糖質制限がうまくいかない人の腸内細菌とは
2018/07/31 00:00:01 |
素朴な疑問 |
コメント:4件
私の糖質制限指導歴の中で、糖質制限をしているにも関わらず、
うまく症状を改善することができない人のほとんどに自律神経失調が関わっている印象がありました。
また別の観点でみれば、糖質制限単独で制御困難な病態の一つに神経変性疾患、特に私の専門領域であるパーキンソン病があります。
パーキンソン病の根幹には自律神経障害の問題があります。
あるいは以前紹介した副腎疲労という病態は、いきなり糖質制限を行うと脱力感を生じたりするために副腎疲労は糖質制限の慎重適応だという考察もしたことがあります。
それらの事実から糖質制限で症状が悪くなる状況の背景にストレス過多に伴う自律神経、内分泌系の問題がある可能性が見えてきます。
さて、ストレス過多によって起こるよく知られた病気の一つに「過敏性腸症候群」という病気があります。 過敏性腸症候群とは、ストレスなどを誘因としてお腹の痛みや不快感に下痢や便秘などを生じる疾患のことで、一般人の約10~15%にみられると言われるコモンな病気です。
この過敏性腸症候群に対して、先日とある漢方の勉強会で、
小建中湯という漢方薬と大建中湯という漢方薬を組み合わせた「中建中湯」という漢方薬が有効である事があるという話を聴きました。
なぜならば過敏性腸症候群の背景には腸内細菌の発育不良があり、それを育てるために中建中湯の中に含まれる「膠飴(こうい)」という成分に麦芽糖が含まれており、
その麦芽糖が腸内細菌を発育させる効果をもたらすからだと講師の先生は述べられていました。
膠飴にしても、麦芽糖にしても糖質です。広くみれば糖質を摂取して症状が改善する実例の一つということができます。
そういえば似たような理屈は以前にも聞いたことがあります。
腸内細菌が漢方薬の成分の中の配糖体、すなわち糖が結合した物質のことですが、その中の糖を腸内細菌が利用して、
残った物質が薬効を発揮して宿主によい影響をもたらして、しかも宿主に糖の害は行きわたらないという話があったと思います。
これらの例は言ってみれば、糖質制限をしてしまうと腸内細菌は育たないし、薬効も発揮されないという糖質制限でデメリットがもたらされるメカニズムを説明しているということもできそうです。
私は今まで糖質制限がうまくいかない人の身体の中では糖代謝優位になっていて、
脂質代謝がうまく使えないことが糖質制限がうまくいかないことの最大の原因ではないかと考えている所がありましたが、
もう一つの可能性として糖質を利用して宿主に益をもたらす類の腸内細菌を備えている人も糖質制限で調子が悪くなる可能性があるのではないかと思いました。
そういう人が糖質をとって調子が良くなれば、「あぁ、この人は糖代謝優位になっているんだ」と解釈してしまいそうですが、
実際にはその人が糖代謝優位とかではなくて、糖を腸内細菌がうまく処理してさらに残った成分が有益性をもたらしているが故に糖代謝優位な人に見えていただけなのかもしれません。
だから糖質制限でうまく行かない人とうまく行く人の腸内細菌叢をもし比べることができれば、
何か面白い事実がわかってくる可能性はあるのではないかと思います。
しかしここでもしシンプルに糖だけが存在する精製糖質を送りこんだ場合は、おそらく同じ事は起こらないことが予想されます。
なぜならば糖だけだと腸内細菌が食べるだけで宿主に有益性をもたらす成分が残っていないからです。
きっと漢方薬のように糖は糖でも自然構造を保ったもので摂取するところに意義があるのではないかと考える次第です。
糖質制限でうまくいかない人が現実に存在するという問題については、
これからまだまだ真剣に考えていかなければならないと思っています。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
先日夫婦揃って糖質制限を長年続けて副鼻腔炎発症と報告しました。
その後、糖質制限は続けながらも、MEG食一辺倒だったメニューを魚や発酵食品を織り交ぜるようにし、腸内炎症になりやすい牛肉を控え、鶏肉を多めに。腸内環境を考えるようになって、症状が改善していきました。
糖質制限の落とし穴として、同じメニュー(食材)になりがちな点が挙げられると思います。
同じものを食べ続けると受け付けなくなりませんか?
それは嗜好ではなく、身体のシステムが嫌がっている本能的なものだと考えると、納得なきがします。
それが腸内の炎症=アレルギー反応につながるのではないかと、自分たちの体験から考えています。
だとすると、多くの不調が改善していった糖質制限食において、4,5年継続後アトピーや副鼻腔炎などのアレルギー症状のみが改善できていない症例にあてはまるような気がしています。
疑わしきは卵などの乳製品の遅延型アレルギー、カフェイン、アルコール、これらも可能性があるので、今後夫婦で人体実験していき、また報告させていただきます。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 同じものを食べ続けると受け付けなくなりませんか?
確かに。私もそれはありますね。
いろいろな食べ物があるから違う食べ物を欲しがるのか、何らかの防御反応として違う食べ物を欲しがるのか、解釈の仕方は一様ではありませんが、確かにそういう事実はあるように思います。
個人的にはアレルギーコントロールにはストレスの関与もあるように思います。うまくいく事を祈っております。
2015年2月2日(月)の本ブログ記事
「ストレスとアレルギーと副腎機能」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-562.html
も御参照下さい。
パーキンソン病のお友達
昨日の哲学者カフェ、残念ながら参加できませんでした。また、開催して下さいね^_^
ところで、お友達でパーキンソン病の方がいます。なんとかストレスマネジメントで克服されようとしているのですが、『もう、くたびれたな…』とおっしゃってて、どうにか力にならないものかと、考えていたところでした。
たがしゅうさんとは、話が合いそうなので、また、相談させて下さいね^_^
Re: パーキンソン病のお友達
コメント頂き有難うございます。
パーキンソン病は難しいです。
ストレスマネジメントに問題がありそうなことは多くの患者さん達を見ていて私が感じるところですが、それをこじらせてしまっているからこそ自力でのストレスマネジメントが困難になっているという状況があると思っています。
しかしそれでもストレスマネジメントは自分の力で行うより他にないのです。
諦めるのも自分、少しずつでも考え方を変えてみるのも自分です。
自力でのストレスマネジメントが困難な状況に対して、私が扱える治療手段には漢方、ホメオパシーがあります。他にも世の中には西洋医学以外の様々な治療法があると思いますが、基本的にはいずれも補助療法の域を出ません。自らそうした治療法について情報を求め主体的行動を起こす人の背中は押すことができると思います。他者依存、現実逃避の思考パターンにあれば、残念ながらこれらの治療も無力と化すと私は思います。
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