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西洋薬は自己治癒力を阻害する
心肺蘇生法しかり、脳卒中や心筋梗塞に対するカテーテル治療しかり、種々の命を脅かす疾患への手術しかり、それを支える麻酔技術しかり・・・
そして西洋医学を支える西洋薬についても、急場をしのぐという意味では即効性なり有効性なり絶大な効果があります。
例えば自己免疫性疾患の急性病態に対するステロイドパルス療法などは確かに効果がある現実を私はこの目で見てきました。
あるいは高血圧緊急症に対する緊急降圧手段としては西洋薬の降圧剤を静注する方法よりも有効性、即効性のある手段はおそらくないでしょう。
しかし、いかんせんそのいずれもが根治療法とはなりえず、とりあえずの症候を抑える対症療法に過ぎません。
それどころか、与える影響が急峻で強力であるが故に、西洋薬は自己治癒力を阻害する側面があると私は思っています。
例えば、ステロイドは確かに症候を抑えるのに有効かつ強力な薬ですが、
ステロイドを長く使用し続けていると様々な副作用が出てくるという事は当ブログでもしばしば取り上げてきています。
その一方でステロイドを長く使用し続けていると、だんだんステロイドの自己分泌ができなくなるという現象があることもわかっています。
ステロイドの自己分泌ができなくなる状態を副腎不全、その一歩手前の状態を副腎疲労といいますが、
副腎不全の原因としては、重症感染症や多発外傷、重篤な血栓症や両側副腎出血など、強烈なストレスが一気にかかった時に起こるというのがある一方で、
もう一つ忘れてはならないのは、長年ステロイドを飲んでいた人が何らかの原因で内服を中断する状況に追い込まれていた時に副腎不全は起こりえます。
なぜならば外部からステロイドを補充することで代謝の均衡が保たれている状況においては、
身体はその状況に適応し、ステロイドの副作用が出ないようにするために自己分泌を減らすという行動を起こすので、
それなのに急に外部からのステロイド補充が遮断されたら、自己分泌が少なくてよかった状況に慣れてしまったが故に急なステロイド自己分泌増加のニーズに対応できなくなるからです。
これは外部のステロイドを投与することで、自己のステロイド分泌能を弱める、
すなわち自己治癒力を阻害している側面があるのではないでしょうか。
以前スタチンを減薬を急激に行うと、理論上は良くなるはずなのに、なぜか状態は悪化する例が多かったという話をしましたが、
これもスタチンが自身のコレステロール産生能を弱め、その状況に慣れてしまった身体が、
いきなりスタチンなしの状況に追い込まれてもすぐには代謝適応できなくなった、すなわち自己治癒力を阻害したということで説明できる現象ではないでしょうか。
他にも向精神薬のポリファーマシー、これも急に減薬したらろくな事はありません。
向精神薬が精神面での自己治癒力を阻害しているからこそ、急な断薬では対応できず、緩やかな減薬をしていかなければならないのではないでしょうか。
そして、自己治癒力の阻害という意味では一番象徴的なのは抗生剤の乱用です。
抗生剤は西洋医学の歴史の中ではスター的な存在で、これが誕生したことによって今までは感染症で救えなかった命もたくさん救う事ができるようになりました。
医療現場でもその効果を強く実感することができる薬であり、病院医療のかなりの割合を占めている薬です。
しかも抗生剤は基本的に細菌だけをターゲットにするよう設計された薬で、
人体へ与える影響を最小限にする工夫がなされています。
それならば人体の自己治癒力を阻害する影響力も少ないのではないかと思いきや、大きな誤算がありました。
人体は単体で生命を維持しているのではなく、腸内細菌という共生生物と互いに影響を与え合って生きているという事実があったことです。
つまり抗生剤を乱用すると、ターゲットにしている細菌だけではなく、それ以外の特に悪さをしていないその他大勢の細菌をもやっつけてしまうが故に、
人体と腸内細菌叢との間で絶妙に保たれていたバランスが崩れ、人体と腸内細菌叢を一つの生命体群としてみたときの自己治癒力はやはり落ちてしまいます。
抗生剤の乱用が、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、線維筋痛症などの原因不明の病気などと関与していることが示唆されつつあるのもそれが故だと私は考えています。
だから自己治癒力を阻害する西洋薬一辺倒の医療だけでは、
人工知能が進化しようが、再生医療技術が進もうが、ミクロのミクロまで構造が見えようが、
健康を維持することなど到底不可能だと私は考える次第です。
だからこそ漢方薬やホメオパシーなどの自己治癒力の賦活をイメージできる治療法は学ぶ価値があり、
なぜ自己治癒力が賦活されるのか、西洋薬との違いが何なのかを突き詰めて考えていく必要があると思っています。
たがしゅう
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