脳梗塞や心筋梗塞の真の予防法
2018/08/08 00:00:01 |
ふと思った事 |
コメント:9件
西洋医学ベースの現代医療で脳梗塞、心筋梗塞に対する救命救急医療は飛躍的に進歩し、
特にカテーテル治療の技術や機器の進歩により、今までは助けられなかった命を助けられる事も増えてきました。
しかしその一方で、再発予防の治療戦略はアスピリンなどの抗血小板薬とそれに伴う潰瘍予防にPPIなどの胃酸分泌抑制薬をセットで死ぬまで飲み続けることを勧めるのがなかば常識化してしまっています。
それがいかにリスクがあり正常の細胞機能を衰えさせる治療であるかということについては以前記した通りです。
西洋医学は超急性期医療に対しては優秀ですが、慢性期医療に対しては総じてお粗末な印象を私は持っています。
しかもそのお粗末な治療方針がエビデンスという見えない鎖で強固に固定されているイメージさえ持ちます。
では本日は脳梗塞や心筋梗塞の再発予防は現実的にどう行っていくべきなのかについての私見を述べたいと思います。 その前にまず最初に言っておくべきこととして、「細かいことはわからないので、とにかくたがしゅう先生の言う通りにします」というスタンスの人は、これから言う事を実践しないでほしいと思います。
そう思っているかどうかで、起こってくる結果は全く違ってくる可能性があるので、他者依存的な人に私はこの方法をおすすめしません。
こういう提案をする時に「あくまでも自己責任で」という言葉を使いたくなるのですが、
そういうと「何が起こっても私は知らないよ」といった無責任な発言という印象を与えてしまうので、そういう言い方を私はできるだけしたくないのです。
ただ自己責任であることには違いありません。このことに限らず、大人である限りは基本的にすべての行動に対して責任を持つというのが人として当然の心構えだと私は思っています。
大事なことは、「私は私で真剣に考えたことを今から述べるけれども、納得できるのか、自分に当てはまるのか、やってみてどうなのかなど、その都度自分の頭で考えながら実践に移して下さいね」ということです。
つまりは、真剣と真剣のぶつかり合いであり、主導権は患者自身にあることを忘れないでほしいと思います。
私の提唱する主体的医療のコンセプトを理解された人には以下を参考にしてもらいたいと思います。
脳梗塞や心筋梗塞という病気は、動脈硬化という過剰適応病態が血流の遮断によって一気に局所的な消耗疲弊へと移行した状態です。
言い換えれば、この過剰適応病態に対して何らかの対策を施さない限り、またいつ脳梗塞や心筋梗塞を再発するとも知れないということです。
一般的にエビデンスで支持されているアスピリンなどの抗血小板薬による治療は過剰適応病態を改善するのかといえば、そういうわけではありません。
むしろ使い続けることで出血時にそれを素早く止めるという血小板の正常機能を阻害することにつながるため、
長い目で見れば抗血小板薬はどちらかといえば人体を不可逆的な消耗疲弊へと移行させていく治療法です。過剰適応病態を正常機能に戻すベクトルとは真逆の方向となります。
では私が推進する糖質制限はどうかと言えば、これは有害物質を除く作業なので、ゆっくりと過剰適応病態から正常機能へと戻っていくことが期待されます。ちなみに禁煙もこの部類です。
少なくとも過剰糖質を適正糖質にする段階で病態を悪化させる道理はありません。しかし実際に改善するかどうか、もしくはどれくらいの速度で正常機能へと戻っていくのかは、過剰適応病態がどれくらい燃え盛っているかによります。
火事で例えるならば、ボヤ程度の火事なら火種を絶つだけで火が消し止まるのに対して、
燃え盛る火事に対しては火種を絶ったところで到底火は消し止まらず、さらに火事は拡大していってしまいます。
ましてや脳梗塞や心筋梗塞にまで至るような状況は、言わば過剰適応病態の極致であり、火事で言えば燃えに燃え盛っている状態です。
何が言いたいかと言えば、脳梗塞になった後に糖質制限をするだけでは、病勢をコントロールできずにまた脳梗塞を再発してしまう可能性は十分にあるということです。
それでも糖質制限はこれ以上火種を入れないという意味で大前提として行うべき治療です。これだけでは不十分なので何らかの消火器的な治療を加える必要性が出てきます。
それともう一つ過剰適応病態の火種となる忘れてはならないものがストレスです。
もう少し正確に言えば種々のストレスによってもたらされる交感神経神経過緊張状態です。
血圧上昇しかり、血糖上昇しかり、頭痛しかり、動悸しかり、不安しかり、緊張しかり…
交感神経過緊張状態によってもたらされる全ての病態が過剰適応病態とリンクするといっても過言ではないくらい重要な概念です。
交感神経過緊張状態をもたらすストレス要因を徹底的に見直さない限り、糖質制限をしたとて火種を完全に消し止めたことにはなりません。
職場環境かもしれないし、家族の病気かもしれないし、思考のクセかもしれないし、こじれた人間関係かもしれない、
とにかくできる限り過剰適応病態≒交感神経過緊張状態への火種となる可能性のあるストレスに対処します。
例えば仕事でストレスがあるのはわかっているけれど家族のためにやむなく今のまま働き続ける、というのはダメです。それだと火種を一つ残し、再発しても仕方ないリスクを許容することになります。
本当に再発したくないのであれば、一つひとつ真剣に見直していくことです。この作業は医師にアドバイスは出来ても、医師に実践できることでは到底ありません。主体的に動く必要があるのです。
その上で交感神経過緊張状態を人為的に正常化させる治療がいわゆる消火器となるわけですが、
西洋薬の中で交感神経過緊張状態を正常化させる薬は意外とありません。
強いて言えば震えを止めたり、頻尿改善のためなどに用いる抗コリン薬という薬があります。
あるいは抗精神病薬として使われるクロルプロマジンなどは自律神経遮断作用があると言われています。
これらは交感神経機能を強制的シャットダウンさせはしますが、自律神経を自律的にコントロールする自己調整力は阻害されてしまうので、
消火器というよりブルドーザーで火事場ごと破壊するようなイメージで好ましい対処法とは言えません。
対して交感神経過緊張状態に対する消火器として可能性がある薬物療法として私は漢方とホメオパシーに可能性を感じています。
従ってまとめると私が脳梗塞の再発予防のための治療方針は、
過剰適応病態をもたらす糖質過剰とストレスの二大火種を中心にまずは消し止める作業に集中し、
必要に応じて漢方薬やホメオパシーを用いるというのが基本方針となります。
しかし忘れてはならないのは、このような治療方針は現代医療の中で一般的ではないので、
一般的治療とされる抗血小板薬を飲まなくて本当に大丈夫かという不安がストレスとなり、過剰適応病態への新たな火種となる可能性があるということです。
その不安を自分でマネジメントできない人に対しては、
短期間だけ本人の安心のために、デメリットを許容し抗血小板薬を処方しながら、同時並行で上述の基本方針を勧めることになるかもしれません。
というのも短期間使用に留めれば西洋薬の自己治癒力を阻害する働きはさほど気にする必要はないと思いますし、
そうすることで新たな不安の火種を消すことができるのであれば、その間に糖質制限+ストレスマネジメント、時折漢方やホメオパシーという治療方針を進め続けることで、
過剰適応病態を根本的に正常状態へと戻すことが可能になるのではないかと私は考えます。
考えてみればこの治療方針、患者さんが主体的に動かない限り成立しません。
しかしこれこそが真の脳梗塞再発予防となる、これが私の考えです。
こうすれば抗血小板薬とPPIの連用の呪縛から解き放たれるのではないかと考える次第です。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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運動は糖質制限とストレスマネジメントをたすける
基本的に、なにごとにも食事(糖質制限)、運動、休養(ストレス軽減)がだいじとおもってます。
過剰適応病態に糖質制限とストレスマネジメントが大事ということで、その通りでしょうが、運動を加えるとさらにいいのではとすこし思います。
運動は糖を制限していくときにおこる適応を助けるとおもいます。脂肪に頼っていく身体になるための変化を後押しするんではないでしょうか。
さらに糖質制限に適応しているときには、運動で脂肪の代謝の発動をさらに確かなものにしておけば、利点は多いでしょう。
運動するとストレスがへるという調査もあるようです。運動は身体を伸ばすことくらいから始まり、ゆっくり歩いたりするのも入るでしょう。なんらストレスを感じる存在ではないので、楽しめる余地はおおきいとおもいます。
やはり糖質制限と同じように、自分にあった工夫でしょうか。
結論もありませんが、感じましたコメントです。
1日1食でも食べる人はかなり食べますし脂質がどうしても多くなると1食でも余裕で自分の1日の代謝以上のカロリーを摂取してしまうと思います。
Re: 運動は糖質制限とストレスマネジメントをたすける
コメント頂き有難うございます。
過分な御評価を頂き有難うございます。
糖質制限+ストレスマネジメントに運動を加えてはどうかという御意見は時々頂きます。
これについて以前考察したことがございますが、私の真意はまだまだうまく伝えられていないようにも思います。
2018年4月26日(木)の本ブログ記事
「運動習慣に見合った筋力がつく」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-1328.html
も御参照下さい。
別の言い方をしますと、運動をしてみて心地よいと感じて続けられる人は運動すればよいし、
そうではない人は日常生活での活動も運動だと考えて、不自然な姿勢や満遍なく筋肉を使うことを意識すれば、いわゆるスポーツ的な運動をしていないからといって糖質制限+ストレスマネジメントをしていれば普段の生活で大きな問題はないと私は考えています。
一方で例えば、試合で勝ちたいとか、子供の運動会でいいところを見せたいとか、普段の生活に見合わない強度の運動をする事が予めわかっている状況がありその目標を達成したいという場合は、多少辛いと感じる運動をトレーニングとして行っていた方が有利だと思います。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
厳密なカロリー「熱量」という意味では、カロリーはあてにならない指標だと私は考えています。
複雑有機化合物の集合体であり、しかも腸内細菌という複雑有機化合物を身体に宿している生体では、機械のような内燃機関と同じようなエネルギー計算は当てはまらないからです。
ただし俗に言うカロリー「摂取量」という意味では、確かに重要だと思います。
私も消化管の機能障害がなく、タンパク質でも結構なインスリンが分泌され、さりとて1日1食なので基本的にケトン体代謝がよく働いてエネルギーの節約機能が存分に働いていて、少量の食物でも非常によく吸収されるような状況とはいえ、食べ過ぎれば太る、量を減らせばやせるの原則は、直線的ではないものの基本的に当てはまると思います。
No title
脳梗塞や心筋梗塞を火事に例えたお話は、
大変分かり易かったです。そこで一句です。
脳梗塞や心筋梗塞とかけて、火事と解く、
二度と繰り返さないため、その心は、
「根本原因を知り改善しよう。」
火事の場合、悲劇を繰り返さないよう、
根本的な原因を知り、改善しようと努力します。
二度と消防士のお世話にならない様、気を付けます。
主体的な行動をとる傾向があります。
しかし医療の面では主体性の無い傾向が強いです。
医師に対する信頼感、依存心が強すぎます。
脳梗塞や心筋梗塞の場合、繰り返したくないのに、
根本的な原因すら知ろうとしない。
医師に依存し、薬による見せかけの状態に安心する。
身体が発する真の悲鳴に気付かない。
「学び」無くしては、主体性が持てません。
学ぶ能力には、個人差もありますが、
学ぶ努力は大切だと思いました。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
主体性というのは不思議なもので、
目の前にあるにも関わらず、それに一生気付かずに終わるということもありうるものだと思います。
自分の命にまつわる出来事であれば、火事よりよほど本気で主体性が発揮されてもよさそうなテーマなのに、
世の中はそれを放棄している人があまりにも多いような気がいたします。
何にしても小さな学びをコツコツと積み重ねていくことは大事だと思います。
そうすればいざチャンスがめぐってきた時に、そのチャンスに気付く可能性が高まるかもしれませんね。
No title
健康である私が熱心に糖質制限をし、時に1日1食として空腹感を楽しむのには理由があります。交感神経過緊張状態が常に続いているゆえ、何とかする必要があるからです。
糖質制限を開始し、ベースを崩さず色々模索していく中で、(糖質制限の)面白さを感じました。身体的精神的な結果が出るからです。(糖質制限をしてからイライラする事がなくなり、穏やかになれました。)
自分なりの方法を模索しながらの糖質制限継続が、交感神経過緊張状態であっても現在の健康維持できると考えています。ですから、この環境から逃げ出さずにすんでいると思っているのです。
くんだみえ
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
糖質制限だけで交感神経過緊張が和らぐ場合とそうでない場合とがあり、後者は個人的には割と無視できないくらいの数がいる印象を持っています。それを克服するために大事なアプローチがストレスマネジメントだと私は考えています。
それを自力で実践できない人の救済策として私が持っているカードが漢方薬とホメオパシーです。いずれも自然に根ざした治療です。自然に還れということを教えられているようにも思えます。
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