真のエビデンスはデータではなく患者の改善
2018/04/15 00:00:01 |
よくないと思うこと |
コメント:6件
4月5日付週刊新潮の糖質制限批判記事の検証終了まであと一息です。
次に取り上げるのは、数ある糖質制限批判の中で私は最も悪名高いと私が考える能登論文に関しての記事です。
なぜ悪名高いと思うかと言いますと、科学的にアンフェア極まりないやり方で糖質制限を批判しているからです。
どういう点でアンフェアかと言いますと、長期安全性のエビデンスはまだ出ていないはずの糖質制限食について、
統計学的な処理を駆使してあたかも糖質制限は危険だと結論づけられたかのような情報を世の中に発表しているからです。
その点に関しては江部先生も詳しく解説されていますが、筆頭著者の能登洋先生自身も補足説明のように「まだ確たる結論を出すことはできない」と述べている程信頼性不透明な論文なのに、
実際には、今回の週刊新潮の記事のように、この論文が糖質制限批判に度々利用されているような状況です。
まさに情報が一人歩きして、何も知らない人や何も考えない人はその情報の流れに容易に飲み込まれてしまっていると思います。 そういう意味では、「自分の頭で考える」ことを放棄してしまっている人は、今の世の中どのような誤った方向へミスリーディングされたとしても全く不思議ではない状況にいるという事を示しているとも言えそうです。
あるいは現代医療の拠り所とされているエビデンスというものは、容易に操作されて白も黒に変えられる怖さを持っているものだということも教えてくれているように思います。
そんな能登論文が今回の週刊新潮の糖質制限批判へ次のように引用されています。
(p130より引用)
(前略)
2013年には日本の研究者により、衝撃的なデータも発表された。
研究を行ったのは国立国際医療研究センター病院糖尿病内分泌代謝科の能登洋医長(当時)らで、
その結果はアメリカの科学誌『プロスワン』に掲載された。
「この研究は糖質制限食に関する492本の医学論文から動物実験を除き、
人間を対象に5~26年間追跡し、死亡率などを調べた海外の論文を分析したものです。
その分析結果は、"追跡期間中に約1万6000人が死亡していたが、糖質摂取量の最も多いグループの1.31倍と、統計上で明確な差が出た”というものでした」
(引用、ここまで)
こうした文章を見ていて思うのですが、
糖質制限批判派の医師達は、エビデンスを検証したり、エビデンスを批判的に吟味したりする能力が極めて乏しいということを感じます。
エビデンスを信じてばかりだとスタチンの有害性に気付きませんし、精神疾患を漢方薬で治療する発想も生まれません。
逆にエビデンスを信じていれば積極的にスタチンを勧める方向へ思考は動きますし、
その結果スタチンによってもたらされる軽微な副作用には気づきにくくなるし、場合によっては多少の副作用を押してでもスタチンを使うことを優先するよう勧められることにもつながります。
それは患者不在の医療以外の何者でもないのではないでしょうか。
忘れてはなりません。私達医療者が向き合っているのは論文のデータではなく目の前の患者さん達だということを。
ましてやそのデータがいかようにも歪められるデータであれば、なおの事本来見るべき対象を見失ってはなりません。
データより何よりも目の前の患者さんが良くなることがこれ以上ないエビデンスなのではないでしょうか。
その事につながらないエビデンスは偽りのエビデンスです。
「エビデンスに基づいた医療」の意味を決してはき違えてはならないと私は思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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エビデンスについて
ここのところ糖質制限への批判があり、そのエビデンスについて議論されています。
私は、エビデンスは非常に重要と思います。すべてがきっちり生理学的に説明することはできないと思いますし、個人差もあると思いますので、その治療や食事がヒトにどういう影響を及ぼすのかは、よくコントロールされた臨床試験を実施することが必要と思います。ここで難しいのは、試験計画が適切かどうかだと思います。そこでの仮説が医学的に意味があるのか、またどういう意味があるのかを明確にしておく必要があると思います。よく結果だけをみて、いろいろ議論されますが、それは違うと思います。臨床試験はその仮説を確かめるためのものと思います。そのために必要な例数を統計学的に設定していると思います。また、計画時の仮説以外についてもいろいろ議論されますが、議論することはいいのですが、その試験からは結論を導き出すことはできないはずです。やはり計画時の仮説こそが重要です。意味のない仮説に対して、RCTを実施しても、出てくるのは意味のない結果だけだと思います。
ということで、私は適切な臨床試験から得られた結果はエビデンスとして無視はできないと思いますし、そういう臨床試験のメタアナリシスの結果は重要と思います。ただ忘れてはいけないのは、試験は仮説以外にも、患者に対して何らかの条件を設定していることです。結果を目の前の患者さんにあてはめるときにはそのあたりの注意が必要だと思います。
最近の議論を読んでいて感じたことを記載させていただきました。
Re: エビデンスについて
コメント頂き有難うございます。
> 私は、エビデンスは非常に重要と思います。
> よくコントロールされた臨床試験を実施することが必要と思います。
> ここで難しいのは、試験計画が適切かどうかだと思います。
そうですね。私もエビデンスそのものを否定はしません。
ですが多くの場合、エビデンスは大きく誤解され、時には悪用さえされている所が問題だと考えています。
またきちんと管理されて行われたエビデンスが出たとしても、それは一定の条件下における制限された事象を現しているに過ぎず、エビデンスで世界のすべては到底語れないという限界も理解しておく必要があります。
例えば、糖質制限が人類の多数派において健康に有益に働くという事は、すでに出揃っている信頼性の高い医学論文を総括すればほとんど証明されているようなものだと私は考えていますが、それらのエビデンスだけでは炭水化物をしっかり食べているにも関わらず健康長寿を果たしている人達の本質的な理由は説明できません。
2016年11月18日(金)の本ブログ記事
「医学論文は窮屈な制限世界」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-784.html
も御参照下さい。
そして同時にエビデンスがあれば覆しようがないというイメージの元に、エビデンスのない治療が軽視されている現状も問題だと思います。
今回私が提示したように患者の改善が「真のエビデンス」だと仮定すれば、世間的なエビデンスがなくとも真のエビデンスが存在する治療はいくらでも存在していると私は考えます。
日野原先生
そういえば日野原先生は、糖質制限をして長生きしましたね。
聖路加国際病院の部長に言ってやりたい
http://hospital.luke.ac.jp/guide/05_endocrinology/dr/notohiroshi.html
Re: 日野原先生
コメントを頂き有難うございます。
事実と食い違う理論やデータは疑うことが大事だと思います。
それを疑えるようになるためには、まずは事実を直視していることが大前提です。
2016年9月27日(火)の本ブログ記事
「やわらかい心で世界を捉える」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-732.html
も御参照下さい。
http://seiichizb4.blog.fc2.com
ただ江部先生は福田先生の症例を紹介されてもエネルギー不足の論を崩されません。糖質摂取で症状が良くなることを認めてなくエネルギー論に終始しています。
がMEC食プラスバター大量摂取を考えてもエネルギーが足りてないとは到底思えなく疑問は残ります。
たがしゅう先生は患者が糖質摂取して良くなること、そして糖質制限での体調不良はエネルギー不足が原因とのことについてどう思われますか?
福田先生は患者の声を聞いた結果だと仰っています。
Re: タイトルなし
御質問頂き有難うございます。
> たがしゅう先生は患者が糖質摂取して良くなること、そして糖質制限での体調不良はエネルギー不足が原因とのことについてどう思われますか?
これについては私は明確な意見を持っています。その上で私の糖質制限推進派の立場は揺らぎません。
ですが、コメント欄で返答するには長くなり過ぎてしまいそうなので、後日ブログ記事にしてお答えさせて頂きます。
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