ありのままで良いのだと
2018/04/19 00:00:01 |
自分のこと |
コメント:16件
「糖質制限は単なるダイエットではない」ということを、私は先日の鹿児島講演会で申し上げました。
私がその見解に達した最大の根拠は、私自身の体重減少が糖質制限開始後、同じように糖質制限を続けているにも関わらず一定の所で留まる現実を目の当たりにしたということが大きかったです。
他の体調不良に関することはすべて良くなったのに、なぜか体重だけ減らし切らない現状に疑問を抱き、私は数年間その理由を考え続けていました。
今の私の体重は糖質制限をしようが、糖質ゼロにしようが、間欠的ファスティングをしようが、チートデイを設けようが一定の体重以下に減ることは決してありません。 強いて言えば長期間断食を行えば流石に体重は一時的に減りますが、元の糖質制限食に戻せばあっという間に元の体重へと戻ります。
それでも最大134㎏もあった超肥満状態にまで戻ることは決してないので、
糖質制限実践以降の実質的なリバウンドはなく、体調も良いままなので今の状態でも十分に満足はしているのですが、
欲を言えば、もう少し標準体重と呼ばれる体重に近づいて、もうちょっとおしゃれな服とかも着てみたいという願望もないわけではありません。
だから私はこの数年間、この減りきらない体重の壁を克服するためにはどうすればいいのかを考え続けました。
そして最終的に江部先生とのディスカッションの中で、脂肪細胞の数説に到達しました。
通常であれば20歳前後で分裂増殖がストップするはずの脂肪細胞の数が、
私のような肥満体質の人間の場合は、インスリンの持つ細胞増殖作用が強く働き続けて20歳以降になっても糖質過剰摂取に伴う高インスリン血症が起これば細胞分裂・増殖してしまい、
そして増え過ぎた細胞細胞の数の分だけ体重が増えることになる一方で、一旦増えた脂肪細胞は少なくとも10年は生き続けるので、
脂肪細胞の寿命が尽きるまでは何をどうしても脂肪細胞の数が存在する分よりも体重が減る事はないという仮説です。
この仮説で行けば、断食をすれば脂肪細胞飢餓の状態となり体重としてやせるのはやせるけれども、
脂肪細胞自体が死滅せずギリギリのところで生きているので、断食を止めてまた栄養を入れ始めたら、断食後の栄養吸収率の上昇もあいまって、あっという間に元のサイズへと戻ってしまう現象も説明可能です。
逆に言えば、この仮説に基づけば「運動を加えればやせる」という考えも怪しいという話になります。
なぜならば運動によって筋肉量が増えたり、基礎代謝量が高まったりすることはあれど、脂肪細胞の数が減るわけではないからです。
でも世の中には運動することでやせている人もいるではないかと思われるかもしれません。
しかし運動で理論的に可能なのは、脂質をエネルギー源として切り崩す反応を促進することであって、
本質的には糖質制限や断食と同様、脂肪細胞内の脂肪を減らしサイズダウンさせる事による減量効果なのであって、
決して増え切った脂肪細胞の数を減らす手段とはなりえないと思います。
逆に言えば糖質制限で越えられなかった体重の壁を、断食を組み合わせる事でさらにやせたという人は、
糖質制限だけではまだ脂肪細胞のサイズが適正化しきれていなかったという可能性が高いと思います。
なぜ適正化されていなかったかと言えば、先日のやせ体質人の意外にも多かったインスリン分泌や、ストレスによる血糖上昇などにより糖代謝への依存度が高かった事などが要因として考えられます。
脂質代謝が適正に働いていれば、脂質の体内での利用量は適正に維持されるというのが自然の中で何億もの時間をかけて構築されてきた恒常性維持(ホメオスターシス)のシステムです。
この事に気付いて私は何が良かったかと言いますと、
無理してやせようと思わなくてよいという事に気付かされたということです。
もしこのことに気付かなければ、私が一定以上やせないのは自分の運動が足りないせいだとか、
結局食べ過ぎてしまっているからだとか、どうしても自分を責め続けてしまう思考のサイクルからずっと逃れられなかったと思います。
脂肪細胞を増やし続けてしまった過去は変えられず、そんな自分とこれからも付き合っていかなければなりませんが、
そのままでいいという事に気が付かされただけでも精神衛生上は大分良くなりました。
そんなことに考えの及ばない周りの人達からは、従来の常識に従って「食べ過ぎ」「運動不足」と思われ続けるのでしょうけれど、
私は私、周りは周りです。
私は私の考えを胸に、自信をもって無理のない生活を送っていこうと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
糖質制限をされて実証されてることをありのままに伝えらててすごく勉強になります。ようやく少しずつ糖質制限を最近はじめました。なんだか体調がいいことに気付きました。ありがとうございます🌟
先生のブログなど参考に頑張ってみます。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
No title
但し、下記については常に頭の片隅に置いておきたいと思います。
「日々學びのない、無知なままの人間の19の特徴。」
http://bibourokuroku.hatenablog.com/entry/2018/04/10/213641
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 「日々學びのない、無知なままの人間の19の特徴。」
見させて頂きました。
とてもシンプルかつわかりやすくまとまっていて共感もできます。
「世界は誰かが変えてくれるのではなく、自分で考え行動することによって変わる」というのは特に共感できるところです。
既成概念
フォローにならないかもしれませんが、私は、直接お会いした者として言わせて頂きますと、田頭先生から伝わる真摯な姿勢、優しさ、安心感というのはその風貌による所も大きいと思いますよ。幼児が丸みを帯びて何人の心にも平穏をもたらすのと同様、先生のそれは、天恵というものではないでしょうか。糖質制限はダイエットの為だけの方法論だと誤認識した人は、標準体重以下が成功例であってそれ以外は失敗例だと思い込んでしまうのは仕方のない事ですし、単に、批判のための道具としてそれを利用するような人も狡猾な性格の持ち主であり、理論で勝てない腹いせに人格攻撃を仕掛けてくるだけだと思いますので、どちらにしても相手にするのは時間の無駄だと思います。とは言え、実際に負のパワーをぶつけてこられると、そういう意見に触れてしまった自分に自己嫌悪したりブルーな気持ちになったりするんですよね。でも、それは、今はまだ糖質制限という分野がそういう分野だという事でもあります。まだまだ、啓蒙活動に励んで頂かないといけないということですね。微力ながら応援いたしております。
ブルース・リーを師祖とする截拳道の最強の構えは自然体です。自分の心に素直かつ自然の流れに逆らわない姿勢というのは万事に共通することなのかもしれませんね。私達が囚われている既成概念の全てについて、常に、それが自然に沿うことであるのかを再考しないといけない時代になっているように感じます。
Re: 既成概念
コメント頂き有難うございます。
> 幼児が丸みを帯びて何人の心にも平穏をもたらす
そのコメントを読んで、画家、横山大観の出世作「無我」のことを思い出しました。
禅的な悟りの境地を純真無垢なわらべの姿で現した作品ですが、このわらべもぽっちゃり体型でした。
捨てる神あれば、拾う神あり。こんな私の体型でも安らいでもらえるのであれば、それは自信につながり、有り難い限りです。
No title
ただ、彼も糖質制限の結果、至って健康そうで勧めてよかったと思っております。
ところで、この現象は原因は今後を待つとして、とても面白いことを教えてくれていますね。
一つには、BMIを始めとする健康判断の指標が必ずしも当てはまらないのではないかということ
一見当たり前のようなことですが、糖質制限という、とても導入しやすい減量手段があるからこそ、下げ止まり現象の多くが明らかになり、また下げ止まっても、その状態が健康体であることが見えてきている。
もう一つは、この現象が人類の個体差を示している可能性ですね
今までは、誰でも太れて、痩せれるというのが医学・栄養学の常識だったのが、その個体の大まかな基準(限界)体重があるのかもしれません。これは、江部先生、たがしゅう先生のディスカッションとは異なる結論になりますが、また一つの視点を与えてくれるかもしれません。
糖質制限は、パラダイムシフトと呼ばれることがありますが、この二つもまた新たなパラダイムを指し示してそうで、とても興味を惹かれます。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 一つには、BMIを始めとする健康判断の指標が必ずしも当てはまらないのではないか
> もう一つは、この現象が人類の個体差を示している可能性
そうですね。
肥満とかやせとかいった体質差は自然の中でヒトにもたらされた生物多様性のバリエーションの一つだと思います。
飢餓環境では肥満体質が有利かもしれませんが、身軽さが要求される環境ではやせ体質が有利となりえます。今後どんな環境が訪れたとしても全滅だけは避けられるように様々なタイプの人類を作りだしておくというのが、生物の基本的な生存戦略なのであろうと思います。
そう考えると、御指摘のように一つの基準で健康診断なる行為を行う際には、多様性を捉え切れず無理が出てきて然るべし、という事になると私は思います。
アナと雪の女王
「アナと雪の女王」です。
エルサは雪と氷を操れるすごい能力があるのに、そのことにコンプレックスを持っていました。
まるで、みにくいあひるの子のようです。
立ち直れないほど傷つき、かわいそうです。
なぜコンプレックスを持ってしまったかというと、両親がそのことを、エルサの欠点だと思い育ててしまったからです。
エルサの両親が、
「マイガール!なんて素敵な才能なの!」って歓迎して育ててくれていたら、
エルサは苦しまなくて済んだのにと思います。
自分の持っている価値観が、どこから(誰から)もたらされたものなのか?
それって、本当に、正しいの?
って気がついて、押し与えられた価値観をパッと捨ててしまうのは快感だと、
アナ雪のエルサを思い出しました。
気がついたエルサは、押しも押されもせぬ美しい女王さまになりました。
この記事を読んで、エルサにまた会いたくなりました。
ありのまま、つながりでしょう。
エンタメネタ、すみません。
脂肪細胞と付き合う
たかが数年の糖質制限でチャラにしようと思うことが傲慢なことかもしれませんね。
((((;゚Д゚)))))))
Re: アナと雪の女王
コメント頂き有難うございます。
そうか、エルサも「ありのまま」を大事にするようになりましたね。
私もありのままの姿を認めて、そのままの自分を磨き続けていきたいと思います。
Re: 脂肪細胞と付き合う
コメント頂き有難うございます。
おっしゃる通りだと思います。
喉元過ぎれば熱さを忘れる、と言いますが、
知らなかったとは言え、何十年も糖質まみれで過ごしてきたというのに、数年でなかったことにするなんていうのは虫の良い話かもしれませんね。
同情するということ
『食のバリアフリーを願って』
https://www.kyotanabe.jp/cmsfiles/contents/0000008/8948/sano.pdf
食物アレルギー体質の小学校6年生の女の子が書いた文章です。
心を動かされたのは下記の一文です。
『「アレルギーでかわいそう」と言われることもあるけれど私は自分がかわいそうと思ったこはありません。大変な事はたくさんあるけれど、アレルギーもふくめてこれが私だと思うからです。私は私の食べられる物を選んで食べる事が自然だからです。』
同情すると言うのは大切の感情なのかもしれませんが、場合によっては相手のパーソナリティーを否定することにもなりかねない危険な感情なのかもしれないと思わされました。
Re: 同情するということ
コメント頂き有難うございます。
アドラー心理学の中にも同じような考え方があります。
それは人を褒めてはいけないということです。これだと誤解を呼ぶ言い方になりますが、要は「上下関係で人を評価しない」という意味で捉えれば同情の持つ危険性にも通じているのではないかと思います。
相手が病気であろうと障害を抱えていようと、こどもだろうと年寄りであろうと、その人のありのままで捉えていれば不要な諍いは生まれないのではないかと思います。理想論かもしれませんが、動物の世界では皆それが当たり前で、変わっているのは価値観という色眼鏡をつけている人間の世界だけなのではないでしょうか。
Re: Re: 同情するということ
しかし、両者は似て非なるもので、前者は相手を自分の価値観に基き定義することであり、後者は相手をありのままで捉えることであると思います。
自分は一応人間(~_^;)なので、動物の世界について断定的なことはわかりませんが、少なくとも後者的な関係は成立しているような気がします。
で、ここで話は一気に飛んでしまいますが、「同情する」関係を「人間的関係」とし、「心情を理解する」関係を「動物的関係」としたとき、主体的医療において医師と患者の関係はどちらの方が望ましいのかを考えると4つのケースが考えられると思われます。
ケース① 医師:人間的関係指向 患者:人間的関係指向
ケース② 医師:人間的関係指向 患者:動物的関係指向
ケース3 医師:動物的関係指向 患者:人間的関係指向
ケース④ 医師:動物的関係指向 患者:動物的関係指向
ケース①の場合は医師と患者の間で何の軋轢も発生することなく従来のエビデンスに基いた受動的医療になると思われます。
ケース②の場合は患者が医師に対して懐疑的になりドクターショッピングをすることになる思われます。
ケース③の場合は医師としては患者を放逐することは出来ないので不本意ながらも受動的医療をすることになると思われます。
ケース④の場合は意見や主張の衝突が発生することがあるかもしれませんが、結果的には主体的医療をする方向に収束するのではないかと思われます。
これらを医師の精神的なコストという視点で考えてみると、ケース①・②の場合のコストは微々たるものだと思われます。
一方、ケース③の場合のコストはかなりしんどいではないかと思われます。
そして、ケース④の場合はコストは決して軽くはないと思われますが、後々に医師が医療過程を振り返って見た時にあれは心地よいコストだったのかなぁと思えるかもしれません。
また、これらを患者の精神的なコストという視点で考えてみると...省略(^_^;)
Re: Re: Re: 同情するということ
コメント頂き有難うございます。
> ケース① 医師:人間的関係指向 患者:人間的関係指向
> ケース② 医師:人間的関係指向 患者:動物的関係指向
> ケース3 医師:動物的関係指向 患者:人間的関係指向
> ケース④ 医師:動物的関係指向 患者:動物的関係指向
大変興味深い切り口です。
医師の立場で言えば、患者さんを見た時に例えば「この人は血圧が140/90mmHg以上あるから、脳卒中や心筋梗塞にならないように血圧を下げてあげた方がよい」と考えるのが人間的関係指向、「この人は見た目が疲れていて肌がくすんでいて、食べる元気もなさそうだから何とかしなければ」と考えるのが動物的関係指向、といったところでしょうか。前者は西洋医学的指向、後者は東洋医学的指向とも言い換えられるかもしれません。
それに対して患者側は「専門的知識を持つお医者様だから自分の病気を何とかしてくれるに違いない」と考えるのが人間的関係指向で、「とにかく身体がきついから今の状況を何とかしなければ」と考えるのが動物的関係指向、となるでしょうか。後者はそもそも病院に行かずに休んで何とかするという行動もとりそうですね。
そう考えれば確かに人間的関係指向どうしはフィットしますし、今の現代医療はほとんどそうなっているように思います。
また動物的関係指向どうしはなんだか苦労しそうですが、互いの嗜好が合いさえすれば、良い医療が展開できそうです。
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