「のどが渇く前に水分を」への違和感
2018/08/04 00:00:01 |
素朴な疑問 |
コメント:6件
連日かつてない猛暑の到来に注意換気を促す報道が続いています。
私がこどもの頃に学校で学んだ地球温暖化が今現実のものとなってきている実感とともに、
人類が自らの都合で加え続けてきた人為がもはや取り返しのつかない段階まで及んでいるのではないかという恐ろしさを感じずにはいられません。
そんな中、熱中症関連のニュースもしばしば報道されていますが、
この時に決まり文句のように言われるセリフが「のどが渇く前から水分をこまめに摂りましょう」です。
しかしこの「のどが渇く前から」というのは、はたして本当でしょうか。 というのは、のどが渇くという機能は本来何のために備わっている機能かということを考えればこのおかしさがわかります。
自然界の生物にとって「のどが渇く」という機能は、水分摂取行動を促すために備わっていると考えるのが妥当だと私は思います。
逆に言えばそうでない限りのどが渇くという機能が備わっている意味はないのではないでしょうか。
ところが、今人間の世界では「のどが渇く前から水分摂取を」ということが金科玉条のごとく言われ続けています。
これでは、「そんな機能は当てにならないから、信用せずにとにかく水分を頻回に摂取せよ」と言っているようなものです。
これが老化で生体機能が衰えてきている人だけで言われている話なのであればまだわかりますが、
実際には「こまめに水分を摂るように」とは耳にタコができるほど言われているはずの高校生以下のこども達でも熱中症で救急搬送される事態が相次いでいます。
ということは全年齢、全世代に渡って、正常な機能を働かせなくする要因が加わっていると考えるのが妥当ではないでしょうか。
勿論自然の法則に従えば水分摂取や日陰に移動するなどの行動を起こすべきところが、外仕事やスポーツなどの半強制的にそれを出来なくさせる環境要因が関わることもあるでしょうけれど、
本来働くべき機能を働かせなくさせる要因には、糖質頻回過剰摂取やストレス過剰の背景が少なからずあるのではないかと私は思います。
もっと言えば、のどが渇く前に水分をこまめに摂ることは本当に熱中症予防になるのでしょうか。
水を飲みすぎることへの弊害もあるはずです。極端な所では「水中毒」という病態がありますが、
そこまではいかずとも、「喉が渇く」という自然のサインを無視して水分を摂るとなると、一体いつまで水分を摂ればよいのかという目安がわかりませんし、
とにかく水分を摂り続けたとしても、それでも熱中症になってしまった人は、もっと水分摂取をすべきだったと安易に結論づけられて終わりになるのではないでしょうか。
要するにいつまでたっても正解が分からず、失敗が教訓にならないのです。
糖質制限をするようになり、より必要な時に喉が渇き、必要でない時には渇かないというように、
身体がその辺りのバランスを絶妙に調節してくれているような気がします。
喉が渇いているのに、何らかの事情で水分が摂れなくて調子を崩す人の体調不良の原因ははっきりしていますが、
喉が渇く前に水分を摂っているのに調子を崩すという人は、身体の正常な機能を働かなくさせている何らかの要因に意識を向けて解決のための行動をとるべきではないかと思います。
そこに目を向けずにこまめに水分を摂り続けることは受動的で発展性のない行動だと私は思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
よくぞ書いて下さいました!
私も同じことを考え、同じことを思っていました。
喉が渇いたと感じてから水分を摂る。
この当たり前のことを無視していたら、身体がいろんなサインを与えてくれなくなるだろうし、サインを読み取る機能を退化させてしまうだろうと危惧していました。
またマスコミでは「ためらいなく冷房を使って…」と啓蒙していますが、温暖化が続く可能性が高いのであれば、暑さに耐えられる身体になるよう少しずつ慣らしていく必要があると思っています。
だいぶ前に漢方の先生から、『春の厚着に秋の薄着』と教えていただきました。
「春に厚着を心がけて夏の暑さに耐えられるようにしておきなさい」ということでした。
秋はその逆ということですね。
身体のサインを受け取る感受性が弱まらないよう、これからも精進したいです。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 「ためらいなく冷房を使って…」
> 『春の厚着に秋の薄着』
前者は自然を人為的にコントロールしようとする発想、後者は自分達が自然に適応しようとする発想ですね。
対症療法と根治療法の関係にも似ています。長期的にみてどちらが望ましいかは自然重視型医療の立場に立てば明白だと思います。
水を飲まない?
私も糖質制限してるとあまり水を欲さない気はします。いつも行くスーパーで美味しい水の無料サービスがありまして味見したく帰る際に飲んだのですが、帰り道や家についてあまり疲れなかったんです。たぶん小さい紙コップなのでヤクルト一本分くらいの水です。それからスーパーの帰り際にはお水をいただいて帰ります。お水の味は硬度が高くくせがあり私好みではなかったのですが。
数年前の暑い夏、糖質制限をしている方が家に居て熱中症になりかけたとあり私もそれからは気をつけるようにはしています。もう一人糖質制限の方もその夏胃腸炎と熱中症になったとありました。
No title
しかし、摂取した水分は殆ど小腸で吸収されてしまい、
大腸に滞留した便塊の軟度に影響を与えてはいないかと思われます。
そんなことを分かっていながら、こまめに水分を補給しています。
無駄と分かっている行為を敢てして、身体を騙すのも
ストレスマネジメント的には有効な場合が有るのではないかと
思ったりしています。
でも、それは根治的ではないです。
消化器内科や消化器外科の医学書を熟読しなければ、いけないのかな?と
思っています。
医療関係者と非医療関係者における知識の落差が何処に有るかと言えば、
それは解剖学的な所に有るのでは無いかと思われます。
Re: 水を飲まない?
コメント頂き有難うございます。
糖質制限は生理・生化学的な観点で言えば糖代謝から脂質代謝への切替作業で、
臨床的な感覚としてはそれでうまく人の割合の方が多い印象がありますが、必ずしもそれだけでうまくいくとは限らない人も一定数いらっしゃるようですね。
> 糖質制限をしている方が家に居て熱中症になりかけたとあり私もそれからは気をつけるようにはしています。もう一人糖質制限の方もその夏胃腸炎と熱中症になったとありました。
こういう話を聞いて思うのは、客観的な情報が少なくて判断が難しいということです。
糖質制限をしているといってもどの程度だったのか、実は無自覚の糖質摂取があって実質的に糖質制限できていなかった可能性はどうかとか、糖質制限による代謝の切替が病態の悪化に寄与したのか、あるいは糖質制限による病態の改善効果が間に合わずに悪化してしまったのか、
もう少し掘り下げて話を聞けばどのパターンなのか推測できそうなことがあっても、とにかくその情報だけではなんとも言えないということです。しかし実際にはそうしたシンプルな意見が伝わりやすくて情報が一人歩きしてしまうところもあります。
やはり本当に糖質制限が自分にとっていいのか悪いのかを知るには、自分自身がしっかりと腰を据えて考え続けることが結局一番近道なのではないかと私は思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 無駄と分かっている行為を敢てして、身体を騙すのも
> ストレスマネジメント的には有効な場合が有るのではないかと
> 思ったりしています。
私もそう思います。
どれだけ治る道理がないと思われることでも、本人がそれを快と感じているのであれば、ストレスマネジメント的にありだと私は思います。ヘビースモーカーもそうですし、民間販売の高額な健康食品を盲信している方も、プラセボ効果を通じて改善効果をもたらしている可能性は充分にあります。快をベースとしたプラセボ効果も私は立派な治療効果だと考えています。
しかし御指摘の通り根治的ではないです。根治に際しては「自然をベースに時々適切な人為を加える」ことが基本だと私は考えています。
おそらく水代謝に関わるアクアポリン受容体の分布に個人差があり、解剖構造が一緒でもある人は水分摂取が軟便化に寄与し、またある人では寄与しないといったこともあるのではないか、とも考えています。
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