「糖質制限実践でやせ切らない」について 前編
2019/06/01 19:20:01 |
読者の方からの御投稿 |
コメント:10件
ブログ読者の美糸 さんから次のような御質問を頂きました。
私は7年以上の糖質制限実践者で、最初の10ヶ月で30kgの減量に成功した経験を持ちますが、最近、SNSでたがしゅう先生の肥満問題がプチバズってる気がします。
たしかに人為が及んでいない野生動物に肥満はほとんどいないですから、ヒトという動物として肥満は不自然なのでしょう。
ヒトとしての社会でも肥満は健康に良くないとされますし、イメージも良いとは言い難いかなとも思います。
医者が太っていると説得力が無いという意見も多々拝見したりします。
一度、たがしゅう先生は肥満についてどのように考えているのか示していただけたらなと思います。
糖質制限しているのなら肥満は放置していても問題無いという結論に至ったのでしょうか?
30kg減量しても基準からは肥満と判定される状態で、それ以上いくら糖質制限を続けても体重の減量は起こりませんでした。
それどころかじりじりと体重が増加している経過を辿っています。それはまぎれもない事実です。
一方で全国の糖質制限実践者と交流した私の経験から言いますと、私のように糖質制限を長く続けているけれど標準体重近辺までやせきらないという人は少数派ですが他にもいらっしゃいました。
確かにこうした状態だと糖質制限ってどうなのかと疑問を持たれても仕方がないですし、医師として説得力がないと言われたらそれまでです。
ただ勘違いしてもらっては困るのは、糖質摂取していた頃はもっとひどい肥満だったし、もっと体調が悪かったのであって、
決して糖質制限で状態が悪化したわけではないということ、そして肥満がある今でも体調はすこぶるよいのです。
具体的には朝パッと目が覚めるし、集中力は高い状態をキープできるし、急なダッシュで息が切れてもすぐに整うし、風邪を引きにくいし引いたとしても軽くて済むし、肌や髪のつやはいいし、食べた後の胸焼けもないし、下着が臭くなりにくいし…
とにかく糖質頻回過剰摂取していた頃に比べると、雲泥の差で生活しやすいです。
私の背景を少しお話しますと、生まれた時からぽっちゃりで、人生の中でやせていた時代はありません。
一番やせていた時でも高校時代柔道に勤しんでいた頃の身長180cm、体重89kgが最高記録です。相当運動量の多かった時代ですが、それでもBMIは27.4とまだ肥満の範疇です。
その後大学に入ってから一人暮らしを始め、お金もなく食べ過ぎを注意する人がいなくなって歯止めが効かなくなった私は、
加速度的に太っていき確か大学1年生の頃にすでに110kgになっていたと記憶しています。
そこから医学生生活、研修医、医師として独り立ちのプロセスを踏んでいくにつれて、
どんどんと太っていき、糖質制限に出会う2011年11月時点での体重は134kgで、睡眠時無呼吸症候群、うつ病を合併している状況でした。
そこから考えると、私は命を救われたといっても過言ではない減量と体調の回復を得ることができたわけです。
だから私自身は糖質制限でやせ切らなかったとして、糖質制限がよくないとは全く思っておりませんし、
むしろ糖質制限には感謝の気持ちでいっぱいで、これを知る道筋を作って頂いた江部先生と夏井先生のお二人は今でも私の命の恩人だと思っています。
ただ標準体重をよしとする価値観が多数派の社会で生きていますので、
私自身はよくても、私の姿を見て糖質制限ではやせないとか、むしろ太りだすという風に思われる方はどうしても出てしまうのは仕方がないですし、
そう思ってしまわれる方とは残念ながら縁はないと思ってしまいます。
なぜならば糖質制限の本質は代謝の正常化にあり、その結果体調がよくなることが最大のメリットだと私は考えているからです。
次に糖質制限でやせ切らない理由と糖質制限長期実践でじりじりと太っていく理由について語りたいと思いますが、
長くなるので後編に続くとさせて頂きます。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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タンパク質のドカ食いと機能性低血糖症について
たがしゅうさんの記事を興味深く読ませて頂き、ツイッターもフォローさせて頂いています。
実は自分も10年くらい前から糖質制限をしており、最初の5年くらいは順調に体重が落ちていたのですが、その後は変わらず糖質制限をしているにも関わらず段々と太り始め、現在は痩せる前の体重に戻ってしまいました。
糖質制限に身体が慣れてしまったのかとも思っていましたが、たがしゅうさんの過去の記事にもあるように、タンパク質のドカ食いが血糖値を上げていたのかもしれないと、今は小分けにして食べ血糖値を上げないようにしてどうなるか試みております。
また、10年も糖質制限を続けていながら、先日、機能性低血糖症になってしまい、仕事を休職せざるを得なくなってしまいました。
糖質制限は良いことだと思いやり続けてきたのでかなりショックでしたが、、、
たがしゅうさんはタンパク質のドカ食いと、糖質制限をしていてもなってしまう機能性低血糖症についてはどう思われますか?
「ブログメールを配信希望」について
「ブログメールを配信希望」とのことですが、
現在当方ではブログ更新時にメールで通知するサービスは実施しておりません。
ただ私のツイッターアカウント「たがしゅう」をフォローして頂ければ、ブログ更新時に通知が行きます。ツイッターの御利用を御検討頂ければ幸いです。
https://mobile.twitter.com/tagashuu600
Re: タンパク質のドカ食いと機能性低血糖症について
御質問頂き有難うございます。
また日頃のブログ記事の御愛読、ツイッターのフォローも有難うございます。
> 10年も糖質制限を続けていながら、先日、機能性低血糖症になってしまい、仕事を休職せざるを得なくなってしまいました。
> たがしゅうさんはタンパク質のドカ食いと、糖質制限をしていてもなってしまう機能性低血糖症についてはどう思われますか?
まず徐々に太って元の体重にということですがカレーさんの身長と体重はおいくつでしょうか。
一般論ですが、機能性低血糖症はやせ型もしくは非筋肉質の方に起こりやすい傾向があります。従ってもしカレーさんがやせ型であればそもそも体重を減らす必要がなく、それでも中に存在する内臓脂肪が消費され、その後タンパク質中心に置換されて標準体重化した可能性があるというのがひとつ。
もう一つは機能性低血糖症が起こるということは、脂質代謝に全く適応できていない事を示しています。もし本当に機能性低血糖症だというのが間違いないのだとすれば考えられる可能性としては、慢性持続性ストレスがあり常に糖代謝が駆動されていて脂質代謝が使えていないということ、もう一つはもともと脂質代謝が使えない特殊な体質の方かもしれないということです。
10年糖質制限して脂質代謝に適応できないのは不自然なことなので、機能性低血糖症に似た別の病態の可能性もあるかもしれません。また糖質制限のやり方自体にも問題がある可能性もありますので第三者の目が入ったほうが良いかもしれませんが、いずれにしても当座の対応としては糖質制限を解除され、食事のやり方を見直されることをおすすめします。
タンパク質のドカ食いは確かにインスリンを分泌させ、人によっては多少血糖も上がりますが、糖質摂取に比べたらたいしたことはありません。それで脂質が使えなくなることは非常に考えにくいです。それよりかはそのタンパク質摂取が御自身の消化吸収能力に見合っておらず、消化管への過負荷がストレスとなっている可能性もございます。もし1日3食なさっている場合は、1日1-2食にして消化管を休ませる時間を設けてみるのもひとつかもしれません。
糖質制限ダイエット
江部先生はダイエットとしても糖質制限を勧めているので中々難しいとこですね。
最近のたがしゅう先生はダイエットとしての糖質制限にはもの申すという立場かなと思っています。
機能性低血糖症についての返信
返信ありがとうございます。
まず私の身長と体重ですが、170センチの77キロです。残念ながらお腹も出てきました。。
糖質制限をはじめた30歳の頃は170センチ70キロ、20歳の頃は170センチ62キロくらいでしたので、15キロほど太ったことになります。
機能性低血糖症については、2年前から不眠や激しい倦怠感、集中力低下に悩まされ、あらゆる病院を巡っても原因がわからず、先日、ひめのともみクリニックという専門病院にて5時間糖負荷検査を行い、乱高下型の機能性低血糖症と判明しました。
脂質代謝異常については勉強不足で申し訳ないのですが、慢性的なストレスによって起こるものなのでしょうか?
また、脂質代謝異常があることで、なぜ機能性低血糖症になるのでしょうか?
現在は上記の専門病院にて、栄養管理士と医師の指導のもと糖質制限とタンパク質やビタミンなど必要な栄養素を摂る食事の指導を受けて実践しております。
ちなみに、1日の食事に関しては、10年前から1〜2食となっております。
よろしくお願いいたします。
Re: 機能性低血糖症についての返信
コメント頂き有難うございます。
> 私の身長と体重ですが、170センチの77キロです。
> 糖質制限をはじめた30歳の頃は170センチ70キロ、20歳の頃は170センチ62キロくらいでした
> ひめのともみクリニックという専門病院にて5時間糖負荷検査を行い、乱高下型の機能性低血糖症と判明しました。
BMIは26.6で肥満度はそこまで高くないですが、糖質制限後に肥満度が高まっているのは不思議です。食事摂取量は多いのでしょうか。
またやせ型でなく機能性低血糖症の存在が確定的であれば、非筋肉質の可能性が高いです。日頃の運動量はいかがでしょうか。
> 脂質代謝異常については勉強不足で申し訳ないのですが、慢性的なストレスによって起こるものなのでしょうか?
> また、脂質代謝異常があることで、なぜ機能性低血糖症になるのでしょうか?
ストレスは糖代謝を駆動させるので、脂質代謝を使えなくなる要因です。
コレステロールが高くなる「脂質異常症」とは別物で、要は糖代謝が常に駆動され続けた結果、脂質が分解されて作られる「ケトン体がエネルギー源として使えない」という意味です。
ケトン体がエネルギーとして使えないので、エネルギーはもう一つのグルコースのみに依存している状況です。
機能性低血糖症のような低血糖状態になったとしても、もしもケトン体がエネルギーとして使えていたら低血糖症状は出ませんが、ケトン体が使えないので低血糖症状がダイレクトに誘発される、という理屈です。
> ちなみに、1日の食事に関しては、10年前から1〜2食となっております。
それだと適当な絶食期間が確保されているので、ケトン体が使えるようになるのが普通です。
本当に1日1~2食なのにケトン体が使えていないのだとすれば、残る可能性は長鎖脂肪酸代謝異常症などの生まれつきの先天性脂質代謝異常症とかになってきます。
ですが非常に稀ですし、20歳まではトラブルはなかったのでしょうから、そうとは考えにくいのが正直な所です。
間食を見逃してはおられないでしょうか。例えば、ちょっとしたヨーグルトやフルーツなどを食べるなどの行為を1食とカウントしていなかったりしていないでしょうか。
あとは糖質制限に対してどのように捉えておられますでしょうか。その認識によって糖質制限をストレスに感じているかどうかを推定できればと思います。
食事の摂取量が多いというよりは、空腹のところへドカっと一気に食べる感じです。
ちなみに、間食はあまり摂りません。
日頃の運動量に関しては全くないといっていいです。
脂質代謝と関係あるかどうかわかりませんが、昔からお酒を飲まないのに脂肪肝があり、コレステロールが高いと言われます。
それは現在でもそうです。
医者にはビタミンB群が足りないために代謝が上手くいっていないから、ビタミンB群をもっと摂れと言われています。
糖質制限をしているのに、太るわ脂肪肝があるわで、ちょっと納得いきませんが、、
糖質制限に関しては、最初の頃は効果が出てましたし、様々な本などで人間の健康には良いと書かれていますので、納得して信じて行っております。
私の機能性低血糖症に関しては、乱高下型で血糖値は下がっても70くらいで、いわゆる血糖値が下がりすぎるということはありません。
Re: タイトルなし
御返事頂き有難うございます。
> 空腹のところへドカっと一気に食べる感じです。
> 間食はあまり摂りません。
> 日頃の運動量に関しては全くないといっていいです。
> 昔からお酒を飲まないのに脂肪肝があり、コレステロールが高いと言われます。
> ビタミンB群が足りない
> 私の機能性低血糖症に関しては、乱高下型
機能性低血糖症の発症には必ず血糖上昇イベントの先行があります。
血糖上昇イベントがあればインスリンが分泌され、血糖上昇レベルが過剰な場合に脂肪合成へ代謝が切り替わり脂肪肝にもなり、筋肉運動でインスリン非依存的な血糖処理で代償もされず、血糖上昇に伴う糖代謝駆動でビタミンB群が大量に消費されます。
従って、お話を総合しますと、ドカッと食べている1回の食事で糖質制限をしているつもりでも実は結構な糖質量が入ってしまっている、もしくはタンパク質の量が多すぎて血糖上昇が引き起こされている可能性が高いと思います。もっともタンパク質の過剰摂取で機能性低血糖症が起こるケースは聞いた事がないので、より可能性が高いのは前者だと思います。一度御自身の食べている食事内容を写真などに記録し、かかっておられるクリニックで糖質量を算出してもらう事をおすすめします。
> 糖質制限に関しては、様々な本などで人間の健康には良いと書かれていますので、納得して信じて行っております。
本に書かれていることを信じるというスタンスはおすすめできません。
本に書かれていることより自分の身に起こっている事実、特に体調の方に注目し、それが悪くなっていれば何が間違っているのかを自分の頭で考える姿勢を持った方がよいと私は思います。そうでなければ「本に書かれていることと違うじゃないか」と現実と希望のギャップに苦しみを感じ、ストレスを受け続けることになってしまうからです。
なるほど。糖質制限しているつもりが、意外とたくさん糖質を食べてしまっていたのかもしれません。。
今一度、医師と食事内容をチェックしたいと思います。
あとは、自分の体調のほうを注視して治療を行っていきたいと思います。
貴重なご意見ありがとうございました。
今後ともブログ、ツイッター等拝見させて頂きますので、また何かありましたら、ご教示頂ければ幸いです。
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