情報に弄ばれないために
2019/01/18 00:00:20 |
読者の方からの御投稿 |
コメント:4件
ブログ読者のだいきち さんから以下のようなコメントを頂きました。
(以下、コメント引用)
現代は「情報で弄ばれないよう」にしないといけません。
「日本は世界1の長寿国」なのに「癌にかかるのは2人に1人の時代」
「お米を茶わん1杯は角砂糖14個分の糖質」
「実は卵は1日に3,4個食べても問題ない」
「チョット太っているほうが実は長生きする」・・・
(引用、ここまで)
よい機会なので、本日はたがしゅう流の「情報に弄ばれないための対処法」について書き記したいと思います。 情報化社会と言われるようになってから久しいですが、近年のSNSをはじめとしたメディアの進歩による情報量の多さ、種類、拡散の速さにはめざましいものがあります。
確かに世の中には健康情報があふれ、様々な専門家と称する人達が様々な立場からいろいろなことを言っています。
情報が集まれば集まるほど、矛盾するコメントに出会うこともしばしばで、一体誰のどういう情報を信用すればよいのかがわからなくなるという気持ちは理解できます。
そんな中、私がおすすめしたいのは事実重視型思考という考え方です。
世の中の情報には、事実と解釈が混在しています。
事実とは誰がどう考えても動かしがたいたった一つの現象のことです。
解釈は人や立場によってその姿が変わりうる変幻自在の現象のことです。
こと健康に関する情報に関しては、事実風に表現された解釈ということが往々にしてありますので、
その中の事実だけに注目して、事実の情報だけを集めて、自分の頭の中で整理するというのが事実重視型思考です。
さらに事実には主観的な事実と客観的事実があります。
主観的事実とは他の人がどうあろうと自分にとって紛れもない事実のこと、
客観的事実とは自分も他人も含めて、誰がどう考えても動かしがたい事実のことを指します。
主観的な事実とは健康に関して言えば「体調」に相当します。私は「体調が最良のバロメータ」と何度も繰り返し申しておりますが、
現代の科学が重視された社会においてはこの体調という存在がしばしばないがしろにされがちだというのがまず事実重視型思考の実践において障壁となっています。
例えば、糖質制限を実践して体調が悪くなったけど、偉い先生が糖質制限をすると身体にいいと言っているから、きっと体調がよくなるに違いない、というのがその典型です。
あるいは事実でないことをまるで事実であるかのように解釈してしまうことも誤った方向へ導いてしまう問題点の一つです。
もし事実なのか、解釈なのかがわからない場合は「保留」にされることをおすすめします。
ここまでお話した原理によって、例えば冒頭のコメントで頂いた例について事実重視型思考で検証してみましょう。
「日本は世界1の長寿国」なのに「癌にかかるのは2人に1人の時代」
→これは疫学調査で観測された内容と思われますので、「(客観的)事実」となるでしょう。
「お米を茶わん1杯は角砂糖14個分の糖質」
→これも栄養学的に(生化学的に?)検証できるので、「(客観的)事実」でしょう。
「実は卵は1日に3,4個食べても問題ない」
→これはそのままの状態なら誰かの「解釈」です。
従って、実際にやってみて体調の変化を確認する必要があります。
もしも、試してみて実際に体調がよくなるようであれば「(主観的)事実」へと変化します。
「そんなちょっとやそっと卵食べたくらいで体調の変化はわからないのでは?」という人は「体調」という優秀なバロメータのことを過少評価してしまっていると思います。短期的変化と長期的変化とがあると思いますが、いずれも身体の声にしっかりと耳を傾けていれば無変化ということはきっとないはずです。
「チョット太っているほうが実は長生きする」
これも誰かの「解釈」です。疫学的データを見せつけられてまるで「事実」かのように感じられる人もいるかもしれませんが、自分の人生が他人の人生データによって規定されるはずもありません。
ちょっと太っている人で体調が悪ければこのデータは当てはまりませんし、ちょっと太っていて体調がいい人は当てはまることでしょう。
そんなこと言われても不安だという人は、事実かどうか確証が持てないのだから、せめて「保留」にしておきましょう。「保留」の項目は事実重視型思考で自分の頭の中で考える際の項目に入れないようにします。
こんな風に何が自分にとって事実なのか、解釈なのか、あるいは保留なのかをより分けていき、
事実だけに注目して思考をまとめ上げていけば、
一見して不安になるような健康情報にさらされても、華麗にスルーすることが可能となります。
私にとっては糖質制限で体調が圧倒的に改善したことは自分の中での紛れもない主観的事実ですので、
自分の中で医療を考える場合の基本原理となっていますし、たとえどれだけ権威的な人間が「糖質制限は危険である」などという情報を流してきたところで、
「その人にとってはそう考える何らかの事情がある」という風に捉えて、軽く聞き流すことができますし、
余裕があれば、例えばその人がその根拠として引用している医学論文の情報の妥当性をあせらずゆっくり検証することもできます。
医学論文はしばしば誰かの解釈がまるで動かしがたい事実かのごとく偽装されていることが多いので要注意案件なのです。
これはあくまでも、健康に関してだけの、しかも私個人の考え方です。
また他の分野では「体調」というバロメータが使えないので、利用方法は健康に限定的かもしれません。
異論もあろうかと思いますが、様々な健康情報に弄ばれないようにするためのコツとして、
少しでも読者の皆様の参考になれば幸いです。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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江部先生への投稿ができない
私たちのご先祖様は糖質制限と飢餓との連続でした。水分摂取だけでどれぐらいハンガーストライキが可能でしょうか?
たがしゆう先生はどのようにお考えでしょうか?私はこの方を応援しています。
江部先生のブログにアクセスしても書き込み制限されているようで投稿できないのです。
No title
記事の内容、趣旨に直接関係しないので、恐縮ですが、ちょっと思ったことをコメントします。
>日本は世界1の長寿国」なのに「癌にかかるのは2人に1人の時代
不勉強かもしれませんがこの情報に初めて接しました。
それで、命題として不思議だなと思ったのは、「日本が長寿国である」という話と「癌にかかる人の割合」が高いことになんらかの因果関係が想定されるのか、ということです。
「癌にかかる人の割合」というのは必ずしも癌が原因で死亡した人の割合ではなく、検査でがん細胞が見つかった人の割合を示すものだと思いますので、「癌にかかる人の割合」高いということは、がん検診を受ける人の割合が高い、ということも原因するわけです。
また、長寿であれば癌以外の死因が増える筈、という因果関係が想定されるとも思えないので、ちょっと不思議に思いました。
思いついたことをコメントしてすみません。
Re: 江部先生への投稿ができない
コメント頂き有難うございます。
FC2ブログの仕様上、過激な表現が入ると禁止ワードとして認識され投稿できない場合があります。
(何が禁止ワードになっているかはブログ管理者により様々だと思います)
> 水分摂取だけでどれぐらいハンガーストライキが可能でしょうか?
水分摂取さえできていれば、普通の体格で体脂肪10%でも約1か月は生存可能というのがおおよその目安だと思います。
ただ世の中にはそうした常識にとらわれることなく、基本的に食べない生き方である「不食」という行為を実践されて何年も過ごされているという方もおられるので未知数です。
2015年9月12日(土)の本ブログ記事
「極端な発想もいったん受け入れる」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-625.html
も御参照下さい。
個人的には糖質摂取状態よりも糖質制限状態の方がケトン体利用(脂質代謝亢進)とオートファジー(蛋白質等の再利用)の活性化が起こり、長時間断食しやすいと考えています。逆に言えば糖質習慣的摂取者がハンガーストライキを行うと1か月持たない可能性も十分あると思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
癌は長生きすればするほど顕在化しやすいという側面があります。
従って、「日本が世界一の長寿国」と「癌にかかる頻度が高い」は自然に両立しうる事象だと思います。
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