とり返しがつく失敗とつかない失敗
2018/10/09 00:00:01 |
失敗学 |
コメント:2件
失敗しないように人生を生きるのではなく、
失敗を人生の糧として積極的に失敗を活かす方へ発想を変えることで、
成功への近道とするというのが「失敗学」の基本的な考え方です。
ところがこの考え方には大きな落とし穴があります。
人生の中には、一度失敗するととりかえしがつかない失敗というのもあるということです。 お笑い芸人オリエンタルラジオの中田敦彦さんはプレゼンテーションが上手なことで有名ですが、
その中田さんが以前放送されていた「しくじり先生」という番組で、発明王エジソンの子育てにおける失敗談をプレゼンしていました。
中田さんによれば、エジソンは数々の発明の成功で得た名声の裏で、長男の子育てに失敗していたというのです。
具体的にはエジソンは子育てに対して放任主義だったらしく、長男のトーマス・エジソンJr.は、自由気ままに育ってしまったため、
大人になってエジソンの名を語った会社を設立するも詐欺まがいの商法で倒産し、
その後親であるエジソンに仕送りを求めたり、あるいは懲りずに再びエジソンの名を冠した詐欺まがいの会社を設立し直したりという傍若無人ぶりだったそうです。
その話の真偽はさておいたとしても、確かに子育てというのは、
失敗したからまたこどもを作り直せばよいというわけにはいかない営みです。
同じ失敗でも例えば家を建てるというので失敗した場合ならば、
お金は相当にかかるかもしれませんが、最悪建て直すという選択肢は存在するわけです。
そうしたとり返しがつく失敗ととり返しがつかない失敗とは一線を画していると思った方がよいのかもしれません。
勿論、だからといって失敗学を学ぶことにが意味ないわけではなく、
失敗学のノウハウはここぞという時に大失敗しないようにするために用いられるべきものであるはずなので、
そういった失敗もあるのだということを頭に入れた上で生きていく必要があると私は思います。
ひるがえって、自分の身体の健康のことを思いやったときに、
そこにもとり返しがつく失敗ととり返しがつかない失敗とがあることに気がつきます。
言い換えれば、可逆的な健康課題と不可逆的な健康課題です。
ある健康課題に直面した場合に、それが可逆的なのか不可逆的なのかという視点を持つことは重要です。
なぜならばもしもそれが不可逆的だというのに可逆的だと誤解して対処しようとすれば、
まるでとり返しのつかない失敗を前に元の状態に戻そうかの如く奮闘している愚かさへと通じるからです。
とり返しのつかない失敗、即ち不可逆的な健康課題に対して行うべき対処というのは、
被害を最小限に食い止めて、これからできることを考えるということだと私は思います。
人生でとり返しのつかない失敗はしないに越したことはありませんが、
万が一それをしてしまったとしても、間違った道に進まずに済むように確かな指針を持っていたいものです。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
今日先生がお書きになっていらっしゃる「取り返しがつかない失敗、取り返しがつく失敗」ということと、いつもお書きになっていらっしゃる「ストレスマネージメント」ということに関連する内容が書かれている、とても良い本があります。
「小児期トラウマがもたらす病−ACEの実態と対策ー」ードナ・ジャクソン・ナカザワ著ーです。
これによると、脳や神経系、免疫系の形成期に継続的に受けたストレスは、たとえば海馬のサイズを小さいままにしたり、海馬と前頭前野とのつながりを弱くしたり、免疫系をおかしくしたり、エピジェネティック的に種々の弱点を生んだり、などなど、いろいろと物理的・器質的なハンディを生んでしまい、それが、うつや衝動をコントロールできない子供など問題児をつくるだけでなく、後年、慢性的なさまざまな病気の発生度合いを驚くほど高くしてしまうんだそうです。
これは、心理的な原因からではなく、純粋に身体的な原因に由来することなんだそうです。
でも、そういった小児期に体験した逆境に自分の病気や不調を引き起こした原因の一つがあるかもしれない、と気づいたら、形成されてしまったその弱点を克服するために今からでも使えるさまざまなすべがある、というのです。
そのための実際的な方法が、いくつも紹介されています。
本当に良い本なので、是非、チャンスがあれば、お読みになってみてはいかがかと思います。
ちなみに、この著者とは違う方ですが、これと関連する内容について、TEDで話されている専門家の方がいます。
https://www.ted.com/talks/nadine_burke_harris_how_childhood_trauma_affects_health_across_a_lifetime?language=ja
よかったら、視聴してみていただければと思います。
Re: No title
情報を頂き有難うございます。
> 脳や神経系、免疫系の形成期に継続的に受けたストレスは、
> いろいろと物理的・器質的なハンディを生んでしまい、それが、うつや衝動をコントロールできない子供など問題児をつくるだけでなく、後年、慢性的なさまざまな病気の発生度合いを驚くほど高くしてしまう
それこそ深堀りしてみたいテーマです。
是非とも拝見させて頂きたいと思います。
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