Post

        

白血病細胞には正常細胞部分が多く残っているのかもしれない

category - 読者の方からの御投稿
2019/ 02/ 21
                 
ブログ読者のドクターの方から、先日の記事「白血病と糖質制限 ~白血病に糖質制限は効くのか~」について、

記事の中で引用したM.D.アンダーソンがんセンターの文献に関して次のような御意見を頂きました。

文献の中で白血病細胞の増殖を抑制したとされるエトモキシル(長鎖脂肪酸酸化阻害剤)は脂肪酸のβ酸化、すなわち脂質をエネルギーとして利用する代謝をブロックするので、糖エネルギーをメインで使うがん細胞(白血病細胞)にこれが効くというというのはおかしいのではないか

鋭い御指摘です。実は私も脂肪酸酸化阻害剤と聞いた時に、「これだと糖質制限の逆だから、効くというのは何か変なのでは?」と思っていましたが、そこは記事中に記したように酸化を阻害すれば酸化ストレスが減少するという点で矛盾は生じないのではないかと記事を着地させたつもりでした。

しかしドクターの御指摘を受けて、もう一度この点について考え直してみたいと思います。
            

まず、引用記事にあるM.D.アンダーソンがんセンターの文献の原著は以下のものです。

Samudio I, et al. Pharmacologic inhibition of fatty acid oxidation sensitizes human leukemia cells to apoptosis induction. J Clin Invest. 2010 Jan;120(1):142-56. doi: 10.1172/JCI38942. Epub 2009 Dec 21.

見てみるとこれは、いつも私が統計学的な数字のトリックがあるとかで問題視している疫学論文(臨床研究)ではなく、基礎研究の論文です。

基礎研究というのは実は明確な定義はないのですが、医学においては一般的に、培養細胞や実験動物を用いて、病態の一部を解明したり、薬剤の効果のメカニズムを検証したりする研究のことを指します。

上記の論文においても白血病の培養細胞と、白血病のモデルマウスに対して、脂肪酸酸化を抑制する薬や脂肪酸合成・分解を阻害する薬、すなわち脂肪酸をエネルギー源として利用する代謝をブロックする薬を使ったら白血病細胞の増殖が抑制されたという研究結果が書かれています。

ただ今までブログでも扱ってきた疫学論文などとは違って、基礎研究の論文が間違っているという事はあまり見受けられないことです。というよりも正直、その道の人にしか真偽を判定することができないので、問題点があっても気付かれないというのが実情だと思います。

少し話は反れますが、STAP細胞問題はそんな基礎研究論文なのにネット上で多数の問題点の指摘があったという点でも異質な出来事でした。

さて私の目で見る限り、この文献が間違っていることを言っているようには思えません。ですがそうだと言える確証もありません。

従って事実重視型思考のスタンスで言えば、この文献の真偽は保留という判断にするのが筋でしょうけれど、

それでは話が進まないので、ひとまず仮にこの文献の内容が真だということで思考を進めてみたいと思います。

この文献では白血病細胞にミトコンドリアが存在すると書かれている点が一つの注目ポイントでした。

そしてこの白血病細胞に脂肪酸というミトコンドリアが機能しないと使えないエネルギー源の酸化、もしくは合成分解のプロセスをブロックする薬を使うと細胞増殖が抑制されたということは、

この白血病細胞のミトコンドリアは機能しているということになります。他のがん細胞はミトコンドリア機能が破綻しているので、この点は他のがんと違っている所です。


ここではっと気が付きます。ここでの白血病細胞というのは正常細胞とがん細胞の間のグレーゾーンのような細胞なのではないかと。

正常細胞においてエトモキシルのような脂肪酸代謝阻害剤を使えば、糖と脂肪、二つのエネルギーシステムのうちの一つが使えなくなるわけですから、正常細胞の増殖機能は衰えてしかるべきです。

この度の白血病細胞にもそれと同じようなことが起こっている、すなわち白血病細胞の中の正常細胞の性質が残る部分に対して薬が効いて、白血病細胞の増殖抑制がもたらされているのではないでしょうか。

もっと言えば、もし白血病細胞のエネルギーバランスが糖寄りに傾いていたら、脂肪酸代謝をブロックしても細胞増殖は止まらないはずです。

それが止まるのだというのであれば、少なくともこの白血病細胞においては糖エネルギーと脂肪エネルギーのバランスは脂肪エネルギーメインに傾いている、だから脂肪酸代謝をブロックしたら白血病細胞が増殖が抑えられた、という可能性があります。

そう考えると白血病の一部、急性前骨髄性白血病に対するATRA療法、これは活性型ビタミンAを大量に投与して不完全な白血病細胞の正常分化を誘導し、白血病細胞を正常細胞化してしまおうという治療法でしたが、

これが効くのも白血病細胞に正常細胞らしさが残っているからこそ、という気がしてきました。

他のがんにおいては高濃度ビタミンC大量静注療法ががんに対する治療法として知られていますが、

あれもその抗酸化作用のみが注目されていますが、ひょっとしたらがん細胞が可逆的に正常細胞に戻る働きを高濃度ビタミンCの抗酸化作用が後押ししている可能性もあるのではないかと考えられるようにも思えます。

血液細胞と違って逐一組織を取り出して正常細胞に変化したかどうかを調べられるわけではないので、あくまでも私の想像でしかありませんが、

もしも仮説が正しければ、白血病という病気はがんの中でも正常細胞らしさが結構残っているがんだということができます。

逆に言えば、そんな白血病に対して全細胞攻撃系の化学療法を行えば、がん細胞部分よりも正常細胞部分の方がやられる割合が多いということで、

非常に非効率的な治療法となってしまうということが言えると思います。

そんな状況に対して糖質制限はどうかということを考えますと、

白血病細胞に対してがん細胞の糖代謝部分を使わせず、まだ正常細胞らしさが残っている脂肪酸代謝部分を使わせる行為になりますから、

糖質制限をすれば白血病細胞の正常分化が誘導されて、実は白血病に対してかなり有効性が高いという可能性も見えてきました。

全国の白血病の患者さんに対して、

糖質制限は一つの大きな治療選択肢となることを伝えたいです。

しかしながら私ができるのはやはりここまでです。

後はこの情報をどう受け止めて、どう利用するかのに関しては、

それぞれ皆様に考えて頂いて選択してもらえればと思います。


たがしゅう

関連記事

            
                                  

コメント

非公開コメント