主体的医療にそぐわない患者
2018/05/23 00:00:01 |
主体的医療 |
コメント:10件
最近私が目指している「主体的医療」の事について考え続けていますが、
普段診療をしていて、ものすごく引っ込み思案で自分の意志を表示してこない患者さんを診ることもあります。
そういう人は糖質制限のことを伝えても実践しないだけでなく、
症状や普段の生活のことを尋ねても口数少なく返答されるばかりで、何も情報が引き出せません。
結果的にいつもの薬を処方するだけで診療が終わるということが繰り返され、
悪いままのデータを見るにつけため息が漏れてしまいます。
ある意味こういう人が「主体的医療」から最も離れている患者さんなのではないかと考えさせられます。 つまり主体性が欠如し、流れに身を任せ続け、問題を生じても自己解決能力を育てないまま大人になってしまったような方です。
「主体的医療」を展開するには、「自分がどうしたいか」という希望、「自分の何が問題と思っているか」という問題意識が必要不可欠です。
それがなく流れに身を任せて考えなく受診される人の主体性をサポートすることはどう考えても無理です。
特に糖質制限や減薬のように自ら行動を起こさない限り恩恵を受けられない行為のサポートを私は絶対に行うことはできません。
こういう患者さんには受動的医療を受けるという選択肢があるのみではないかと私は思います。
受動的医療でもうまくいくくらい医療が発達していればそれでもよいですが、
残念ながら西洋医学ベースの現代医療は現時点で対症療法主体で根本原因の解決ができない医療です。
多くの場合、その場しのぎを続けて消耗し続けることで早めに人生が終了するというコースが待っているような気がします。
こういう患者さんを救うためには受動的医療から患者さんが主体性を取り戻すためにどうすればいいか、
そういう手段も考えていく必要がありますが、現時点でそのための良い方策は私は思い尽きません。
逆に言えば、治るも治らないも自分の心次第という側面も見えてきます。
とは言え、こんな患者さんほど極端ではないにしても、
人それぞれ主体性と受動性がそれぞれの割合で存在しているはずです。
主体性が8割、受動性が2割の人とか、主体性が3割、受動性が7割の人、といった感じです。
この割合を変化させることができるかどうかはよくわかりません。もしかしたら先天的な気質である程度の範囲以上は変化しないという可能性もありますが、
少なくとも最も変化させうるのは自分自身ではないかと思います。
裏を返せば他人の誘導で人の主体性を変化させるというのは極めて難しいことではないでしょうか。
ということは「主体的医療」を展開するには、
受動性が高い割合の人達の主体性を頑張って高めようと思うよりも、
もともと主体性が高いけれど、現代医療の負の側面に悩み続けているという人達を対象にした方がよく、
そうした医療が成果を上げることを示し続ければ、主体性が低めの人達の行動変容につながるかもしれません。
そして最後まで主体的医療の恩恵を受けられないのが受動性の高い患者さんではないかと、
何を言っても自らの改善行動を起こそうとしないその患者さんをみて私は思いました。
とは言え、受動性の高い人達の主体性を何とか高める方法がないものかとも思います。
勿論受動性の高い人を主体的医療の枠組みに引き込むことができればもっと貢献度は高くなるので看過できない問題です。
難問ではありますが、この問題についても並行して考えていきたいと思っています。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
この前仰られていたyoutube動画投稿の可能性につながると思います。
Twitterのような物陰からの石の投合でなし、Facebookのような現実以上の建前、自慢、広告、忖度にまみれている世界でもなし、伝えたい事実がメインコンテンツとなり得る媒体だと思います。ブログの伝搬力、説得力、デメリットまでもをより先鋭化したようなツールだと感じています。
そして、何よりも医師としての資格はないけれど、たがしゅう先生の糖質制限、ストレスマネジメント、主体的医療に賛同しているものにとっても、それを正しく広める協力ができること言うこと。
この糖質制限派の医師による動画投稿の流れが大きくなれば、日本人の医療に対する考え方を変え得るきっかけになると期待せずにいられません。
そして、主目的ではないとはいえ、大きな流れとなれば閲覧数によっては金銭(経営)の問題解決も見えてくるかもしれないです。
但しデメリットも大きいですよね。
実名で顔出しのスタイルなので、心無い批判も浴びせられるだろうし、やはり動画投稿となるとそれなりの覚悟が必要になりますね。
それをわかっていながらたがしゅう先生の動画投稿に期待してしまう、これもやや主体性にかけている行為ですね(汗)
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
なるほど、You Tubeであれば主体性の低い人にとってもアプローチしやすく、主体性の底上げを支援するツールとして使える可能性はありますね。利用するもしないも個人次第という点でも確かにブログと相同性があります。
種々の予想される問題点を検討してクリアできそうであれば、その領域にも踏み込んでみたいと思います。
まさに
偏見かもしれませんが、特に田舎では主体的に医療を受けようという人が少ないような気がします。私も実家が田舎なのですが、母(60代)や祖母(80代)は、まさに先生の言われるがままにスタチン剤などの薬を内服しています。母には、コレステロールが高くても中性脂肪が低いなら問題ないよとか、スタチンは飲まない方がいいとか、糖質制限のこととか伝えてみましたが、「でも、(先生に)かかってるから飲まないわけには」とかで、聞く耳を持ってくれません。「卵は一日一個説」も、思い込んでいるので覆せません。悲しいですが、半ば諦めています。
Re: まさに
コメント頂き有難うございます。
変わらない相手が他人であれば気にならないことでも、相手が肉親の場合は変わらなくて歯がゆい気持ちがしますよね。とてもよくわかります。
基本的には肉親といえど、自分の課題と他人の課題は分離して考えるというのが心のおさまりがよいのではないかと私は思います。
ただ参考になるかどうか、先日NHK Eテレの「芸人先生」という番組で漫才師のナイツさんが、ビジネスと漫才に共通するコツとして「売り込むな!買いたいと思わせろ!講座」と題して、強引に勧めるのではなく、さりげなく相手に自発的な興味を持ってもらえるようにサポートする方法の重要性を語られていました。この「さりげなさ」がひとつポイントなのかもしれません。
No title
確かに負の側面に悩み続けている方々を対象にするというお考えは賛成ですが、広告が紛らわしい情報を与えて正常な判断が出来なくなっているのでは?と思います。
「日本人の平均寿命は世界2位」で「癌になる人は2人に1人」
「和食は健康に良い」「血糖値を下げる為カロリーオフにしよう(といいつつ人工甘味料を摂取(-_-;))」
どれも嘘ではないところが厄介です。
このようなうたい文句を聞くと「で結局、今の日本人は健康なの不健康なの?」と疑問が解消されず、最終的には混乱して「楽な従来の生活に戻る」という循環が生まれるのだと。
一般的に変えないほうが楽です。
このような複雑な情報を、簡略化して説明できる手段は、SNSでの地道な活動しかないのでしょうか。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
確かに様々な情報に惑わされる側面はありますね。それが故に主体的治療が困難な環境であるとも言えます。
やはり現時点では各人が自分の頭で考える力を鍛え、様々な疑問に対応していくより他にないと私は思います。
理想的には患者が抱いた謎を医療者が一緒になって考えていける環境が整えば望ましいです。
「なぜ日本人の平均寿命は世界2位なのか?」
「平均寿命は世界2位だが、健康寿命も世界2位なのか?」
「なぜ2人に1人が癌になるのか?」
「なぜ和食は健康に良いと言われているのか?」
「カロリーオフにすれば血糖は下がるのか?」
「人工甘味料にすれば血糖は上がらないのか?」
それ以外にもその時代時代で次々と湧いてくる疑問に対し、患者と医師が一緒になって考えながら健康管理ができる場所を作りたいです。
患者の責任
『自分の健康状態について医療スタッフにできるだけ正しく伝え、
自分の受ける診療の内容について十分理解できるまで質問するとともに、
合意したことを守る責任があります。』
私は、まさにその通りだと思いました。
権利と責任は表裏一体ですから、十分に責任を果たしていない患者は権利を行使出来ない(医療の場合で言えば、患者にとって最適の診療行為を享受出来ないと言うことになると思います。)のは自明の理だと思います。
ですので、例えば初診時の問診票に上記の文言をでっかく明記しておくとか、上記の文言が描かれたポスターを患者待合室の目立つ所に貼って置くとかすると、その効果の程は分かりませんが、良いのかも知れません(^_^;)
Re: 患者の責任
コメント頂き有難うございます。
> 『自分の健康状態について医療スタッフにできるだけ正しく伝え、
> 自分の受ける診療の内容について十分理解できるまで質問するとともに、
> 合意したことを守る責任があります。』
良いですね。まさに私が推奨する主体的医療に必要不可欠な指針です。
患者の権利を提示する病院は数あれど、患者の責任を掲げる病院は珍しいですね。
実際に指針に沿った診療が展開されているのか、それとも形骸化してしまっているのかどうか、興味のある所です。
> 例えば初診時の問診票に上記の文言をでっかく明記しておくとか、上記の文言が描かれたポスターを患者待合室の目立つ所に貼って置くとか
あるいはオンライン診療の場合は、その文を読んで同意しないと先に進めないというネットでの契約作業の時によく見るページを挿入しておくかですね。
ただあの類のページまともに読んでから同意している人ってはたしてどのくらいいるのだろうかとも正直思います。問診票やポスターに掲示することもおそらく同様ではないでしょうか。
大切なことは掲示することよりも、そもそも患者一人ひとりが主体的である必要性を感じているかどうか、だと思います。感じている人には主体的医療のサポートをしますし、感じていない人へは従来型の受動的医療を受けられることを勧めます。
No title
>人それぞれ主体性と受動性がそれぞれの割合で存在しているはずです。主体性が8割、受動性が2割の人とか、主体性が3割、受動性が7割の人、といった感じです。先天的な気質である程度の範囲以上は変化しないという可能性もありますが、
実用的ではないかもしれませんが、
無い知恵を振り絞って考えてみました。
診察前の問診で、
毎回又は定期的に、患者の治療に対する主体性をうかがい、
主体性、受動性に応じて、患者をグループ分け。
ざっくり分けると、以下の様な感じです。
A:主体性が高い
B:主体性が高め
C:受動性が高め
D:受動性が高い
グループごとに、治療の内容を作成。
ざっくりですが、以下の様な感じです。
A:生活改善、ストレスコントロール
B:Aの内容 + 薬の処方又は減薬
C:Aの内容 + 薬の処方
D:薬の処方のみ
患者にも、治療内容を記載した紙を渡す。
患者の治療に対する意識が変われば、
患者の意思にあった治療に変更。
主体性医療に対する意識の芽生え、
その、きっかけ作りを考えてみました。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> A:主体性が高い
> B:主体性が高め
> C:受動性が高め
> D:受動性が高い
分かりやすい分け方ですね。
主体性と受動性が表裏一体だと考えれば
A:主体性9~10割、B:主体性6~8割、C:主体性3~5割、D:主体性0~2割、というイメージでしょうか。
それをどのように分けるかが重要ですが、
例えば、「あなたは、治療法を決定する際に担当医にどのような姿勢を望みますか?」という設問を設けて、
・患者が治療法を提案し、医師と相談しながら治療法を決定する→Aグループ(「患者主導・医師パートナータイプ」)
・医師が複数の治療法を説明し、患者と相談しながら治療法を決定する→Bグループ(「医師主導・患者パートナータイプ」)
・医師が治療法を決定し、患者に説明し同意を得る→Cグループ(「医師主導・説明同意ありタイプ」)
・医師が患者にとって最良だと考える治療法を、説明や同意を経ずに決定する→Dグループ(「医師主導・説明同意なしタイプ」)
という感じでグルーピングするというのは一つのアイデアかもしれませんね。
それぞれの対応に関してはAグループは食事・ストレスマネジメント以外にも患者希望によっては無限に幅広くなります。明日の記事でもう少し詳しく考察してみたいと思います。
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