全ての事実に合致しない解釈は見直すべき
2018/10/08 00:00:01 |
糖質制限でうまくいかない |
コメント:4件
私が最近心がけている事実重視型思考では、
世の中に存在する無数の事実全てを説明できない解釈であってはならないという考え方をします。
もし仮に脂質制限が正しいとすれば、それと矛盾する事実がただの一つでも見つかってしまえば、
脂質制限自体の考え方を軌道修正するより他にないと私は思います。
例えば、宗田先生らが報告された、胎児は母親が糖質制限をするしないに関わらず高ケトン血症を示すという事実、
そして母乳は高脂質で低糖質であるという事実を見てみます。 もし脂質制限が正しいのだとすれば、赤ちゃんは生まれながらにしてすでに生存に不利な栄養組成を供給されていることになってしまいます。
あるいはがんとは端的に言ってミトコンドリアが破損した細胞です。
ミトコンドリアが破損すればエネルギーは主として栄養源を糖質に頼ることになります。
もし脂質制限が正しいのだとすれば、がんになった人にがんを育てるのに適した栄養組成が健康人にとっても正しいという矛盾を生むことになります。
さらには絶食の意義やそのもたらす効果についても、
脂肪酸ーケトン体代謝を基軸に考えれば、糖質制限の延長線上に位置するとして理解しやすいわけですが、
脂質制限が正しいのだとすれば、ケトン体の産生源を抑える方が健康につながるという話になってしまうので、
断食による劇的な体質改善例の理由をケトン体によるヒストンアセチル化で隠された遺伝情報を引き出すというエピジェネティックなメカニズムで説明することが困難となります。
逆に糖質制限を基本に考えれば、これらのケースはすべてスムーズに説明出来ますし、
脂質制限での改善例があるという事実は、その絶対数が少ないという事実と、
腸内細菌叢の適合具合によっては、脂質の少ない野菜だけでも生存可能であると説明する方が妥当だと私は思います。
上述の指摘以外にも脂質制限が正しいと仮定すると矛盾する点は数多くあります。
だから私は脂質制限は、少なくとも全人類に共通する普遍的な健康法たりうるとはどうしても思えません。
たがしゅう
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- 全ての事実に合致しない解釈は見直すべき (2018/10/08)
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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農耕開始以前の健康度合い
糖質制限推進派の私で、現実に「体調が一番のバロメータ」という観点でも良好を維持できていますが、他人に糖質制限推進の理由を唐突に聞かれ戸惑ったことがあります。
端的に「古くから人間は糖質をそんなに摂取していなかったが、農耕が始まり徐々に過剰に摂取する状況が出来上がってきた。本来は糖質は必要ない」と説明すると、「ならば、農耕が始まる以前は今より健康で長生きだったのか?」とその人は食い掛ってきます。
そこで「いや、当時は栄養状態も悪かったから今よりは長生きでは無いが、糖質とっていたらもっと不健康だったろうね」と答えると「ならば、現代の糖質過剰摂取でありながらも、他の栄養素を同時に摂取して健康を維持できているなら、『糖質という楽しみ』もあり長生きもできて一番いいじゃないか」と返ってきます。
私は押し問答になる前に、そんな時決まって、、、
「太らない程度でそこそこ糖質をとることは『むしろいいよ』」と宥めます。
すると「そうだろう。俺もラーメンは食いたいもんな」(笑)と落ち着くのです。
この『むしろいいよ』という言葉、案外にも自分も納得して発言しています。
「制限」というワードが「禁止」とか「止める」とかの顔をそむけたくなるような抵抗があるのでしょうかね。
よくよく考えると「糖質」「脂質」も必要な栄養素であり、問題は制限しなければいけないほど「偏った」ことです。
キャッチーな言葉があればよいなと切に感じた今回の記事です。
No title
タンパク質はオートファジーが十分に機能していれば、外部からの補充する必要はないはずですし、ビタミンやミネラルもリサイクル機能が人間にはもともと備わっているのではないか?という気がします。
ビタミンやミネラルの再利用については、たがしゅう先生が以前にブログで論考されていたような気がします。
また、水分も脂質から合成される分量で十分だったりするかも知れない?という気します。ラクダのこぶのような機能が人間に有るのか分かりませんが。
ところで、腸内細菌についてですが、適量の食物繊維やオリゴ糖を摂食すれば問題ないのではないか?と思いますが、腸内細菌叢が脂質食に適応したものとなれば、その必要もないかも知れません。
なんか毎日バターだけの食生活人体実験でもしたくなって気がしてきました(^_^;)
しかし、このような「ケトン体原理主義」とも言えるライフスタイルついては、たがしゅう先生が以前に下記の記事で疑問を呈されていますね。
「全体の中で良さを発揮する脂質」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-998.html
Re: 農耕開始以前の健康度合い
コメント頂き有難うございます。
農耕開始前の人の健康状態についてですが、
推定寿命や推定食事摂取内容はあくまでも推定なので推測の域を出ません。
しかしながら薬も点滴も何もない時代に無事に命を現代まで紡いできたという事実は重視すべきではないかと私は思います。
> 「制限」というワードが「禁止」とか「止める」とかの顔をそむけたくなるような抵抗があるのでしょうかね。
> よくよく考えると「糖質」「脂質」も必要な栄養素であり、問題は制限しなければいけないほど「偏った」ことです。
御指摘の通り、「制限」という言葉はネガティブな印象を与え、無意識のうちに我慢へとつながりがちです。
先にカロリー制限があって、それに対する「糖質制限」という言葉で対比でわかりやすかったわけですが、ここに来てそのイメージが人の行動に及ぼす影響も無視できない風潮も見えてきたように思います。
ただ、仮に新たな言葉が出てきたとしても、またその言葉に対する固定的なイメージは必ず生み出されます。大切なことはそうした言葉の持つイメージや先入観にとらわれず、「体調」をベースに偏りが生まれていないかどうかを見守る視点をいかに持てるか、ということではないかと私は思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
私はヒトの動物としての基本設計は、ある程度どんなものを自由に食べても生きていける臨機応変性を備えていると思っています。
ただし、それは基本設計を壊さない生き方を続けていれば、の話です。
何らかの原因で基本システムを使用しない生き方を続けていれば、どんな状況にも環境適応できるよう折角備わっていたシステムがいざという時に駆動せず、そのシステムを使うことなく命が尽きてしまうという事になりかねないのではないかと私は思います。
糖質頻回過剰摂取に伴う高インスリン血症で、オートファジーを抑制し、そこに脂肪があるのに使えない状況に陥れば、身体に脂肪が残存したまま餓死へつながってしまうクワシオルコルという低栄養状態が存在しているのはその良い例だと思います。
2015年2月28日(土)の本ブログ記事
「飢餓や摂食障害は、断食や不食とは違う」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-589.html
も御参照下さい。
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