皆が助け合う新しい社会システム
2018/02/25 00:00:01 |
お勉強 |
コメント:2件
シェアリングエコノミー(共有型経済)という言葉を御存知でしょうか。
私は以前紹介した小川先生の本を読んで初めて知りました。
哲学の最新キーワードを読む 「私」と社会をつなぐ知 (講談社現代新書) 新書 – 2018/2/15
小川 仁志 (著)
資本主義と社会主義という二つの大きな考え方があります。
資本主義は簡単に言えば「お金中心の弱肉強食主義」、日本は高度経済成長期以後、お金を産み出す様々なものづくりの生産技術で急成長してきました。
しかし資本主義の弱点は、現在の日本が直面しているように、格差を産み出すということです。
構築された社会のシステムの中にうまく組み込まれない人間は、資本社会が生み出す利益の恩恵を受けづらいという構造があります。
かたや社会主義はと言えば、「皆平等」を謳い文句とする考え方です。
一見聞こえがよさそうですが、社会が提供するシステムが社会を構成する集団にとってそぐわないものとなった時、
その集団が全体の過半数を超えた時に「皆平等」がかえって社会を苦しめる構造となってしまいます。
社会主義の徹底により崩壊を喫する結果となった旧ソビエト連邦の話はリアルタイムの話で知っていなくとも歴史的事実としてよく知られていると思います。
そんな資本主義、社会主義に代わる第三の考え方として出てきた新しい潮流の一つがシェアリングエコノミーです。
シェアリングエコノミーとは、「物・サービス・場所などを、多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組み」のことです。
具体的にはシェアリングエコノミーのパイオニアとされるUber(ウーバー)やAirbnb(エアービーアンドビー)という会社のシステムが本には紹介されていました。
Uberは自動車配車アプリを使って、効率的なタクシーの配車だけでなく、
一般人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶサービスを提供している企業です。
一方、Airbnbの方は、宿泊施設や民宿を貸し出す人向けのウェブサイトの運営をしている企業です。
なるほど、ある企業がシステムを提供し、その意向に沿った一般人がシステムに乗っかってサービスを提供する、
あるいは個人のレベルでも自分が提供できるサービスをインターネットを通じて社会に発信し、その意向に沿った別の人がまた自分のシステムに乗っかってくれる、
そうすれば資本主義のような既存の社会システムに乗らなくても個人に利益をもたらすことができるし、
社会主義のような強制的平等性による閉塞感もありません。
まさに現代のインターネット情報化社会が可能にした新しいシステムです。
ただし、このシェアリングエコノミーが成立するにはある条件が必要といいます。
(以下、p179-181より引用)
シェアリングエコノミーがもたらすのは、あくまで世界規模で生じる人々の実質的なつながりと、そこにおける新たな倫理にほかならない。
それはかつて日本社会に存在した助け合いの倫理、お互い様の精神のようなものである。
(中略)
本来、シェアはより快適な毎日を過ごすために求める。
ところが、そこに濃密さが絡んでくると、快適ではいられない。だから濃密さを解消する必要があるわけだ。
代わりに私が提示したのは、「新しい親密さ」であった。
他者との共通を可能にするのに必要な、最低限度の人付き合い、
具体的には、次の三つの要素で構成される。
①認知(挨拶程度)
②ミニマムな情報共有(向こう三軒両隣の家族構成と家庭の事情)
③暗黙のコンセンサス(必要な時には助け合うという暗黙の合意)
ここでのポイントは、シェアをインフラのようにとらえ、自分の都合に応じて利用するという気軽さだ。
つまり、車がなくて困っているとき、近所の人に頭を下げて借りるというのでは使いにくい。
それにそのためには日ごろから良好で濃密な人間関係を築いておく必要も出てくるだろう。
そうならないようにしたいのだ。
(引用、ここまで)
つまり、シェアリングエコノミーが成立するために適切な距離感というものがあるという事です。
もう一つ重要なのは「助け合い」「お互い様」の精神です。
非協力的な人はこのシステムからははじかれることになりますが、
皆が協力的になればこのシステムは社会を救う潜在能力を秘めているのではないかと私は思います。
皆が協力的になるためには、このシステムに入ることが何より望ましいという風に思ってもらえるようなシステムを構築できるかどうかにかかっています。
この考え方が医療に応用できないか私は思案をしている所です。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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借り物
我が家も、夏に留守をする間、自宅を貸し出しています。家賃収入が入ることに加えて、家が片付くことや、自然とメインテナンスができていくことなどメリットは多いです。何より、どなたかに借りてもらうと思うと家を大切に使うようになりました。
身体もこの世を生きていくための「借り物」だと思えば、より大切に使えるようになるかもしれませんね。そして、その結果、健康で長生きできるような気がします。
Re: 借り物
コメント頂き有難うございます。
> どなたかに借りてもらうと思うと家を大切に使うようになりました。
> 身体もこの世を生きていくための「借り物」だと思えば、より大切に使えるようになるかもしれませんね。
それはとても大切な考え方ですね。
自分だけのものと考えると扱いがぞんざいになりがちです。
しかし使ってもらう誰かのことを意識すれば確かに行動も変わって来るような気がします。
とても貸し出しできない自分の汚い部屋を振り返り、襟を正そうと思った次第です。
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