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「糖質過剰」症候群 書評

category - おすすめ本
2019/ 05/ 24
                 
ブログ「ドクターシミズのひとりごと」の管理人で、

北海道札幌市にある新川新道整形外科病院の副院長でいらっしゃるドクターシミズこと清水泰行先生がこの度、

「『糖質過剰』症候群 ~あらゆる病に共通する原因~」という新書を発刊されました。

糖質制限推進派医師のはしくれとして、この内容、大変興味深く読み切らせて頂きましたので、

僭越ながらレビューをしてみたいと思います。
            



「糖質過剰」症候群 あらゆる病に共通する原因 (光文社新書) 新書 – 2019/5/21
清水 泰行 (著)


こちらの本では、糖尿病や肥満症といった糖質制限と直結して理解しやすい病気以外にも、

世の中にあるほとんどの病気は糖質過剰と関連が疑われ、すべてをひっくるめて「『糖質過剰』症候群」と表現してよいのではないかという主張を、

220もの医学論文を豊富に引用されて、一つ一つの病気になぜ糖質過剰の関与が考えられるかという医学的な根拠を示しつつ論理展開なさっている本です。

同じように医学論文の引用が多い本として、以前当ブログで紹介したパレオ食推奨の崎谷博征先生が書かれた「糖尿病は"砂糖"で治す!」という本のことを思い出しますが、

同じ文献多数引用するスタイルで、ここまで真逆の結論が導き出されるかとある意味で驚かされました。

やはり医学論文をベースにしたからと言って、自分の主張に合致するエビデンスを持って来る事はいくらでも可能だという事を改めて感じさせられた次第です。

しかしそもそもこれだけ多くの医学論文を読み込むという作業、はっきり言って誰にでもできることではありません。まずはその偉業に圧巻です。

一方で清水先生はエビデンスの弱点、不完全性も十分に認識された上でエビデンスを使用しています。

先生曰く、「エビデンスを盲信することは危険であるが、エビデンスを無視もできない」と。確かにその通りだと思います。

その上で、私達はエビデンスに接する際には、大前提として盲信しないこと、そして何が正しくて何が不確かなのかをなるべく見極めて、わからないことは無理に結論を出そうとしないことが大切な姿勢なのではないかと考える次第です。


さて、本編は誠に充実の内容です。

清水先生の御専門は麻酔科とのことですが、明らかに専門の枠組みを超えて、様々な分野の病気を取り上げて、それぞれと糖質過剰との関連性の可能性を一つ一つ丁寧に考察なさっています。

例えば肥満と糖尿病は当然のこと、認知症、うつ病、心血管疾患、非アルコール性脂肪肝、がん、
それから子宮筋腫や子宮内膜症、月経痛や月経困難症、多嚢胞性卵巣症候群、などといった女性の疾患、

あるいは妊娠との関連、母親が糖質過剰摂取に暴露されることで胎児の先天性障害へと関連しうるという話、

白内障、緑内障、加齢黄斑変性などの眼科疾患、
腰痛、五十肩、骨粗鬆症、変形性関節症などの整形外科疾患、
乾癬、黒色表皮腫、脱毛症、ニキビなどの皮膚疾患、

私が専門とするパーキンソン病も入っていますし、前立腺肥大症、難聴、片頭痛、逆流性食道炎、甲状腺疾患、自己免疫疾患など扱われた範囲が非常に多岐にわたっておられました。

これらの多様な病気と糖質過剰との関連を理解するキーワード「インスリン抵抗性」については、局所のインスリン抵抗性と全身性のインスリン抵抗性という概念を、サザエさんを使って例えて非常にわかりやすく解説なさっていました。

こうしたわかりやすい表現を使われる一方で、かなり専門的に突っ込んだ内容を書かれている所もありました。

文章の緩急の工夫なのでしょうけれど、難しいパートに関しては、一般の人が読むにはちょっとハードルが高く感じるかもしれないと思う所はありましたが、

同じ医者の立場である私にとっては大変勉強になる内容も多々ありました。

一例を挙げると、
「高血糖がポリオール経路という反応を起こし、体内の抗酸化物質を減少させる(→酸化ストレスが高まる)」
「血管の内腔にあるグリコカリックスという柔らかい毛状構造物が高血糖により減少し、これが心血管疾患の発症に関わっている事がわかってきている」
「本庶佑先生のノーベル医学生理学賞受賞で話題になった免疫チェックポイント阻害薬(PD-1阻害薬)と高血糖との関連」
「緑内障の病態にアルツハイマー型認知症と同様に脳内のインスリン抵抗性の病態が関わっている事がわかり、第4の糖尿病と考える研究者も出てきている」
「乳糖吸収不良より多い果糖吸収不良」

他にも様々な私の把握しきれていない情報にあふれていて、糖質制限の理論的根拠をしっかりと把握しておきたい人にとっては必読の内容と感じました。

最後の果糖吸収不良は、自分で果糖負荷の試験をした時に下痢をした思い出もあったので、実感を持って理解することができました。

ともあれ、ここまで多くの情報を盛り込んだ本をわずか1年半で書き切る清水先生の文章作成力と論文読解力には脱帽でした。

興味のある方は是非清水先生のブログも御覧頂ければと思いますが、常に最新の医学情報をアップデートされ、充実の内容を日々更新されています。

その偉業に感謝しつつ、勇気も与えてもらいつつ、

私は引き続き私のできることを続けていきたいと思います。


たがしゅう

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コメント

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ありがとうございます
たがしゅう先生、この度は拙著に対する非常にご丁寧な書評をいただきありがとうございます。

エビデンスは道具でしかないと思っています。目の前にいる患者さんが「全て」であり、その状態を判断、理解するための道具です。
しかし、その道具であるエビデンスが「最も素晴らしい」「絶対的な証拠」であるかのように扱われている方もいらっしゃいます。
エビデンスがあるから「○○は××である」「究極だ」と言い切る方もいらっしゃいます。
そのような風潮は少なからず医療の中に存在し、そのことをうまく利用しようとする人たちもいっぱいいます。そして、統計を上手く操作すれば、一般の人を誘導するエビデンスという「最強」アイテムができてしまいます。

そこで重要なのは先生がいつもおっしゃっている「主体的医療」だと思います。やはり自分で考えなければ、このようなエビデンスに翻弄されます。医師ですら翻弄されるので、一般の人はなおさらです。

今回の本では、エビデンスを大量に引用しつつ、そのエビデンスのダークサイドも同時に載せようと思いました。

そして、この本を読んでいただいた方が、主体的に自分で考え、判断する一つの「道具」としてこの本を使って頂ければという思いで書きあげました。

これからも様々な情報を発信し続けることができればと思っています。
先生のようにユーチューバーにはなれませんが(笑)

今後ともよろしくお願いいたします。
Re: ありがとうございます
ドクターシミズ 先生

 コメント頂き有難うございます。

> 今回の本では、エビデンスを大量に引用しつつ、そのエビデンスのダークサイドも同時に載せようと思いました。
> そして、この本を読んでいただいた方が、主体的に自分で考え、判断する一つの「道具」としてこの本を使って頂ければという思いで書きあげました。


 大変素晴らしいことと思います。

 エビデンスの闇を理解するには、誰よりもエビデンスに精通しておくべきというスタンス、
 正統な書家の道筋を辿りつつ、その問題点に気付いて我が道を進むという人生を選択された相田みつを先生にも通ずるスタンスと思います。
 読者が本に書かれている内容を盲信せず、自分の頭で考えて実践し、それを確かめていくような形で利用するようになっていけば、それはまさに主体的医療の土壌づくりとして大きな貢献だと思います。

 私には先生のような形の他者貢献は難しいですが、私には私なりの貢献方法があると考えています。
 それがユーチューバ―なのかどうかはまだわかりませんが、様々な可能性を模索して私のできることを考えていきたいと思います。

 こちらこそ今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。