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運命に定められるなんとかしたいと思う気持ち

category - イベント参加
2019/ 03/ 22
                 
先日「コンパッション・フォーカスト・セラピー(Compassion Focused Therapy:CFT)」という心理療法の講演会に参加して参りました。

compassionというのは「com-(共通、ともに)」+「passion(情熱)」という言葉から成りますが、

日本語訳すると「同情」とか「思いやり」という意味になってしまいますが、それだけ表面的な意味しかなぞっていなくて、

実際には人間にもともと備わっている「誰かの苦しみに気付き、それに対してなんとかしようと行動する」という一連の流れを突き動かす情動のことを広く「compassion」と呼ぶそうです。

CFTは、このcompassionに注目することで、心の流れをスムーズにしていきましょう、というものです。
            

具体的に言えば、例えば街を歩いていて通りすがりの人が突然倒れたので思わず声をかけてなんとかしようとする行動を突き動かすのがcompassion 、

消防士が火事場に駆けつけて人命救助をしようと取り組ませるのがcompassion、

死の病に瀕している友人に対してその苦しみを少しでも和らげようと尽力させているものがcompassion、という感じです。

CFTでは、人間には大きく3つの感情システムが複雑に関わり合っている、と教わります。

①脅威・自己防衛システム:恐れ、怒り、嫌悪など→速く活性化しやすい
②欲動・達成システム:探求心、向上心など→喜びや良い気分で活性化
③スージング(鎮静)・つながりシステム:落ち着き、平和、穏やかなど→安心感で活性化


たいていの心身に問題を抱えている人は、このうち①のシステムばかりが非常に大きくなって感じられてしまっているそうです。

私の言葉で言えば、「ストレスマネジメント不良」状態です。ネガティブな感情が頭の中をうずまき、さらにそれを無意識に増殖させてしまっている悪循環状態です。

②のシステムは起業家にありがちなポジティブマインド、そして③のシステムは副交感神経をイメージさせるリラックス状態という感じがします。

CFTではcompassionという本来誰もに備わっている感覚に焦点を当てることで、①②③のバランスを意識的にとらせることができ、その結果心の流れをスムーズにすることができるというのです。

具体的にはいろいろなやり方があるようなのですが、私はその中でのごく基本的なやり方を教わりました。

まず大前提として「注意はコントロールできることを知る」のが大事だそうです。

例えば今、椅子に座っているとして「左足に注意を向けて下さい」と言われたら、

意識は左足に向かい、服や地面と左足が接触している感じ、関節の曲がり方、左足の大きさをイメージするなど、頭の中で左足の存在がどんどん大きくなるのを感じることができます。

また「今度は指先に注意を向けて下さい」と言われたら、同様に頭の中で指先の存在が大きくなっていきます。

それと同時に、先ほどまであれほど気にしていた左足の感覚はさほど気にならなくなっていることに気付きます。実際には左足の感覚は先ほどと同じようにあるにもかかわらず、です。

このように①注意は変えられる、②注意を向けるとその対象が大きく感じられてくる、③注意を向けなくなった対象は意識の中から追い出される、という点を理解しておくことがCFTを行う上の前準備として極めて重要なことなのだそうです。

確かに不安がどうしても頭から離れずに交感神経過緊張状態になっている患者さんはよく診ます。こうした患者さん達にこの事実を知ってもらうだけでも違うのかもしれません。


具体的なCFTの方法ですが、一見マインドフルネスと似ている部分があります。

ただマインドフルネスが一切の自我を捨て、何も考えずに今ここにある状態に注目するのに対して、

CFTはリラックス状態からcompassionの視点で意識を変えることで心のバランスを修正しようとする試みということで、

似ているようで中身は受動性メインのマインドフルネスと比べてかなり違います。

またかなり深めの深呼吸を利用したり、姿勢を正し胸を広げるなどして副交感神経を刺激することも意識されています。

多くの場合、①脅威システムで頭がいっぱいになってしまったものを、CFTの技術で③を大きくすることによって心のバランスを整えるというイメージになるそうです。

そういえば呼吸筋は自分の意志でコントロールできる随意性支配と、寝ていても呼吸できるように自律神経によって調整される不随意性支配の二重支配になっていることが思い起こされます。

CFTはこの随意性の部分を利用し、マインドフルネスは不随意性の部分を利用すると考えてもよいかもしれません。

実際のワークとしては過去にあったケンカや口論などストレスフルな場面を2分間程度頭の中で思い出してもらい、

その後、姿勢を正し深い深呼吸を繰り返しながら、笑顔をつくり、今の自分が進化の歴史の流れの中で生み出され、全て自分が決めてきて生まれてきたのではなく、

何も選べなかった状態で生まれてきたということ、だからこの世の中で起こった嫌な気持ちとなる出来事の全てにおいて「(必ずしも)自分だけが悪いわけじゃない」というゆるしを感じながら、

もう一度過去のストレスフルな場面を思い出してみたところ、

先ほどはすごく嫌な気持ちが掘り起こされてしまっていたのが、「まあいいさ。そんなことだってある。」といった感じで、無理なく冷静に過去のストレスイベントを見つめ直すことができました。

このように心の変える方法もあるのだと私としては大変参考になりました。

他にもストレスマネジメントとして使えそうなテクニックがたくさんありそうだったので、

機会を見つけて引き続き勉強していきたいと思います。



セルフ・コンパッション―あるがままの自分を受け入れる
クリスティーン・ネフ 他2名
金剛出版




たがしゅう

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