適応・消耗病態別治療法の概念
2018/06/26 00:00:01 |
素朴な疑問 |
コメント:5件
引き続き、①可逆的な消耗疲弊→②可逆的な過剰適応→③不可逆的な消耗疲弊→④死亡、のステージング分類について考えます。
これらの流れは主に慢性疾患において当てはまる考え方だと思います。
先日いわゆる風邪症状は基本的に過剰適応反応だと述べましたが、
より正確に言えば、本来は「適切な」適応反応が起こっていて、時にそれが過剰適応反応へと移行しうる、という感じだと思います。
言ってみれば①の前に存在する「⓪正常な適応反応」のステージで完結するのが、一般的な急性疾患のパターンだと思います。
ただその急性疾患がいわゆる「こじれた状態」になってくると、①→②→③の順に病状が変化し、疾患が慢性化してくるのではないかと思います。
まず、「①可逆的な消耗疲弊」は、適切に休んでいれば元に戻る状態です。 便秘は基本的に「消耗疲弊」だと言いましたが、このステージにある便秘は何はなくとも「休ませる」ことが重要です。
便秘に対して休ませるとは消化管を使用しないことです。
あるいは水溶性食物繊維が豊富なものなど、消化管に負担のかからない食べ物を食べるということでも、何もしないよりは悪くはないかもしれませんが、
基本は休ませることで直ちに改善するのが、①のステージの病態の特徴だと思います。
だから便秘を改善させるためにしばらく食べないという発想が大事になると思いますし、
他の①病態の症状に対しても同じ発想を基本に治療していくとよいと思います。
次に「②可逆的な過剰適応」は、困難な状況を乗り越えるために身体が無理をしている状況です。
身体の働きがオーバーヒートしているので、休ませることは勿論大事ですが、
オーバーヒートしてしまった機能をクールダウンさせるために何らかの人為を加える余地が出てきます。
例えば深呼吸や瞑想などで人為的に自律神経を副交感神経優位に持っていったり、
あるいは漢方薬を用いて自律神経を調整したり、オーバーヒートした交感神経過緊張を抗コリン薬などで一旦強制シャットダウンさせるのも一手と思います。
ただし強制シャットダウンの処置は一時的にしておかないと、漫然と続けているとシステムに新たな変調をきたし、余計にこじれていく事は意識しておく必要があります。
何を食べても下痢をしてしまうような場合は②の病態に相当すると思いますが、
しばらく食べないことに加えて、自律神経を整える人為を加える薬物療法や非薬物療法を加えるのが吉です。
そして、③の「不可逆的な消耗疲弊」は疲弊しきったために、もはや立ち直れない機能が出てきている状態です。
「不可逆的」なのであれば、もはやどんな治療をしたって無駄なのではないかと思われるかもしれませんが、
実際には身体の中で不可逆的な部分と可逆的な部分が混在している状況です。
不可逆的な部分に対しては確かにできる事はありませんが、
残った可逆的な部分を大事に使うということをすれば、まだ戦える余地は残っているのです。
ここでの治療戦略は「休ませる」+「自律神経を人為調整」+「自己治癒力サポート」となります。
ヒントとなるのは認知症コウノメソッドです。
認知症コウノメソッドでは既知の西洋薬の用量を高齢で機能が衰えている事が多い認知症患者さんに合わせてぐっと用量を落として成果を挙げている治療方式です。
いわば②の戦略で、西洋薬を用いる事のデメリットを最小化することによって、
ある程度自己治癒力が残っている③の患者では、症状が改善する所まで持っていくことができているのではないかと思います。
しかし西洋薬の部分では基本的に「自己治癒力サポート」はできていないはずです。
漢方薬は相手の状態に合わせた生薬を使うことで、その人の自己治癒力を刺激する側面があります。
コウノメソッドで用いているサプリメントにも若干その辺りの効き方があると私は考えていますが、
いずれにしても「自己治癒力サポート」という意味で、漢方薬は③の病態にも対抗しうる有効な手段の一つだと思っています。
もう一つのホメオパシーに関しては、はっきりいってなぜ効くのか、そのメカニズムが解明されていない医学ですが、
多数の症例について学んでいくにつれ、その効き方が「自己治癒力サポート」にある事がわかってきました。
しかも漢方薬がなぜ自己治癒サポートができるのかという謎の答えに、ホメオパシーの未解明のメカニズムが共通している可能性が私には見えてきました。
その理由・メカニズムについて、漠然とではありますが、自分の中で仮説があるのですが、
これを明確に説明できるようにするためには、私が物理学を学び直す必要性があり、現時点ではきれいに説明することができません。
今はまだ多くの読者の皆さんも、なんのことを言っているのかわからないと思いますが、時機が来ればいずれこの場で私の仮説を披露したいと思っています。
ともあれ、現時点で薬のアプローチで③に対して「自己治癒力サポート」を達成できるのは、
漢方薬とホメオパシーであり、両者の治療の腕前を高めていくことには価値があると私は考えています。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
>その理由・メカニズムについて、漠然とではありますが、自分の中で仮説があるのですが、
物凄く興味があります。
その仮説を読める日を楽しみにしています。
ヒトの体を構成する細胞を、
ミクロの世界(量子の世界)で捉えると、
見えてくるものがあるのだと思います。
医者と物理学者がタッグを組めば、
これまでの常識を覆すような医療が生まれると思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 医者と物理学者がタッグを組めば、
> これまでの常識を覆すような医療が生まれると思います。
実は私もそう思っています。
それは縁があればやがて協力者と出会えるかもしれません。
今はただ自分の中での未完成の仮説を人に話せるレベルまで高められるよう物理学を学び直したいと思っています。
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Re: No title
情報を頂き有難うございます。
非公開にしておくのはもったいないように思います。
私の頭の中で整理できたら、何らかの形で別途記事にさせて頂ければと思います。
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