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根治を目指すなら総合診療的スタンス

category - 主体的医療
2019/ 04/ 18
                 
今月の日本内科学会雑誌の特集は「内科サブスペシャルティから総合的に考える代謝内分泌疾患」です。

サブスペシャルティというのは直訳すれば「副専門性」で、

例えばスペシャルティが循環器内科でサブスペシャルティが不整脈、スペシャルティが脳神経内科でサブスペシャルティが神経変性疾患というように、専門性の中のさらに細分化された専門分野という意味になります。

内科がスペシャルティであれば、消化器、循環器、呼吸器、腎臓、血液、神経、アレルギー・膠原病、感染症はそれぞれ内科のサブスペシャルティということになります。

さてそんな細分化されたサブスペシャルティの立場から、各分野の病気には実は総合的に捉えるべき部分がありますよというのが今回特集されている内容となります。
            

例えば、消化器の立場から、潰瘍性大腸炎やクローン病など難治性消化管疾患の総称である「炎症性腸疾患」には、

メタボリックシンドロームに効率に合併する非アルコール性脂肪肝(NAFL:non-alcoholic fatty liver)を高頻度に合併している事が判明したり、

その背景にTNF-αという炎症性サイトカインが過剰に産生されていることが関わっている可能性が指摘されているという内容が書かれています。

これは「メタボリック症候群を合併していないのにNAFLが多い」という点が何気にポイントです。

あるいはメタボリック症候群と言えば、肥満が高じて起こることが多い睡眠時無呼吸症候群について語る呼吸器からの立場の項では、

睡眠時無呼吸症候群の病態には過剰な酸化ストレスの亢進があることが指摘されていて、

酸化ストレスが亢進すると、レドックス感受性転写因子(NF-κB, HIFなど)という酸化ストレスを弱めるための遺伝子からの産物が活性化され、

これまたTNF-αなどの炎症性サイトカインが多く産生され、全身性炎症を引き起こし、また血管内皮傷害、血管内皮機能障害を経て動脈硬化性病変を形成すると述べられています。

要するに見た目の表現型が全く異なっているにも関わらず、身体の中で起こっていることは共通しているということです。

言い換えれば、その一方で一つの病的反応がある人には太る反応を引き起こし、また別の人には太らない代わりに消化管へ重大なダメージを引き起こすというような違いが出てくるということでもあります。

他にも認知症や乾癬という皮膚病に関わるインスリン抵抗性という現象も、全身性炎症が長引く結果として引き起こされることが示されていますし、

性感染症として有名なHIV感染症もインスリン抵抗性やメタボリック症候群と関連があることが紹介されています。

こうなってくると、大きく眺めれば病気の一つはただ一つに集約されてくるような気がしてきます。

すなわち、「炎症という回復プロセスを自力で収束できなくなること」です。

炎症を抑えるために人体が備える最大かつ最強の物質はストレスホルモンとも呼ばれるステロイドです。

多くの難病に対してステロイドが奏功する背景には、ほとんどすべての病気に炎症の病態が関わっているが故ではないかと思われます。

しかしながらなぜステロイドが枯渇してしまったのかという原因に着目せずに、

ステロイドをやみくもに補充し続けることが、何の解決ももたらさないどころか、

今度は皮肉なことにそのステロイドのせいでさらに難病化していく道へと導かれていってしまうことは医療関係者であればよく知るところだと思います。


こうした状況を踏まえて、私が思うのは、

心臓だけを診る、消化器だけを診る、腎臓だけを診る、皮膚だけを診る、血液だけを診るといったいわゆるスペシャリスト達ができるのは、

どこまで行ってもその場しのぎの対症療法だけでしかないということ、

根治を目指すなら総合診療的に診ていくより他にないということです。

対症療法でも医療に貢献しているではないかと割り切れればいいのかもしれませんが、少なくとも私はそんなごまかしのような医療に一生を捧げたくはありません。

ごまかし続けたその先に、二度と後戻りのできない難病が待ち受けているのであればなおさらです。

そして総合診療的に診るといっても、各スペシャリストの知識や経験を全て兼ね備えた存在になるという意味ではありません。

全身性かつ遷延する炎症をもたらしている真の原因は慢性的にかかり続けるストレス、それを処理できない身体と心の在り方です。

そしてその調整を最も効果的に行うことができるのは本人の主体性だと思います。

どれだけ優れた対症療法を受け続けても、そこに主体性がないままに繰り返されれば、ステロイド療法を受け続けて起こる結末がそうであるように、

余計に後戻りできない不可逆的に病気がこじれた状態へと進行してしまうことは目に見えています。

真に総合診療的なスタンスとは、患者自身が主体的に考えて抱いたあらゆる希望に対して一緒に向き合ってその方向性について見直すこと、

そしてその方向性を正し、患者が再び主体的に人生を歩んで行けるようになるまでサポートをすることだと私は考える次第です。

そんなサポートができるようになるためには、各サブスペシャルティにおける病態の共通性について知ることは大切だと思います。


たがしゅう

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コメント

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何処にも患者さんはいらっしゃいますが、先生を必要とする多くの人が都内に居ます。お待ちしております。
Re: タイトルなし
プリン さん

 コメント頂き有難うございます。

> 何処にも患者さんはいらっしゃいますが、先生を必要とする多くの人が都内に居ます。お待ちしております。

 誰とでもつながれるシステムであることは、より必要とされる人とつながれるシステムへと進化する可能性を持っていると思います。
 全国どこにいても私とマッチする人とつながれるシステムを構築するために活動していきたいと思います。