クレーム対処の重要性との共通構造

2018/07/15 00:08:01 | 失敗学 | コメント:0件

クレームとは基本的には患者の期待が由来であり、

それが裏切られ続けた結果として現れる勇気を出した患者の要求行動であり、

医療者側が気付かなかった問題点を知るヒントを与えてくれる宝物であり、

それが大きく表面化する前の段階で、小さなクレームを積極的に拾い上げ迅速に対処することが重要だという話をしました。

これは失敗学の考え方と共通構造を持っていると私は思うのです。 クレームも失敗もネガティブなものとして捉えられがちですが、

成功のために自分が気付かなかった点を教えてくれるヒントとして、ポジティブに捉えることでクレームと同様に利用価値があります。

つまり失敗が大失敗へとつながらないように、小さな失敗を恐れずに積極的に拾い上げて軌道修正のための材料として取り組めば、

数多くの失敗を成功のための必須条件として理解することができます。

まさに小さなクレームを放置して訴訟レベルの大クレームにつながらないようにするために、小さなクレームに積極的に対処していく構造と一緒ですね。

このように、共通構造の存在に気がつくと、

その理論の説得力がより増すという側面があると思います。


病院では大きな医療事故を防ぐためにヒヤリハット、インシデント、アクシデント報告を行うというのが医療安全の観点から一般的です。

その背景にあるのはハインリッヒの法則と呼ばれる法則で、

1件の大きな事故の背景には、29件の軽微な事故があり、さらに300件のヒヤリハット事例があるというものです。

だからヒヤリとしたり、ハッとしたりしたことがあれば、みんなで共有し、

それが事故へとつながらないよう予防しようというのがヒヤリハット報告であるわけですが、

この考えはそのままクレームの話にも通じると思います。

つまり1件の大きなクレームの背景には、29件の苦情があり、300件の不満があるということです。

だから不満をクレームへと育てないためにも、

何もしなければ表面化してこない患者の不満を、目安箱などで積極的に拾い上げ、そして迅速に適切に対処することで、

結果的にクレームの少ない安心・安全の医療を提供することができ、

さらには患者にもスタッフにも働きやすい場が形成されるという好循環が生み出されるわけです。

こう考えることで、クレームの重要性がより深くできるように思えます。

ただし、ポイントは「クレームは決してゼロにはならない」という点です。

なぜならば患者によって期待や要求は千差万別であり、

全ての人に好かれる人が存在しないのと同様に、全ての患者の期待・要求に病院が答えることは不可能であるからです。

そう考えると、私達はクレームへ対処する歩みを決して止めてはいけないのです。

この辺りは「死ぬまで考え続ける」という哲学のスタンスとも共通構造を持ってきます。

別分野とのつながりを感じられた時、

その考えへの信頼感はますます強まっていくようです。


たがしゅう
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する