スタチンは病状を隠す
2014/01/02 00:01:00 |
ふと思った事 |
コメント:23件
「スタチン」という種類のコレステロールを下げる薬があります.
長らくコレステロールは動脈硬化の元凶とされてきました.現在でも動脈硬化予防のためにこのスタチンは臨床現場で多用されています.
しかし,この薬の是非については2010年後半に「日本動脈硬化学会」と「日本脂質栄養学会」という二つの学会が相反する見解を出して議論になったことがあります.
日本動脈硬化学会は「コレステロールが低ければ低いほどよい」という立場であり,
日本脂質栄養学会は「コレステロールが高いほど長生き」とする立場で,両者の見解は真逆です.
そして日本動脈硬化学会はガイドラインを作成し,コレステロールが高い人へスタチンの投与を勧めています.
一方日本脂質栄養学会はスタチンを投与する必要のある人はほとんどいないとして,動脈硬化学会の出すガイドラインに異議を唱えています.
一体どうしてこのような真逆の見解が出てしまうのでしょうか.
実はここにも医学界の闇が隠れています. そもそもコレステロールというのは簡単に言えば人体にとって不可欠な脂質由来の成分です.細胞膜やホルモン,胆汁やビタミンDなどの構成成分であり,8割が自分の肝臓で合成され,2割は食事由来のものと言われています.
コレステロールに関してはここ10数年の間に新しい事実が次々と明らかになってきました.
以前は「総コレステロール」の値が220㎎/dLより高いことがスタチンを使用する要件とされていましたが,
それだと余りにも安易なスタチン処方につながりやすいとの批判が出たため,2002年に動脈硬化学会によって基準が変更され,悪玉コレステロールと言われたLDLコレステロールが140㎎/dLより高いことをスタチン使用を考慮する要件に変更となりました.
その後,超悪玉コレステロール(小型LDL,酸化型LDL)の存在も明らかになりましたが,全体でみるとコレステロールは動脈硬化の修復に重要な物質だということがわかってきました.
スタチンはコレステロール合成過程において必要なHMG-CoA還元酵素を阻害することによりコレステロールの絶対量を少なくする薬です.すなわち,善玉も悪玉も超悪玉も等しくコレステロールを下げることになります.
このスタチン,動脈硬化学会が言うように「コレステロールは低ければ低いほどよい」といういわゆる「コレステロール仮説」が正しいとすれば有用な薬だということになります.
これまでスタチンを使って脳・心疾患のリスクを下げることができるという疫学研究結果は数多く出されていました.しかしよく見るとそれらの結果は微々たる効果しかありません.
例えば2012年8月にCTT Collaborationが発表した27件の大規模RCT(計174,149例)を対象としたメタ解析では,スタチンでLDLコレステロールを約40mg/dL下げることで主要血管イベント(脳梗塞や心筋梗塞など)を5年間で1000人当たり11人減少させる効果が認められました.
逆に言えば,989人の人はスタチンを飲んでいても主要血管イベントを予防できていないということになります.
つまり,少なくとも「コレステロールは低ければ低いほどよい」という単純な話ではないということが判明しました.
さらに動脈硬化の原因についてもコレステロールは濡れ衣を着せられていただけであり,真犯人は「血管の炎症」だということがわかってきたのです.
その辺りのトリックはこちらの本にわかりやすく書かれています.
しかしそうであるにも関わらず,世の中の医師の多くはコレステロールが高いのを見ると,これでもかと言わんばかりにスタチンを処方します.
しかも未だに「総コレステロール」を指標にスタチンを使っている医師すらいます.不勉強にもほどがあります.
上記の事実がわかれば,スタチンを使うことが動脈硬化の予防に貢献するはずがないという事は少し考えればわかることです.最近は糖尿病のリスクを増やす副作用があることさえわかってきています.
でもそれにしてもなぜ今更そんな事がわかってきたのでしょう.今までスタチンを使ってよかったとしてきた数々のデータは一体なんだったんでしょうか.
その疑問について考える一つのきっかけとなる事件が昨年起こりました.
それは,製薬会社大手「ノバルティス」の高血圧治療薬ディオバンに関する臨床研究の論文不正問題です.
すなわち研究論文を書く医師と製薬会社の癒着関係です.このような利益供与関係の事を「利益相反」と呼び,2004年に欧米で大規模な利益相反事件が発覚したことをきっかけに大きな社会問題となりました.
製薬会社と学会の利益相反は今でも確かに存在していると思います.
例えば日本糖尿病学会のホームページをのぞいてみると,製薬会社5社のリンクがトップページの下部に並びます.
また日本動脈硬化学会のホームページを見ても,製薬会社3社のリンクがやはり同様に貼られています.
一方日本脂質栄養学会のホームページにはそのようなリンクは貼られていません.
製薬会社とのつながりがある学会が,薬は不要であるという見解を出すわけがありませんから,
どちらが信用に足る見解かというのははっきりしているのではないでしょうか.
ただ,だからといってこういう場合も一方的に日本脂質栄養学会の見解を信じるというのではなく,やはり自分の頭の中でも考えて納得するという作業が大事です.
スタチンを飲めば確かにコレステロールの値は確実に下がります.しかしそれは良いコレステロールも悪いコレステロールも一緒くたにして下げているだけであり,むしろ炎症の修復に必要なコレステロールの量も下げてしまうデメリットの方が大きくなります.
また多くの医師は血液検査の値をみてコレステロール治療の良し悪しを判断するので,スタチンを使っている状況であればコレステロール治療はうまくいっていると考えてしまいます.これは血糖値やHbA1cだけをみて糖尿病治療がうまくいっていると考える医師と同じ構図で,大変好ましくない現象です.
私はむしろスタチンを使わない方が現状を正しく反映するので,今後指導をどの程度強く勧めるべきかを考える目安になるのでよいと考えています.だから私はよほどの事がないと自分から新たにはスタチンを処方しない方針です.
本当に治療のターゲットとすべきは血管の慢性炎症であり,それを起こさないためには酸化ストレスリスクを下げること,そのためには酸化ストレスの大きな要因となる食後高血糖,平均血糖変動幅の増大を避けること,すなわち糖質制限が必要になるわけです.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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いまだに…
昨年に引き続き今年も色々と勉強していきたいと思っています。
よろしくお願いしますm(_ _)m
> しかも未だに「総コレステロール」を指標にスタチンを使っている医師すらいます.不勉強にもほどがあります.
私の住んでいる西宮市の特定検診では総コレステロールの表示はなく、HDLとLDLコレステロールが表示されています。
そこでの基準値がLDLコレステロールは120未満となっているのですが、かかりつけ医師は140未満を採用しているため薬の処方は受けずにすんでいます。
従来の総コレステロール値を基準とされると確実に薬を処方されていると思います。
ただ、私の周りでスタチンを処方されている人の話を聞いているとあくまで総コレステロールを基準としていて、自分のLDLコレステロール値を知らない人すらいます。
これにはびっくりですね。
Re: いまだに…
コメント頂き有難うございます.
今日の常識は明日の非常識になることが医学の世界ではよくみられます.
それだけ医学は科学として危うさを持っているということだと思います.
No title
2011年から糖質制限食を始めました、総コレステロール値は245㎎ 2012年の総コレステロウルは263㎎ 2013年の総コレステロール値は209㎎です。江部先生の講演会の時に2~3年で平均値になってくると教えて頂いていたので特に気にせずただ もくもくと 糖質制限食をしていましたら 平均値になっていました 糖質制限食は本当に素晴らしいですね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます.今年もどうか宜しくお願い申し上げます.
糖質制限食での脂質バランス改善効果ははっきりしています.実際にやってみればすぐにわかります.
世の中はスタチンを積極的に処方する医師が多数派ですが,それはこの事実を知らないからだと思います.
No title
毎日の更新楽しみながら、勉強させていただいています。 これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
以前コレステロール値が高いので、クレストール2.5を飲んでいました。 その時は気がつかなかったのですが、めまい、立ちくらみ、体の重さなどを感じながら生活していました。 数値も良くなったので薬がストップになりました。 薬を止めた後、体がなんとも軽く本当に楽になりました。薬を飲んでいる間は、ウォーキングをしても足を引きずるようでした。 その後、血液検査の結果、コレステロール値が上がり今度はリピトール1を飲むようすすめられました。 あまり乗り気ではありませんでしたが弱い薬だということでしぶしぶ受け入れのむことにしましたがやはり、結果は副作用が出ましたので中止しました。 今度はスタチンの代わりにエパデールをだしていただくようになり、今の血液検査の数値は、
A1c 5.3(4.9)
HDL 88 LDL127、中性脂肪 43
という感じです。
気長に糖質制限をしていると改善してくるのですね。 最近は先生もエパデールを止めてもいいとも言ってくださっているのですが、EPAの効果を考えるとどうしようかあと思案中です。でも、少しお値段が高いですよね。。。
たがしゅう先生、これからも分かり易いブログたのしみにしています。
ありがとうございました。
自分で考える力・習慣を磨かねば!
あけましておめでとうございます。
本年も、何卒よろしくご指導の程お願い申し上げます。
医科大学や医師と製薬会社、行政機関等との癒着はイギリス映画「ナイロビの蜂」やロジャー・ムーア監督の「シッコ」等、いろいろな映画で描かれてますが、「人の命に関わる事なんやから実際、そこまでは、無いやろ。」なんて思って観ていましたが、日本でも発覚!
自分で考える力・習慣を磨くことにより、権威・権力を見抜き、屈しない一人一人にならなければ、「バイオハザード」で描かれていたアンブレラ社のような製薬会社があらわれて、世界が滅亡するかも。
それを教えてくれたのが、たがしゅうブログです。感謝です!
コレステロールといえば秋の健康診断では
LDLが:311㎎/dlで、糖質制限をしてからはねあがりましたが、糖質制限に理解ある主治医からは、問題なしとのことでした。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
やめてみて始めてわかるレベルのスタチンの副作用というのがあると思います。
例えば、スタチンの副作用として最も有名なものの一つに「横紋筋融解症」というものがあります。筋肉痛がして血液検査をするとCPKという筋肉の酵素が上がっているというものですが、
そこまでくれば誰でも副作用だとわかるのですが、何となく調子が悪いレベルの症状が副作用とみなされることはまずありません。薬を飲んでいる本人さえ「今日は体調が悪い日だ」くらいにしか思わないでしょう。しかしその微々たる症状も薬をやめてよくなるかどうかで副作用かどうかを区別できます。
ともあれ根本的な問題を解決していない薬の存在を、我々はもっと真剣に考え直さなければならないのではないでしょうか。本当に良い薬は大分限られるのではないかと思います。
Re: 自分で考える力・習慣を磨かねば!
いつもコメント頂き有難うございます。今年も宜しくお願いします。
私も糖質制限をきっかけに今までスルーしていた事実を立ち止まってじっくりと考えられるようになりました。
映画もその辺りの事情を鋭くわかりやすく描いていて、勉強するには良いツールですね。
Re: タイトルなし
いつもコメント頂き有難うございます。
おそらくその主治医の先生はコレステロールの意義を正しく理解されていると思います。良い先生に診てもらえて良かったですね。
コレステロールは刷り込まれていますね
今年もよろしくお願いします。
テレビの影響なのか徳光さんの影響なのかわかりませんがコレステロールは悪役のイメージが刷り込まれていますね。意外と体内で作られている割合がはるかに高いということすら知られていないみたいです。コレステロールの役割もきちんと理解している人は少ないようですね。
去年は糖質の今年はコレステロールのイメージが変わるかもしれませんね~
No title
ノバルティスファーマの件を見るまでは製薬会社どうこうは陰謀論の類だと思っていましたが、どうも認識を改めたほうがいいようですね。同種の事件がアメリカで起きた場合製薬会社自ら積極的に情報公開に動いて真相究明しないと、反社会的行為として懲罰的賠償を食らう恐れがあります。売り上げの数倍もしくは利益の数十倍という単位で。つまり今回の件はローリスクハイリターンを狙って日本で実施された恐れさえあるんじゃないかと。
食品中のコレステロールやプリン体を恐れる風潮ももう今年限りで終わって欲しいですね。肉や卵を控えるのは寝たきり老人を増やすだけです。同僚の上半身と比べてやたら細い下半身を見るともうホラー映画です。
No title
あけましておめでとうございます。
私の場合、昨年より EPA/AA 比 を基準にして調べて貰ってます。
Re: コレステロールは刷り込まれていますね
いつもコメントを頂き有難うございます。
> 去年は糖質の今年はコレステロールのイメージが変わるかもしれませんね~
糖質制限をすると脂質バランスが改善します。
この事からみても、糖質制限が単なる糖尿病の治療にとどまらない根本的な治療だということがうかがえますよね。
Re: No title
いつもコメントを頂き有難うございます。
製薬会社関連の問題はおそらく氷山の一角だと私は考えています。健康に直結する問題であるだけにたやすく看過できません。
> 食品中のコレステロールやプリン体を恐れる風潮ももう今年限りで終わって欲しいですね。肉や卵を控えるのは寝たきり老人を増やすだけです。
同感です。
巷によくある「コレステロールゼロ」とか「脂肪ゼロ」とかの食品を見るとげんなりします。
Re: No title
いつもコメントを頂き有難うございます。
> 私の場合、昨年より EPA/AA 比 を基準にして調べて貰ってます。
いわゆる良い油(EPA)と悪い油(AA)のバランスですね。
まだ臨床的には健康指標としてまだ確立されるところまでは行っていません(コストも高い?)が、参考にはなると思います。ちなみに私のEPA/AA比は0.23、正常範囲は0.05-0.61とされています。
No title
(日経メディカルから)
EPA/AA比は、血中のエイコサペンタエン酸(EPA)とアラキドン酸(AA)の比率を表す値。「長い間、脂肪酸と動脈硬化性疾患との関連についてはあまり注目されてこなかったが、EPA/AA比は心血管イベントを予測する新しいリスク指標として期待されている」と岡山大循環器内科教授の伊藤浩氏は話す。
EPAは、炭素鎖の一方の末端のメチル基(ω端)から数えて3番目の炭素に最初の二重結合があることからω(オメガ)3、またはn-3系不飽和脂肪酸と呼ばれる。
n-3系不飽和脂肪酸の代表は、植物性プランクトンなどに含まれるαリノレン酸。
食物連鎖によりサバなどの青身魚には、その代謝物のEPAやドコサヘキサエン酸(DHA)
が多く存在する。
一方、アラキドン酸はω端から6番目の炭素に最初の二重結合がある、ω6(n-6系)
不飽和脂肪酸。植物油のリノール酸がその代表で、飼料で植物由来のリノール酸を摂取
する豚や牛の肉には、その代謝物のアラキドン酸が多く含まれる。
これらの不飽和脂肪酸は細胞膜の構成成分で、様々な生理活性物質になる。人は体内で
これらを生合成することができないため、どちらも食物などから摂取しなければならない。
ただし、その摂取比率(EPA/AA比)も重要なことが、疫学調査などから指摘されるように
なった。
肉や植物油を多く摂取し、アラキドン酸の摂取比率の高い白人は、魚やアザラシを主食
とし、EPAの摂取比率の高いイヌイットに比べ、心臓病死亡率の高いことが疫学調査で
分かっている(Dyerberg J et al. Lancet 1978;2:117-9.)。
EPAを多く摂取すると、なぜ心血管イベントの発生が抑制されるのか。伊藤氏によると、
n-6系不飽和脂肪酸を多く摂取し細胞膜にアラキドン酸が多くなると、血小板凝集能が
強い生理活性物質や強力な炎症惹起性物質が産生されるという。ところがn-3系のEPAを
多く摂取するとアラキドン酸に拮抗し、これらの作用を減弱する生理活性物質が産生され
るので、動脈硬化を抑制すると考えられている。
脂質低下療法に関する97の介入試験のメタ解析によると、心臓病死および総死亡の両方
を有意に低下させたのは、スタチンとn-3系不飽和脂肪酸の2つだった(Studer et al. Arch
Intern Med 2005;165:725-30.)。また、スタチン投与中の脂質異常症患者にEPA製剤を
追加投与したJELIS研究では、EPA投与群の主要冠動脈イベントの発生率が、対照群に
比べて有意に低かった(ハザード比:0.81)。EPA/AA比は、EPA群1.3、対照群0.6だった。
EPA/AA比は、欧米人で0.1~0.2、日本人では0.5~0.6、イヌイットでは7.0~8.0と
されるが、EPAの投与を開始する値などはまだ確立していない。しかし伊藤氏は、
「EPA/AA比は血液検査で測定が可能。日本人の脂質異常症患者で、欧米人並みの低値で
あれば、EPAの投与も考えられるだろう」と話している。
Re: No title
情報を頂き有難うございます。
EPA/AA比については慎重に判断したいと思っています。
脂質メディエーターのところでも勉強したように、実際にはω6系からω3系へ変換される経路もあったりするので、EPA/AA比が低ければ良い脂が足りないというシンプルな話でもないように私は考えています。
EPA/AA 比は興味深い
こんにちは。コレステロールの問題、この問題も実は昨年非常に悩んだ問題の一つです(笑)私の場合、LDL-C単独で300オーバー、約一年で倍以上に跳ね上がりました。大櫛先生をはじめ脂質学会の先生方の本も読み込み、PETER ATTIAさんの見解なども参考にしましたが、どうにも気持ちが晴れず、主治医がスタチンを処方したがっているのを察知して、エパデールを別の医師に処方してもらいました。(中性脂肪19の私にはあまり意味がないのでしょうが・・・)その後、こちらでも話題になっているEPA/AA 比のことを知人に教えてもらいました。エパデールの持田製薬のサイトで動画を見たはずなんですが完全にスルーしていました。次回の検査で調べてもらうことになっていました。長期の断食(31日間)の最中の検査ではLDL-Cは300オーバーのままだったのですが、断食終了後の検査でほぼ正常値に戻っていました。よくわからないのですが、人体って不思議だなって思いました。EPA/AA 比がわかったらまたご報告したいと思います。とりあえず、コレステロール神話は何とかしてほしいですね。コレステロールが高くても家族性以外なら大丈夫だと分かっていてもあまり気分がよくありませんでした。
Re: EPA/AA 比は興味深い
いつもコメントを頂き有難うございます.
超悪玉コレステロールとか,EPA/AA比とか,様々なマーカーが現れてきますが,
私は一番のマーカーは自分の体調だと思っています.体調がよければ,血液検査の項目にはあまり神経質にはならなくてもよいのかもしれません.
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No title
Re: No title
> 薬を飲むべきでしょうか?
申し訳ございませんが、情報が乏しい中ではそのような質問にはお答えする事はできません。
私の記事をあくまで参考にして頂き、御自分の頭で考えて判断して頂ければと思います。
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