抗がん剤はがんを不可逆化する
2018/08/03 00:00:01 |
主体的医療 |
コメント:7件
がん悪液質(カヘキシア)と呼ばれる状態があります。
悪液質とは、末期がんの方に見られる状態で、多くは食欲不振・体重減少・全身衰弱・倦怠感などを呈する状態のことをいいます。
私が提唱する過剰適応/消耗疲弊の概念でいえば、消耗疲弊の範疇に入る病態となりますが、
以前も述べたように過剰適応病態と消耗疲弊病態には連続性があります。
身体の正常機能を使い過ぎてセルフコントロールできないくらいにオーバーヒートしてしまった過剰適応病態はまだ可逆的ですが、
その状態が解決できずにいると次第に不可逆的な消耗疲弊病態へと移行していくという流れがあります。
悪液質とは基本的には過剰適応病態にあるがんが不可逆的なステージへと進行しつつある状況を指していると私は考えます。 がんが基本的に過剰適応病態だと考える理由はいくつかあります。
ひとつはがんの病態に細胞の過剰増殖という正常細胞の機能がまさに過剰に働いているという側面があること、
もう一つは手術や抗がん剤、放射線治療などを行わずに末期がんから生還したがんサバイバーが実在するという事実があるからです。
末期がんでも治るという事はがんという病態が基本的に可逆的だということになると思います。
その可逆的な病態も悪液質を伴うようになれば不可逆的な病態へとステージが進行していることを示すというのが今回の私の仮説ですが、
その事は悪液質について少し踏み込んで学ぶと根拠が見えてきます。
京都大学医学部附属病院、探索医療センターの赤水尚史先生が書かれた「がん悪液質の病態」という総説によりますと(静脈経腸栄養 Vol.23 No.4 2008)、
がん悪液質には単なる栄養補給を行っても病態が改善しない不可逆性があることがわかります。
一方でその病態の中には基礎代謝の増大、糖代謝回転の増大、脂肪分解亢進や肝臓における急性期蛋白の合成亢進など、
正常の細胞機能がオーバーヒートしている要素が散見されることがわかります。
要するに悪液質となるには必ずがんの過剰適応病態期を経てから不可逆的な消耗疲弊病態期へと移行しているのであって、
だからこそ不可逆的と思われる悪液質に過剰適応病態が潜在しているのではないかと考える次第です。
もう一つこの悪液質を人為的にもたらす手段としてがんの化学療法があります。
私は神経内科医で現在がんの患者さんを診る機会は少なくなりましたが、
かつて私が研修医だった頃、抗がん剤の治療を続けて食欲不振となり、やせて活気がなくなっている患者さん達とはたくさん出会いました。
そのことを思い出しつつ今思うのは、
抗がん剤は可逆的ながんを不可逆化する側面があるということです。
いついかなる場合も医師としてそれだけはやってはいけないと私は思っています。
従って私は抗がん剤に対する明確な反対派です。
私ががん治療を行うなら、可逆的ながんを正常に戻すための治療を提案し続けます。
そのための基本は糖質制限とストレスマネジメントですが、正直言ってそれだけではまだ十分に戦いきれていないのが実情です。
だからこそ漢方薬やホメオパシーの治療技術を高める努力を日々続けています。
そんな私でも患者さんが主体的ではなく、従来医学の常識に基づいた自主的な行動をとる場合は、
患者さんの希望通り抗がん剤治療を受けられるようしかるべき病院を紹介してしまうかもしれません。
無理に私の価値観を押し付けることが患者さんのストレスとなってしまうし、
それこそ文化的で到底代え難い価値観だということが前もってわかっているからです。
がんに対して自分で考えることを怠り、従来常識に従って抗がん剤治療を受け続け、
知らないうちに病態が手遅れへと進んでしまわないようにするためにも、
私は患者さんに主体的であることを勧め続けたいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
- 2023/10 (1)
- 2023/09 (5)
- 2023/08 (9)
- 2023/07 (4)
- 2023/06 (5)
- 2023/05 (5)
- 2023/04 (7)
- 2023/03 (7)
- 2023/02 (5)
- 2023/01 (7)
- 2022/12 (5)
- 2022/11 (4)
- 2022/10 (11)
- 2022/09 (6)
- 2022/08 (6)
- 2022/07 (5)
- 2022/06 (6)
- 2022/05 (4)
- 2022/04 (5)
- 2022/03 (5)
- 2022/02 (4)
- 2022/01 (7)
- 2021/12 (14)
- 2021/11 (4)
- 2021/10 (10)
- 2021/09 (10)
- 2021/08 (8)
- 2021/07 (14)
- 2021/06 (11)
- 2021/05 (17)
- 2021/04 (9)
- 2021/03 (8)
- 2021/02 (9)
- 2021/01 (14)
- 2020/12 (9)
- 2020/11 (7)
- 2020/10 (6)
- 2020/09 (9)
- 2020/08 (11)
- 2020/07 (20)
- 2020/06 (22)
- 2020/05 (18)
- 2020/04 (22)
- 2020/03 (10)
- 2020/02 (7)
- 2020/01 (5)
- 2019/12 (9)
- 2019/11 (19)
- 2019/10 (31)
- 2019/09 (6)
- 2019/08 (7)
- 2019/07 (7)
- 2019/06 (13)
- 2019/05 (21)
- 2019/04 (9)
- 2019/03 (13)
- 2019/02 (15)
- 2019/01 (28)
- 2018/12 (9)
- 2018/11 (2)
- 2018/10 (11)
- 2018/09 (30)
- 2018/08 (31)
- 2018/07 (31)
- 2018/06 (31)
- 2018/05 (31)
- 2018/04 (30)
- 2018/03 (31)
- 2018/02 (29)
- 2018/01 (31)
- 2017/12 (31)
- 2017/11 (30)
- 2017/10 (32)
- 2017/09 (31)
- 2017/08 (31)
- 2017/07 (32)
- 2017/06 (31)
- 2017/05 (31)
- 2017/04 (31)
- 2017/03 (31)
- 2017/02 (29)
- 2017/01 (32)
- 2016/12 (31)
- 2016/11 (30)
- 2016/10 (31)
- 2016/09 (15)
- 2016/08 (11)
- 2016/07 (5)
- 2016/06 (10)
- 2016/05 (8)
- 2016/04 (5)
- 2016/03 (5)
- 2016/02 (10)
- 2016/01 (10)
- 2015/12 (7)
- 2015/11 (8)
- 2015/10 (7)
- 2015/09 (6)
- 2015/08 (6)
- 2015/07 (5)
- 2015/06 (5)
- 2015/05 (5)
- 2015/04 (3)
- 2015/03 (10)
- 2015/02 (28)
- 2015/01 (31)
- 2014/12 (31)
- 2014/11 (31)
- 2014/10 (31)
- 2014/09 (29)
- 2014/08 (53)
- 2014/07 (31)
- 2014/06 (30)
- 2014/05 (31)
- 2014/04 (30)
- 2014/03 (31)
- 2014/02 (28)
- 2014/01 (31)
- 2013/12 (32)
- 2013/11 (30)
- 2013/10 (33)
- 2013/09 (39)
カテゴリ
メールフォーム
スポンサードリンク
検索フォーム
ステップメール
リンク
QRコード

コメント
No title
https://www.huffingtonpost.jp/foresight/doctor_b_6279870.html
奥さんが乳癌になった医師のブログ記事です。
この中で考えさせられる一節が有りました。
「生を全うして10年生きるのか。
それとも、
いろいろな治療を受けて、
もがきにもがいて、
なんとか10年生きるのか。
同じ10年でも、
それは天と地ほど違う。」
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
御紹介の記事、読ませて頂きました。
記事の中に次のような一文がありました。
> 日進月歩で変化する医療に翻弄され、医師に頼るしかなく、見捨てないでほしいとひたすら祈る。医師であった私がそうであったのですから、そうでない一般の方の「見捨てないでほしい」との気持ちは、いかばかりか――想像するに余りあります。
お気持ちはお察ししますが、これこそが受動的医療の構造そのものだと私は思います。
受動的医療の構造のままでは医学がどれほど進歩しようと、どれほど優秀な医師にかかろうと、このような辛い出来事は今後も繰り返されてしまうのではないかと思います。
だからこそ医者でないと病気の事はわからないという思い込みは捨て、本来自分の手元にあるはずの自分の健康について、誰よりも自分が中心となって考える主体的医療についてもっと真剣に考えるべきだと私は思います。
受け入れる生き方
「オプションが三つもある」という商品的な感覚です
事実、妻が乳がんに罹患した時に主治医から「手術をした後に、念のため抗がん剤をしましょう」「再発しないようにです」と勧められました。
家族としては「1つでは不安だから2つであれば安心だ」という直感的な感覚で受け入れました。
現在再発はありませんが、抗がん剤投与が奏功したのかは謎です
「癌状態」が身体の「最終防御機能」という観点からいえば、「手術」は選択肢としてあり得ると思いますが、他の2大治療は過剰適応か消耗疲弊かで、注意深く判断する必要があると思います。
Re: 受け入れる生き方
コメント頂き有難うございます。
手術と放射線療法に関しては局所的な過剰適応状態を強制的に除去または死滅させ、あとは残った正常機能細胞でなんとか代謝環境を整えさせるという点で、根治的ではないものの、まだ出番がありうるという感じですが、
化学療法は過剰適応細胞も正常機能細胞も一緒くたにして消耗疲弊病態へと移行させてしまいます。過剰適応細胞が死滅しても、ほとんどの場合それ以上に多くの正常細胞が消耗疲弊化しているので、相対的には状況は悪化している可能性が高いです。化学療法の消耗疲弊化に耐えきれた正常機能細胞を持つ人だけが延命の恩恵を受けられる可能性がありますが、耐え抜いたとしても元の正常機能細胞より機能が衰えていることが確実なので、化学療法を受ける前の身体活動能力を保持することは到底期待できません。
そういう意味で化学療法は、一部の白血病や精巣腫瘍(セミノーマ)などを除いて、本当に出番のない治療法だと私は考えています。
No title
ありがとうございます。
癌になったら医師ほど代替療法に切り替えるとネットの記事で見掛けた事があります。抗がん剤などが、戦争の時代に人を殺す為に作られた薬で出来ているという内容でした。(事実かどうかは分かりません)
良性でも悪性でも腫瘍は消えます。三位一体、人は体、心、魂で成り立っています。いくらレベルの高い研究と言いましても、体だけに目を向ければ終わりのない迷路、治癒にはなかなか至らないと思います。ほとんどの人が西洋医学にとらわれているのが残念です。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
化学療法で治療可能な血液がんも、化学療法によってもたらされる影響の構造は変わらないので化学療法を使わないに越したことはないと思います。ただもしも私が化学療法を考慮する場合があるとすればその辺りのみ、という感覚です。
寺山心一翁さんの講演を聞いたことがありますが、大変参考になる御意見ですね。
心や魂の問題を置き去りにしてはがんを克服する日は決してこないであろうことを感じさせられる次第です。
2016年9月4日(日)の本ブログ記事
「難病を克服するメンタリティ」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-721.html
も御参照下さい。
コメントの投稿