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見え過ぎて本質が見えない

category - 医療ニュース
2019/ 05/ 29
                 
いつも利用している医療情報サイト「ケアネットニュース」を見ていると、

虫垂切除でパーキンソン病リスクが高まる?」という情報が流れてきました。

虫垂とはお腹が痛くなるいわゆる「盲腸」の時に炎症を起こす腸の一部で、右下腹部に位置する細長い袋状の構造物です。

「盲腸」は医学的な正式名称は「虫垂炎」であり、それが手術でないと抑えきれないくらいひどい炎症にまで発展した場合に施行されるのが「虫垂切除」ということです。

その「虫垂切除」を受けたことがある人がない人に比べてパーキンソン病が高まるのではないかというのが今回紹介されている論文の説です。
            

(以下、ケアネットニュース記事より引用)

虫垂切除術を受けた患者は、受けなかった患者に比べてパーキンソン病を発症するリスクが高まる可能性があることが、米ケースウエスタンリザーブ大学のMohammed Sheriff氏らの研究で明らかになった。この研究結果は、米国消化器病週間(DDW 2019、5月18~21日、米サンディエゴ)で発表された。

 Sheriff氏らは、米オハイオ州を拠点とする電子カルテ専門メーカーのデータを用いて、26カ所の医療システムで治療を受けた患者6220万人以上の診療録を収集。虫垂切除術を受けてから6カ月後以降にパーキンソン病と診断された患者を特定して分析した。

 その結果、虫垂切除術を受けた48万8,190人の患者群では0.92%がパーキンソン病を発症したのに対し、残りの切除術を受けていない患者群では0.29%にとどまっていた。この結果から、パーキンソン病の発症リスクは全体的には低いものの、虫垂切除術を受けるとリスクは3倍に上ることが分かった。また、虫垂切除術を受けた患者では、性や年齢、人種にかかわらず、パーキンソン病リスクの増加が認められたという。

 Sheriff氏は「今回の結果から、虫垂切除術とパーキンソン病との間には何らかの関連があることが示唆された」と述べている。しかし、今回の研究は因果関係を証明するものではなく、今後、さらなる研究で機序を明らかにする必要があるとし、「この結果を受けて、外科手術を中心とする虫垂炎の現行の治療方針を変えるべきではない」と同氏は強調している。

 パーキンソン病は運動機能に障害が現れる進行性の疾患で、手足の震え(振戦)や筋肉のこわばり、動きが鈍くなるといった症状がよくみられる。パーキンソン病の原因は不明で、治療法はいまだ確立されていない。

 なお、虫垂切除とパーキンソン病の関連については、過去の研究では正反対の結果が得られている。2018年10月に「Science Translational Medicine」誌に掲載された研究論文によると、160万人以上のスウェーデン人を対象に分析した結果、虫垂炎切除術を受けた患者では、受けなかった患者に比べてパーキンソン病リスクが20%低いことが報告されているという。

 この研究には関与していない米マイケル・J・フォックス財団のKuldip Dave氏は「近年、消化管とパーキンソン病の発症との関連を示すエビデンスは増えている。例えば、これまでの研究で、迷走神経や循環器系を介した腸脳連関システムの存在が明らかになっている」と説明している。さらに、パーキンソン病の発症に関与するとされるタンパク質のαシヌクレインが消化管にも存在することが確認されており、「虫垂切除とパーキンソン病が関連しても不思議ではない」と同氏は付け加えている。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

(引用、ここまで)



パーキンソン病は症状を和らげる薬こそ医学の進歩でたくさん世の中に生み出されてきましたが、

いまだに根本的な原因が不明とされている進行性の神経変性疾患です。

ただパーキンソン病の中で起こっている現象は解明されてきており、例えば引用記事にもありますように、α-シヌクレインという異常タンパク質が神経細胞を中心に蓄積し、それによって細胞機能が障害されることがわかっています。

αシヌクレインがたまる理由としては酸化ストレスの関与が考えられていますが、はっきりとしたことはまだわかっていません。

一方でαシヌクレインは周囲の正常神経へ伝搬し、障害範囲を広げることがあるという可能性も指摘されています。

消化管にも神経細胞があって、αシヌクレインは消化管にも分布していることがわかっています。

だから虫垂切除をする刺激によって、もしかしたら実はそこに存在していたαシヌクレインが病的伝搬をきたすように変化して、パーキンソン病のリスクを高めるのではないかと、

様々な事実が明らかになってきたことで多くの研究者はそんな風に考えているのかもしれませんが、

実は私の意見はそれとは少し違います。世の中には見え過ぎて本質が見えなくなることがあるのではないかと感じています。


これまでにパーキンソン病の方を多く診察していて決定的に共通しているのは、皆高度の自律神経障害を呈しているということです。

最も軽症の方でも便秘という形で自律神経障害をきたしています。便秘はパーキンソン病の中で最も早期に始まる前兆としても注目されている症候でもあります。

またパーキンソン病の方々と接していると非常にまじめな方が多いし、どちらかと言えば気遣いができて周りから言い人と思われているケースが多いです。

そこから導き出されるのは心の中でストレスをため込んで自律神経に負担をかけ続けることによって、

本来であれば自律的に働くべき身体の恒常性維持のために働くべき人体の精巧なシステムが障害されて、異常タンパク質の排出機構などにも支障をきたしてαシヌクレインなども蓄積していき、

最終的にパーキンソン病を発症するという私の仮説です。

一言で言えば、「慢性持続性ストレスがパーキンソン病の根本的原因」だということです。

問題はストレスは見えないので証明しにくいということがあります。

またパーキンソン病になった人にストレスの具合を尋ねても、不思議と「ストレスはない」と表明されることが珍しくありません。

だから医学の本流においてもパーキンソン病とストレスは少しは関係あるかもしれないがメインではないという程度に考えられています。

しかし私はストレスはパーキンソン病のメインの原因だと考えています。「ストレスがない」と言っている人ほど深刻なストレスを自覚していない可能性が高いのです。

なぜならば生きていてストレスのないことなどありえませんし、ストレスを自覚しないでストレスをマネジメントすることは不可能であり、

ストレスをマネジメントしないでい続けることによって、もはやマネジメントしきれない不可逆的なストレスまで発展していく流れが考えられるからです。

少なくとも私はパーキンソン病の患者さんを観察し続けることでその説に到達できましたし、そう考えると様々な現象にもつじつまが合うので、決して的外れな話ではないと考えています。

パーキンソン病は謎の難病ではなく、患者の心の問題に由来する現象であったと私は感じています。


その観点で冒頭の「虫垂切除がパーキンソン病のリスクを高めるかもしれない」という説を考え直してみますと、

手術を受けた後の患者さんの気持ちを想像してみます。確かに盲腸で激烈に苦しんだお腹の痛みからは手術を受けることで解放されました。

しかし右下腹部には傷跡がずっと残っています。ちょっとした違和感をずっと感じ続けているかもしれませんし、

その先に別の理由でお腹が痛くなった時にも手術を受けた影響で痛んでいるのかもしれないと関連を想像してしまう患者さんもいるかもしれません。

要するに手術で問題は解決したように見えても、患者さんの心には術後の人生に地味なストレスをずっと与え続けている可能性があり、

そのことがパーキンソン病のリスク上昇と無関係ではないように私には思えるのです。

だからこれはあくまでも私の予想ですが、きっと虫垂切除に限らず、他の手術の有無で検証してもパーキンソン病のリスクとの関連は指摘されるのではないかと思います。

医学が進歩し、様々な現象が見える化されていくのは一見よいことのように思えます。

しかしその裏で見えないものがより見えなくなってはいないかということを、

私達は常に自問自答し続ける必要があるのではないかと思います。


たがしゅう
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コメント

非公開コメント
        

腸内細菌とパーキンソン病
とても興味深い情報を頂き有難うございます。
ネットで関連すると思われる文献を検索した結果ですが、

①『虫垂がなくなることにより、大腸の腸内細菌叢のバランスが
  崩れる。』(*1)

②『Parkinson病の発症機序として腸内細菌叢の異常を介した
  α-synuclein伝搬が注目されている。』(*2)

③『パーキンソン病患者の糞便細菌叢を投与されたマウスで、
  腸内細菌叢産生代謝物のα-シヌクレイン凝集への関与が
  示唆される。』(*3)

ようするに、
[虫垂切除]→[腸内細菌叢異常]→[αシヌクレイン蓄積]→[パーキンソン病発症]という機序も有るのかな?と思います。

しかし、③はマウスによる動物実験なので、それが人間にあてはるかどうかは一考の余地が有ります。

また、「虫垂切除でパーキンソン病発症リスク19~25%減」( https://www.afpbb.com/articles/-/3195481 )てな話も有ります。

いろいろと思案・混乱してしまう所ですが、私としては今後も糖質制限かつBifidobacterium属が優勢となる様な食生活を続けることが最もマシなのかなと思っています。


参考文献:

 *1: http://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/research/upload_img/%E7%AB%B9%E7%94%B0_Nat%20Commun%20%E8%A7%A3%E8%AA%AC_20140410.pdf

 *2: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/34/3/34_182/_pdf/-char/ja

 *3: https://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/ec-20161213.asp
Re: 腸内細菌とパーキンソン病
名無し さん

 コメント頂き有難うございます。

> [虫垂切除]→[腸内細菌叢異常]→[αシヌクレイン蓄積]→[パーキンソン病発症]という機序

 本来はα-シヌクレインを産生するために存在する腸内細菌がいるとは思えないので、もし③が正しいのなら腸内細菌も病的になっている可能性がありますね。そうなると③は悪い意味で糞便移植が成功したケースなのであって、虫垂切除した事でα-シヌクレインを産生するような腸内細菌異常が生じるというのは無理があるように私は感じます。

> 「虫垂切除でパーキンソン病発症リスク19~25%減」( https://www.afpbb.com/articles/-/3195481 )てな話も有ります。

 ここでも真逆の結果の論文が出てきましたか。
 こういう場合は論文で結論を出そうとするのは止めて、どちらが論理的に納得がいくかを考えるようにします。

 虫垂切除でリスク減の論文著者の主張は「虫垂がパーキンソン病の初期症状、または発症に影響を及ぼす組織部位の一つであることを示唆している」のようですね。そうすると運よく虫垂にαシヌクレイン産生細菌が限局している、もしくは消化管の中で神経が障害されているのが虫垂のみというレアケースでのみ成立する話なので、こちらについては私はちょっと不自然な感覚を覚えてしまいます。
さおだけ屋はなぜ潰れないのか。
こんばんは。
有名な会計のトリックです。

100円のものを50円で買う。50%オフ 50円のお得。
100万円のものを99万円で買う。1%オフ 1万円のお得。

このように、家計のことはパーセント(割引率)で考えずに、絶対額で考えるべきです。

パーキンソン病の話も、素人目から見ると、

手術すると0.92%発症。
手術しないと0,29%発症。

どちらも発症率は1%以下なのだから高くないな。そのうえ、その差はたった0.63%なんだ、安心。って思います。
まちがっていますか?
No title
いつも興味深い記事をありがとうございます。

私は、細菌、寄生虫に興味があります。
コアラを参考に考えてみました。
コアラはユーカリの毒を処理する有益な細菌を持っています。
規格外に長い盲腸の中が、その菌のビップルームだそうです。
腸全体の調子が悪くなり下痢をし、他の細菌が体外に流れ出ようと、
長い盲腸の中だと体外に流出し難いそうです。
その菌ユーカリを主食とするコアラにとって命綱です。

原始の頃のヒトの環境は、現代と違い、
多くの細菌、寄生虫にさらされていたはずです。
その頃のヒトも生きるために必須な細菌を、
今より長かったであろう盲腸に、
有益な菌を住まわせてたと思います。

菌の善悪関わらず排除してきた現代、
ヒトの盲腸は短くなり、不必要扱いまでされましたが、
実はその短い盲腸の中に未知の有益な菌があると思います。
αシヌクレインの分解に関わる菌かもしれません。

Re: さおだけ屋はなぜ潰れないのか。
エリス さん

 コメント頂き有難うございます。

> パーキンソン病の話も、
> 手術すると0.92%発症。
> 手術しないと0,29%発症。
> どちらも発症率は1%以下なのだから高くないな。そのうえ、その差はたった0.63%なんだ、安心。って思います。
> まちがっていますか?

 
 そうですね。全体としてみれば発症率は決して高くありません。そういうものの見方も勿論成立すると思います。
 
 一方で両者の差としてみた時に、なぜ手術をした方で多くパーキンソン病を発病するのだろうかという所に私の興味は向きます。そして多くの医学研究者が見ているポイントと別の部分を私は見ているのだと思います。
Re: No title
Estuko さん

 コメント頂き有難うございます。

 盲腸にある虫垂は、腸内細菌の貯蔵庫だとする考え方もありますね。
 人体に無駄なものは何ひとつない、全ては環境適応の結果として今の状態があると私は考えます。