無償で情報を与える医師の価値
2018/05/18 00:00:01 |
主体的医療 |
コメント:12件
夏井睦先生がいつも湿潤治療の御講演の最後におっしゃる言葉で、
「医学の情報には著作権はない」という言葉が私は好きです。
「だからスライドのデータも希望者は自分に断りなく使ってもらって構わない」というのが夏井先生のスタンスです。
私もそうした夏井先生のスタンスに賛同しており、自分の考えは惜しみなくシェアするよう心掛けています。
ところが世の中には、情報の囲い込みをするタイプの人が結構いるように思います。
例えば、何らかの価値ある医療情報があるといった場合に、
真似をされては困るというので、ある特定の集団の中でのみ情報をシェアしていたり、
情報を提供するにしても有料セミナーでお金を払った人にだけ提供したり、といったパターンです。 なぜ真似をされると困るのかということを察すれば、
自分だけの希少価値がなくなってしまったり、商売を行うのに不利になったりするからではないかと推察されます。
それが商品を売る企業の立場であれば、真似をされると経営状態が悪くなり存続の危機にもつながりかねないので特許をとって真似されないようにするという流れになるのは理解できます。
医療情報の場合も自身が経営者で、医療情報の提供が商品を売るのと同じようなものと捉えていればその理屈は通用するのかもしれません。
しかし医療情報の提供は自分が利益を得るためのツールではないという立場に立てばどうでしょうか。
私はまさにそういうスタンスです。そうであるがゆえに惜しみなく医療情報を提供しているのです。
では私は何のために医療情報を無償で提供しているのかと言えば、より良い世の中を作るためです。
この度の静岡講演会でも私は来場をしてお金を払った人だけに情報を与えるつもりで講演をしたわけではありません。
情報提供だけであれば参加していない人でも入手することができるようにと、当日の講演内容自体はブログ記事としてすぐに公開しました。
真似をされては困るという感覚は私の中に一切ありません。むしろどんどん真似をしてもらいたいと思っているくらいです。
ではわざわざお金を払って私の講演を聞きに来てくださった方々へは私がどんな価値を与えられるのでしょうか。
それは私が決めることではなく、参加された方々がどんな価値を感じられるかによるので一概には言い切れませんが、
私がそうした方々へできる事は、実際に会って、実際に聞いてでないと伝わらない情熱のようなもの、
私の言葉が届くことで誰かの背中を押せるよう全力で伝えるということしかないのではないかと思っています。
私は自分に注目を集めたり、自分がお金を儲けるために医療情報の囲い込みをしたくはありません。
それは自分の信頼を損なうことにもつながりかねませんし、公平かつ公開的な場で医療情報に対する議論を深めて発展させていくことも難しくなってしまいます。
医療情報は惜しみなく出す、その上でそれでも私に興味を持ってもらえるようになることが大事だと思います。
では医療の情報は万人にシェアされるべきという立場に立てば、
どうやって商売をしていけばよいのでしょうか。生きていくためにどうしてもお金は必要です。
言い換えれば、情報をシェアしていても、それでも情報提供者にお金を出したいと思う時はどんな時でしょうか。
それは情報を知ったとしても、得ることができない何かを手に入れたいと思う時、
あるいは情報はわかっているけど、自力では解決策を導くことができない問題に直面している時、
そういう所へ手を差し伸べることによって価値が生まれ、
すべて情報がシェアされていることが前提の中で、その価値を下にお金のやり取りが生まれることにつながるのではないかと、
ひいてはそのやり取りが繰り返されて、その方式が定着していくことで人類の健康へ貢献するという私の目的も達成するのではないかと考えます。
こうした発想の中に私が構築したい新しい医療へのヒントが隠されているように思います。
しかしこの辺り具体化していくには、まだまだ時間をかけて考え抜く必要がありそうです。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
ネットで調べる→音楽をCDで聴く
私はネットや本で調べた情報が、面白かったり役にたったと思うと、その情報主からリアルでお話しを聴きたくなります。
その方の講演会が近くであれば聴きにいきますし、そうでなければ講演会を企画してきました。
たがしゅう先生のライヴを聴きに行きたいです。
東北でのライブの予定はありませんか?
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
有り難いお言葉です。
> 講演会を聴きに行く→音楽をライブで聴く
> ネットで調べる→音楽をCDで聴く
すごくわかりやすいたとえですね。
確かにネットなどでお金を払わなくても好きなアーティストの音楽を聴くことはできますが、
それでもお金を払ってわざわざ会いにいくのは、現場でしか味わえない感覚を手に入れたいからということはとてもよく理解できます。
講演会という名のライブもそれと同じことなのかもしれませんね。
まだ東北で講演会をする予定はありませんが、呼ばれたら東北でも伺います。
その時までさらに成長できているよう地道に努力を続けて参りたいと思います。
No title
http://orion.mt.tama.hosei.ac.jp/hideaki/another.htm
著作権とはなんだろう?と思って、ネットを見ていたら上記の資料が有りました。
"中学生、高校生のための"と有りますが、とても読み応えが有りました。
よろしければ、参考までに御一読下さい。
オープンであること
今回のブログを読ませていただきながら、現在、悪質タックルの問題で世間の注目を集めている関西学院ファイターズの事を考えていました。
私は30年以上このチームを応援しています。
関学ファイターズで受け継がれている考え方の中に「オープンであること」というのがあります。
アメフトは戦略が非常に重要視されるスポーツですが、その戦略ですら、ファイターズは惜しげもなく公開しています。しのぎを削るライバルチームといかにして戦ったのかを、翌年にはそのライバルチームの前で解説したりするのです。
その考え方の背景にあるのは、アメフトを通じて得られる学びを多くの人と共有し、それぞれの人生で生かしてもらいたい、という願いだと思います。
そんなチームにとって、相手を意図的にけがをさせてまで勝ちたい、などという考えは論外で、いわば、人の健康を犠牲にしてでも利益を得ようとする製薬会社のようなものだと思います。
目先の自己の利益でなく、みんなの幸せを考える。そんな理想を掲げながら、チームとしても国内トップを維持し続けるファイターズに、たがしゅうさん、夏井さんを重ねています。
No title
私は「オーソモレキュラー」「機能性医学」に、
賛同する部分があり、
関連本をたくさん読みました。
「オーソモレキュラー」をより深く知るには、
セミナーの受講が必要です。
しかし、私には受講金額が大きすぎます。
一般人が気軽に買えない医療サプリ、高額な受講料、
敷居の高さが残念です。
無償で医療情報を提供して頂けるという事は、
有難い事だと気づきます。
Re: No title
情報を頂き有難うございます。
> 「もう一つの著作権の話 --- 中学生、高校生のための著作権の基礎理論 ---」
> http://orion.mt.tama.hosei.ac.jp/hideaki/another.htm
簡単に答えを与えない、どちらにも着地させてもらえない歎異抄のような複雑さを持った歯ごたえのある文章と思いました。
それでも一つのメッセージとしては、「利己的にならず創作者に当たり前の敬意を払うことの大切さ」ではないかと感じました。
永遠平和を目指すのは困難だけど、時代の変化に適応しながら常に考え続ける哲学者イマヌエル・カントのスタンスとも近いかもしれません。
2016年8月27日(土)の本ブログ記事
「公平性と公開性」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-719.html
も御参照下さい。
Re: オープンであること
コメント頂き有難うございます。
> アメフトを通じて得られる学びを多くの人と共有し、それぞれの人生で生かしてもらいたい、という願い
まさに一緒ですね。私が目指していることと共通構造を持っていると思います。
「医療を通じて得られる学びを多くの人と共有し、それぞれの人生で活かしてもらいたい」です。
オーソモレキュラー
ちなみに江部Drも山田悟Drも糖質制限の専門書を著わしており、価格は専門書としては妥当な価格です。また、高額な受講料のいる研修会には関わっていません
マサチューセッツ工科大学で、授業映像のWeb一般公開に取り組んだチャールズ・ベスト元学長の言葉です。
ただし、私は知識が増えた結果、いつの間にかお金も増える思っています。
そもそも、お金というものは人からの感謝の印なので、人様に喜んでいただけたら結果的に収入に繋がると思います。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
有料でも学ぶ価値があると思ってもらえれば成立しますが、
その額が高くなればなるほど価値があると思ってもらうためのハードルは高くなります。
オーソモレキュラーは私も何度か勉強会に参加して、確かに勉強になる内容も多いと思いますが、その辺りの問題が解決できない以上、どうしても「一部の人が知っている特別な知識」の域を出ないように思います。そこは私の目指す領域とは違う場所です。
Re: オーソモレキュラー
コメント頂き有難うございます。
オーソモレキュラーの概要を知るだけならまだしも、本格的に学ぶには現時点で高額なお金を支払うしか方法がないという事ですね。
それだと万人がその恩恵を受けるには程遠い道なのではないかと私は思います。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
> 私は知識が増えた結果、いつの間にかお金も増える思っています。
そうですね。私もそう思います。
そしてそこからさらに進めば、お金が増えたとしてもそこから周囲に還元するようにお金を使えば手元にお金はたいして残りません。
その代わり貢献感にあふれる幸せのサイクルが回り出します。そんな人生を私は目指したいです。
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