自然物の効能は個別性を要求する
2018/07/06 00:00:01 |
読者の方からの御投稿 |
コメント:6件
ブログ読者のだいきちさんから、次のようなコメントを頂きました。だいきちさん、有難うございます。
確かに、漢方を学んでいると、(以下、コメントより引用)
テレビ番組で最近よく「様々な食品の体への効能」をネタにした健康番組が多い印象です。
「○○は体を温める」「○○は癌の発生を抑える」「○○は血流を改善する」
効能数はネタ不足に事欠かないほど膨大です。
そして決まってタレントさんが「知らなかった。よし今日からたくさん食べよう!」と場を和ませます。
私はここで首を傾げます。
「すべての自然物には何かしら人体に良い成分が必ず入っているのにもかかわらず、それを無意識に食してきた人が何故病気になるのか?」という疑問が湧くのです。
そこで腑に落とす為に無理やり納得させる考えがあります。
誤解を覚悟で持論を申しますと、
「いくら良い成分をとっても、その効能を相殺するほど多量の糖質を摂取しているから」
なのでしょうか?
(引用、ここまで)
自然界に存在する植物、動物、鉱物など、その一部を利用して作った生薬、
および複数の生薬を組み合わせて作った漢方薬には何らかの薬効が存在しているので、
その薬効を知っていようといまいと、野菜を中心に、そうした食物を無意識に多く摂っている人はたくさんいるだろうと思われますし、
テレビで紹介される食材が人体へもたらす健康的効果の一つひとつも決して嘘ではないだろうと思われます。
それがテレビの影響力でもって広く情報が出回っているというのに、多くの人達がとても健康的であるとは思えない状況におかれているのはなぜか、ということだと思いますが、
確かにそうした食材の健康的効果を糖質頻回過剰摂取の負の影響が大きく上回っているのではないかという御指摘は、個人的には合っていると思いますが、
もう一つこの問題を考える上で根本的にはき違えてはならない点があると私は考えます。
それは、健康的効果をもたらすとされる自然界の食物は、
そもそも人体を健康的にするために存在しているわけではないということ、
そしてそれらの食物が持つ効能は、決してすべての人に対し共通してもたらされる類のものではない、ということです。
要するに植物は植物で薬効のある成分を自分のために作っています。
その植物のために作った成分が、ある条件のヒトに使ったらたまたま良い効果をもたらしたために薬として利用したというのが漢方薬のそもそもの発想です。
もちろん、生姜が身体を温めるとか、人参が胃腸を整えるとか、
漢方の世界では「上薬」と呼ばれる割と幅広く万人的に効果をもたらす類の食物もありますが、
それでも身体が熱くなっている人に生姜は効かないし、胃腸が悪くない人が人参を食べても何も起こりません。
要するに自然界の構造を保っている食物が人体にもたらすとされる健康的効果には個別性があるということ、
もっと平たく言えば人を選ぶということです。
その個別性の問題を無視して、万人に効く薬を自然界に存在する構造物の中から探そうとする行為は土台無理な話なのです。
テレビで「血流を改善する食べ物」とか「認知症を予防する食べ物」などといって紹介されるのは、
まさにその個別性を無視して、無理矢理に集団に当てはまるものを探し当てているような行為であり、
まるで、個々人の性質や体質を無視して、エビデンスですべてを語ろうとする西洋医学的な医学研究のような発想だと思います。
だから、漢方の生薬にも使われているような野菜をしっかり食べている人であっても、
その生薬成分が恩恵をもたらさない状態の時にせっせと食べても何も起こらないということです。
ただ、ホメオパシーを勉強し出して思うのですが、
自分と相性の合う自然物というのは生まれつき存在しているように思います。
理由はよくわからないけどこの植物とは何か波長が合うとか、この鉱物は観ていて癒されるとかいう感覚は、あながちないがしろにはできないような気がします。
テレビで紹介されたから積極的に食べるようにしている野菜より、
物心ついた時からこれだけはおいしく食べることができている野菜がもしあるのだとすれば、
後者の感覚は大事にした方がよいのではないかという気が私はしています。
なぜならば後者は万人に当てはまらない個別性が発揮されている状況であるからです。
漢方やホメオパシーを理解する時に、「個別性」は極めて重要な概念だと私は思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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漢方の個別性
漢方に個別性があるというお話し、腑に落ちました。
私も漢方で助けられた身ですが、うっかり忘れていました。
なんにしても身体に素直になる、でしょうか。
引いては仕事や趣味の分野までその考えを広げてみれば、「一人一人に合った生き方があり、身体の声に素直に耳をかたむければ、無理のない健康的な人生を送れる」とも言い切れるのでしょうね。
外側からの雑然たる情報に惑わされず、内側からの奥ゆかしい声をしっかり聞き逃さないように生きたいと感じました。
Re: 漢方の個別性
コメント頂き有難うございます。
> なんにしても身体に素直になる、でしょうか。
そうですね。
強いて付け加えれば、「自然の形を重視して」何に対しても素直になるとより良いように私は考えています。
身体に素直になるというだけでは例えば薬物依存などにつながってしまう問題点を解決できません。なので、それが自然な行為なのか否かは時々振り返る視点が大事と私は思います。
2014年2月6日(木)の本ブログ記事
「『身体が欲するものを食べる』の落とし穴
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-174.html
も御参照下さい。
No title
先日、便通が悪化した時が有りましたが、安易に便秘薬(カマ)を服用してしまいました。
その時は前日に過度の飲酒が有り、それが原因では?と心当たりが有ったにも関わらず安易に薬に頼ってしまいました。
狂った状態の体と精神では、いくら体の声に耳を傾けようにも土台無理なのだと痛感しました。
「個別性」には「生活習慣」も含まれると思います。
今後健康状態が悪化した時には、まず生活習慣に原因が無いかを厳しく吟味してから対応したい思います(言うは易し為すは難しですが...)。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
人間いざとなれば弱いものです。
普段糖質制限+ストレスマネジメントだと言っている私も風邪を引いたら漢方に安易に頼ってしまいます。
そのクセ自分に対しては上手に使えないというのだから皮肉な話です。
御指摘の通り、病気になった時にまず見直すべきは自分の生活習慣、ひいては生き方そのものではないかと思います。
No title
そして、体調が回復されつつあるようで良かったです。
>理由はよくわからないけどこの植物とは何か波長が合うとか、この鉱物は観ていて癒されるとかいう感覚は、あながちないがしろにはできないような気がします。
自然界の物質と、人との相性はあると思います。
先生もご存知だと思います。周波数が影響する現象です。
グラスに向けて、(決して手を触れず)人が声のみを発します。
人の声が、グラスと同じ周波数であれば、共振が起こり、
振動が増幅し、触れることなくグラスが割れる。
上記の例は、結果としてグラスを破壊しますが、
人間も含め、固有の周波数をもつ全ての物質は、
良くも悪くも、それぞれが持つ周波数の相性で、
影響しあっていると思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
鋭い御指摘です。
まさに私もその振動、特に共振(共鳴)という物理現象が重要だと考えています。
波長が合うとはまさにそういうことであり、ついでに言えば、ホメオパシーの自己治癒力サポートの治療原理にもそこが大きく関わっているのではないかと私は考えている次第です。
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