Post

        

手術に踏み切る前にできること

category - 素朴な疑問
2019/ 02/ 22
                 
世の中には可逆的な変化と不可逆的な変化があります。

医療を扱っていると特にその事を強く意識するように思います。

病気にも可逆性と不可逆性があり、不可逆的な病態にまで及んだ時、医師としては否が応でも無力さを痛感させられます。

でもその度に責任感や罪悪感を感じていたらキリがないし、まともに受け止めていたら医師の仕事は務まりません。

だから私は周りからどう思われようとも、自分の心の平穏を保つためにも、不可逆的な病気と遭遇した時に、

その状態にはなるべくしてなったのであり、自分にできるのはここからなるべく害を与えないよう成り行きを見守るのみと思うようにして、

その考えに沿って今の医療体制で私ができる事を考えるようにしています。
            

ただ、そんな中で手術という治療法に関して私は強く思う所があります。

手術とは人為的に不可逆的な変化をもたらす医療行為です。

手術で取り去った臓器や組織は勿論、そこに到達するために作った傷は完全に可逆的に元に戻るわけではありません。

どれだけ天才的な外科医が手術したところで、何らかの傷跡は確実に残ります。

もっと言えば、目的の病巣でさえも実はまだまだ正常化しうる可逆性を備えているかもしれない組織です。

とある人間の判断で可逆的に元に戻る可能性をゼロにしてしまう側面が手術という医療行為にはあると私は思います。

実は若き研修医時代に私もブラックジャックに憧れて、一丁前に外科医への道も前向きに考えていた頃もありましたが、

いろいろ考え悩んだあげく、最後に私が外科医になるのを踏みとどめたものは、患者を人為的に傷つけるという事に対する違和感でした。

手術とは合法的な外傷」という言い方もありますが、詰まる所、手術とは医者が患者に傷をつける行為です。

そうしなければ命が助からないという究極の状況においては考慮されるべき医学の進歩だとは思いますが、

実際問題としては、そうでもない状況に対して、もっと言えば手術しなくてもよいかもしれない状況に対して手術が行われていることが多いというのが実情ではないかと思います。

「予定手術」という言葉と実情があること自体がそのことを象徴しているように思います。

さらに、世間には「外科医は格好いい」「外科医は直接人の命を助けている」というような良いイメージがはびこっています。

医療ドラマなどでも外科医もしくは外科も含め何でもこなせる医師がスーパーヒーロー的に描かれることが多いですので、

国民に対しての外科医のイメージは基本的に良いところからスタートしているという背景があるように思います。


前置きが長くなってしまいましたが、言いたいことをまとめます。

私はこの記事で外科医もしくは手術を否定したいわけではありません。

ただ、「お医者様にお任せ」や「外科医は頼れる」という価値観の下に、いわば究極の選択として考慮されるべき「手術」という治療手段が、あまりにも安易に選択されているのではないかと疑問を持っています。

劇的寛解(radical remmision)」という言葉があります。ステージ4の末期がんだと宣告された患者さんが全く何事もなかったかのような状態に戻ることがそう呼ばれています。

もう手術で切ってもらうしかないと思うその状態、あるいは外科医にそう判断されたその状態を、

そう決めつけるにはまだ早いのではないでしょうか。

少なくとも身体がまだ普通に機能している限りは、見直すべきことがたくさんあるのではないでしょうか。

医学の常識はradical remissionを認めません。それどころかニセ医学だと評して軽くあしらいます。

しかし事実重視型思考で言えば、そうした患者が存在する事は紛れもない事実だと私は思います。

そうした人達の言葉を真摯に受け止めて、何が彼らにradical remissionをもたらしたのかを見つめていくと、

彼らがいかに心の在り方を変えたかという事が共通して浮かび上がってきます。

ずっと身体に無理をさせ続けてきた側面はないでしょうか。

手術という不可逆的な医療介入を行う決断をする前に、是非とも一呼吸おいて考えてもらいたいと思います。

後戻りができない切り札のカードを出すのは、今自分にできることを考え直してからでも決して遅くはないはずです。

一度きりの今世だけの自分の身体を、できるだけ大事にすべきだと私は思います。


たがしゅう

関連記事

            
                                  

コメント

非公開コメント
        

現代医学の不完全
>医学の常識はradical remissionを認めません。

という言葉で最近思いつくことがありました。

病院で一向に良くならない怪我が、たった1度の「治療家」の施術で劇的に治癒した経験があります。*治療家という表現は私の勝手な呼称です

スポーツを習う息子が足の甲を痛がり、特に外的な衝撃を受けた覚えもなく、原因もわからず痛がるので、地元で有名なスポーツ整形外科医の元に通うことに。

専門医ということで早期治癒を期待し足しげく通い、しかし2か月治療しても全く変化無く一向に良くなりませんでした。

半ば苛立ちも感じ始めたころ、知人から「すごい」治療家がいると聞き、一か八かダメもとで治療を受けてみると、たった数十分の治療で痛みが完全に無くなったのです。驚きです。

狐につままれた気分とはこういうことを言うのでしょう

その先生は何故痛みが生じ、何故取れたのか、また「今後の怪我をしない体づくりの方法」を詳しく教えてくれました。

なるほどと感心すると同時に、病院治療の無力さも感じざるを得ません
でした。

病院が絶対だという妄信の怖さを知った出来事です。
Re: 現代医学の不完全
だいきち さん

コメント頂き有難うございます。

> 病院で一向に良くならない怪我が、たった1度の「治療家」の施術で劇的に治癒した経験

そういう事実に真剣に向き合い、なぜそのようなことが起こるのかについて理解を深めなければ医学は科学と言えなくなってしまうと私は思います。