苦境でも幸せは自分で決めて生き続ける

2019/05/08 00:00:01 | ふと思った事 | コメント:0件

先日参加した朗読カフェで御紹介頂いた本の中で、

3冊ほど印象に残ったものがありました。




二つの祖国(一~四) 合本版 Kindle版
山崎 豊子 (著)



新装版 苦海浄土 (講談社文庫) 文庫 – 2004/7/15
石牟礼 道子 (著)





夢うばわれても (100年インタビュー) 単行本 – 2011/10/13
蓮池 薫 (著)


①「二つの祖国」は第二次世界大戦の前の頃の時代にアメリカで生まれ育った日系アメリカ人二世にまつわる話です。

彼らはアメリカの文化の中で生きてきたにも関わらず、見た目が日本人というだけで不当な差別を受け、第二次世界大戦が始まると強制収容所に入れられるという苦難に見舞われます。

その中でアメリカ兵から「日本と戦えるか」、ひいては「自分の日本人の家族であっても殺すことができるか」と問われ、そのジレンマの中で苦しむという場面について紹介してもらいました。

②の「苦海浄土(くがいじょうど)」は、水俣病という工場から廃棄された大量の有機水銀に汚染された魚介類を長く知らされまま摂取し続けて起こる難治性の中毒性中枢神経疾患で多くの人々を苦しめた公害に対し、

その土地で生まれた著者の石牟礼道子さんが生涯をかけてその実態を克明に記録し、言葉も発する事のできない罪なき患者達の魂の声を代弁しようとした渾身の作品です。

そして③の「夢奪われても(拉致と人生)」は、北朝鮮の拉致被害者の一人、蓮池薫さんの書かれた本です。

蓮池さんは、大学3年の夏休み、帰省中の柏崎の海岸で、突然拉致という国家的な犯罪に巻き込まれます。

北朝鮮では、理不尽で先の見えない絶望の日々を過ごし続ける生活を強いられる苦境にありましたが、

そんな状況であっても、生きようという気持ちだけは潰えなくて、理由を知りたいと北朝鮮の言葉を学ぼうと前向きに奮闘される様子が表現されていました。


この三作品に共通する要素があります。

それは自分の意志や行いとは関係のない所で苦難を強いられているという状況です。

不当な扱いを受け、アイデンティティを揺さぶられる辛い選択を迫られた日系アメリカ人二世、

事実を知らされず不意に身体の自由を奪われた水俣病患者、

そして理不尽な拉致により今までの縁や将来の希望が全て絶たれる状況に追い込まれた拉致被害者、

傍からみれば彼らは皆、幸せではなくてかわいそうだという感情がこみ上げてきます。

しかしその時私は思いました。彼らがかわいそうだと決めつけるのは自分の傲慢なのでないかと。

生まれた時からそうだったという状況は、平均的な生育環境で育った立場からすれば不憫に感じるかもしれませんが、

彼らの立場で同じように思うかどうかは彼らにしかわからないことなのではないかという気がしました。

確かに戦争という極限状況での決断は、行くも地獄、帰るも地獄という側面はあるかもしれませんが、それはあくまでも私の見方です。

そういう状況にあっても幸せとなる方法はあるのではないかと私は考えます。

ただきっとそれは少なくとも誰かを滅ぼすという方向にはなくて、私が今の立場で想像力を膨らませて目一杯彼らの立場になって考えた場合、

祖国であろうとなかろうと誰かを殺さなければならない選択を迫られるくらいなら、自分の死を選ぶのではないかと思います。

水俣病の患者であってもそうです。彼らが幸せになる方法はあると信じます。

彼らは彼らのできる方法で世界にメッセージを発し続けることができます。石牟礼さんはそのメッセージを受け取ったからこそ、このような魂の作品を世に残すことができたのではないでしょうか。

そんなのは綺麗事だと思われるかもしれませんが、少なくとも彼らが幸せでなかったと誰が断言することができましょうか。

蓮池さんに関しては、日本で普通に生まれ育った記憶が大学時代までありながら、突然に絶望的状況に追い込まれたわけなので、

これは流石に幸せは感じようがないと思いそうですが、それでも彼が自分の命を絶たずに生きようとした事に私は希望とともに人間の本質のようなものを感じます。

人はどんな状況におかれても生きようとするもの、それが本来の在り方なのではないかということです。

彼らの置かれた状況に比べれば、自分が置かれている苦境など苦境でも何でもないと思えますし、

たとえどんな状況であっても、命ある限り生き続けることにこだわっていたいとも思えます。

逆に言えば、自分で命を絶ちたいと思う人は、本質的な生命の方向性が歪んでしまう程の事態が起こっているのだとも思えます。

彼らの人生からどんな時も幸せは潰えないということ、生き続けたいと思う気持ちが大切なんだということを、

私は心に刻み、心を病む人達の助けになれればと思います。


たがしゅう
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する