患者の希望に応えられない医療
2019/01/08 00:00:01 |
よくないと思うこと |
コメント:3件
SNSを見ていると、次のようなブログ記事の情報が目に入ってきました。
「外科医の視点」
医者と患者はなぜ分かり合えないのか?4つの原因を分析
2018/08/18
書かれたのは外科医の山本健人先生で、執筆業務も盛んになさっている方のようです。
医者と患者が分かり合えない理由として以下の4つが考えられるという主張が展開されています。 1.患者はn=1の事象を重視する
2.患者は自分にとって固有のベストを求める
3.患者はあくまで病気の「治癒」を求める
4.患者はあくまで病気の原因とメカニズムを知りたい
詳しくはリンク先のブログ記事本文をご覧頂ければと思うのですが、
現代医療は科学的に標準化された誰にとっても平均的に良い効果をもたらすであろう治療がガイドラインという形で定められているのだから、
n=1、すなわち自分だけにしか当てはまらない唯一無二の治療法を提供してほしいという患者の主張に沿うことはできない、ということを指摘されています。
また現実問題医療から自由になれる病気はそんなに多くないわけだから、むやみに「治癒」を求めず、必要以上に原因を求める検査もすべきではないという主張もなさっておられます。
ただ、主体的医療を提唱する私の意見はこれとは違います。
というよりも、1~4.の患者さんの要望は至極まっとうな希望であって、これらの希望を叶えられないところに現代医療の大きな問題点があると考える次第です。
なぜこれらの希望がかなえられないのかといいますと、科学という名の統計学でn=1の事実が軽視されている所にまずは大きな根源があります。
n=1の紛れもない事実があったとしても、科学に思考を支配された医師は目の前の事実を否定してしまうのです。
そしてそうした思考が、患者自身が固有のベストを求めようというさも当然の姿勢に対して、まるで「そんな無駄なことは止めて標準治療を受けなさい」といさめるかのように、相手の気持ちを踏みにじってしまうのだと思います。
それというのはすべて科学的根拠のある治療以外はエセ科学だと断定してしまう心の浅はかさに原因があると私は感じています。
ただしそれは医師個人の問題というよりも社会全体の問題です。
科学中心思考が、いつの間にか統計学中心思考へとすり替わったことや、
そのあいまいな科学によって標準的とされたその一つの選択肢しか実質選べなくなってしまった医療をめぐる社会構造の固定化が、この状況を生み出していると私は考えます。
患者が病気の「治癒」を求めて何が悪いというのでしょうか。
患者が病気の原因やメカニズムを知りたくてどこに問題があるのでしょうか。
その希望に答えられない現代医療の構造そのものを見直さなければならないのではないでしょうか。
私は多くの病気の原因は食事とストレスにあると考えています。
それらは何も考えずにいると容易にコントロールできない複雑な社会構造にこれまたなってしまっています。
なぜコントロールできないのかという理屈を伝え、コントロールするためには自分が立ち上がるしかないということを伝え、
その上で主体的に病態の改善に取り組めば、「治癒」は十分可能だと私は考えています。
ただし、病態が不可逆的になる前にその事に気付く必要があるとも考えています。
そのことを私は伝え続け、患者と医師が分かり合える医療を目指したいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
私の外来にはエビデンスEBM治療が通用するような軽症患者さんはほとんど来られないのですが、そもそも神経伝達物質を上げたり下げたりしているだけの薬物を処方して、EBMのある治療だというのも???ニューロンがどんどん減っていくような神経変性疾患に対して神経伝達物質の分解処理を抑える薬などを服用したところで、病気の進行は抑えられないことは自明の理なので。
神経変性疾患においては標準?治療?と呼べるは存在しないと思います。そもそも治療と言えるレベルには到底ありませんので。
生活習慣病は食事とストレスの関与が大きいのでそれを修正すればそれが治療になると思いますが。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> そもそも神経伝達物質を上げたり下げたりしているだけの薬物
> ニューロンがどんどん減っていくような神経変性疾患に対して神経伝達物質の分解処理を抑える薬などを服用したところで、病気の進行は抑えられないことは自明の理
そうですね。
よくよく考えたら超多成分系の複雑有機化合物の集合体である人体のシステムをそんな単純な機序のもので何とかしようというのが土台無理な話なんだと思います。もっと言えば材料を補充しているわけではないので、物質を「増やす」というよりも少ないところから無理矢理「絞り出す」ような治療なので、効果は一時的で徐々に消耗していくことも充分想定できると思います。
なお病態が不可逆的な神経変性疾患に対する治療方針は、
病態を進行させる要素を最小化し、残存機能を最大限に使えるように環境を整えることが基本だと私は考えています。
そのために西洋薬の使用は最低でも最小化、できれば使用せずに、自己治癒力を阻害しない類のサプリや漢方薬などの代替薬を上手に使い、消耗疲弊した消化吸収機能に負担のかからないよう配慮した栄養投与が必要になってくると考える次第です。
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