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自分で自分の可能性を狭めない

category - イベント参加
2018/ 07/ 01
                 
先日、鹿児島市在宅医会という会が主催する講演会に参加して参りました。

講師は株式会社オリィ研究所所長でロボットミュニケーターの吉藤健太郎氏です。

事前に告知された講演テーマは同研究所が開発した分身ロボット「OriHime」について、ということだったのですが、

実際に聴講してみると、OriHimeという製品についてというよりも、

吉藤さんが自身の半生を振り返ながら、今の社会に足りていないことにいかに気が付いて、

そのために自分が具体的にどのように動いて、世界がどう変わってきたのかということを、

実に見事なプレゼン技術で説明され、非常に心動かされる講演内容でした。
            

まさにプレゼンテーションのお手本とも言えるような見事な構成で60分間集中して聴講することができました。

吉藤さんは「ロボットが人を癒すのではない。人を癒せるのは人だけで、ロボットはその橋渡しとなる」との想いから、分身ロボットの着想に至ったのであり、

究極的には人と人が正しくつながることができればロボットは必要ないとの考えも披露されていました。

逆説的ですが、しかし本質を突いている意見であるように私は思いました。

AIがどれだけ進化しても、人間そのものにはきっとなれないはずで、

ロボットの技術の進歩を推し進めるべきはそちらの方向ではないことを吉藤さんは示されていると思います。

分身ロボット「OriHime」とは、小さくて丸い愛らしい人型のロボットが、

それを操作する遠隔地にいる人の声や身振り手振りをほぼリアルタイムで再現し、

またロボットの視界に入る映像やセンサーで感知される音声を同じくリアルタイムで操作者にフィードバックすることによって、

遠くにいる操作者がまるでその場にいるかのように本人の一挙手一投足を表現してくれるというものです。

これにより海外支社にいる会社のメンバーが日本の本社メンバーとスムーズに業務のやり取りを行なったり、

身体が悪くて遠くに住む孫の結婚式に参加できないご高齢の方が、分身ロボットを通じて結婚式に参加することができるようになったり、

あるいは医療の分野では、神経難病で目や顎、声帯の筋肉くらいしか動かせない状態で自宅療養せざるを得ない状況におかれている人が、

分身ロボットの視線認識機能や音声拡大機能を利用して、自宅で寝たきりでいながらにして会社で仕事をしたり、遠方での講演会を行ったりすることが出来るということが、

実例を交えながら紹介されていました。

まさに人と人をつなぐためのロボットの新しい立ち位置、同時に望ましい立ち位置であるように思いました。

こうした着想に至る上で、実は幼少期から身体が弱く、小学校5年生の頃から引きこもりだったという自身の経験が大きかったと吉藤さんは言います。

世の中の全てから見放されているような感覚に包まれていた吉藤さんを救ってくれたのは、

当時熱心に語りかけ続けてくれた教師や尊敬すべき恩師の存在であり、

それが「人を癒すことができるのは人だけだ」という考えの礎となったとのことです。

そしてそこから発展して、人の「孤独」を治すということが吉藤さんの人生のテーマとなっているということまでおっしゃっていました。

さらに大変興味深いことに、私達にとっても非常に教訓的なこととして、

世の中に対して疑問に感じたことを自分の中で明確にし、

謎を明らかにするために、あるいは問題を解決するために、たとえどんなに小さくとも、

世の中に対して具体的にアクションを起こし続けることによって、

それに対する賛同者が集まり、新たにできることが拡がって、次第に大きな革命へとつながりつつあるプロセスを目の当たりにすることができました。

吉藤さんの考えに共鳴した映画監督の古新舜氏は、5年くらい前から吉藤さんとタッグを組み、

分身ロボットがつなぐ人の心をテーマに映画を作る計画を進められ、

来年の初頭に「あまのがわ」というタイトルで公開される予定となっているとのことですし、

働き方改革が叫ばれる昨今、必ずしも出社せずとも有効に時間を使える働き方を提案されている、

日本テレワーク協会の方々との分身ロボットがコラボして新しい働き方の形を提案しようという動きまであります。

こんなすごい偉業を成し遂げ、達観した思想を持ち仲間も多い吉藤さんはまだ若干30歳というのですから驚きを隠せません。

それは天才の話だから自分には関係ないと思ってしまえばそれまでですが、

世の中に対して小さくとも具体的なアクションを起こし続けるというスタンスの良さは大変参考になるのではないでしょうか。

もう一つ、吉藤さんがいかに天才と言えども、さすがに今の状態を最初から予想していたわけではないと思います。

一つひとつ具体的に行動していった結果、縁が縁を織り成し、集まるべくして今の仲間達が集まったと考える方が自然です。

人生を作為的に計画的に過ごすよりも、

その瞬間、瞬間で自分のできることを社会に提示し続ける生き方の方が、

きっと大きな事が成し遂げられるのではないかという可能性を感じさせられた次第です。

あとは吉藤さんにとって、病弱や引きこもりの経験があったからこそ今の吉藤さんの人生につながっているであろうことも大事なポイントです。

人生に無駄な時間はないのだと、

それが無駄かどうかを決めるのは自分次第なのだと、

人の可能性を自分で狭めてはいけないということを、

強く考えさせられる印象的な講演会でした。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

No title
いつも興味深い記事をありがとうございます。

先生は、知的好奇心に溢れていますね。
ブログを拝読することで、
こちらまで視野が広がります。
ありがとうございます。

>「人を癒すことができるのは人だけだ」
その通りだと思いました。

先日NHKの番組で、
「人のつながり」が、
どれほど重要かを伝えていました。
人は「つながり」により、進化してきた生物らしく、
「孤独」がどれほど、身体に悪影響かも、
伝えていました。
http://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20180606/index.html

人のつながりが活発になるのなら、
ロボットの力も大歓迎です。
Re: No title
Etsuko さん

 コメント頂き有難うございます。

 人には多くの動物と同様、「群れる習性があると思います。
 その人にとって孤独とは極めて人為的で不自然な状態で、確かに是正すべき対象と思います。

 しかしながらネット社会での人為的なつながり方に依存するのではなく、それでもやはり本来の自然な形での人とのつながり方をベースにつながっていくべきだと私は考えています。