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公的情報と私的情報

category - ふと思った事
2019/ 01/ 29
                 
医療情報を囲い込むべきではない」という私のスタンスについてもう少しだけ掘り下げて考えますが、

私は何も患者の個人情報までを公開し、シェアすべきだと考えているわけではありません。

情報にはシェアされるべき公的情報と、シェアされるべきではない私的情報とがあると考えています。

私が囲い込むべきではないと考えている情報は、あくまでも公的情報の方です。

例えば、「糖質は血糖値を直接上昇させる」ですとか、「消毒は細菌よりも生体細胞への傷害性が強い」などといった情報がシェアすべき公的情報の例です。

一方で患者個人が特定されうるプライベートな情報は私的情報に入ります。
            

私的情報を公にシェアしてはいけない理由はちょっと考えればわかると思いますが、

情報をシェアすることによって個人が被害や損失を被る可能性が出てくるからです。

それゆえ医者には患者の個人情報を守る守秘義務というものがありますが、ここで秘匿すべき情報がまさに私的情報だということです。

しかし患者の診療を通じて得られた重要な知見は、通常学会などの発表の場で症例報告という形でプレゼンされることがあります。

この際、私的情報を使用する可能性が出てくるわけですが、ここで発表者は患者個人が特定されないように情報に細工を施す工夫をします。

年齢を何歳とせず、「何十代」と表現したり、名前を画したり、画像や動画には目線やモザイクなどの加工を施すといった具合です。

これは「私的情報の公的情報化」と言える作業だと思います。

こうすることによって、本来ならばシェアすべきでない情報をシェアするに耐えうる形へと変化させることができるのです。

医学の新知見はまさに現場から生まれるものですから、

重要な情報の発見にはどうしても患者の身に実際に起こっている事実が重要であったりします。

なので私的情報を公的情報化するという作業は、医学の発展において極めて重要な役割を果たしているはずです。

しかしながらそれは工夫の行い方次第で、情報の漏えいというリスクと常に隣り合わせとなります。

個人情報保護の問題もしきりに叫ばれるようになって久しいですが、

私的情報に存在する重要な価値が大事な医学の世界においては、この作業は避けては通れない問題ではありますが、

それでも私は医学の情報は公的情報として基本的に囲い込まずにシェアされるべきだと考える次第です。


さてそんな立ち入りにくさが感じられる私的情報ですが、

一方で私的情報には公的情報にはないメリットもあります。

それは「私的情報を共有できた集団のつながりは深くなる傾向がある」ということです。

平たく言えば、「あなたにだからこそ自分の秘密を教える」と言われたらかなり信頼されていると言っていいと思いますが、そんな感じの価値が私的情報の共有にはあるということです。

従って、私的情報がシェアされるべきではないというのはあくまでもオープンな全体を意識した時の話であって、

クローズドな集団の中で私的情報をシェアする行為は、その集団の結束力を高めるという別の意図が生まれてきます。

先日取りあげた「オンラインサロン」などという形式は、まさに私的情報のそうした価値を利用した試みなのではないかと私は思います。

それが自分のプライベート情報を切り売りした内容で運営されているのであれば個人の自由ですし、

その人の魅力に惹かれて人が集まって、その集団の結束力が高まるというのであればそれは一つの集団の在り方としてあってよいことだとは思いますが、

こと医療情報に関して、このような形で情報がシェアされることは非常によくないことだと私は考えています。

なぜならば医学の情報は基本的に人類全体に資するべきものであり、そうでなければ人は幸せになれないと思うからです。

つまりは医療情報をここだけの秘密というような情報として扱われ、それを元に商売が展開されるような情報共有の問題です。

これは「公的情報の私的情報化」と言えるのではないかと私は思います。

つまり本来オープンにシェアされるべき公的情報を、まるでシェアすべきでない特定集団限定の私的情報であるかのように扱うということです。

これは商売を目的とする人々には一つのやり方として成立するのだと思いますが、

これを人類への医療貢献を目的とする場合には絶対に成功しないと私は思います。

なぜならば結束力の深まった私的情報を知る集団と、そうでない私的情報を知らない集団の間とで情報格差が確実に生まれてしまうからです。

情報格差が生まれれば情報の伝わり方に歪みを生じ、結果的に人類全体にその情報の恩恵をもたらすことはできなくなるはずです。


まとめると、あくまでも医学の情報についてですが、次のようになると思います。

「公的情報」:人類全体のためにシェアされるべき情報。最低限、公平性と公開性が保たれていることが必要。特定集団に限ると全体へのメリットが減少するのでよくない。
「私的情報」:特定集団の中でシェアされることで集団の結束力を高めることに用いられる情報。秘匿性があるため公にシェアすると集団の結束がなくなるので公にはシェアされるべきではない。


個人情報保護法とか国民総監視社会とか、

情報にまつわっては大変息苦しい世の中となったように思いますが、

公的情報と私的情報、それぞれのメリットとデメリットを正しく理解し、

シェアすべき情報はシェアし、シェアすべきでない情報をシェアしないという選択を間違えないようにしたいものです。


たがしゅう

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コメント

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料理のレシピ
糖質制限の料理教室は、各地で開催されるようになりました。しかし多くの場合、レシピをネット上で公開しないという条件がついています。

これはまさに「公的情報の私的情報化」といえるでしょう
Re: 料理のレシピ
Mr. X さん

コメント頂き有難うございます。

> 糖質制限の料理教室
> レシピをネット上で公開しないという条件
> これはまさに「公的情報の私的情報化」といえる


おっしゃる通りだと思います。
主催者が最初から商売という意図でこうした活動するのであれば一つの合理的なやり方だと思いますが、
糖質制限料理を広めたいという意図で行なっているのなら、歪みを生じうるということを認識する必要があります。

問題は糖質制限を広めたいという顔をしながら実はお金儲けを最優先に考えるという確信犯的な人達です。利用者側のリテラシーも大事だと思います。