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構造はなくとも機能はしている

category - お勉強
2019/ 03/ 29
                 
皆さんはグリンパティックシステムという言葉を聞いたことがありますでしょうか。

おそらく「リンパ」という言葉なら聞いたことがあるでしょう。

「グリア細胞」という言葉も、もしかしたらどこかで聞いた事がある方もいらっしゃるかもしれません。

「リンパ」とは、動脈と静脈の間に介在し、組織の末端で物質交換などの場となっている毛細血管がある場所で、血管の外に漏れた液体を回収して再び静脈に戻すための経路のことです。

そして「グリア細胞」とは、脳の神経系を構成する細胞の中で神経細胞以外の細胞群の総称です。「アストロサイト」「ミクログリア」「オリゴデンドロサイト」「上衣細胞」などの種類があります。

そして「グリンパティックシステム(glymphatic system)」とは「グリア細胞(glial cell)」と「リンパ系システム(lymphatic system)」を合わせて作られた造語で、

脳にもともと備わっている老廃物排泄機構として近年注目されている概念です。
            

もともと脳には解剖学的に全身には認められている「リンパ管」の構造が認められていなかったので、

脳にはリンパを介した循環システムはないものだと考えられていました。

しかしながら近年の研究で、脳内に新入する動脈と静脈とその枝に沿って脳脊髄液を含む血管周囲に液体で満たされた空間があることと共に、

グリア細胞の中のアストロサイトの細胞から足のように出た突起によってその空間が構成されている構造が明らかとなり、

さらにはアストロサイトの細胞膜に水チャネルと呼ばれる水分移動システムがある事も判明し、これにより水分が脳外へと運ばれさらに脳の外にある硬膜リンパ管を経て水が移動するという流れがあることが判明しました。

リンパがないように見えて、実質的には同様のシステムが脳内で動いているため、この一連の流れを「グリンパティックシステム」と呼ぼうという事になったわけです。

そしてこの「グリンパティックシステム」が注目されている最大の理由は、

アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患において脳内に蓄積するとされる異常タンパク質がこのシステムによって除去されているのではないかという仮説があるためです。

この仮説は実験動物のデータを元に提唱されましたが、現在は画像診断などの技術で人体でも当てはまるという証拠が集まりつつあるのだそうです。



Annual Review神経 2019 単行本 – 2019/3/1
鈴木則宏 (著)
Ⅰ. Basic Neuroscience 
2.神経病理
1.Glympathic Systemとは


この「グリンパティックシステム」は、一般的に睡眠と運動によって流れが良くなることがわかっているので、

十分な運動と睡眠を確保することが、認知症の予防になるということの根拠の一つだとされています。

そんな興味深い「グリンパティックシステム」ですが、

ここではそのシステム自体に注目するというよりも、「解剖学的に存在していなくても、機能的に存在していることがある」という事実に注目してみたいと思います。

この話を聞いて私が思い出したのは、昨年の春に「人体の不思議展」という催しに私が参加した時のことです。

そこでは銀染色という方法で初めて脳の神経細胞(ニューロン)が認識されるようになったという歴史的な背景が説明されていました。

逆に言うと、それまでの時代には脳には神経細胞があると考えられていませんでした。なぜならばそれを認識するための染色技術が発達していなかったからです。

でも実際には存在していたし、実際に機能していた。こういう事は現在のレベルの科学であっても人体においてまだまだあるのではないかと私は思っています。

例えば東洋医学でその存在が重視されている「経絡(けいらく)」です。これのことを「見えない神経」だと称する東洋医学の先生もいらっしゃいます。

先ほどのグリンパティックシステムではないですが、解剖構造になくとも機能的に経絡を表すシステムは存在しているのかもしれませんし、

もしかしたらまた何か別の方法で染めないと検出できない解剖学的な構造物が脳や神経には隠されていて、それが経絡だという可能性も否定できません。


何が言いたいかと言いますと、「目に見えるものだけで事実を否定してはいけない」ということです。

もし経絡の理論で現在の解剖・生理・生化学で説明できない現象をもたらすことができているのだとすれば、

そんなものはまやかしだとかプラセボだとかで事実を否定するのではなく、

事実を真摯に認め、その上で「まだ解明されていない何かがあるのかもしれない」と考え続ける姿勢を保つことが大事だと私は思います。

ホメオパシーに関しても同じことが言えると思います。

事実を重視する姿勢は、医学における基本姿勢だと私は思います。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

人体の無限の可能性を無にしない生きかた
グリンパティックシステムにしても、とどのつまり、人体に元来備わっている無限の可能性を無にしない生きかたが大切だ、ということですね。

医学的研究が進むにつれ、徐々に人体には「元々完全無欠な機能が備わっている」ことがはっきりしてきました。

「であるのに病になる。」

もうこれは、人為的に病気になっているとしか言いようがありません。

人体解明が「医療技術の発達」と錯覚せせずに、自らの身体に目を向けるきっかけとなる

全人類がそうなればよいと願うばかりです

Re: 人体の無限の可能性を無にしない生きかた
だいきち さん

 コメント頂き有難うございます。

> 医学的研究が進むにつれ、徐々に人体には「元々完全無欠な機能が備わっている」ことがはっきりしてきました。
> 「であるのに病になる。」
> もうこれは、人為的に病気になっているとしか言いようがありません。


 同感です。
 学べば学ぶ程、医学は今の方向性のままでは病気を克服できないどころか、余計にこじらせてしまうという構造が見えてきました。

 人為を加える事が全て悪いわけではありませんが、際限なく欲望の赴くままに人為を加える事に問題があるように思います。
 基本的には自然のシステムを大事にし、自己都合的な人為を最小限にする工夫が、健康を守る上で大切なことだと私は考えています。