糖質制限で体調が悪くなる人の本質的な問題点
2018/04/24 00:00:01 |
読者の方からの御投稿 |
コメント:16件
ブログ読者のCarmen さんから御質問を頂きました。Carmen さん、有難うございます。
確かに江部先生はよく、糖質制限開始後のトラブルに対して、(以下、引用)
【2018-04-20 Carmen
MEC食ドクターの福田先生はスーパー糖質制限や完全MEC食で調子が良くない患者を診て糖質摂取を促し症状が良好に向かうケースをブログで紹介しています。
http://seiichizb4.blog.fc2.com
ただ江部先生は福田先生の症例を紹介されてもエネルギー不足の論を崩されません。糖質摂取で症状が良くなることを認めてなくエネルギー論に終始しています。
がMEC食プラスバター大量摂取を考えてもエネルギーが足りてないとは到底思えなく疑問は残ります。
たがしゅう先生は患者が糖質摂取して良くなること、そして糖質制限での体調不良はエネルギー不足が原因とのことについてどう思われますか?
(引用、ここまで)
その大半が摂取エネルギー不足によるものであるとして警鐘を鳴らしておられます。
ただここで言われている「エネルギー不足」というのは厳密に言えば、
エネルギーの絶対量不足ではなく、「細胞でのエネルギー利用障害」というニュアンスの方が正確だと私は考えています。
つまりただ単にエネルギーが足りないのではなく、そこにエネルギー源があっても代謝障害のために利用できないという状況も含めての「エネルギー不足」だということです。
代謝障害があればいくら摂取エネルギーを増やしてもエネルギー不足が解消されないという状況が起こり得ることになります。
それでは、その代謝障害を起こしている原因とは何なのでしょうか。
人体の代謝は大きく糖代謝と脂質代謝の二種類がありますが、
糖代謝メインに働いている時にいきなり脂質代謝に傾けるような強めの糖質制限や断食のような脂質代謝へ切り替える負荷をかければ、
たとえそこにエネルギー源がたくさんあったとしても、しばらくの間脂質代謝でのエネルギー利用に適応できない時期、すなわち一時的な代謝障害をきたす可能性が出てきます。
エネルギー源があるのにエネルギーとして利用できない状況は細胞にとってはストレスがかかります。
細胞にストレスがかかれば、自律神経が感知して、コルチゾールが分泌され、続いてコルチゾールの材料であるコレステロールも動員され……という形で、このストレス負荷環境を克服しようとする一連の反応が身体からの命令で起こりますが、
その命令が下ってもなおストレスフルな状態が続いて許容範囲を越えれば、細胞機能がオーバーヒートしてしまいかねません。
そのため身体はオーバーヒートを避ける目的で、代謝を高回転にする甲状腺ホルモンの活性を弱めるためにT4からT3への変換を抑制する防御反応を引き起こすことができます。これがいわゆるLow T3症候群と呼ばれる状態です。
ここでまず誤解してほしくないのは、Low T3症候群は甲状腺機能低下ではないということです。
むしろ甲状腺機能としては過剰に働き過ぎているので、その過剰回転状態をセーブしようとしている状況です。
その結果、脱力などの症状を出現させて強制的にオーバーヒートするような無理をさせないようにするという、いわば身体が身を守ってくれる防御反応なのです。
摂取エネルギー不足の典型である断食や摂食障害でLow T3症候群をきたすのも、絶食でいきなり急増したケトン体を全部エネルギーとして使ってオーバーヒートさせないために起こっていると考えれば説明がつきます。
このオーバーヒートを避けるための防御的脱力反応は、ストレス適応反応の第一段階で、セリエのストレス学説に対応して考えれば警告反応期と呼ばれる段階です。
このメッセージを無視して無理を続ければ、今度は本当に細胞機能がオーバーヒートしてしまいます。
このオーバーヒートした状態が私が言うところの「過剰適応」病態、セリエのストレス学説で言うところの第二段階、抵抗期に当たります。
Low T3症候群からすれば、病期がひとつ進行したことになりますが、
この時期でもまだ甲状腺機能低下にはありません。
さらにオーバーヒートしたままの状態でもさらに無理を続けていれば、セリエのストレス学説における第三段階、疲憊(ひはい)期となり、私が言うところの「消耗疲弊」病態です。
ここまで病期が進行して初めて「甲状腺機能低下症」と言えるはずです。
従って、Low T3症候群を甲状腺機能低下症と称するのは、この流れを理解せず一緒くたに扱ってしまっているように私には思えます。
ストレスというのは、私達が一般的にイメージしやすい、いわゆる「ストレス」だけでなく、
細胞にとってのストレスというところまで理解の幅を広げれば、
例えば、高糖質食から断食にいきなり代謝変更をかけることもストレスになりますし、
本当は甘いものを食べたいのに医師が言うからというので仕方なく受身的に糖質制限をやり続けている状況もストレスとなります。
そして基本的にストレスは糖代謝を駆動します。無理して糖質制限を続けている状況は細胞にとってのストレスとなってしまっているのです。
ストレスを感じずに糖質制限を続けていれば、経験上遅くとも3ヶ月以内には脂質代謝に適応して体調がよくなってきます。
ところが、例えば「結局糖質制限は甘いものを我慢し続けるもの」などという認識が頭にあれば、そのストレスによって常にコルチゾールなどを通じて糖代謝メインとなり、
3ヶ月経っても、6ヶ月経っても、いつまで経っても脂質代謝に適応しないということになってしまいます。
あるいは先日紹介した日比野先生のように、肉をたっぷり食べていても糖質主体のたれをたっぷりかけてしまうような食生活でも同じ現象は起こりうると思います。
これが糖質制限を長く続けていて体調が悪くなっていく人達の実態ではないかと私は考えています。
そういう状況の人が糖質を摂取すればストレスで糖代謝メインの身体にとっては利用しやすいエネルギー源が入ってくることになるので身体に染み渡ります。
そうすると糖質摂取でストレス反応が代償されて体調が良くなり、コルチゾールも出る必要性がなるなり、続いてコレステロールも動員されなくても済むようになり数値も下がります。
一見良いことのように見えるかもしれません。
しかし不安定な糖代謝を使い続けるリスクは引き続き負い続けることになります。
それでも本人が健康で幸せなのであれば、糖質制限しなくてもよいのかもしれませんが、
この問題の本質はどこにあるでしょうか。
つまり糖質制限で体調が悪くなる人には何かしらのストレスがかかり続けているということです。
ストレスマネジメント不足の人もいるでしょうし、体質的に脂質代謝が利用できないという人もいるかもしれません。
しかしいずれにしても、体調が悪くなるというのに見直しすることなく、それでも糖質制限をし続けるという心の在り方に問題があると私は考えます。
糖質制限に限らず、自分が決定権を持つ主体的治療であれば、
たとえトラブルになったとしても自分で軌道修正できるはずです。
糖質制限制限ありきではなく、自分の体調ありきで糖質制限と付き合っていくべきだと私は思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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単純さも時には功を奏す
私は、一型発症時のケトアシドーシスでの入院の際。
自分の身体でこの数ヶ月間、何が起きていたのだろうと思いを巡らせました。
入院時のHba1cは、14.7でしたし。
GAから計算しても入院直前は、19.1。
これからインスリンというホルモン注射を外部から入れないと生きていけないのかぁ。
と、少し落ち込みました。
当初は、何を食べても上がると思いこんでいましたが、
糖質以外はさして血糖上昇しないと知った時に光が差すように嬉しく感じました。
ですから、私は糖質制限を嬉々として開始した人間です。
「糖質じゃないから、これも食べても大丈夫なんだぁ」
「何にでも抜け道ってあるんだなぁ」
と、幸せを毎日、実感出来ていました。
インスリンが欠乏していた危ない状態から、持効インスリンが入って体調が良くなったのもありますが、
糖質制限の取り組みが、私にとって 幸せを実感できることであった為に
(インスリン注射を少量にすることができるとか)
急な食生活のシフトチェンジにも耐えられのかなぁと、素人ながら思います。
食事に限らず、どんな取り組みも自身が納得してやりたい!
と、感じたことは成功確立が上がるのでは?なんて感じたり。
細胞にとってのストレスさえもはね除けそうと安易に考えるのは、私の単純さかもしれません…
またじっくり読まさせていただきますが取り急ぎお礼までを。
ファスティングにしても男性は倒れるまでの人はあまりいないように思いますが女性は倒れる人もいますね。
かなりハードな糖質制限+カロリー制限を半年ほどやったという男性もいました。体調不良もなかったそうです。大量の糖質を摂る生活からすぐ糖質とカロリーを制限した生活できるのは男性だからこそかなと思います。
女性はやはり女性ホルモンの影響ですかね?
江部先生は糖質制限での減量停滞にもカロリー見直しを提案しますし糖質制限はカロリー無制限ではないと断言しています。これは2005年の初版本にも書いてあるように聞きました。Amazonのコメントにも結局はカロリーも無制限じゃなく気をつけなくちゃいけないの!?なんてコメントもあったようです。
管理人のみ閲覧できます
Re: 単純さも時には功を奏す
コメント頂き有難うございます。
> 糖質制限の取り組みが、私にとって 幸せを実感できることであった
> 食事に限らず、どんな取り組みも自身が納得してやりたい!
同意見です。
まさにそういう心の在り方を、私は糖質制限を通じて教わったように思います。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
> ファスティングにしても男性は倒れるまでの人はあまりいないように思いますが女性は倒れる人もいますね。
> 女性はやはり女性ホルモンの影響ですかね?
女性ホルモンはどちらかと言えば生命維持的に働くのでむしろ女性の有利な点だと私は思っています。
問題はその女性ホルモンの保護的作用を上回るほど、社会的立場や慣習・環境などのせいで女性にストレスがかかってしまう構造の方にあるのではないかとも思っています。その結果、筋肉の少ない女性はストレスによって駆動される糖代謝からの離脱が難しい状況に追い込まれ、その代償反応として甘いものを欲するのではないかというのはあくまでも私の仮説です。
2018年3月3日(土)の本ブログ記事
「なぜ糖質制限不適応者が女性に多いのか」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-1270.html
も御参照下さい。
Re: No title
誤記の御指摘有難うございます。
御指摘の通りです。修正させて頂きました。いつもすみません。
管理人のみ閲覧できます
低T3症候群は省エネモード
低T3症候群はエネルギー不足を反映するのではなく、単純に省エネモードだということを示しているだけではないでしょうか?
省エネモードになる原因がエネルギー不足なのか、エネルギー利用がうまくいかない状態なのか、消耗性疾患の影響なのか、、、ということだと思います。
日常的に糖質制限かつ、いつ食べられるかわからない時代では、
「糖質制限≒脂質エネルギー主体≒省エネモード」
農耕開始後かつ飽食の時代前は、
「それなりに省エネモード」、
飽食&運動不足の現代では、
「省エネ不要!」
ということで、T4→T3への変換もそれに応じて変化しているのかもしれません。
視床下部下垂体系が正常な場合において、からだが甲状腺ホルモンが足りているかどうかの判断は、
TSHが上昇していれば甲状腺ホルモン不足、TSHが正常なら甲状腺ホルモンは足りている、
と考えて良いと思います。
甲状腺ホルモンが足りていない状態、つまり代謝が低下している状態では、コレステロール上昇だけでなく、GOT, LDH, CKが上昇、徐脈および心電図で低電位が認められるはずです。
省エネ説
>甲状腺ホルモンが足りていない状態、つまり代謝が低下している状態では、コレステロール上昇だけでなく、GOT, LDH, CKが上昇、徐脈および心電図で低電位が認められるはずです。
←のコレステロール上昇ですが、これが動脈硬化を来たすから低T3は糖質を摂って改善しなければならない、と唱える医師がいますが、果たしてそう言い切れるでしょうか。T3低下状態の何かを補うためにコレステロール値が上昇する、ドクターシミズ説の需要があるから上昇する、の場合もあると考えられないですか。
Re: 結局のところ
コメント頂き有難うございます。
糖質摂る摂らないの二軸で考えていると、行くも地獄、行かないも地獄という心境になる人も確かにいらっしゃることでしょう。
しかしそこで大事になってくるのが、ストレスマネジメントの観点だと私は考えます。「糖質を摂ってしまう弱い自分」と解釈するのではなく、そんな自分も含めてありのまま受け入れるという心持ちでいることで、少なくともストレス性の血糖上昇は避けられるのではないかと思いますし、心が上向きになれば代謝もスムーズに回るようになり、そこから先は今度こそ本心からちょうどよい糖質との付き合い方ができるようになるのではないかと私は考える次第です。
Re: 低T3症候群は省エネモード
コメント頂き有難うございます。
> 低T3症候群はエネルギー不足を反映するのではなく、単純に省エネモードだということを示しているだけではないでしょうか?
そうですね。「省エネモード」と表現した方が確かにわかりやすいかもしれません。
「このままだとオーバーヒートしちゃうから、ちょっとエネルギー利用をセーブしましょう」
という状況を防御反応と見ることもできますし、省エネモードに移行したと見ることもできます。要するに同じ現象に対する解釈の違いではないかと私は思います。
Re: 省エネ説
御質問頂き有難うございます。
> コレステロール上昇
> これが動脈硬化を来たすから低T3は糖質を摂って改善しなければならない、と唱える医師
> T3低下状態の何かを補うためにコレステロール値が上昇する、ドクターシミズ説の需要があるから上昇する、の場合もあると考えられないですか。
「コレステロール上昇=動脈硬化」という考え方は理解が浅いと思います。
御指摘の通り、Low T3症候群に伴うコレステロール上昇は単なる適応反応です。身体が必要と判断して起こっている現象であり、決して「是正すべき悪の現象」ではございません。
2018年2月12日(月)の本ブログ記事
「コレステロールとストレスの関係」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-1250.html
も御参照下さい。
私はコレステロール値にも人生を支配されてはならないと考えます。後日記事にしたいと思います。
小粒子LDLについて
LDLのうち動脈硬化のリスクが高いのは小粒子LDLで、TGともっとも相関が高いです。
TG高値はHDL低値とも関連しています。
糖質を減らし脂質摂取を増やす、および肥満の解消により小粒子LDLが減り通常サイズのLDLが増えることは、Dr. Kraussが研究しており、日本動脈硬化学会も1992年ころ、彼を日本に招いて講演してもらっています。
一方、LDL粒子数の指標となるアポリポタンパクBが多い(基準値上限の2倍以上)症例もありますが、なぜなのか私にはわかりません。
☆通常サイズのLDLが多いことは良いことか、悪いことかという議論においては、以下の研究があります。
Low-Density Lipoprotein Subfractions and the Long-Term Risk of Ischemic Heart Disease in Men
この研究によれば、通常サイズのLDLが多い場合、生存率で有利な傾向(ただし有意差なし)、小粒子LDLが多いと生存率が低下しています(Figure 1.)。
☆糖尿病治療薬で尿糖排泄を促進するSGLT2阻害薬ではLDLが上昇することがあり、これは小粒子LDLが減り、LDLサイズが大きくなったためと考えられています。
Cardiovasc Diabetol. 2017 Jan 13;16(1):8.
Dapagliflozin decreases small dense low-density lipoprotein-cholesterol and increases high-density lipoprotein 2-cholesterol in patients with type 2 diabetes: comparison with sitagliptin.
☆オメガ - 3 脂肪酸エチル(EPA&DHA)製剤である「ロトリガ粒状カプセル」の添付文書には、
「2. 重要な基本的注意
本剤投与中にLDLコレステロール値上昇の可能性があるため、投与中はLDLコレステロール値を定期的に検査すること 。」
との記載があります。
当院にも低T3症候群でLDL著明高値の症例は何人もおられますが、きっちり糖質制限を行っている方では小粒子LDLが認められないことが多いです。
追加です
>当院にも低T3症候群でLDL著明高値の症例は何人もおられますが、きっちり糖質制限を行っている方では小粒子LDLが認められないことが多いです。
糖質制限をしていて小粒子LDLは認められず、血糖コントロールが改善したとしても、寒い、だるいなどの不調を訴える場合に、糖質摂取量を増やして改善するかどうかを試してみることに対しては異論はありません。
メリットとデメリットの兼ね合いです。
Re: 小粒子LDLについて
コメント頂き有難うございます。
さすが先生、非常に説得力がございます。
小粒子LDL=真の動脈硬化の犯人という認識も定着しつつありますが、
私はこれすらもまだまだわからない事も多いので、盲信せずに体調ベースで物事を考えていくべきと思っています。
しかしご提供頂いた情報を踏まえれば、
糖質制限や減量、脂肪酸負荷などで脂質代謝を活性化させれば小粒子LDLが減って、健康に良い効果がもたらされると、そしてその表現型の一つに「LDLの増加」という現象があるということは言えそうですね。
Re: 追加です
コメント頂き有難うございます。
> >当院にも低T3症候群でLDL著明高値の症例は何人もおられますが、きっちり糖質制限を行っている方では小粒子LDLが認められないことが多いです。
> 糖質制限をしていて小粒子LDLは認められず、血糖コントロールが改善したとしても、寒い、だるいなどの不調を訴える場合に、糖質摂取量を増やして改善するかどうかを試してみることに対しては異論はありません。
その辺りも対応が柔軟で素晴らしいです。私も同意見です。
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