり踏み込めずにおりました。

しかし縁あってこのMykinso Proの存在を知る機会があったので、

ものは試しですし、糖質制限実践者の腸内細菌はどうなるのかということに関しても興味があったので、N=1ではありますが、これで自分の腸内細菌を調べてみることにしました。

検査を実施したのは2019年3月9日、私がスーパー糖質制限食ベースの食事を1日1~2食している時期のデータになります。

検査自体はとても簡単でした。また返ってきた検査結果レポートも充実の内容で、多方面から解析されており、最後に専属の栄養士からのアドバイスも書かれていました。

さて、一体どのようなことが書かれていたのでしょうか。今回はその結果を皆様とシェアしたいと思います。


まずレポートの最初には「あなたの腸内フローラ判定」と題して、全体としてどんな腸内細菌具合かというのをA判定(よい判定)~E判定(よくない判定)までの4段階評価で書かれています。

その判定はさらに細かく「多様性指標」「短鎖脂肪酸指標」「口腔常在菌指標」「腸管免疫指標」の4つのカテゴリーがあり、それぞれがA~Eの判定が下され、それらを加味した総合判定が「あなたの腸内フローラ判定」として表示されるという仕組みです。

私の「あなたの腸内フローラ判定」はB判定(やや良好)でした。

「多様性指標」:A
「短鎖脂肪酸指標」:C
「口腔常在菌指標」:A
「腸管免疫指標」:A


コメントには「多様性および酪酸酸性菌とともに平均以上の値で、バランスのとれた標準的な状態と考えられます。」とありました。

私は肉を主食的に食べている糖質制限実践者ですので、いわゆる食事のバランスという意味ではあまり良くないと思います。

肉、豆腐、レタスは良く食べるものの代表格で、たまにアーモンドやチーズ、スーパーで買った刺身や揚げ物などのお惣菜を買って食べるような生活です。

それでも腸内細菌の多様性は優秀ということのようなので、ここで「バランスの悪い食事をしていても、腸内細菌のバランスは保たれる」ということが少なくとも私個人の中では言えるように思いました。

短鎖脂肪酸と言えば、私達糖質制限実践者にとって重要なエネルギー源であるケトン体(βヒドロキシ酪酸、アセト酢酸)も実は短鎖脂肪酸の一種です。

糖質制限で腸内細菌由来ではなく、自身の細胞でケトン体を十分作り出しているが故に、短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌の必要性が少なくなり自然縮小している可能性も考えられなくはないように思います。

そう考えると、割かし私の腸内フローラは良い状態なのではないかと思いました。

他にも大腸がん患者の腸内細菌叢中に多いとされるフゾバクテリウム属という細菌の割合が10%を超えて多いかどうかで判定される大腸画像検査おすすめ度は問題ないという結果でしたし、

健康長寿菌判定という項目ではB判定(長寿菌は平均的)でした。こちらはイタリアの超長寿と腸内細菌の研究、中国のコホート研究、および国内の研究で、特にフィーカリバクテリウム属菌とビフィズス菌が長寿と関連があると報告されていることから導き出されている判定項目のようです。

で、具体的に私の腸内細菌の組成バランスはどうだったのかと言いますと、下記の通りでした。

・バクテロイデーテス門(人間の腸内で多数派を占めることが多い腸管免疫に関与する菌群)
→26.97%(平均集団40.25%)
・ファーミキューテス門(善玉菌として知られる乳酸菌や悪玉菌として知られるウェルシュ菌など多様な菌群)
→67.7%(平均集団46.44%)
・アクチノバクテリア門(善玉菌として有名なビフィズス菌が含まれる菌群)
→2.08%(平均集団5.69%)
・プロピオバクテリア門(大腸菌、ピロリ菌、カンピロバクター属などが所属する菌群)
→2.59%(平均集団6.54%)
・フソバクテリア門(大腸がん発症リスクと関連するとされる「フソバクテリウム属」が含まれる菌群)
→0.15%(平均集団0.72%)
・シネルギステス門、レンティスファエラ門、その他(保有している人は非常に少ない菌群)
→0.51%(平均集団0.36%)


さらに細かい解析では私の腸内にはビフィズス菌、乳酸産生菌が少ないようで、このことが短鎖脂肪酸指標をC判定に押し下げていることの主因であるようです。

またファーミキューテス門とバクテロイデーテス門の比からFB比(ファーミキューテス/バクテロイデーテス)を算出すると、このFB比が太りやすさを反映する数値になるそうです。これはやせ型の人でFB比が低く、肥満体型の人でFB比が高いというNatureの研究報告に由来するそうです(Ley RE et al., Nature 2006, Turnbaugh PJ et al., Nature 2006.)

私のFB比は2.51で基準値は0.55-2.1ということなので、腸内細菌の組成的に私は太りやすいパターンを示していると言えるようです。

他にも様々な情報が書かれていて興味深いわけですが、このMykinso Proのレポートでは、そんなあなたがどんな食生活の改善をしたらいいのかをおすすめしてくれます。

私への改善ポイントとしては「玄米、雑穀米等の摂取」、「淡色野菜の摂取」の2点が勧められていました。

さらに私は正直に糖質制限をやっていることをアンケートに書いたわけですが、

その内容と私の腸内フローラ結果をみて管理栄養士さんが下さったアドバイスは「朝食や昼食の欠食は腸の蠕動運動のリズムが作りにくく、便秘にもつながりやすくなるので、なるべく欠食はしないこと」ということ、

それから「普段から主食・主菜・副菜をバランスよく摂ることを意識し、いろいろな種類の食品が取り入れられるよう工夫すること」などでした。

ただこれらのアドバイスは鵜呑みにはできないなというのが正直な感想でした。

なぜならば私は便秘で悩まされたことは生涯で一度もありませんし、バランスの悪い食事でも腸内細菌のバランスはよいというデータが示されたからです。

ここにおいてはこの検査も自分の頭で考える姿勢を持って利用する必要があると感じました。

ちなみにかかる費用は自由診療故に医療機関によってかかる費用はまちまちで、平均すると1回15,000円~20,000円くらいかかります。


ところでこの検査結果を面白がった私は、一つのアイデアを思いつきました。

「1週間断食したら腸内細菌はどのように変化するのだろうか?」

実は私、2019年3月31日~4月6日の1週間の間、1週間断食を決行しております。

そして4月6日にMykinso Proキットで採便し、すでのその時のレポート結果を入手しています。

皆さん、はたしてどんな結果になっていると思われますでしょうか。

気になる結果は次回の記事で御報告させて頂きたいと思います。


たがしゅう
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コメント

No title

2019/06/26(水) 17:28:04 | URL | Etsuko #-
いつも興味深い記事をありがとうございます。

腸内細菌の記事、待っておりました。
細菌の世界は奥深いですね。

細菌判定の中で「短鎖脂肪酸指標」に、
とても興味を持ちました。

先生もご存知だと思いますが、
短鎖脂肪酸は脂肪の蓄積を防ぐ働きを持つ、
「GPR43」を活性化させるとした研究もあります。
(ケトン体も同じ働きをもつのかも知れませんが。)

腸内細菌のエサである食物繊維は、
意識して摂らないと不足しがちなので、
私は、グアーガム分解物「サンファイバー」を
食生活に取り入れています。
飲み物の味を変えないので使いやすいです。

グアーガム分解物を選んだのは、
短鎖脂肪酸産生菌の好む水溶性食物繊維だからです。

腸内細菌検査をしたことないので、
短鎖脂肪酸産生菌の判定は分かりません。
でも腸の不調は無いです。

>糖質制限で腸内細菌由来ではなく、自身の細胞でケトン体を十分作り出しているが故に、短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌の必要性が少なくなり自然縮小している可能性も考えられなくはないように思います。

先生の言われる可能性、有りだと思いました。

しかし、糖質制限により、ケトン体を作っている状態で、
短鎖脂肪酸産生菌の好む「グアーガム分解物」を摂ると、
短鎖脂肪酸産生菌が増え、短鎖脂肪酸を作るのかどうか?
とても興味がります。

Re: No title

2019/06/27(木) 07:04:38 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
Etsuko さん

コメント頂き有難うございます。
N=1ではありますが、今後糖質制限実践者の皆さんが同様の実験をシェアしてくれたら、糖質制限による腸内細菌変化の全貌が明らかになってくるかもしれませんね。

> 糖質制限により、ケトン体を作っている状態で、
> 短鎖脂肪酸産生菌の好む「グアーガム分解物」を摂ると、
> 短鎖脂肪酸産生菌が増え、短鎖脂肪酸を作るのかどうか?


それを確認するには少なくとも、まず糖質制限状態で採便し、グアーガム分解物をしばらく摂取して採便し、さらにもう一度グアーガム分解物の摂取をやめて採便し、それぞれのデータを検証する必要があると思います。コストがかなりかかってしまうのが難点です。

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