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患者が情報を統合するメリット

category - 読者の方からの御投稿
2019/ 05/ 23
                 
西洋医学中心の医療界の中では、かかりつけ医を持つことの重要性がしばしば叫ばれています。

それは複数の医療機関にかかることによって、薬剤の重複や病態の変化に対して速やかに病状を把握し対応しやすくなり、

さらには病状が進行して通院困難となった場合にも在宅診療へも移行することができると、

そのように一元的な病気の管理を行えるようになるためには、かかりつけ医が複数あるよりも理想的には一つのかかりつけ医が患者情報を統合管理すべきだという考え方があります。ブログ読者のアキさんからのコメントにもありました。

確かにそれは一理あるのですが、あくまでもそれは医師主導の受動的医療の枠組みの中での話です。

患者主導の主体的医療の枠組みの中では、かかりつけ医は必ずしも一つである必要はないと私は考えます。
            

なぜならば情報を統合するのは医師ではなく、患者であるからです。


今の医療でかかりつけ医を複数持つことが問題となるのは、複数の医師どうしが連携不十分であることが多く、

それぞれの医師がそれぞれに正しいと思うことを勝手に行っていて、それを患者自身が「素人だからわからないから」と主体性を手放して「先生にお任せしている」状況だからです。

それはあたかも家を建てる時に大工の棟梁が不在で、それぞれの大工が現場の経験で好きなように建築の各工程を行っている、ですとか、

映画を作るのに、映画監督が不在で、各俳優がそれぞれの配役で受けた印象をそれぞれ自由に表現して映画を作っている、といった事と同じようなまとまりのなさがあります。

要するに統合者がいないと秩序が保たれない、ということですが、その統合者を医師におくのが受動的医療、患者におくのが主体的医療ということになります。

医者が患者情報を統合するならともかく、患者が患者情報を統合するなんて無理、と思われる方も多いかもしれません。

確かに患者が患者情報を統合することは大変な作業ではありますが、それを行うことにメリットが大きく3つあります。

まずは、「患者自身が医療情報に詳しくなる」ということです。

私は普段の診療で患者さんに薬を出す時に、「今飲んでいる他の薬と一緒に飲んでもいいですか?」と聞かれることが多いのですが、

多くの場合、患者さんは「医者がOKを出したから大丈夫」「医者がNGを出したから飲んではダメ」というような事で終わってしまっていると思います。

このような時に患者自身が情報を統合しようとするのであれば、なぜ飲み合わせOK/NGなのか、特にNGの場合にどうしてなのかという事を患者自身が知る必要があります。

知ることによって次回から同様の疑問に対して、医師に尋ねることなく主体的に行動を選択することができるからです。

このように「なぜ?」を生み出し、それを解消するプロセスを繰り返していくことで、自分のできる事の幅がどんどん広がっていく構造があると思います。


次に、「医師が知りえない患者情報も把握することができる」ということです。

医師に任せてれば安心という価値観の人は多いですが、どれだけ優秀であろうと、どれだけ権威が高かろうと、所詮医師は赤の他人です。

他人ではどうしても知りえない患者の個人情報というものがあります。それは一言で言えば「患者の個人的な感覚」です。

何となく体調がいいとか、ちょっと疲れやすいとか、理由はないけどふさぎ込んだ感じがするですとか、

言語化しにくい得も言われぬ感じは言語化できないだけで自分の中には確かに存在しています。

そして実はその感覚こそが、治療がうまく行っているのかどうかを鋭敏に知らせるバロメータだったりするのです。

患者が情報統合の主導を握っているという事は、その最も頼りになるバロメータを手中に握っているということになります。

もっと言えば他人には話しにくい内容、自分のコンプレックスであったり、性的嗜好であったり、肉親との人間関係であったり、

そうした事も全て患者情報として把握した上でどうするかという治療の選択を選ぶことができるので、

他人の医師が目に見えるデータとか、患者自身から引き出した言語化できる情報だけを頼りにまとめようとすることに比べて、情報の質と量の両方で圧倒的優位に立つことができるのです。


最後に、「いつでも患者の希望でかかりつけ医を変更することができる」ということです。

これは最大のメリットと言っても過言ではないかもしれません。医師も人間ですので、どうしても合う合わないの問題は出てきます。

最初は合っていた医師とも、時間の経過とともに合わなくなってくるということはあるでしょう。

それがもし情報統合の主導権が医師にあれば、立場的に弱い患者はその医師とどれだけ馬が合わなくなったとしても、医師の言うことに従わざるを得なくなります。

いわば奴隷化であり、これは著しいストレスを生み出します。ストレスの本質は自分の思い通りにならないことにあるのです。

でもそういう場合でも主導権が患者自身にあれば、その医師とは縁がなかったとして、また別の合う医師を探せばよいだけの話です。

いつでも自分の求めるようにかかりつけ医との付き合い方をカスタマイズできるという安心感は、患者に大きなストレスマネジメントをもたらすのではないかと私は思います。

だから患者主導の主体的医療においては、

かかりつけ医が一人でも、複数でも、全ては自分の希望次第だということです。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

家族同然になれるのか
患者さんは、何より心の拠り所を求めています。
病院に行く最たる理由は、実は「薬が欲しい」とか「治療を受けたい」とか物質的な欲求より、むしろ精神の安定を求めて病院に行くのが大多数ではないのかと思います。

それが良いのか悪いのかは別にして、医師に不安を打ち明けることによって安心し、「自分の主治医は、自分のすべてを知っていて、四六時中気にかけていてくれる」と錯覚しがちです。
家族同然に自分の身の安否を心配してくれる存在だとの錯覚です。
しかし医師は大多数の患者さんを診ているわけなので、家族を気にかける様に、一人患者さんの人生の背景にある出来事までは想像が及びません。

あるエピソードで、病院に定期的に通院していた80歳ほどのおばあちゃんが、近所のスーパーで偶然自分の主治医に出会いました。
嬉しかったおばあちゃんは、「先生、こんにちは。何を買いに来たと?」と気軽に声をかけると、いつも親切な先生が「あ~どうも…」と会話もなく不愛想にその場を去っていったそうです。
邪険にされて、その後不信感を抱いたのは言うまでもありません。

さみしい話ですが、これも患者が主体的に医療を受ける理由の一つになるのではないでしょうか。
Re: 家族同然になれるのか
だいきち さん

 コメント頂き有難うございます。

> 患者さんは、何より心の拠り所を求めています。
> 医師に不安を打ち明けることによって安心し、「自分の主治医は、自分のすべてを知っていて、四六時中気にかけていてくれる」と錯覚しがちです。


 それはあるでしょうね。自分の貢献以上に患者さんが医師へ信頼を寄せている度合いが大きいと感じる場面は多々あります。

 しかしそれこそがまさに受動的医療の表現型なのだと思います。
 医師は「家族」ではなく、時々相談に乗ってくれる「アドバイザー」という感覚で付き合うのが適切な距離感ではないかと私は考える次第です。
 ただ接点が増えれば増える程、アドバイザーから家族の方向へ近づくという側面はあるでしょう。接点がたいしてないにも関わらず、医師を家族的に感じてしまう所に、今の受動的医療の社会構造上の大きな問題が見え隠れしているようにも思います。
何度もすみません、追記です。
何度も投稿すみません。
事故で病院に入院中ビックリした事がありました。2ヶ月大部屋で過ごしましたが、インスリン注射を打っている人が多かった事です。10人以上部屋の住人が変わりましたが、3人はインスリン注射を打っていました!
皆なんの疑問も無くインスリン注射をしてご飯を食べていました。私は糖質制限をしていると話をしたところ、白ご飯やおやつは止められないと言う方が殆どでした。
癌病棟の方と知り合いになりましたが、癌病棟の方の方が病気に対して死というものを意識しているせいか、真摯に向き合っているような気がしました。癌病棟の人に糖質制限の話をしたら、希望の光が見えたと言っていました。ジムに通って食事に気を付けていたのにどうして癌になったのだろう&抗癌剤治療で落ち込んでいたらしいです。江部先生の本数冊をプレゼントしたら、病室の皆で回し読みをしてくれていて、皆様退院してから糖質制限やる気満々でした!
世の中まだまだ糖質制限が広まっていない事を思い知らされると同時に、少しでも人の役に立てたかと思うと、かなり痛かったですけど、事故に合った意義があったかなぁと思いました。
Re: 何度もすみません、追記です。
あっぴ さん

コメント頂き有難うございます。

> 世の中まだまだ糖質制限が広まっていない事を思い知らされると同時に、少しでも人の役に立てたかと思うと、かなり痛かったですけど、事故に合った意義があったかなぁと思いました。

見事に意義深い経験へと転化なさっておられると思いました。
ストレスも上手にマネジメントできて、やはり他者貢献は幸せの鍵ですね。
No title
正論吐きすぎて業界からフルボッコになりませんか?あまりにも正論が多すぎます。
理解度は危険度
連続コメントで失礼します。
非常に気がかりないたたまれないニュースが飛び込んできて、共有させていただきたく存じます。

https://www.mbs.jp/news_re3/zenkokunews/20190523/3680758.shtml

やけどの子供にワセリンとラップで…
とは湿潤療法のことだと推察できます。
有能な治療も使用者の理解度によって危険なものとなりうる。
報告まで。
Re: No title
通りすがり さん

 どなたかから反論がある場合は、真摯に受け止めて対応させて頂くつもりです。
Re: 理解度は危険度
だいきち さん

 情報を頂き有難うございます。

 いろいろ考えさせられるニュースです。

 病院に連れていくよりも湿潤療法で治療した方がよいと考えての親心としての行動だったのならまだしも、
 「スロットに行きたかったから」というので、付け焼刃的にネットでのやけどの治療にたまたま湿潤療法が不完全に行われたというのでは、傍からみる分には私もいたたまれない気持ちです。

 でもだからと言ってもし一般的な病院に運ばれ治療を受けていたとしたら、ゲーベンやガーゼなどの処置でもっとひどい目に遭っていたかと思うと気持ちは複雑ですね。
 そしてこのニュースでもって、もし湿潤療法に無理解な人達に批判の材料にされるのだとしたらとても悔しいです。
アミノ酸スコアでみた蛋白質摂取量について
田頭先生、お手数乍らまた質問させてください。

Q.アミノ酸スコア(特定食品に対し、窒素1g当りに占める必須アミノ酸が基準値と比較してどれだけ含有されているかを評価するもの)の良い食品ばかりを摂取している訳ではないので、以下のように1日の蛋白質摂取量合計が(体重61.0kg)76.2g位あったとしても、アミノ酸スコア的に見れば割り引いて考える必要があるのでしょうか?つまり実質的には体重当り1gの蛋白質を摂取していない可能性があると考えないといけないのでしょうか?

夕食は毎日違うメニューになりますが、朝昼は大体こんな食事です。
朝:食パン1枚177kcal(蛋白質5.1g)トーストしてマーガリン(6g)約45kcalを塗って(222kcal)、スナックスティックパン87kcal(蛋白質1.9g)、ヨーグルト64kcal(蛋白質2.9g)、380kcal(朝合計蛋白質9.9g)、

昼:袋麺チャルメラ441kcal(蛋白質8g)に卵80kcal(蛋白質6.2g)を入れて、納豆87kcal(蛋白質7.2g)、白沢庵、570kcal、朝と昼合計960kcal(蛋白質32.5g)、スナックスティックパン87kcal(蛋白質1.9g)、1060kcal、(朝と昼の蛋白質合計34.4g)、

夜:豚肉150gと鶏胸肉80gの冷しゃぶ(蛋白質38g?)辛子ポン酢で、野菜:もやし・カイワレ大根・かにかま、ご飯1膳分140g235kcal(蛋白質3.8g)、940kcal?今日一日合計約2000kcal。(今日一日の蛋白質合計76.2g?)、

宜しくお願い致します。
Re: アミノ酸スコアでみた蛋白質摂取量について
そうすけ さん

御質問頂き有難うございます。

> アミノ酸スコア的に見れば割り引いて考える必要があるのでしょうか?つまり実質的には体重当り1gの蛋白質を摂取していない可能性があると考えないといけないのでしょうか?

体重当たり1gのタンパク質という基準はアミノ酸スコアを考慮していないので、摂取しているかと聞かれたらしていると思います。 あくまでも基準は満たしています。ただその摂取が必須アミノ酸メインで行われているか、非必須アミノ酸で行われているかというのはまた別の問題です。

また「体重当たり1gのタンパク質」という基準があくまでも目安であいまいなものです。
アミノ酸スコアが高い食品で必須アミノ酸は摂りやすくなりますが、だからといって非必須アミノ酸が不要なわけではありません。
さらに言えばアミノ酸スコアが高い食品を食べていても消化吸収障害があれば、額面通りのタンパク質の量がそのまま吸収されないということもあります。
加えて、オートファジーの働き具合によっては必須アミノ酸の摂取が基準に満たなくともリサイクルによって身体の必要量を保持していることもあります。

何が言いたいかと申しますと、不確実性のある数値を厳密に考えていても仕方がない、ということです。
前にも申し上げたように、数値よりも自分の体調をバロメータに食べ方を見直されるやり方が間違いが少なくてよいのではないかと私は思います。
アミノ酸スコアでみた蛋白質摂取量について
田頭先生、お忙しい中ご回答頂きありがとうございました。

どうしても数字で見てしまう傾向があるようです。何事も数字でしか評価されない会社が長かった所為かも知れません。体調は悪くないので、蛋白質もそれなりに摂取できていると思うようにします。ただ3月の健康診断時に高血圧だったので、2日に1回10km走って体脂肪率を今よりできるだけ下げようと思っています。

また質問させてください。ありがとうございました。