「糖質を減らせばやせる」の先へ
2014/01/11 00:46:00 |
お勉強 |
コメント:4件
『Paoli A, et al. Long term successful weight loss with a combination biphasic ketogenic mediterranean diet and mediterranean diet maintenance protocol. Nutrients. 2013 Dec 18;5(12):5205-17. doi: 10.3390/nu5125205.
肥満において,長期間続く体重減少/リバウンドのせめぎ合いのことが「ヨーヨー」という用語で表現されるが,減量プロトコールというのはしばしばとらえどころのない長期の目標に対して一貫性のある結果をもたらした時にはじめて成功と考えることができる.我々は地中海料理をベースに植物エキスを加えた修正ケトン食(KEMEPHY)に伝統的な地中海食の栄養素の既知の健康利益を組み込んだ食事が長期の体重減少に好ましい効果をもたらすと仮定した.太りすぎである以外は全体的に健康な25~65歳の89名の肥満のある男女を解析した.対象者は12か月間の段階的なダイエットプロトコールを続けた:KEMEPHYを20日間,低炭水化物非ケトン食を20日間,正常カロリー地中海食栄養を4か月間,続いて再び20日ずつのケトン期を経て6か月間の正常カロリー地中海食栄養を続けた.対象者の大多数(88.25%)が,両方のケトン期で減量効果の維持に成功しリバウンドもきたすことなく6か月間の安定期間で有意な体重減少(100.7±16.54 kgから84.59±9.71 kgへ;BMI35.42±4.11から30.27±3.58へ)と体脂肪減少(43.44%±6.34%から33.63%±7.6%)を認め,効果を認めなかったのは8名のみであった.また12か月間の研究期間で総コレステロール,LDLコレステロール,中性脂肪,血糖値の有意に安定した減少効果を認めた.ケトン期の後にHDLコレステロールは軽度の増加を示したが,全12か月の終了時には有意差は認めなかった.ALT,AST,クレアチニン,BUNには有意な変化は見られなかった.伝統的な地中海食に基づいた維持栄養の期間をより長くすることによって分離した二相性のKEMEPHY食との組み合わせは大多数の対象者において長期間の体重減少と健康リスクファクターの改善の成功につながり,観察された結果の鍵となる決定因子であったコンプライアンスは非常に高かった.』
やせ体質の人が糖質制限を行う時には注意が要りますが,
肥満体質の人が糖質制限を行うとうまくいく場合が多いです.面白いようにやせていきます.
それは糖質を摂取することこそが肥満を引き起こす極めて大きなメカニズムだからです.
この事を疫学的に決定づけたのは2008年のDirectというイスラエルのShai先生らの研究です.
これは低脂肪食と地中海食と糖質制限食でどれが一番やせるかを2年間かけて調査した論文です.
低脂肪食と地中海食は「カロリー制限あり(女性1500kcal、男性1800kcal)」ですが,
糖質制限食はおそらくはアトキンスダイエットの原法に準じて「カロリー制限なし」というハンデのある条件で実施しています.
それにも関わらず,糖質制限食が最もやせる効果が高いことが証明されました(しかも結果的に糖質40%程度の緩い制限になったにも関わらず).
しかし,糖質制限反対派の医師はこの事実を認めようとしません.
例えば国立国際医療研究センター病院の糖尿病・代謝・内分泌内科医長の能登洋先生は,日本医事新報の中で,
「糖質制限食の総カロリーが最も低かったため,減量効果が糖質制限によるものなのか総カロリー制限によるものなのか結論づけることができない」
と評しています.
ところが,原文を読んでみると,3つの食事パターンで総カロリーには有意差がないこと(no significant differences)が明記されています.
これはカロリー理論にこだわるが故に「そう考えないと説明がつかない」といった思考で論文を曲解しているとしか言いようがありません.
重要なことは「カロリー非制限にも関わらず,どうして他の2つの食事パターンと同じくらいの摂取カロリーとなったのか」ですが,
それは糖質制限をやっている人であれば,「糖質の中毒性がとれて過剰な空腹感が抑えられる結果食べ過ぎなくて済むようになるからだ」というのはすぐにわかると思います.
もう糖質量を減らすことが減量において最大かつ最善の方法であることは揺るぎないと思います.
その事を支持するようにケトン食での減量効果を示す論文も次々と出てきています.それが冒頭に紹介した論文です.
この論文では地中海食にケトン食を組み合わせてアレンジしたKEMEPHYという新しい食事療法(糖質30g/日)の効果を検証していますが,やはり減量効果があることが明らかに証明されています.
反対派の人がどんな反論をしようと,私の中で糖質制限でやせるのはもはや常識と化しています.
その上で,その先にある問題に私の興味は向かっています.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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ブログについて
というのも、私もブログを始めたく、どこにしようかと迷っています。たがしゅう先生やこのブログ読者のアドバイスなどが頂ければと思い、勝手ではりますがこの場を借りて連絡させていただきました。
大変申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
Re: ブログについて
御質問頂き有難うございます。
> ブログを始めるにあたって、数あるサイト(会社)の中から、FC2ブログを選択した理由などがあれば教えていただきたいのですが<(_ _)>
私の場合は江部先生の影響を強く受けています。
何しろ初めてすることですので、とりあえず偉人の真似から入ろうと思いました。
あとは読む側の立場で考えて、一番シンプルで読みやすいように感じた、というのもあります。
やっていて困ることとしては、たまに普通に頂いたコメントが迷惑コメントとして処理されることがあるので、時々迷惑コメントフォルダを見ていないといけないということがあります。
全体としてはさしたるストレスなく運営できているように感じています。
No title
>「糖質を減らせばやせる」の先へ
>反対派の人がどんな反論をしようと,私の中>で糖質制限でやせるのはもはや常識と化し>>ています.
> その上で,その先にある問題に私の興味は向かっています.
★ おそらく、「糖質オフ」によって健康な体を作ることが出来れば、病気やアレルギーだけでなく、ケガや事故にあった際も、早く回復する力が備わるかもしれません。
そして、なによりも健康的で思いやりのある、ゆとりのある心を取り戻して、平和な社会を築きたいですね。
南スーダンや、世界各地での悲惨な内戦やテロ・・・
人は、「衣食たりて礼節を知る」のでしょう?
私は、「糖質オフ」の先に、平和で、喜びと文化・芸術に満ちた愛情ある社会を夢見たいです・・・・。
2014/1/11 わんわんの日に・・
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 私は、「糖質オフ」の先に、平和で、喜びと文化・芸術に満ちた愛情ある社会を夢見たいです・・・・。
壮大な目標ですね。目標を持つのは良いことだと思います。
あせらずじっくり今できる事を着実にやっていきましょう。
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