糖質制限理論に人生を支配されない
2018/06/24 00:00:01 |
医療ニュース |
コメント:11件
以前、「血糖値に人生を支配されない」という記事を書きました。
糖質制限と自己血糖測定器の普及で、かなり再現性が高く多くの人が血糖値をコントロールできるようになったのはよいですが、
血糖値が可視化されたことによって、もしも血糖値が基準値内に入っていなければ、今までには存在しなかった新たな不安を生じる事となり、
その不安のストレスによってさらに血糖値が上昇し、コントロール困難となるジレンマを抱える事となり、
もはや健康を取り戻したいという最初の目的を忘れ、血糖値をコントロールする事にすべての力を注ぐようになってしまい、
自分の人生が置き去りにされてしまうことを危惧して書いた記事でした。
そんな中、いつも見ているケアネットニュースのこんな記事が私の目に飛び込んできました。 人工甘味料は血糖値に影響しない可能性
提供元:
HealthDay News
公開日:2018/06/23
(以下、引用)
人工甘味料は砂糖の代替として飲料や菓子などの食品に広く用いられているが、
人工甘味料を摂取しても血糖値には影響を及ぼさないことが、29件のランダム化比較試験(RCT)を対象に行ったメタ解析で示された。
ただし、研究を行った米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校食品栄養科学部のAlexander Nichol氏は
「この結果から、血糖値が気になる場合でも人工甘味料の摂取は安全だと言えるが、人工甘味料入りの飲料や食品を好きなだけ食べてよいという意味ではない」と強調している。
研究の詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」5月15日オンライン版に掲載された。
(引用、ここまで)
人工甘味料は血糖値を上げるか否か、あるいは人工甘味料はインスリンを分泌させるか否か、
これに関して私は肥満体質の自分と、やせ型体質の友人とのN=2で実験を行った事がありますが、
その時も人工甘味料は血糖値を上昇させないという結果を得ました。
実体験とも一致するので今回の医療ニュースの情報は私にとって信頼のおけるものと言えます。
ただ私の場合は、ケトン体の産生が抑制され、血糖値の変動はないのにインスリンとグルカゴンの産生が抑制されるという結果を得ました。
それゆえ、人工甘味料は確かに血糖値は変動させないが、内分泌を攪乱する影響力は持っているのではないかと考えています。
医療ニュース内のAlexander Nichol氏の発言にある「人工甘味料入りの飲料や食品を好きなだけ食べてよいという意味ではない」というのはまさにその通りだと思っていまして、
血糖値を正常にする発想に捉われ過ぎて、血糖値を上げない人工甘味料に対してあまりにも肯定的に捉えすぎる思考は、
これもまた血糖値に人生を支配されている形の一つなのではないでしょうか。
というよりも糖質制限の理論に人生を支配されている、と言った方が適切であるかもしれません。
確かに糖質制限の理論を学ぶことで健康へ向けての大きな道標を知ることとなりました。
しかしそれと同時に糖質制限を通じて学んだことは、糖質制限食にするためにはもともと人為の加わっていない自然界に存在する食材を利用しなければならないこと、
すなわち自然重視型医療の重要性でした。
それに比べて人工甘味料の多くは、到底自然界に存在しえなかった物質であり、
それを長期間用いることで歪みが生じうる可能性について私達は十分想像力を働かせることができるのではないでしょうか。
一方で甘いものによってこの上ない幸せを感じられる人がいて、
また長い時間をかけてそれを大事にする文化が形成されてきたこともまた事実です。
人工甘味料を用いた低糖質スイーツなどの食品を私は否定するわけではありません。
これはいわば人為的な食品であり、それを理解した上で人為は適切に利用するべきだという事を知っておく必要があると思っています。
血糖値に人生を支配されてはいけないのは、
決して血糖コントロールの難しい糖尿病の方々だけではありません。
糖質制限の理論に捉われ過ぎて、
血糖値の低いものこそが善と考えてしまうすべての人への警鐘だと私は考えます。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
ブランパンも美味しくないし高いし、それなら普通のパンを少量食べたほうが満足感があります。
低糖質食品は添加物も多いように思います。
食べることは、幸福の一つでもありますから、上手に選びたいですね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
私はあまり気になりませんが、自然糖との味の違いを鋭敏に感じられる方も一定数おられますね。
そのことが人為的な甘みであることを現しているようにも思えます。
そんな人為的な介入によって生まれた食べ物をいかに利用するかはその人次第だと思いますが、くれぐれも理論ばかりに振り回されることのないように願うばかりです。
No title
確かに、言及する範囲において糖質制限理論は完璧だと思います。
しかし、糖質制限理論は言及する範囲を超える部分については何ら言及していないと思います。
まぁ、理論なんてみんなそういうものですが。
なので、理論はあくまでも理論に過ぎず、実際に応用する場合においては、理論が言及する範囲を超える部分については自分の頭で考える必要があるのだと思います。
しかし、人は往々にしてある理論に出会った時、自分の頭で考えることを放棄して、それだけで完璧だと思い込み、うまく行かないケースが多々あるように思います。
例えば"自己啓発セミナー"とか"資産運用マニュアル"とか"婚活ハウ・ツー本"とか...
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 理論はあくまでも理論に過ぎず、実際に応用する場合においては、理論が言及する範囲を超える部分については自分の頭で考える必要があるのだと思います。
そう思います。現実のすべてをカバーできる理論などそうそうないはずです。
かのアインシュタインの相対性理論でさえ、すべてを説明しきれない理論だと聞き及んでいます。
「人は見たいものしか見ない」という言葉がありますが、たとえ理論にとって都合の悪いことであったとしても、それが動かぬ事実である限り、目を背けずに考え続ける姿勢を持ちたいと私は思います。
ところで次の実験シリーズを行う予定はあるのでしょうか。最近脂質制限が話題ですね。もしたがしゅう先生が苦痛でなかったら脂質制限2週間チャレンジとかどうでしょうか?
実は私自身ちょっと脂質制限に挑戦して様子を見ようと思ってます。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
考えてみれば味とか食感とか原始的な感覚は、細かい事がわからなくとも身を守るための重要なセンサーとして働いてくれているはずですからね。理論にまどわされずに「何かおかしい」の違和感は大事に捉えていきたいですね。
採血を要する人体実験シリーズは諸事情で中止中です。
脂質制限ということは糖質非制限という事でしょうか。糖質制限を解除すると私の場合は明らかに肥満が悪化することを確認済なので、少なくとも現時点ではやめておこうと思いますが、もしも何かわかれば情報をシェアして頂ければ幸いです。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
元々標準体重であったのに糖質制限で体重増加し、しかも息切れするようになるというのは珍しいパターンです。そもそも糖質制限が体質的に合っていない可能性もあると思います。
「体調が最良のバロメータ」だと思うので、きっとどこかに修正すべき点があるはずです。食事だけに限らずストレス面も含めて広く生活の在り方を見直され、体調を戻されることを御祈り申し上げます。
どうしても脂質を摂りすぎてしまいますからね。
たがしゅう先生からしたら標準体重を少し増加したぐらいで疑問を感じるかもしれませんが…、やはり体が重くなることが私にとっては必要以上にストレスなのかもしれません。
もちろん他人は関係無いですし、太っている方を咎めたりしてるわけや否定してるわけではないんです。
前にダイエット指導の方が、体にあり余る脂肪がついてると心にも余分な脂肪がつく。と仰ってたのなんだか忘れられないんです。
イメージはいつでもダッシュでき狩りができる、揺れない脂肪締まった筋肉ですかね。
これにてコメント〆させていただきます。
たがしゅう先生もご自愛ください。
No title
以前コメントにて謎の群発頭痛?の報告をしたものです。
その後石川県白山にある、よい先生に出会い血液検査から体内の炎症反応が高いことを教えていただき、その結果、自分の痛みの場所を再度見つめ直し、副鼻腔炎ということが判明しました。額のあたりにかなりの膿がたまっていて、それが頭痛の原因だったようです。
今は糖質制限はもちろんのこと、漢方や抗炎症作用のある食材、2日程度のファスティング等でアレルギー、炎症反応がでないような食材を選択して多少症状が落ち着いてきました。
今回ある一つの疑念が生まれました。
私は嫁とともに4、5年程度糖質制限(MECに近い)を行ってたまに羽目を外すもののしっかりとやってきました。
最初はかなり不定愁訴のほとんどが改善されていき、そのあまりの凄さに糖質制限信者ともいっていい状態でした。
しかし、最近嫁も私も慢性の副鼻腔炎にかかるという状態に、夫婦で同じ糖質制限食の生活をしていることがなんらかの関係があるのではと感じています。
どうしても肉、乳製品が多くなりがちな食事と「アレルギー」「炎症反応」。
この2つは体全体に関わる病気に発展する可能性のある症状だと思います。
この一例で結論なんてでるわけもないですが、一つの症例としてたがしゅー先生に報告したく、コメントさせていただきます。
それ以外の状態は相変わらずよいので糖質制限をやめることはおそらくないと思います(笑
Re: No title
御報告頂き有難うございます。
> 肉、乳製品が多くなりがちな食事と「アレルギー」「炎症反応」
確かに大事な視点と思います。
同一のものを食べ続けることができる食習慣自体も現代社会がもたらした人為と言えるのではないかと思いますし、
あまりにも同一のものを食べ続けていると、アレルギーが起こりやすいという話もまことしやかに言われています。真偽のほどは定かではないにしても、実際肉、乳製品を食べ続けて体調を崩している人がいる以上、避けては通れない問題と思います。
私達は通常単一のものを食べ続けると「飽きる」という状態になりやすいと思いますが、
ここに理論で動く発想であれば、その自然の声に従わず、理論に従って単一のものを食べ続けるという行動につながるリスクが出てくると思います。ここでも自然重視型の思考が大事だと私は思います。
2014年12月24日(水)の本ブログ記事
「飽きるのも大事な能力」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-522.html
も御参照下さい。
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