都合の良い薬?
2014/01/17 00:01:00 |
漢方のこと |
コメント:6件
インフルエンザが流行るシーズンとなりました。
最近になって新しい抗インフルエンザ薬が次々と出てきています。
少し前までは飲み薬しかなかったのに、吸入や点滴、さらには1回投与だけで済むものまで出てきました。
これらの薬のいずれもが、インフルエンザウイルスの増殖を抑えるというものです。
一般的に抗インフルエンザ薬の開始から解熱までは平均24時間くらいとされていますが、なかには40時間かかったり、長い人で85時間という人もいらっしゃいます。
薬を使うまでの間に増殖したウイルスを駆逐するには自分の免疫システムを働かせるしかありません。
そんな中、もう一つの選択肢として,麻黄湯という漢方薬があります.
今日はこの麻黄湯について紹介したいと思います. 麻黄湯は「麻黄」「桂枝」「杏仁」「甘草」という4つの生薬から構成される薬です。
その中で「麻黄」+「桂枝」の組み合わせは強い発汗作用をもたらすという特徴があります。
麻黄湯は発熱があって急激に悪寒を感じるけれども汗がなく、赤ら顔、咳、関節痛があるような病態に対して使う薬です。麻黄湯を何度か内服することによって汗がドバっと出て一気に解熱して体が楽になります.これを「解表(げひょう)」といいます.
そのような病態の代表格が「インフルエンザの初期」ということで,インフルエンザの薬として応用されているわけです.
注意点としては「麻黄」にはエフェドリンというアドレナリン様物質の成分が含まれており,交感神経機能を高める作用があります.従って副作用として高血圧,動悸が起こることがあります.従って高齢者にはあまり適さず,比較的体力のある若い方を中心に使用することが多いです.
両者の作用機序を比較しますと,西洋医学の抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスの増殖を防ぐというメカニズムであるのに対して,東洋医学の麻黄湯はヒトの自然免疫を高めることで強い抗ウイルス作用を発揮するというメカニズムとなります.
そのように両者はメカニズムが重複しませんので,両者を併用することも可能です.
それにしても身体の免疫を高めるだなんて簡単に言いましたが一見都合のよい話に聞こえます。「そんなのは信用できない」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、西洋医学的にも麻黄湯の複雑なメカニズムが徐々に解明されつつあります.
例えば,「麻黄」の中に含まれる成分であるタンニンはウイルスの細胞膜への融合を阻害します(Mantani,N. et al. Antiviral Res. 1999,44(3),p.193.).
次に「桂枝」に含まれるシンナムアルデヒドがウイルスの蛋白合成を阻害します(Hayashi,K et al. Antiviral Res.2007,74(1),p1.).
さらに麻黄は細胞の恒常性維持に不可欠な自己細胞成分消化システムである「オートファジー」を介する経路があることもわかってきています.
このように麻黄湯は注意すべき点さえ押さえていればインフルエンザに対抗するための有効な手段になります.抗インフルエンザ薬のタミフルよりも麻黄湯で治療した方が解熱までの時間が短かったという報告さえありますので(Kubo T, et al.: Phytomedicine in press.),そういう選択肢があるということを皆様も知っておかれるとよいと思います.
ところで,漢方薬というのはいわば「食事に近い薬」です。先日の「風邪を治そうとする力」の記事でも触れましたように,糖質制限をすることによって身体の免疫力が高まります.
食事で免疫を高めることができるのであれば,食事に近い薬である漢方薬がそれを成し遂げることができても不思議ではないと私は思うわけです.
再現性の高さという意味では糖質制限に勝る治療はありませんが,
漢方薬も上手く使えばそのサポートができるツールになると考え,私は注目して勉強しています.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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初めて入院して
去年11月に背部に、よう、ができ、全身状態が、悪化、即入院といわれるまま、杏林に〔家が近いため)。皮膚科で、入院切開し、点滴、血液検査で糖尿病と告知、血糖値が470〔大汗)
背部の、よう、の治療と同時に、アピドラ4単位打つもいきなり、10単位に増やされ、おかしいな?とおもてたら、看護師が飛んできて量を間違えたと〔大汗)おそろしい。。。。。
1週間後ヒュウマログミックス50を打つ、いい感じの値で
2週間で退院。
病院での食事をカメラでとり、参考にしてカロリー計算、めんどい。。。。
ネットで江部先生を知り、インスリン打ってましたが、ごはんを40グラムにしたら、低血糖状態〔汗)
インスリンさえなければと、。。。
退院時にインシュリン何本ももたされ、。。。
一生打つのか?と落ち込み。。。
インシュリン打ちながらも糖質制限始める。今まで皮膚科が、メインでしたが、やっと内科糖尿病科で、受診
ドクターは、自己管理ノートの値も、ろくすっぽ見ないで低血糖になるというと、新薬の薬に変えると
糖質制限の話をすると、怒ったように、ご飯は、くわねば、いかん!と
あぁ、このドクタージャなにいってもアカンとおもい、血糖値測るんでチップと針をください!というと、出せない!と
ほえ?そんなもん、測らなくていい!と。。。。
ほしいなら、自費でと
高いですが、なければ、目安がわからないですよね。今は薬も飲まずスーパー糖質制限デ、コントロールしてますし、〔(^^)
確かに血糖値は下がりますね(^^)
まだまだ、人体実験は続きます(^^)
サモエドという白いでかい犬をおととし、糖尿病で亡くし(ンスリン打ってあら、夜中に急変。。。)
犬も糖尿病の遺伝があって結構多いんです、ぺっとでも〔汗)目の見えないワンコもいたし。。。
ほとんど、病気なしの人生でしたが、入院で、いい経験しました。いまのとこ、糖質制限バンザイ!でっす!
40年前に高校が看護科だたので、準看の資格はありますが、まったく臨床経験がない、やくたたずの私。いろいろ考えrさせられた入院でした。。。
http://ameblo.jp/suzu554
Re: 初めて入院して
コメント頂き有難うございます.
急な入院での様々な出来事,大変でしたね.
でも糖質制限と出会われて,改善させることができて本当によかったです.
出逢い
先生のような、ドクターがいぃっぱい増えることを、願いまぁす!
医者キライになったわけ
http://ameblo.jp/suzu554/entry-11732801110.html
No title
インフルエンザが流行した時に麻黄湯を購入し薬箱に保存してあるのを思いだしました。高齢者には適さないことは知りませんでした(私は73才 夫は78才です)保存していた麻黄湯の使用期限は2014年6月までのものですがその後 処分することにしようとと思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
正確に言うと「体力の弱った高齢者には適さない」という方が適切です。従って年齢だけで使用の可否が判断されるわけではないのです。誤解を招く表現をしてしまい申し訳ありません。
なお、体力があるかどうかの判断には漢方に精通した医師の診断を受ける事が必要です。
No title
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