コレステロールにも人生を支配されない
2018/04/27 00:00:01 |
ふと思った事 |
コメント:6件
以前、私は「血糖値に人生を支配されない」という記事を書きました。
従来のカロリー制限では、十分な血糖コントロールを図るのが困難であったため、
患者さんは何も考えていなければ言わば自分の健康を医療へゆだねるしかないという状況があったかと思います。あるいは今でもほとんどはそうかもしれません。
それが糖質制限の普及によって少なくとも血糖コントロールに関しては医療に頼らずに自分の意思でコントロールしやすい状況になりました。
ところが今度は医療に依存する代わりに、血糖値に依存するという状況が出てきてしまいました。
血糖値変動がその都度気になり、少々血糖値が変動しただけでも不安があおられてしまい、さらにその不安がストレスとなって血糖値を上昇させ、さらに不安が増幅してしまうという悪循環です。
ある意味それは、カロリー制限だけしか選択肢がなかった時代には存在しなかった不安であるように思います。 そうした血糖値に対する不安が出現した事により何が起こったかというと、
血糖値が変動してしまうことを敵対視してしまう思考パターンが生まれてしまいました。
不安に思えばどうするかと言えば、インスリンを打ったり、薬を増量したり、さらに糖質を厳密に制限しようとしたりします。
それらの行動は時に薬剤の副作用を呼び込み、時にストレスとなって別のストレス関連疾患の温床となります。
血糖値を良くしようとして病気を悪化させるというのは本末転倒だと私は思います。
そしてそれと全く同じ状況がコレステロールに関しても頑として存在しているように思えてきました。
糖質制限を行っている場合にコレステロール値を気にしなくて良い理由は過去にも触れたことがあります。
大雑把に言えば、糖質制限でインスリンを最小化する事で脂質が体内に過剰に蓄積される事がなくなり、ちょうど良いコレステロールの量で平衡状態に達するから、です。
ただし、このコレステロール値が糖質制限し始めて間もない時期には、
それまでの食事でコレステロール少な目の食事が常態化していた場合や、肥満などの微小炎症があり炎症の修復材料としてのコレステロールが動員される状況にある場合は、
糖質制限中にも関わらず、一時的に高コレステロール血症をきたすことが起こりえます。
ただ前者であれば時間とともに内因性のコレステロール合成量が次第にちょうど良い所に収まるようになっていきますし、
後者であれば時間とともに炎症が修復されてコレステロール増員の需要がなくなっていくので、再びコレステロールは基準値内に収まっていくようになります。
そのように合成量の調整や修復の過程をみているのだから、体調はむしろ改善する方向に向かうはずです。
ところが、その高コレステロール値をみて、従来の常識に従って「このままでは動脈硬化が進行する」とか「心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなる」などの不安を抱えてしまえば、
そのストレスそのものがコレステロールを上昇させます。ストレスに対処するためのストレスホルモンことコルチゾールの材料がコレステロールであるからです。
従って、本来であればそのまま様子を見ていくだけで体調が整っていくはずの状況において
コレステロールの高さを不安に感じることで、ストレスが蓄積され、ストレス関連疾患を引き起こすことにつがなり、
あげくの果てには「やっぱりスタチンを使おう」という話にさえなりかねません。
ではどうすればいいのかと言えば、それは「自分の身体からの声を聴く」、これに尽きると思います。
体調が悪くもなっていないのに、血糖値やコレステロールの数値が上がっている時は、無理にその数値を治そう思わないことです。
体調が良いのに血糖上昇やコレステロール上昇があるのなら、きっとそれには意味があると思います。例えば、ストレスを乗り越えようとまさに今頑張っている真っ最中なのかもしれません。
もしそうだとしたらそれを無視して人為的行為で無理に正常化させようとする行為は、身体の声を信じていない事になるのではないでしょうか。
医師の立場で言えば、「木をみて森を見ず」の診療スタイルです。数値を治して患者を治さない医師であってはなりません。
自分の身体の声を聴き、その上で体調が悪い時に初めてその原因を考えるべきです。
そしてその時もまず第一に考えるべきは自分自身の生活行動、思考パターンについてです。
血糖値にもコレステロールにも人生を支配されてはならないと私は思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
ものすごく納得。
健康に関する情報が増えれば増えるほど、かえって不安になり、病院に行ってしまう。
そして、何らかの病名をつけてもらって、薬を飲んで安心する。
健康を気にして不健康になるという「不健康スパイラル」って感じですね。
これからは、自分の身体の声を聴くようにします。
ありがとうございました。
Re: ものすごく納得。
コメント頂き有難うございます。
> 健康を気にして不健康になるという「不健康スパイラル」って感じですね。
そう思います。
健康情報に染まり過ぎると自分の声を聴くのを忘れがちです。
どれだけ医学が進歩しても、基本は自分の体調をバロメータにする事だと私は思います。
医師に人生を支配されない
機能的・器質的な異常が無い限り「毎日出なくても問題無い。」・「時が来れば、自然に出る。」と頭では分かっているのですが、一日でも出ないと、とても不安になります...
で、話は変わりますが、私はコントミンを服用しており、主治医に「便秘気味なので、試しに減薬してみたいのですが。」と申し出たら、間髪入れずに「じゃあ、プルゼニドでも出しておきますか。」と軽く言われました。
私は「下剤を処方するにしても、まずはマグラックス辺りから試してみるのが望ましく、いきなりプルゼニドはないだろう。」と思ったので、下剤は断固拒否し、減薬に応じてもらいました。
その後、便通は若干改善し、精神的な病状の変化も特にありませんでした。
そこで、たがしゅう先生がブログで言われている
・自分の頭で考える
・医師の言いなりにならない
・自分自身が自分自身の主治医
・体調が最良のバロメータ
を改めて実感した次第でした。
私は、医師に騙されないための予備知識を得るために、たがしゅう先生のブログを読み、なるべく医師のお世話にならないようにするために糖質制限を実践しいます。
誠に身勝手と承知の上ではありますが、今後も良記事を期待しております。
Re: 医師に人生を支配されない
コメント頂き有難うございます。
問題は「便は毎日出なくても問題ない」という事がわかっていながら不安を感じる心の在り方のほうにあるかもしれません。
その意味で減薬に取り組むという姿勢は、便秘の副作用を減らすという意味でも、本来の心の在り方を取り戻すという意味でも、両方の意味で望ましい行動であるように思います。
ただ向精神薬の減薬は一筋縄ではいかないこともあります。決してあせらず慎重に進められる事をおすすめします。
最近とある漢方の先生から、1日量を減らすのではなく、毎日飲んでいる薬を土曜日だけ止めてみることから始め、何ともなければ火曜日に止めてみて、次は木曜日・・・という感じでだんだん間隔をあけていくという方法を教えて頂きました。どうやらその方が離脱症状が起こりにくいのだそうです。さらに漢方薬も併用したりするとうまくいくとのことです。あくまでも私自身の診療経験ではないのですが、何かの参考になればと思いシェアさせて頂きます。
> 今後も良記事を期待しております。
有難うございます。私にできる限りの事を続けて参りたいと思います。
馴れ初め
Re: 馴れ初め
コメント頂き有難うございます。
医師に自分の健康判断を委ねる受動的治療は楽かもしれませんが、多分にリスクを伴う行為です。
システムで能動的か受動的かを選択させるのもおそらく難しいでしょう。選択肢を準備させられている時点で能動的ではありません。能動的な人はシステムがあろうとなかろうと自分自身が選択するはずです。例えば、アンパンマンの作者、故やなせたかし先生がそういう人でした。
2013年10月16日(水)の本ブログ記事
「やなせたかし先生の生き方」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-58.html
も御参照下さい。
> 介護施設のご利用者様達を見ていると、高齢者にとっては能動的医療は不可能にも感じる事があります・・・
少々乱暴かもしれませんが、寝たきりの要介護状態は、自己決断を避け続ける受動的医療のなれの果てという気がしないでもないです。主体的な決断を繰り返してそのようになる場合もあるのかもしれませんが、それは主体的なように見えて中毒性物質に操られた結果だという事もあるでしょう。
人生の節目で主体的に選択し決断し続けることが、健康長寿の最大の秘訣であるように私は思います。
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