女性はなぜ匂いに興味を持つのか
2019/04/01 00:00:01 |
アロマテラピー |
コメント:7件
アロマテラピーを勉強していると、これに興味を持つのは圧倒的に女性が多いことに気が付きます。
そもそも香水をつける習慣を持つのも、統計で確認したわけではありませんが、
実生活で女性の方が多いと感じるということにあまり異論はないのではないかと思います。
綺麗な女性とまるでセットのように語られがちな「いい匂いがする」、
何故、男性よりも女性は匂いに興味を持つのでしょうか。
この疑問を考える時に思い出したのが、いわゆる女性ホルモンのエストロゲンは、
男性ホルモンであるテストステロンにアロマターゼという酵素が働いて作られるという事実です。
アロマターゼというのは別名を芳香化酵素といいます。
芳香族化合物という化学構造に六角形のベンゼン環など、環状の構造があるものへと変える性質があります。
芳香族化合物というくらいですから、その環状構造があればすべて匂いを持っているのではと考えがちですが、
昔最初に発見された芳香族化合物がたまたま匂いを持っていたということでそう名付けられただけで、
すべての芳香族化合物が匂うというわけでは実はないそうです。また実際に匂いをもたらす化合物が脳に匂いをもたらすメカニズムもまだ不明な所も多いようです。
〈香り〉はなぜ脳に効くのか アロマセラピーと先端医療 (NHK出版新書) 新書 – 2012/8/8
塩田 清二 (著)
ただすべてではないにしても物質を匂いが付きやすい方向へシフトさせるアロマターゼ、
女性への性分化にもエストロゲンよりもアロマターゼが深く関わっているということも以前学びました。
あくまでも私の仮説ですが、そうした代謝の特性の違いから女性の方が匂いに興味を持ちやすいのかもしれません。
アロマターゼと言えばもう一つ思い出すのが、乳がんの治療に用いられる「アロマターゼ阻害剤」という薬があります。
これはエストロゲンが多くなることで育つ性質を持つ乳がんに対して、
エストロゲンへの変換を促すアロマターゼを阻害することでこれ以上乳がんを育てないようにするという発想で治療に使われます。
アロマターゼを阻害するということは匂い物質への流れをストップするということにつながり、それが乳がんの治療によいのだとすれば、
アロマテラピーのように匂いへの流れをむしろ促進させる治療はがんを育ててしまうことにならないのか、という疑問が出てきます。
ただこれに関しては例えばゼラニウムやローズという精油に含まれるゲラオニールという成分が、がんの増殖を抑制する方向へ働きかけるということがわかっています。
他にアロマテラピーががん促進的に働きかけるという事例は観察されていないので、おそらく上記の疑問に対する答えはNoなのでしょう。
なぜかを考えてみますと、まず基本的にアロマテラピーをするからと言ってもアロマターゼをどうこうしているわけではないということがあります。
またアロマテラピーは月経前症候群や更年期障害などの女性ホルモンが乱れる病気の改善にも有効だと知られていますが、
そのメカニズムとしてエストロゲン産生を刺激したり、エストロゲン類似物質を増やしたりしているわけではなく、
匂い物質が嗅神経を介してホルモン分泌の司令塔である視床下部が刺激され、
内分泌系のシステム全体が整うことでエストロゲンの調整作用が発揮されると言われています。
まとめると、
①女性は芳香化酵素の活性の強さから匂いに興味を持っているのかもしれないということ
②アロマテラピーは物質補充ではなく、人体の調整システムへの刺激が主たるメカニズムであるということ
③芳香化酵素の阻害は乳がん治療となるが、だからといって芳香を利用するアロマテラピーががんを育てるというわけではないということ
となるでしょうか。
なおこの「システムそのものを刺激する」という効き方は漢方薬にも認められるもので、
アロマテラピーと漢方薬の共通点として自然の構造をそのまま利用するという所がありますので、
ここでも自然重視型医療の重要性を再確認させられるところです。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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以前私がどこかで知ったことなのですが、(出所ははっきり覚えておりません) 女性は匂いに関心があるわけではなく、嗅覚自体が男性よりも優れているとどこかの大学の先生が書かれていました。クサイ男達の中でも自分に合ったクサさを求めているそうです。女性はよく臭い臭いと言う言葉を男性よりも多く発するように感じております。それはつまり、その臭さが必ずしも嫌いではない場合もあるんでしょうか?考えれば考えるほど男にとっては女はよくわかりません。
そーゆー私は口臭恐怖症で体臭恐怖症です。きっと思い込みもあるのでしょうが、なかなか克服できない状態でもあります。体臭についてはタモリ式入浴法を活用しながらオーデコロンや芳香剤に頼ることなく、体臭を人工的なもので加工することなく、過ごしております。口臭については長年悩んだ末に、インドの伝承古典医学アーユルヴェーダの中にありますオイルプリングで太白ごま油を口の中に含み20分間うがいをする、今はこれにハマっております。何のエビデンスがあるわけでは無いのですが、ブッダの時代からの医学です。たがしゅう先生もよくご存知のように西洋医学のように対症療法ではなく人間が持つ免疫力を生かそうとする療法です。
口臭治療にしても体臭治療にしても人間の持つ本来の免疫力抵抗力を信じてあげると言う事ですね。
まだまだ道半ばですが、しっかりと勉強して、自分自身を信じて生きていく、これに尽きると思います。
私たちのご先祖様が何百年もの間糖質制限で命をリレーしてきてくださったこと、誰がなんと言おうとこれに尽きると思います。
以上大変失礼いたしました。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
匂いに興味があるから嗅覚が発達するのか、嗅覚が発達するから匂いに興味が湧くのか。どちらか定かではありませんが、いずれにしても男性の私としては大分感覚が違うという印象を持つところです。ただその違いを知っておくということは、異性間で良好なコミュニケーションを取るためにも必要なことだと私は思います。
自己臭恐怖は過去の辛い経験やこだわる性格など認知の問題もあると言われています。
オイルプリングは私は詳しくありませんが、自然のメカニズムを使うとは言え、やっていることは対症療法だと私は思います。
根本的には認知の部分を整えるストレスマネジメント、例えば完璧を目指さないなどの認知面を見直すところにあるのではないかと私は考える次第です。
Re: タイトルなし
> オイルプリングは対症療法ではないと思います。
おそらく対症療法の捉え方がジェームス中野さんと私とで少し違うのだと思います。
もしもオイルプリングが根治療法なら、そもそも自己臭への恐怖はオイルプリングをしていなかった事が原因だったという事になります。またオイルプリングをしていない人は皆自己臭恐怖になっていないとおかしいということにもなってしまいます。
オイルプリングは優れた治療法なのであろうとは思いますが、それはそれとして本当の自己臭恐怖の原因が何かということに目を向ける必要があるのではないかと私は考える次第です。
No title
アロマの香りは大好きです。
特に柑橘系の香りに惹かれます。
先生の記事を読んで、ふと思いました。
化学物質の体内への侵入経路についてです。
化学物質の侵入経路は3通りです。
一番影響が大きいのは、吸入吸収です。
1、「吸入吸収」呼吸器(肺)から入る
2、「経皮吸収」皮膚(粘膜含む)から入る
3、「経口吸収」口から入る
身体にとって毒であれば、
「吸入吸収」は避けたいものですが、
身体に有益であれば、
「吸入吸収」は効果絶大だと思います。
アロマテラピーは、
香り物質で嗅覚を刺激するだけでなく、
香りの少ない成分であれ、吸入により、
広大な肺胞から瞬時に血中に入り、
大きな影響を与えると思います。
目には見えないですが、、
想像以上の効果をもたらす分野だと思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
アロマテラピーの基礎理論的な所ははっきりとしていない部分もまだ多いようです。
そういう意味では漢方とも似ていますが、アロマの方がより日常に溶け込んでいて受け入れもされやすいというアドバンテージがあると思っています。おっしゃるようにその潜在的な可能性も考慮すると、向学心が刺激されてきます。
引き続き学びを続けていきたいと思います。
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