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フェルガードは漢方的か
コウノメソッドの中で一つ独特な治療方法として「サプリメント(健康食品)を用いる」というものがあります。
サプリと言うだけで、あまり信用しないという医師が多い中で、
メソッド提唱者の河野先生は認知症診療においてあるサプリメントを用いる事を推奨しています。
それが「フェルガード」というサプリメントです。
もともと米ぬかから抽出された成分である「フェルラ酸」と「ガーデンアンゼリカ」の二つを混ぜ合わせたサプリメントです。
ただ『米ぬか』というと糖質制限推進派医師の私としてはちょっと心配になります。
本日はこのフェルガードについて考えてみたいと思います。
まずフェルガードには大きく5種類の製品がありますが、そのうちよく使うのは「Newフェルガード」と「フェルガード100M」です。
フェルガードの中のフェルラ酸はいずれの製品も100mgと一定量ですが、
ガーデンアンゼリカの量がNewフェルガードでは100mg、フェルガード100Mでは20mgと5倍ほど差があります。
フェルラ酸は試験管内の実験でアルツハイマー病の際に脳内に蓄積する異常蛋白であるアミロイドが凝集するところを不安定化させる働きがあることがわかっており、アルツハイマーの予防に使えるかもしれないとされています。
またガーデンアンゼリカは「数少ない神経細胞を利用して情報交換を密にする成分」だとされ、神経細胞(ニューロン)のネットワークを再構築しているのではないかと言われています。
それゆえ末期の認知症であってもガーデンアンゼリカによる改善効果が期待できるようです。
端的に言えば、強いフェルガードが「Newフェルガード」、弱いフェルガードが「フェルガード100M」と言えるかもしれません。
例えば、Newフェルガードの栄養成分表を見てみると
★内容量……1包重量2g
★1包あたり… 。フェルラ酸100mg ガーデンアンゼリカ抽出物100mg。ビタミンE50mg
★栄養成分表示 。エネルギー7.76kcal
。たんぱく質0.004g。脂質0.09g。炭水化物1.74g。ナトリウム0.18g。ビタミンC 55mg。ビタミンE 50mg
このNewフェルガード使い方としては病状に併せて1日1~2回内服します。
炭水化物あるにはありますが、許容範囲の量ではないでしょうか。
フェルガード100Mの方は、フェルラ酸とガーデリアンゼリカの配合の妙で、アルツハイマー病予防や薬剤過敏になりやすいレヴィ小体型認知症、ピック病(前頭側頭型認知症)などに有効だとされています。
副作用は少ないようですが、そのような弱いフェルガードを使うべき人へ強いフェルガードを使ってしまった場合、興奮性が高まってしまうことがあるようです。特に在宅介護の現場ではそれは致命的になるので注意しなければなりません。
Newフェルガードを使うのは進行したアルツハイマー病の他,正常圧水頭症,石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病(DNTC)といった病気や、認知症が進行して嚥下障害や歩行障害をきたしてしまった場合にも症状改善に有効であるそうです。
健康食品ゆえに医者が処方できないという所が他の薬と絶対的に異なるところで、患者さん(または家族)自らにフェルガードの販売元である(株)グロービアに連絡をとってもらうことになります。
副作用は少ない、適応は広い、末期でも効く、などと都合の良い文言が続くため、果たして本当だろうかと思いながらも、何はともあれ私も患者さんに試してみることにしました。
トラブルを起こさないことが最優先なので、私のやり方としてはまず感触をつかむまでは全例弱いフェルガードである「フェルガード100M」をとりあえず1ヶ月分勧めるという戦略をとりました。
その1ヶ月で何かしらよいことがあれば継続、なければその時点で終了とするというものです。経過によっては必要に応じてNewフェルガードに高めることも検討します。
さて十数名の患者さんに使用してみましたが、これがなかなか良い感じです。
劇的に改善したという例はないものの、「顔つきが変わった」「朝起きれるようになった」「変なこだわりが少なくなった」など、家族からのよい反応が聞かれています。
今のところ7割やや改善、3割不変で、負けはなしといった感じです。
なんだか認知症専門医からは信じてもらえそうにない話ですが、
実際に使用して私は感触をつかみ始めています。何事も先入観はいけないと思いました。
それにしてもこんな都合の良い話があるものでしょうか。
私はこのフェルガード、漢方薬に近い発想だと感じました。
漢方薬は基本的には「証」という東洋医学独特の診断名を見分けて、どの漢方を使うかを選択するのですが、
中には「病名処方」といって、「細かい事は考えなくてもこの状態にはこれ」といったシンプルな理由で有効性を示す漢方薬が少数ですがあります。
有名なものに「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という漢方があり、これはいわゆる「こむら返り」に有効な漢方薬です。
フェルガードは、強弱の使い分けこそあれ、それぞれの「認知症」の共通病態に対してすべからく改善効果を示してくれるので病名処方が可能になるのではないかと思います。
また漢方は複数の生薬によって構成される薬ですが、一般に構成生薬の数が少なければ少ないほど即効性がある、という性質があります。
芍薬甘草湯は「芍薬」と「甘草」という二つの生薬から構成される比較的シンプルな漢方で、こむら返りに対して即効性があります。
一方、フェルガードも構成生薬は「フェルラ酸」「ガーデンアンゼリカ」の2つです。なおかつ早い段階で効いてくれる印象があります。
なんだか両者は似ている気がします。漢方好きの私としては比較的しっくりくるサプリメントです。
まだまだ経験は浅いので検証を続けていきますが、
いろいろな立場の意見を吸収することの重要性を強く感じます。
たがしゅう
コメント
私も母に使用
同僚の看護師さんが身内に使って、劇的な改善があったという話を聞いて、食いつきました。
4年前に無くなった認知症の父には、向精神薬の調整しかできなかった私ですが、今生きている母には何とか認知症にならないようにと思っているのです。
もちろん糖質制限もさせたいのですが、なんせ年寄りの作る食事は蛋白、脂が少なく、夜だけでも我が家で食事をさせて、おかずをたくさん用意してやることくらいしかでききません。
自分ももう少し年が行ったら、フェルガード飲もうと思ってますが、糖質制限していたら、必要ないかもしれませんね。
2013-12-27 13:44 たかはし@旭川 URL 編集
いろいろ
私の勤務先でも院長が去年からコウノメソッドに取り組んでいます。糖質制限と湿潤治療には見向きもされませんが(私が講演を聞きに行くのは構わないといってもらいましたが)、一生懸命取り組んでおられます。
ただ、患者さんの様子が変わっているようなのか常勤スタッフからは伝わってきません。(私は週三回のパートです)
ご家族の中にはなんでサプリメントという疑惑的な感覚も見受けられます。どんなふうに進んでいくのか、大変興味深く見守っているところです。
2013-12-27 15:22 rosemary URL 編集
よくわかりました
たがしゅう先生の今回の記事で、やっと意味がわかりました。
ありがとうございました。
2013-12-27 19:09 かんな URL 編集
Re: 私も母に使用
コメント頂き有難うございます.
私は糖質制限に予防効果があると考える立場の医師ですが,
効果の即効性,インパクトという意味では糖質制限よりフェルガードの方に軍配が上がる印象です.しかし飲み続けなければならないことはデメリットです.
ただし先生のおっしゃるように,しっかり地道に糖質制限を続けてそれが当たり前になれば,フェルガードを飲むこともなく,それだけで認知症には普通の人より圧倒的になりにくいと思います.
2013-12-28 04:28 たがしゅう URL 編集
Re: いろいろ
コメント頂き有難うございます.
確かにフェルガードも完璧ではないですね.使い方にもコツがあるようで,私も勉強中です.
2013-12-28 04:30 たがしゅう URL 編集
Re: よくわかりました
コメント頂き有難うございます.
フェルガード,ただのサプリメントとあなどるなかれ,なかなか面白いです.
2013-12-28 04:31 たがしゅう URL 編集
乾燥凍結ミミズ
精神科医のtakです。
いつもブログの更新を楽しみにしています。
コウノメソッドではフェルガードとともに乾燥凍結ミミズ(プロルベイン)も勧めていますね。「人生やり直しができるサプリ」などど紹介されています。
私は実家の80代の父に認知症予防のフェルガードとともにプロルベインも服用させています。
当初はミミズということで、気持ち悪いと拒否されていましたが説得して飲ませました。
以前から慢性的な頭重感、軽度の気分の落ち込みがあって、釣藤散などの漢方も無効でしたが、プロルベイン開始してから上記症状がほとんど消失しました。
動脈硬化改善例などが多く報告されていて、脳梗塞や虚血性心疾患、認知症の予防効果も期待しています。
2013-12-28 16:26 tak URL 編集
Re: 乾燥凍結ミミズ
コメントを頂き有難うございます.
プロルベインについては私はまだ勉強不足につき未導入です.しかしこちらも興味深いですね.
まずは資料請求し,勉強するところから始めたいと思います.貴重な御報告感謝申し上げます.
2013-12-28 16:50 たがしゅう URL 編集
No title
また遊びに来ます!!
2014-01-30 10:27 履歴書の見本 URL 編集
Re: No title
お褒めの言葉を頂き有難うございます.
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます.
2014-01-30 21:06 たがしゅう URL 編集
No title
2014-02-22 13:36 はる URL 編集
Re: No title
> フェルガードは現在特許権侵害で販売差し止め請求の係争中ですが、その点についての見解をお聞かせ下さい。
その点については真実の確認が取れていないのでコメントできません。
2014-02-22 21:14 たがしゅう URL 編集
No title
おととしからの裁判も結審し、判決は4月17日とのことですので、気になるところではあります。
2014-02-23 11:17 はる URL 編集
No title
推奨している医師達のブログ更新がマメだったり、介護の相談サイト等でフェルガードを勧める医師と言っている人の回答の早さ。いつ患者を診てるの?私の父を診た医師はフェルガードを拒否したらとんでもない失礼な事を言いました。
このサプリをめぐりどんな力が動いているのか。
2014-04-17 10:30 NON URL 編集
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> このサプリをめぐりどんな力が動いているのか。
上手すぎる話に疑念を抱く気持ちはよくわかります。
しかし私の個人的な印象では実際に認知症の患者さんに服用して頂き7割くらいの方が何らかの症状の改善を得ています。そうした成功体験があるが故に、純粋にこの選択肢を多くの人へ伝えたいという気持ちから情報発信をしている次第です。特別何らかの力が働いているということはありません。
2014-04-17 11:59 たがしゅう URL 編集
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2014-09-08 06:41 編集