自然を重視した食事の在り方
2018/03/28 00:00:01 |
ふと思った事 |
コメント:4件
これまで私は、ケトン体産生を促す食事療法という点で、
糖質制限の延長戦上にケトン食、絶食療法があるという風に考えていました。
つまり下記のような理解です。
糖質制限
糖質制限+蛋白質制限=(古典的)ケトン食
糖質制限+蛋白質制限+脂質制限=絶食療法(断食)
ところがふと考えてみると、糖質制限、ケトン食、絶食療法は一直線上に並んでいるのではなく、
糖質制限と絶食療法は一直線上に並んでいるけれど、ケトン食だけ少し外れた所に位置している事に気付きました。 なぜならば糖質制限も絶食療法も原始時代の生活環境でも無理なく再現可能であるのに対し、
ケトン食はかなり人為的な操作が入らなければ再現できない食事療法であるからです。
すなわち、同じケトン体を促す食事療法の中でも、
糖質制限⇒「自然」
ケトン食⇒『人為』
絶食療法⇒「自然」
という構図が成り立つのではないかと思うのです。
私は糖質制限を6年以上続けていますが、残念ながら標準体重までやせることができていません。
その理由として江部先生がブログで紹介されていましたが、脂肪細胞の数が成人以降は原則減らないという可能性が考えられます。
しかも成人以後脂肪細胞は減らないくせに、肥満体質の場合は増える方には向かう事があるという点も重要です。
どうして肥満体質の人の脂肪細胞が成人以後も分裂するのかと言われれば、細胞分化作用を持つホルモン、インスリンを分泌する能力が高いからです。
以前行ったササミ負荷試験というほぼ純タンパク質の負荷試験で私はやせ型の人に比べてかなりのインスリンが分泌されるという事実を示しました。
糖質だけでなくタンパク質でも結構インスリンが分泌されてしまう私としては、
仮に肉だけを食べるような完全糖質ゼロ食にしたとしても、インスリンが分泌される以上やせません。実際にやってみましたが、無理でした。
また1日1食にしてもダメです。週に1回24時間断食をしていてもダメです。
しかもチートデイを取り入れようものなら、太った後にさらにやせるのが困難になるという事もわかりました。
おそらくチートデイでの高糖質負荷で脂肪細胞をさらに分化・増殖させる程のインスリン分泌を刺激してしまったからではないかと推察されます。
やせ型体質の人ではチートしたところでインスリン分泌能が低いので脂肪細胞が分化するほどのインスリン量は分泌されません。
その代わり糖質酔いのリスクが高くなりますし、組織の糖化などのインスリン以外の好ましくない血糖処理が働いてしまう可能性もあるのでどっちもどっちです。
さて、そんなすぐにインスリンが分泌されてしまう私が太らないようにするためにぱっと思いつく方法が、
糖質制限にタンパク質制限を加える、すなわち古典的なケトン食にするというものです。
しかし糖質制限にタンパク質制限を加えるとなると、食べられるものが非常に限られてきます。
考えてみれば脂質だけを取ろうとしてもタンパク質も一緒にたくさん含まれている事がほとんどで、
脂質だけを取ろうとしたらバターやマヨネーズ、生クリームなどそれだけでは食事として成立しないものばかりです。
かくなる上はこんにゃくやきのこなど極めてカロリーの低い食品を主食にしてバターやマヨネーズをつけて食べるかという話になってきますが、そんな食事は非常に人為的です。
ここで私は気付きます。糖質制限にタンパク質制限を加えようとする行為は、仮にそれが完遂できたとしても非常に不自然な行為であるということに。
古典的なケトン食は不自然であるが故に、低身長や便秘、骨粗鬆症や腎結石などの副作用が報告されてきたのではないでしょうか。
逆に言えば糖質制限や断食など自然で再現できる食事療法は比較的安全な食事療法となりえるという話にもつながります。
そう考えると、一度脂肪細胞を増やしに増やしてしまった私がやせようというのは至難の業であり、
変えなければいけないのは自分の考え方の方だという事に気が付かされました。
つまり体重は減らなくても、体調を重視するというものの考え方です。
加える人為は必要最小限に留める、自然重視型医療の姿が浮かび上がってくるようです。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
先生の沢山のインスリン、是非とも欲しいです。
というのは半分本気、半分冗談ですが。
体質は悩ましい問題ですね。
先生と知り合ってから、いわゆる肥満の認識が変わりました。
食べなければ痩せる、それが私のこれまででした。今より10kg多い数字がMAXでした。
体って不思議とつくづく思います。
私も自力で血糖値80やA1c5.4等の数字を見てみたいとも思いますが、実際に見たらそんな感激もしないのかもしれません。この体に愛着もありますし。
何をどれだけどう食べる、ずっと考えていましたが、先生がおっしゃるように体調を目安なのだと改めて思います。
収入に置き換えるとすっきりしました。自分の稼ぎに見合った生活をする。ましてや不必要の借金(薬やインスリン)はしない。実生活ではストレスなくできるこの考えを体でも取り入れればいいのだと思ったらすっきりしました。
私の友人はぽっちゃりさんが多いです。一緒にいるとほんわかした気持ちになります。きっと先生の周囲にいる方も同じ気持ちなのではないでしょうか。先生の気持ちも理解した上でこう思います。
それも先生の魅力です。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 自分の稼ぎに見合った生活をする。ましてや不必要の借金(薬やインスリン)はしない。実生活ではストレスなくできるこの考えを体でも取り入れればいいのだと思ったらすっきりしました。
わかりやすいたとえですね。まさに本質をついていると思います。
宝くじで1億円当たった人が浪費に明け暮れて破産したというような話も聞きます。皆が皆そうなるとは限りませんが、本来の在り方を度外視して外部からのもので解決しようとするアプローチの本質はそういう所にあるように私は思います。
ぽっちゃりと言えばマイルドなイメージになりますね。
私も自分に対してありのままを許すスタンスを心がけたいと思います。
自然な食事
長年の炭水化物中心の食事によって、インスリンにより大量の脂肪が蓄積され、脂肪細胞が増殖しております。
糖質制限を開始したのは脂肪細胞増加後ですので、なかなか体重が減りません。ただ、HbA1cは5.6前後ですし、食後も眠くならないので、バランス良く食事することに重点をおいて生活をしております。
「体重が減らなくても、体調を重視する」との先生のコメントから勇気をいただきました。
Re: 自然な食事
コメント頂き有難うございます。
糖質制限をすれば20歳の頃の体重までやせるというのが経験的に得られる一つの目安のようですが、成人後も高インスリン血症で脂肪細胞が分裂してしまう体質の人もどうやら一定の確率で存在しているようなので、その場合はその限りではないのかもしれません。
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