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「糖質制限実践でやせ切らない」について 後編

category - 素朴な疑問
2019/ 06/ 02
                 
引き続き、糖質制限実践でやせ切らないという件について考えます。

まず、長期の糖質制限実践者の人達とたくさん交流していて気づくのは、

20歳の頃の体重まで戻るという現象が多く観察されるということです。

つまり20歳の時点ですでに太っていた人はそれ以上は糖質制限していてもやせませんし、

逆に20歳の時点でやせていた人も、それ以上は糖質制限していても太らないということです。
            

なぜそうなるのかまでは分かりませんが、20歳で止まると言えば、身長の伸びが止まるという現象のことが思い起こされます。

20歳もしくはそれより少し前に身長の伸びが途中で止まるのは、骨の端に位置する成長線と呼ばれる場所の骨細胞の増殖が止まり、成長線が閉鎖するためだと言われていますが、

もしかしたら脂肪細胞についても20歳前後で何らかの細胞変化の不可逆的な機転が働くのかもしれないとも考えています。

もしそれが正しければ、20歳以前の体重に戻そうというのは、「20歳以前の身長に戻したい」というのと同じくらい無理難題を言っていることになるのかもしれません。

私の20歳の頃の体重はおそらく110kgを優に超えておりましたので、私に関して言えばそれ以下にやせるのはなかなか難しいということになります。

また絶食すれば一時的に体重を落とすことは可能ですが、代謝的に適正な体重バランスのセットポイントは固定されていますので、

そのまま絶食を続けない限りはすぐに元のセットポイントまで体重は戻りますし、

さりとて絶食を続ければ今度はエネルギーが保てなくなる可能性が高くなってくるというジレンマに追い込まれるわけです。


ただセットポイントが固定される一方で、脂肪細胞に関しては、20歳以降であっても増える方にはまだ増えるという場合があります。

これにはもともと太りやすい体質に対してインスリンが作用する事が関与しています。

太りやすい体質というのは、言い換えれば、「インスリンの刺激で脂肪細胞が分化・増殖する方向へ反応しやすい体質」だとも言えます。

もともとはエネルギーの備蓄効率が優れた生存に有利な体質で喜ばしいことなのですが、

その過敏性が強いが余りにセットポイントが固定されて以降も一定のインスリンにさらされると脂肪細胞が分裂し数が増えて、

増えたそれぞれの脂肪細胞がまた新たに脂肪を蓄える余地が生まれ、さらに太るけれどもセットポイントは固定されているのでそれ以上に数は減らないというわけです。

しかも脂肪細胞の寿命は平均10年なので、一度育った脂肪細胞は細胞飢餓に陥らない限りは10年生存し続けるわけです。

加えて10年経てばリセットされてまた分裂前の脂肪細胞に戻るのかと期待していたこともありますが、

増えた状態での脂肪細胞のターンオーバーが繰り返されていれば、きっと10年以上経過しても増えたままの脂肪細胞の数は維持されていくことでしょう。

しかも私は普段から断食を頻繁に行っていて、オートファジーと呼ばれるタンパク質のリサイクルシステムを定期的に駆動させています。

それ故に7日間断食したくらいの環境変化では細胞は飢餓に陥ることなく、リサイクルシステムをフル活用して生き延びて、脂肪細胞中の脂肪量が減っても脂肪細胞の数自体は減りません。

だから断食後にどれだけ食事に気をつけていてもあっという間に元の体重に戻ってしまうのだと思います。

もっと言えば、私のような太りやすい体質だとタンパク質の過剰摂取でもそれなりのインスリンが分泌されてしまいます。

そのインスリン刺激の度に脂肪細胞が少しずつ分裂を繰り返し、数を増やしていっているのだとすれば、

糖質制限の長期実践で体重がじりじりと増え続けていくことの説明にもなるのではないかと思います。


ただ誤解をして欲しくないのは、基本的にはそうやってタンパク質過剰摂取で脂肪細胞数が増えることも環境適応の一種であって、

別に身体を苦しめようと起こっている反応ではないということです。その食事頻度でそのタンパク質摂取が行われる環境には脂肪細胞の分裂をした方が生存に有利と判断して行われていることです。

体調さえよければその脂肪細胞数増加を感謝こそせよ、憎んではならないと思います。

ただし、そこまでセットポイントが上昇してしまった背景に成人前、幼少期からの糖質頻回過剰摂取歴が影響しているので、

その体重が必ずしも理想的とまでは言えないかもしれません。

しかしながら、もし肥満状態でも体調が良好なのであれば、今の生活環境の中でベストな状態を保っている可能性は高いです。

もはや変えられない負の遺産といったところでしょうが、変えられない事実を嘆いていても仕方がありません。

大事なことは変えられない事実を受け止めて、それをどう解釈し、どう行動するかということだと私は思います。

私はいざという時に飢餓から最大限自分の身を守ってくれるこの身体に感謝をしつつ、

糖質制限実践者の中でやせ切らないという少数派の経験を持つ貴重な医師として、

世間の標準体重こそが健康だという常識やそれを強要する声に惑わされることなく、

「そのままでいいんだよ」というメッセージを胸を張って伝えていきたいと思います。


たがしゅう

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