足りないものを探す旅

2018/06/16 00:00:01 | 普段の診療より | コメント:6件

もはや国民病として不動の存在となったがんという病、

たとえ上手に糖質制限をしていたとしても、抑え切れないステージがあることを私は知っています。

糖質制限は理論的に考えてがん抑制的に働いて然るべきなのに、

ある時点から不可逆的な転帰を辿る事実が厳然としてあるのです。

そんな事実に直面すると自分の無力さ、未熟さを否が応でも痛感させられます。

中医学とか、ホメオパシーとか、私がまだ扱いきれない医療の名医がもし診ていたら治すことが出来ていたのではないか、

そう思うとやりきれませんが、それでも一歩ずつ前に進んで行くしかありません。 同じ悲劇を繰り返さないためにも、

私は治らない事を前提とした医療の中で安穏としているわけにはいかないのです。

だから私は今も糖質制限のみならず、様々な分野の医療を修得できるよう日々努力をしているつもりです。


しかし私の人生も有限です。

あとどれくらいすれば、私が難病を治せるような技術を身につけることができるのか、

ひょっとしたら私の力ではそんな日が来ることは一生来ないのかもしれないという不安にも時にかられますが、

ここでふと思うのは、仮に満足のいく技術を30年かけて身につけたとして、

人生80年とすれば私がその技術を披露できるのはせいぜい10年程度です。

しかしそんな匠の技は後継者がいないとすぐに途絶えてしまいます。

しかも誰かに伝えるにしても、匠の技はそう簡単に教えられるようなものではないので、

弟子が技術を修得するとしても、数十年の月日を要するでしょう。

そうすると弟子の人生の中で技術を満足に発揮することができる期間も20数年かそこらでしょうか。

それらは技術の伝達がうまくいったと仮定した場合の話で、実際には後継者が途絶える可能性だって十分考えられますし、

技術伝承がうまくいった場合でも、そんな少数の医師が救える人の人数はどうしても限られてしまいます。

そんなやり方ではがんという病気を制圧する時代を迎えることはいつになってもできません。

複雑な匠の技術でしか治せないというものではなく、

誰もが簡単に取り組むことができ、その方法を別の人に正確に伝達することもでき、

なおかつ誰が行ってもその有効性を再現できるという方法を見出すことができれば、

それが唯一がんという病気を制圧する偉業につなげられるのではないかと私は思います。

糖質制限という方法はそれらの条件を満たす大変魅力的な方法の一つですが、

残念ですがそれだけでは十分ではないのです。何かが足りないのです。

ストレスマネジメントには可能性を感じますが、誰もが再現できる手法へ落とし込むには困難を極めます。

後は何が足りないのか、がん抑制的に働く治療や治療家達のノウハウ、あるいはがんサバイバーの方々の貴重な経験などからの情報のエッセンスを集積し、

ある程度シンプルに伝えられる技術として具体的な形にすることがもしできれば、

たとえ私の人生の中ではがんの人を救えなかったとしても、次の世代がその技術を広めてくれて、がんに悩まされずに済む世の中へと近づいていくのではないかと思います。

足りないものを探す旅を、これからも私は続けていきたいと思います。


たがしゅう
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コメント

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2018/06/16(土) 07:12:31 | | #
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No title

2018/06/16(土) 22:01:13 | URL | 名無し #-
私は喫煙者で大酒呑みなので、肺がんや肝臓がんで遠隔転移が有りステージⅣだと宣告されても「あぁ、したかねぇな」と思えるような気がします。
自業自得ですからね(^_^;)。だって、人間いつかは死ぬのですから...

でも、医師から抗癌剤治療等についての説明がされただけだったら「おいおいっ!『緩和ケア』についての説明は無いのかよっ!」と怒鳴り散らしてしまうも知れません(^_^;)。

医師においては最後まで治療するのが目標ではなく、患者の生活の質を保つのが目標であると思うからです。

Re: No title

2018/06/16(土) 22:06:41 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
名無し さん

 コメント頂き有難うございます。

> 「あぁ、したかねぇな」と思えるような気がします。
> 自業自得ですからね


 そのようなお考えも主体的であろうと私は思います。
 主体的に判断していれば、怒りや悲しみは生まれにくいのではないかという気がするのです。

 そのような主体的な判断を応援できる医師で私はありたいです。

No title

2018/06/19(火) 14:04:16 | URL | まぁこ #EBUSheBA
大変お世話になっております。
先生のようなお医者様がいてくださり、精神的に救われます!いつも本当にどうもありがとうございます。

糖質制限や自然療法でご自身の肺がんを治し、膠原病も回復されている膠原病13年さんというブロガーさんをご存知でしょうか。私は、病気が発覚した時からずっとブログを参考にさせて頂き、普通なら今頃間違いなく薬漬けになって弱っていそうなところ、投薬なしで元気にすごせています。

海洋ミネラル(100種類近くの種類豊富なミネラル)、電子、酸化した体質の還元、腸内細菌、サーチュイン遺伝子を起こすこと、ビタミンD、解毒、糖質制限、放射線ホルミシスなどなどなどなど、多岐に渡り実行されて、ご自身や周りの方を回復させていらっしゃるのですが、何か一つでは駄目で、やればやるほど相乗効果で病状を軽減できるとおしゃっています。
中でもミネラルと電子と還元と食事と解毒、というキーワードが沢山出てきます。酸化していると正しい化学反応や教科書通りの代謝がおきないとのことです。また、ストレスや心の在り方についてもよく記事をかかれています。

この方の記事で、私は、癌・膠原病には、ミネラル、ビタミン、糖質制限、電子、還元、デトックス、ストレスマネジメントが効く、というようにうけとっています。
(そしてアーシングにはまりつつあります)
https://ameblo.jp/kougennbyou/entry-12284104069.html

先生、どうか先生の代で救ってください<m(__)m>☆(^^♪

Re: No title

2018/06/19(火) 20:47:26 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
まぁこ さん

 情報を頂き有難うございます。
 当事者が語る言葉なので、重みがありますね。

 何か一つではダメ、確かにそうだと思います。
 その一方で、知識が多すぎて散逸してしまっても本末転倒だとも思います。

 人生の時間は限られていますので、様々な情報を得ながらも、それぞれが中途半端で終わらないように、自分の中に取り入れていく過程で情報を厳選し、自分にとっての核となる部分を作っていく作業が大事だと私は考えています。

 2017年12月9日(土)の本ブログ記事
 「一度立ち止まってみる」
 http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-1181.html
 も御参照下さい。

No title

2018/06/19(火) 23:10:02 | URL | まぁこ #EBUSheBA
お忙しい中、お返事を頂き本当にありがとうございます<m(__)m>
立場の違いで全く違うのだと納得しました。
自分(患者)の立場としては、少しでも早く良くなりたいため、治った信頼できる体験談の多い対策は、できるだけ取り入れていきたいと思っています。
治るならなんでもいいからです。

でも、先生の立場でそれをしようとすると、なんでも深い知識・勉強が必要なんですね。
ごもっともだと思いました。

これからも先生のやり方で、是非足りない何かを見つけ出してくださることを期待しております<m(__)m>★
どうもありがとうございました。

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