「愛」:たがしゅう哲学カフェ in 町屋の御報告
2018/10/29 16:10:01 |
たがしゅう哲学カフェ |
コメント:3件
去る10月27日(土)に第3回目となるたがしゅう哲学カフェを、
前回と同様、東京の町屋にある「MOMOの小屋」という会場で開催致しました。
十数名の方々にお集まり頂き、「愛」というテーマについて自由な対話を行なって参りました。
今回もその概要についてレポートさせて頂きたいと思います。
このような形で当日語り合った内容を整理してアウトプットしておく作業は大事だと思います。
なぜならばこれまで何回か哲学カフェに参加した経験上、アウトプットせずにそのままにしておいてしまうと、
せっかくいろいろ考えた事がすぐに忘れて消え去ってしまってもったいないからです。 実際に哲学カフェに参加された方は是非ともブログという形でなくても日記でもなんでも構わないので、
記憶の新しいうちに何らかの形でアウトプットされることをお勧めします。
さて今回は最初に参加者の皆さんへ、
「あなたは誰かを愛していますか?」という質問を投げかけるところから始めさせて頂きました。
自分自身、両親、友人、夫など様々な愛される対象の人達が挙げられていく中で、
認知症の母親を介護していく中で自分の事がわからなくなっても「いてくれるだけでよい」という気持ちが芽生えて愛に気付いたという意見を述べられた方もいらっしゃいました。
愛すべき対象は必ずしも人だけではないのではないかという問いかけを加えたことをきっかけに、
花を愛する人、思い出の品を愛する人、そして地球そのものを愛し愛されているという大きな愛について語られる方も出てきました。
こんな風に考えていくと愛とはとても良いものだというイメージが広がっていきますが、
一方で愛情が歪んでしまうこともあるという方向へ話は転換していきました。
「愛憎(あいぞう)」という言葉や、「かわいさ余って憎さ100倍」という言い回しもあるように、
現代社会の中で時折話題となるストーカーの問題へもつながるような愛することの負の側面にも目を向けていきました。
それは愛するということの目的が自分本位にあるのか、他人のためにあるのかという命題にもつながります。
落とし穴にはまった人を心配をする時、「大変だね、気の毒だわ」と他人事のように心配する「sympathy」、「急いで人を呼んで助けます」などまるで自分事のように心配する「compassion」という考え方の違いについての御意見もありました。
私達が愛することの根源的な目的ははたして何なのでしょうか。
動物の世界にも私達が愛と呼ぶものに近い現象はあるように思えます。
例えば小さな動物どうしが寒い環境の中でおしくらまんじゅうのようにくっつきあって互いに温め合うような行動です。
それは愛に基づいた行動というよりも、快・不快レベルの行動であるようにも思えます。
その快・不快レベルの行動の延長線上に人間が言うところの「愛」が存在する、ということなのでしょうか。
快・不快レベルの行動は本能とも通じます。動物園で飼われる動物達は飼育員の人達から惜しみない愛情が注がれていると思いますが、
その愛情は飼われている動物たちからすればどうなのでしょうか。一方的な愛は独りよがりの愛になりかねないような気がします。
仮に自分ひとりしかいない世界を想像した場合、そこに愛は存在するのでしょうか。
愛が生まれるには、その対象が人にせよ、物にせよ、概念にせよ、そこには必ず受け手が存在するはずです。
不完全に生まれた自分というものが、完全を求めて自分に足りないものを求めようとする行為はある意味必然です。
その行動が言語を生み出し、概念を作り出したヒトという前代未聞の動物の中ではとりわけ複雑化してしまい、愛を理解するのが難しくなってしまったのかもしれません。
しかし愛が複雑化したことによって、人間ならではの境地にも到達しうるようになりました。
それは求める愛から「与える愛」への転換です。
古代ギリシアの時代の愛の形として、エロス、フィリア、アガペーという言葉があります。
エロスは男女の愛で求める愛、フィリアは友愛で同等の愛、そしてアガペーは無償の愛、これが「与える愛」ということではないかと私は思います。
愛の形は決してひとつではありません。正解があるわけではありません。
人がもともと備える性格、環境、人間関係、地域性、国家、そして生きていく中でさらに様々な経験を積んでいくその人生経験の中で、
人それぞれ違った形の愛が形成されていくということなのでしょう。
そう考えると愛の押しつけがいかに愚かなことであるかが伺えるようにも思いますし、
与える愛の抜群の安定感も理解できるように思います。
皆さん、それぞれが愛の形について考えてもらうきっかけになれば幸いです。
当日の模様を録音したデータがあります。
たがしゅう哲学カフェに興味がおありの方はたがしゅう哲学カフェメーリングリストへ是非御加入下さい。
メーリングリスト内で録音データをシェアしています。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
また、哲学カフェにご参加の皆様お疲れ様でした。
「録音データ」を拝聴いたしました。
自分なりに「愛」を考えながら拝聴しました。
考えれば考えるほど答えが見つかませんでした。
先生がサラっと最後に言われたお言葉。
「答えを出す必要はない・・・」
今まで以上「愛」を意識してみようと思いました。
私なりの答えが見つかるかもしれません。
どんな答えが見つかるか楽しみです。
管理人のみ閲覧できます
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
当日の臨場感、少しでも伝えることができましたでしょうか。
何かのお役に立てればとても嬉しく思います。
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