見えても見えなくても心と体の問題をともに診る
2019/06/09 20:22:01 |
素朴な疑問 |
コメント:3件
生活習慣病の代表格である高血圧症は
原因のわからない一次性高血圧症(原発性高血圧症)が9割、原因がはっきりしている二次性高血圧症が1割だと言われています。
私は以前、一次性高血圧症がこじれた結果、二次性高血圧症となるという仮説を披露しました。
その根拠は過去記事をご覧頂くとして、この話をさらに深掘りすると、こういう構図が見えてきます。
正常→一次性高血圧症(可逆的)→二次性高血圧症(不可逆的)
あるいは可逆的は「機能的」、不可逆的は「器質的」と言い換えられると思います。 一般的に二次性高血圧症は一次性高血圧症よりも重症です。著しい血圧高値にさらされます。
その事実も上記の流れがもし正しいとすれば非常にしっくり来るのではないかと思います。
二次性高血圧症は一次性高血圧症の重症型でかつ不可逆的な変化をきたしているがために薬物治療に抵抗性を示し著しい血圧高値にさらされるという構図です。
もっと言えば、正常血圧が一次性高血圧症に発展する原因はわからないと言われていますが、
私は高インスリン血症とストレスが主因だと思います。
さらに一言でまとめれば、「強制的(無意識的)交感神経刺激」が原因だと思います。
インスリンが何度も強制分泌させられるような食事は自律神経のアクセル役である交感神経を頻回に刺激して結果的に高血圧をもたらします。
またストレスも交感神経を強制刺激するトリガーです。無意識にストレスを抱え込みそれを放置してしまっている人も結果的に高血圧となるでしょう。
だからインスリン分泌を最小限で済むようにさせる糖質制限はそのまま高血圧の治療につながるし、
糖質制限で血圧が下がらない人へはそれに加えてストレスマネジメントを行うことを私は強く勧めているわけです。
このように今、高血圧を例に挙げましたが、
食事と心の在り方の不具合に由来する見えない異常が見える異常へと発展し、ひいては不可逆的となっていく構造は他の病気にも当てはまるように思います。
例えばこんな流れも考えられます。
正常脳機能→うつ病(可逆的)→認知症(不可逆的)
うつ病と認知症との関係はこれもまた以前に私なりに考察したことがありますが、
その時にも両者の関連性は感じていましたが、上記の流れで捉えると理解がしやすいように思います。
そして糖質摂取は一時的にセロトニンをブーストするので元気になるけれども、
そのような付け焼き刃的カンフルを何度も繰り返していれば次第に元気を出すシステムが消耗疲弊し、
もはや糖質を燃料に入れても元気は出ない、即ちうつ病のような状態へと発展する流れが見えてきます。
逆に言えば糖質制限ではそんな付け焼き刃的なカンフルに頼らずに、
抑うつを防ぐとされるセロトニンをタンパク質という材料面から補充したり、
いざという時に働くストレスホルモンの筆頭であるコルチゾールを脂質という材料面から支えたり、
抑うつにならないよう土台のところで支えてくれるために糖質制限でうつ病はよくなるのだと思います。
勿論うつ病にストレスマネジメントが有効であることは言うまでもないでしょう。
しかし食事の改善もストレス対処への見直しもいずれもが見直されないまま、例えば薬物療法が延々と続けられるような治療を受けていると、
自分で治る力は徐々に衰えて、ひいては元気を出すシステムは不可逆的に機能停止してしまい、
その結果が認知症につながっているのではないかと思うのです。
実はこの流れは他の病気にも結構当てはまると思っているのですが、
まだ可逆性のある一次性高血圧症やうつ病といった病態は、
根治療法が提案されにくい、もしくは病気が見えにくいが故に精神的な問題として片付けられやすいという傾向があるように思います。
高血圧症については血圧という数値で可視化されているからまだ病気として認識されやすいですが、
これが例えば頭痛とかめまいといった客観的に評価しにくい症状として表面化しているとすればどうでしょうか。
CTとか耳鼻科の検査で異常が検出されなければ精神的なものだと判定されやすいのではないでしょうか。
検査には検出できる限界があり、実際には異常があっても見過ごされることがあるにも関わらず。
そしてもし頭痛にしてもめまいにしても食事とストレスが根本的に関わっているとすればどうでしょうか。
頭痛とめまいに食事とストレスが関わっていると私が考える根拠については長くなるのでここでは割愛しますが、
病気が検査で認識されないことによって、本当は食事とストレス、即ち身体と精神に実際的な問題があるにも関わらず、
精神的な所にしか医療者の目線が行かなくなる偏りがあるように私は感じています。
逆に言えば高血圧症のように検査で異常が可視化されることによって医療者の意識は目に見える異常を正常化させることへと向かい、
よもや高血圧症の患者にストレスマネジメントを行おうという発想が生まれない構造となってしまっているようにも思えるのです。
結局、慢性病と呼ばれる病気のほとんどには食事とストレスの問題が密接に関わっていると私は考えています。
上記の流れを踏まえると、異常が見えないうちはまだ可逆的で治せる見込みがありますが、
異常が腫瘍化など目に見える形にまで発展したら手術などの手段で強制的に機能停止させないと秩序が保てなくなってしまいますし、
萎縮という形で目に見えるようになれば、これもまた手の施しようがなくなります。
だから目に見えようが見えまいが、いやむしろ目に見えない段階でこそ積極的に、
身体面での食事療法として糖質制限、精神面での精神療法としてストレスマネジメント、
この心と体を同時に診るスタンスで治療に当たらなければ病気の根治は難しいと私は考えるわけです。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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高血圧の件で2点質問
血圧を正常値にするべく、体重方程式ダイエットによるカロリー制限と、2日に1回10kmランという有酸素運動をしています。2019年3月の健康診断時に、血圧計で5回測りました。154/96-143/89-147/89-165/91-146/92…5回の平均値は「151/91.4」となります。※5回とも安静にして慎重に測った結果です。※脈拍は52-53/分。※過去2年の血圧は一応正常値でした。2016年体重66.2kg(128/82)、2018年66.8kg(134/82)、58歳、身長173cm、体重62.1kg、体脂肪率15.5%、胴回り73cm、BMI20.9、AST(GOT)32、γ-GTP84、2019年は以前より体重が減ったにもかかわらず、血圧は基準値以上だったことになります。
Q1.病院の血圧計で測る度にこれだけ数値にバラつきが出ることから、どの数値が実態に近いのか分かりません。市販の体重計の体脂肪率のようにあまり当てにならないものなのでしょうか?また、病院の血圧計で測定した血圧は、看護師に測ってもらう値より高めになることが多いと聞きましたが本当でしょうか?
血圧が高いということで、6月から更にダイエットに励み、体重60.4kg、体脂肪率11.5%になりました。8/20に血圧を測ったところ、139/77でした。一応ギリギリセーフなのかも知れませんが、上の139は相変わらず高いですし、139-77=脈圧62は、40-60までが正常なのでやや異常です。減塩に努め、有酸素運動も継続してやっていますが、まだ十分でないのかも知れませんし、加齢による衰えも否定できません。
Q2.今後血圧を正常値に持っていくために、更に何をすればいいのか?教えて頂けると幸いです。
Re: 高血圧の件で2点質問
御質問頂き有難うございます。
> Q1.病院の血圧計 市販の体重計の体脂肪率のようにあまり当てにならないものなのでしょうか?また、病院の血圧計で測定した血圧は、看護師に測ってもらう値より高めになることが多いと聞きましたが本当でしょうか?
そもそも血圧はささいな事でも変動しうるものです。
一番有名なのは緊張による血圧の変動です。白衣高血圧とも呼ばれますが、普段の自宅でリラックスした状況で血圧を測るのと、病院のような普段とは違う余所行きの場所で血圧を測る場合は後者で血圧が高くなりがちです。
また運動の影響も受けます。例えば病院についてあまり間が空かないままに血圧計で測定すると運動負荷に応じて血圧が安静時より高くなる可能性はあります。その後しばらく時間が経って呼吸が整い、診察室に呼ばれてから看護師さんに血圧を測定してもらう頃には元の血圧に戻っているというケースも十分ありえると思います。
従って御指摘のように何度か血圧を測定すると数値が変動することはよくあることです。病院に置いてあるような血圧計であれば、機械の不具合で起こっているという可能性は低いと思います。普通に血圧が大まかにそのくらいの幅で変動していると考えてよいと思います。
ただ一般的に手首に巻くタイプの血圧計は、上腕に巻く血圧計と比べて誤差が大きくなりがちなので、手首タイプの血圧計を使っている場合は本当に機会の不具合で変動している可能性があります。
> Q2.今後血圧を正常値に持っていくために、更に何をすればいいのか?教えて頂けると幸いです。
上述のように血圧は変動しやすいし、ちょっとした要因でもすぐに変動します。
ですので「そもそも正常血圧にあまりこだわらない」というのが私の基本的な考え方です。
私がおすすめするのは、血圧の数値よりも「体調」を目安にするというものです。血圧を範囲に収めようとするのではなく、今の体調がどうかを丁寧に見つめ直すのです。
その結果、もし体調がよいのであれば、たとえ血圧が高くてもその血圧は自分にとって必要で、困難を克服するために身体が自律的に血圧を上昇して適応しようとさせてくれているのかもしれないと考えます。
ただし多くの方はその「体調」を見ることに関してぞんざいになっています。本当は肩こり、疲れやすさ、熟眠感の減少など体調の悪いサインがあるにも関わらず見過ごしてしまっている場合があるので注意が必要です。体調の悪いサインがあって血圧が高い場合は食事とストレスの2点に注目して生活改善を心がけます。具体的にどういう行動をとればいいのかは生活状況を細かく把握しないとわからないので、このブログの場では返答困難です。あくまでも参考として御利用頂ければ幸いです。
No title
体重計の体脂肪率も毎日同じ時間に測定していてもかなりバラつきが出る(2%位の誤差は当たり前のようにある)ように、血圧計も様々な要因でバラつきが出てしまうのは仕方ないことかも知れません。今まで血圧など気にしたことがなかったのですが、今年の健診で初めて高血圧だと分かって、かなり焦っています。動脈硬化とか血管が固くなっているなどと書かれてあると、何とかしなければと思ってしまいます。減塩に努め、ランニングで体脂肪率を下げていても、結果として出てくる数値が思わしくないと、何かが間違っているのか?と思ってしまいます。私の場合、どうしても数値に拘り過ぎる傾向があるようです。ご指摘のように、数値よりも「体調」を目安にするよう心掛けます。決して体調が悪い訳ではないですから。体調も悪くなり血圧数値も悪くなれば手遅れなのかも知れませんが。
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