薬がたくさん増えることは根本原因が未解決であることを表す
2019/05/16 00:00:01 |
偉人に学ぶ |
コメント:2件
糖質制限食治療のパイオニアこと江部康二先生の先日のブログ記事が素晴らしかったです。
糖尿病の治療に際し、海外を中心に理論的にも実際的にも科学的根拠が集積されてきた糖質制限食、
日本糖尿病学会は、糖尿病治療として食事療法+運動療法が優先順位の第一に来ることは学会が提示する治療指針で示しつつも、
糖質制限食には一切触れず、多数の薬物療法の選択肢について示し、これらの使いこなしには専門的な知識が必要だという主張がなされています。
しかし糖質制限食の選択肢を提示せずに、薬物療法の種類が多様かつ複雑になっているという状況そのものが、
カロリー制限食という今まで推奨し続けてきた食事療法の欠陥を示しているのではないかという御意見だと思います。 この江部先生のごもっともな御意見にまともに反論できる人などいるのでしょうか。
そしてよくよく考えてみると、この構造は何も糖尿病治療だけに当てはまるものでもないように思えてきました。
関節リウマチしかり、アトピー性皮膚炎しかり、潰瘍性大腸炎しかり、パーキンソン病しかり・・・
様々な難治性疾患の薬剤は時を経るごとに新しく開発されていき、治療の選択肢はどんどん増えていっています。
しかしその薬が増えていっている状況そのものが、現在の治療の欠陥そのものを表しているように私には思えるのです。
そして糖尿病であればまだその原因が食生活にあるということが理解しやすいわけですが、
関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、パーキンソン病などでは自分の食事が原因で自分の病気が引き起こされているとは夢にも思わないかもしれません。
潰瘍性大腸炎に至っては、むしろ病気のせいで自分の食生活が制限されるという被害者的意識さえ高まってしまうように思います。
要するに「あなたはこの病気です」と医師から認定された時点で、
患者心理としては自分のわけのわからない体調不良の原因はその何とかという病気のせいだったのだとわかって安心し、
それと同時にそんな得体の知れない病気のことなんて素人だからわからないから、あとは先生にお任せするしかないという流れでスムーズに主体性が欠如していき、
よもや自分の食生活を見直してこれらの病気をコントロールしようという意思さえ奪われてしまう構造です。
食事との関連が明らかな糖尿病でさえ、科学的根拠度外視で軽視されているわけですから、
関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、パーキンソン病に至っては食事でどうこうしようという発想は全くもって生み出されないことでしょう。
そういう意味では、「病名をつける」という行為は功罪の「罪」の部分も大きいと私は考えています。
なぜならば病気だと診断されることによって、自分で治そうという意思が奪われてしまう側面が強いわけですから。
医師は医師でこうした難病はガイドラインに沿って治療しようという意志が働きますし、
患者は患者で難しい病気のことは先生に任せるしかないという気持ちとなり、双方で主体的医療からかけ離れていく側面があるように思います。
自分の親しんだ生活を変えるということをしたくない人は多いと思います。
俗にブラック企業と呼ばれるような会社に勤めていても、新しくゼロから何かを始めるくらいなら今の環境で我慢した方がましだと思う人が多いという構造にも通じるものがありますが、
今までの食事を含めた生活環境を変えずに、医師が何らかの治療介入を行って治してもらうのならば、それが一番楽であり、楽に越したことはないと誰もが思うことでしょう。
しかしブラック企業で働き続けることでストレスを蓄積し、やがて取返しのつかない事態へと発展するのと同様に、
食生活を見直すことなく医師が施す治療を受け続けることで、その背景で不適切な食事が繰り返されることによりAGEs(終末糖化産物)やα-シヌクレインなどの不可逆的な異常蛋白質が蓄積することで、
薬を使おうと何をしようともはや病態が不可逆的となり取返しがつかなくなるという話には共通構造があるように私は思います。
薬がたくさん生み出されていることは歓迎すべきことではないのです。
それは根本原因が何も解決されていないことの裏返しでもあるのです。
本当にその治療が素晴らしいのであれば、患者は病院を卒業できていなければおかしいということを、
私達はもう一度立ち止まってよく考えなおすべきだと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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降圧剤投与のガイドライン
ガイドライン変更によって「一気に高血圧患者が増える」とか「薬剤メーカーの陰謀だ」とか素人には本当か嘘か判別できない情報が飛び交い、戸惑います。
高血圧学会がむやみに患者を増やそうとしているとも思えませんし、良かれと思って基準を決めているんですよね?
その基準に引っ掛かりそうな身内がいて、私は糖質宣言を勧めているのですが、、、自覚症状はないのに数値に右往左往する身内が不憫でなりません。
Re: 降圧剤投与のガイドライン
御質問頂き有難うございます。
> 高血圧治療のガイドライン変更についてたがしゅう先生のお考えを聞かせていただけないでしょうか?
今回のガイドラインでの変更点のメインは、
「合併症のない75歳未満の成人および脳血管障害患者、冠動脈疾患患者については130/80mmHg未満、75歳以上の高齢者については140/90mmHg未満に、それぞれ降圧目標値が10mmHgずつ引き下げられた。」
という点だと思います。
表向きには新たなエビデンスが出たから変更したということなのですが、裏を勘繰ればキリがないですね。良かれと思って考えているけど、結果的には製薬会社に忖度している流れとなっている、という感じではないかと個人的には思います。
ちなみに私の場合は、糖質制限が実践できている人には少々血圧が高くても体調と照らし合わせながら許容、糖質制限が全然できていない人はガイドラインを意識しながらなるべく目標に近づけるよう降圧剤を調整、という感じで対応しています。
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